日本からの輸出に関する制度

コメの輸入規制、輸入手続き

ロシアの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2019年10月

ロシアでは輸入される食品に対して、関税同盟技術規則で規定される要求事項への適合(適合証明もしくは適合申告)が求められます。この要求事項は、製品、製品の生産、使用、保管、輸送、販売、リサイクルなどに対する必須要件であり、国家および超国家レベルの技術規則によって規定されています。
コメに適用される要求事項は、次の技術規則に規定されています。

  • 関税同盟技術規則「穀物の安全について」(食用および飼料目的の穀物に関してのみ適用。種子としての利用を目的として輸入されるコメに対しては、この技術規則の効力は及ばない)
    主に次の項目が含まれます。
    • コメの定義(コメ特定するための特徴についての説明)
    • 毒性要素、マイコトキシン、ベンゾピレンおよび、害虫汚染の限界許容レベル
    • 放射性物質の限界許容レベル
    • 有害な混入物の混入限界許容レベル
    • 使用可能な農薬およびその含有量の限界許容レベル
  • 関税同盟技術規則「食品の安全について」
    主に次の項目が含まれます。
    • 安全のための一般要求事項
    • 生産、保管、輸送、販売、リサイクルの各過程における要求事項
    • 微生物学的安全基準
    • 衛生学的安全要求事項
    • 放射性同位体セシウム137およびストロンチウム90の許容レベル
    • 食品添加物の成分としての使用が禁止された植物およびその加工品、動物由来物、微生物、菌類、生物活性物質の一覧

関税同盟技術規則「穀物の安全について」に従い、食用および飼料用として輸入されるコメについては適合申告によって適合の裏付けが行われます。ただし、この要求は品目分類1006 10に該当するコメのみに適用されます。
関税同盟技術規則「食品の安全について」では、輸入されるすべての食品について、適合申告の形式による適合の裏付けが必要であることが規定されています。

適合申告については、輸入規制の「2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」を参照してください。

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2019年10月

輸入されるコメは残留農薬の規制の対象です。食用および飼料用として輸入されるコメの残留農薬の数値は、関税同盟技術規則「穀物の安全について」および「食品の安全について」に定められた許容レベル(MRL)を超えてはいけません。

食用コメの残留農薬のMRL
残留農薬 許容レベル mg/kg 以下
BHC(α、β、γ異性体) 0.5
DDT及びその代謝物 0.02
2.4D酸およびその塩、エステル 許容されない
有機水銀剤 許容されない

関税同盟技術規則「穀物の安全について」では、コメに残留する農薬有効成分の限界許容レベルも定められています。

食用コメに残留する農薬有効成分の限界許容レベル
有効成分名 製品内最大許容レベル(mg/kg)
2-オキソ-2,5-ジヒドロフラン 0.2
МСРА 0.05
アジムスルフロン 0.02
ベンスルフロンメチル 0.02
ベンタゾン 0.1
ビスピリバック ナトリウム塩 0.1
グリホサート 0.15
デルタメトリン 0.01
ジメトエート 0.02
イソプロチオラン 0.3
キンクロラック 0.05
クレフォキシジム 0.05 (*)
クロマゾン 0.2 (*)
モリネート 0.2
ペノキススラム 0.5
ペルメトリン 0.01
ピラゾスルフロンエチル 0.1
ピリミホスメチル 1.0 (*)
プロパニル 0.3
チアベンダゾール 0.2
フェニトロチオン 0.3
フェントアート 0.1
フルトリアホール 0.05
エチオフェンカルブ 0.05 (*)

コメについては、動物用医薬品の残留に対する要求事項は定められていません。

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2019年10月

重金属
コメについての重金属の含有に対する要求事項は、関税同盟技術規則「穀物の安全について」および「食品の安全について」に定められています。
重金属の許容量
重金属 許容レベル:mg/kg 以下
0.5
ヒ素 0.2
カドミウム 0.1
水銀 0.03
有害物質および汚染物質
コメについての有害物質および汚染物質の含有に対する要求事項は、関税同盟技術規則「穀物の安全について」および「食品の安全について」に定められています。
食用コメの有害物質および汚染物質の許容量
指標 許容レベル:mg/kg 以下 備考
害虫による汚染 許容されない
死んだ昆虫、害虫による汚染 15 個体/kg
アフラトキシンB1 0.005
T-2トキシン 0.1
オクラトキシンA 0.005
ベンゾ(a)ピレン 0.001

