通関時の「ユーラシア適合マーク」貼付の有無でトラブル-ロシア税関とユーラシア経済委員会が異なる見解-

(ロシア)

モスクワ発

2017年01月06日

 ユーラシア経済連合(EEU)では、輸入する製品によってはEEUの認証を取得していることを示す「ユーラシア適合(EAC)マーク」の貼付が義務付けられている。しかし、どの段階での義務なのかが必ずしも明確でないため、ロシアへの輸入通関の際に税関当局からマークを貼付していないとして、通関を拒否されるトラブルが発生している。こうしたトラブルを回避するには、輸入前にマークを貼付しておくのがよさそうだ。

<ロシアの司法判断も不統一>

 EEU加盟国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)の定める「関税同盟技術規則」によると、EACマークの貼付はEEU加盟国の市場に製品を流通させる前に行えばよく、輸入通関申告時に貼付が必要だとは特段記載されていない。しかし最近、ロシアの税関でEACマークの貼付がないことを理由に輸入貨物の通関を拒否され、行政違反(注)に問われるケースが発生している。これまでロシア輸入後に倉庫でマークを貼付していた企業や業者は、通関前に貼付をすることになったり、追加費用が発生したりするなどの影響が出ている。

 

 ロシアの法律事務所ペペリャエフグループのパートナー、アレクサンドル・コソフ弁護士は「ノボロシイスク税関やバルト税関で指摘を受けるケースが発生している」とし、司法判断も統一されていないと指摘する。

 

 例えば、エジプトから果実のザクロを輸入する際に発生した係争事案では、ノボロシイスク税関は「マークの貼付がない貨物は(税関に提出された)適合申告書に記載の貨物と見なさない」と主張したが、一審は「税関側の決定は違法」とし、輸入者側を支持した(審理番号A3222562016)。しかし、類似する他の事案では、最高裁は「通関申告までにマークの貼付は必要」という判決を下した(審理番号A2110742015)(法律関連サイト「プラボ・ル」2016年1027日)。

 

 在ロシア欧州ビジネス協会(AEB)の照会に対して、ロシア連邦工業商務省は「EEU市場で流通させる製品に対する統一のEACマークの貼付要求は、他の要求と同様に軽視されるものではない」と、立場を曖昧にしている。他方、ユーラシア経済委員会は「EEU市場に輸入する際の通関手続きにマーク貼付は義務付けられていない。税関当局は、貨物のリリースを決定する前に、マーク貼付について検査する義務はない」としており、ロシア当局と見解が異なっている。

 

 なお、AEBによると、こうしたトラブルはロシアだけで、カザフスタンなどでは発生していない、としている。

 

(注)ロシア行政違反基本法第16.2条「貨物の不申告または信ぴょう性不十分の申告」に該当。最大30万ルーブル(約57万円、1ルーブル=約1.9円)の罰金が科される。

 

(齋藤寛)

(ロシア)

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