4. 食品添加物

調査時点:2019年10月

コメに対する食品添加物の使用は、関税同盟技術規則の要求事項、特に技術規則「食品添加物、香料、加工助剤の安全について」において規制されています。これらの技術規則では、コメにおける特定の食品添加物について、最大含有レベルが規定されています。

食品添加物の許容量
食品添加物 食品 食品に含まれる最大量
鉱物油(高粘度)E905d コメ(玄米・精米) 800 mg/kg
大豆ヘミセルロース(E426) 包装済みであり、すぐに食用可能なコメ 10 g/kg
ステアロイル-2-乳酸ナトリウ(E481)、ステアロイル-2-乳酸カルシウム(E482) 即席調理米
(包装米飯、レトルトの粥など)
4 g/kg
個別または両者の配合 即席調理米
(包装米飯、レトルトの粥など)
4 g/kg
ケイ酸マグネシウム E553iii コメ(玄米・精米) 使用量は製造者によって規定され、技術的な面から適切な判断のもとで使用されるものとする。技術的効果を得るために必要な量を超えて使用してはならない。
脂肪酸モノグリセリドおよび脂肪酸ジグリセリド(E471) 即席調理米
(包装米飯、レトルトの粥など)
使用量は製造者によって規定され、技術的な面から適切な判断のもとで使用されるものとする。技術的効果を得るために必要な量を超えて使用してはならない。
グリセリン酢酸脂肪酸エステル(E472а) 即席調理米
(包装米飯、レトルトの粥など)
使用量は製造者によって規定され、技術的な面から適切な判断のもとで使用されるものとする。技術的効果を得るために必要な量を超えて使用してはならない。

関税同盟技術規則「食品表示」で規定されている、包装表示に適用される食品添加物に関する要求事項は、「 6. ラベル表示」を参照してください。

5. 食品包装(食品容器の品質または基準)

調査時点:2019年10月

包装が施される場合、コメの包装に使用される容器および包装材は、関税同盟技術規則「包装の安全性について」で規定されています。特に食品の製造者により製造の過程で施される包装に関する要求事項に適合している必要があります。

コメを含む食品に使用される包装材は、許容量を超えて人体に影響を及ぼす化学物質が放出されるものであってはいけません。

関税同盟技術規則「包装の安全性について」によって規定される包装表示については「6. ラベル表示」を参照してください。

6. ラベル表示

調査時点:2019年10月

消費者向け包装への表示
消費者向けの包装がなされているコメを日本から輸入する際には、関税同盟技術規則「食品表示」に従って、ラベルに次の情報を含める必要があります。なお、表示対象である「各種成分」の記載に対する要求事項の詳細は、関税同盟技術規則「食品表示」(第4条第3項~第11項)に定められています。
  1. 品名
  2. 原材料:食品が一つの原材料だけでできており、品名によりその原材料が特定できる場合は、原材料の表記は必要とされない。
  3. アレルギー物質:アレルギー反応を引き起こす恐れがあるとして法律で定められた成分(アレルゲン)を原材料に含む場合は、該当する成分を記載しなければならない。該当する成分を使用していない場合でも、製造時に混入する可能性が完全に排除できない場合は、該当する成分が含まれる可能性があることについて、食品の原材料の記載の後に続けて記載する。〔特に二酸化硫黄および亜硫酸塩(1kgあたりに合計10mgより多く含まれる場合、または二酸化硫黄に換算して1リットルあたりに10mgより多く含まれる場合)、ゴマ、グルテンを含む穀類が該当します。「アレルギーまたは不耐性を起こしうる物質・製品リスト」を参照してください。〕
  4. 内容量
  5. 製造年月日
  6. 消費期限
  7. 食品の保管条件
  8. 製造者の名称および所在地:製造者が個人事業主の場合は姓・名・父称および所在地、または、製造委託者の名称および所在地、輸入者の名称および所在地、輸入者が個人事業主の場合は姓・名・父称および所在地
  9. 使用上の注意および制限:食品の調理の際に調理が困難となったり、消費者の健康に有害であったり、財産に損害をもたらしたり、食品の味が損なわれる事態が生じうる条件
  10. 食品の栄養価:エネルギー値(カロリーもしくはキロジュール)、たんぱく質量、脂肪量、炭水化物量、ビタミンおよびミネラル物質の量(製造においてビタミン・ミネラルを添加している場合はその表示が必要になります。その他にも100グラム/100ミリまたは成人男性が一日に摂取する量の5%を超える場合は表示が必要になります。)
  11. GMO(遺伝子組み換え作物)由来の成分の有無:GMOを使用した食品については、DNAおよびたんぱく質を含まない場合も含めて「遺伝子組み換え食品」または「GMO使用食品」または「原材料にGMOを含む食品」という表記をしなければならない。EEU市場内で流通する製品への統一表示記号の隣に、その表示と同じ形状および同じ大きさで、『GMO』というGMO使用食品の表示記号がつけられなければならない。
    製造者がGMOを使用していない場合、製品の偶発的、技術的に避けられないような混入の割合が食品中の0.9%以下の場合は、GMOは表示の必要はない。
  12. ユーラシア適合(EAC)マーク:EEU構成国市場内で流通する製品への統一マーク。(詳細は「7. その他」を参照してください。)
アレルギーまたは不耐性を起こしうる物質・製品リスト
  1. ピーナッツとその加工品
  2. アスパルテームおよびアスパルテームアセスルファム塩;
  3. マスタードとその加工製品
  4. 二酸化硫黄および亜硫酸塩(総含有量が二酸化硫黄換算で1キログラムあたり10ミリグラムまたは1リットルあたり10ミリグラムを超える場合)
  5. グルテンを含む穀物、およびその加工製品
  6. ごまとその加工品
  7. ルピナスとその加工製品
  8. 貝類とその加工製品
  9. 牛乳およびその加工品(乳糖を含む)
  10. ナッツとその加工製品
  11. 甲殻類およびその加工製品
  12. 魚およびその加工品(魚ゼラチン含む)
  13. セロリとその加工製品
  14. 大豆とその加工製品
  15. 卵とその加工品
輸送用の表示
輸送用の包装表示には、次の情報が含まれていなければならない。
  1. 品名
  2. 内容量
  3. 製造年月日
  4. 品質期限
  5. 食品の保管条件
  6. 食品のロットを判別するための情報(ロット番号など)
  7. 製造者の名称および所在地:食品の製造者の名称および所在地、製造者が個人事業主の場合は姓・名・父称および所在地
輸入されるコメにさらなる包装が予定されており、消費者向けの包装がされておらず輸送用の包装の状態である場合は、消費者向けの包装表示に必要な全情報が、輸送用の包装表示に含まれていなければなりません。
記載に関する注意事項
表示義務項目については、輸入されるコメの製造者の名称および住所以外はロシア語で表示されていなければなりません。製造者についての情報は、ローマ字のアルファベットおよびアラビア数字、または製造者の国の公用語で表示することができます。しかし製造者の国名はロシア語で書かれていなければなりません。
表示は理解しやすく、読みやすく、真実の情報であり、誤解が生じないものでなければなりません。
文章、文字、記号は、背景と対照的な色でなければなりません。
製造者が設定した保管条件下での品質期限までの全期間、表示が消えることのない方法で記載されていなければなりません。
食品添加物に関する表示
原材料に食品添加物が含まれる際には、包装表示にその機能(技術的)用途の表示(PH調整剤、安定剤、乳化剤などの機能的(技術的)用途)についての情報およびその名称が記載されていなければなりません。食品添加物の名称の代わりに、国際番号システム(INS)またはE番号システム(E)の番号を記載することも可能です。食品添加物が複数の機能を持つ場合には、使用目的となった機能を記載してください。また、原材料に食品添加物が含まれる場合には、その添加物の摂取を避けるべき疾患についても記載する必要があります。
包装・容器に関する表示
また、容器・包装材の回収や再利用を容易にする目的で、容器および包装材の素材を特定するために必要な情報が包装表示に含まれていなければなりません。この情報は、容器および包装材への直接記載か付属書類、またはその両方の方法で表示しなければなりません。可能であれば包装に直接記載または貼付してください。不可能である場合には、添付文書によって情報を提示してください。
この表示が包装に記載されていない場合、包装を行うコメの製造者は、付属書類の内容に従って、包装の素材を特定するために必要な情報のラベルを貼付する必要があります。
包装材の素材についての包装表示には、素材を表す数字のコードか文字による符号(略語)またはその両方、また包装や容器が食品に接触する用途で製造されたものであり、使用後はリサイクルが可能であることを示す記号が含まれている必要があります。コード、符号および記号は、関税同盟技術規則「包装の安全性について」への添付資料3および添付資料4の図1および図2に規定されています。
ユーラシア適合マーク(EACマーク)
EACマークついては、「7. その他」を参照してください。
その他
消費者向けおよび輸送用の包装には、商品が適合している規格などや商品を特定するための書類についての情報、考案された名称、商標、商標に対する独占排他的権利者、コメの原産地、認可者の名称と所在地、自主的認証制度のマーク、商品の特徴についての情報を追加的に表示することができます。

7. その他

調査時点:2019年10月

ユーラシア適合マーク(EACマーク)
関税同盟技術規則「穀物の安全について」に従って、コメがこの技術規則やコメに対して適用範囲がおよぶ関税同盟の他の技術規則の要求事項に適合している場合は、EEU構成国市場で流通する商品への製品流通の統一マーク(EACマーク)を表示します。EACマークは包装に記載されるか、コメがバラ積みで輸送される場合には付属書類に記載します。EACマークの記載方法は、コメの品質期限までの全期間において読み取りやすさと鮮明さが確保される方法であれば、いかなる方法でも可能です。
技術規則「穀物の安全について」は、EACマークの表示が、コメがEEU統一関税圏の市場に出る前に施されていなければならないと規定しています。また、穀物の市場への流通とは、輸入者から売買およびその他の手段により穀物がEEU圏内へ引き渡されることを意味するとも規定しています。この規定は、輸入される商品がロシア国内で実際に販売されるまではEACマークの表示は施されていなくてもよいことの裏付であると考えることができます。その一方で、EACマークがあることにより、商品が技術規則に定められたすべての適合評価手続きを通過したことが証明されます。したがって実際には、自由な市場流通を目的として税関に提出された商品にEACマークがない場合、税関により、適合宣言や適合証明がなされていないとみなされてしまうリスクがあります。
2018年6月14日付のロシア連邦税関局書簡第14-88/35479号「情報の方向性について」では、商品をロシアへ持ち込むまでにEACマークが表示されなかった場合は、ロシアで表示を施すことが可能であると規定されています。そのためには、表示のない商品を保税蔵置場に置き通関手続き中の状態にするか、国内消費向けとして条件つきの通関を行う必要があります。商品の条件付きの通関を行うためには、税関に理由書を提出し、一連の条件(特に輸入者がEACマークの表示を行う権限を与えられていること)を順守しなければなりません。輸入者は条件付きで通関させた商品を販売する権利がありません。EACマークが表示された後で、税関に適合申告書および適合証明書を提出し、変更があることを明記したうえで商品の申告書に情報の変更を加えます。その後、商品を自由に流通させることが可能になります。
そのため、EACマークの表示のタイミングは次のようになります。
  1. 商品をロシアへ持ち込む前
  2. 手続き中の商品がロシアで保税蔵置場に置かれた後
  3. ロシアの税関による条件付き通関後

EACマーク

統一記号の図柄は、明るい背景(左)、あるいは文字とは対照的な背景(右)に、3つの図案化された文字「E」「A」「C」の組み合わせで構成されている。

関連リンク

関係省庁
ユーラシア経済委員会(EEC) 技術規制・認定部(ロシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ロシア連邦税関局(ロシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ロシア連邦政府(ロシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
2011年12月9日付関税同盟委員会決定第881号「関税同盟技術規則『食品表示』の採択について」(ロシア語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(309KB)
2011年8月16日付関税同盟委員会決定第769号「関税同盟技術規則『包装の安全性について』の採択について」(ロシア語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(692KB)
2011年7月15日付関税同盟委員会決定第711号「ユーラシア経済連合市場における製品流通の統一マークおよびその導入手順について」(ロシア語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(454KB)
2011年12月9日付関税同盟委員会決定第874号「関税同盟技術規則『穀物の安全について』の採択について」(ロシア語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(454KB)
2018年6月14日付ロシア連邦税関局書簡第14-88/35479号「情報の方向性について」(ロシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1992年2月7日付ロシア連邦法第2300-1号「消費者の権利保護について」(ロシア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
ジェトロ「貿易投資相談Q&A:GOST-R(ロシア国家標準規格)認証取得:ロシア向け輸出」
ジェトロ「通関時の「ユーラシア適合マーク」貼付の有無でトラブル-ロシア税関とユーラシア経済委員会が異なる見解-」(ビジネス短信)