化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法):日本
質問
化学物質の輸入について留意点および関連法規を教えてください。
回答
一定数量(年間1トンを超える)の製造・輸入を行う事業者は、既存化学物質を含むすべての化学物質について、一部の例外を除き、原則として、毎年度その数量等を届け出る義務があります(化学物質の審査および製造等の規制に関する法律: 化審法)。
I. 新規化学物質の輸入手続き
新規化学物質(官報で名称が公示されていない、もしくは政令で指定されていない化学物質)を輸入する場合は、あらかじめ厚生労働大臣、経済産業大臣および環境大臣へ必要事項を届け出る必要があります。また必要に応じて分解性・蓄積性・毒性などに関する試験データを提出します。OECDの優良試験所基準(Good Laboratory Practice: GLP)を満たす試験機関の試験データは相互受理されます。
- 全国総量で年間1トンを超える場合
省令に定める事項を届け出て事前審査を受けなければなりません。分解性・蓄積性・ヒトへの長期毒性・動植物への毒性等について審査判定され、届出日から3カ月以内に厚生労働大臣、経済産業大臣および環境大臣の3大臣名で同法規定の化学物質分類が通知されます。新規化学物質は第一種特定化学物質、監視化学物質、第二種特定化学物質、優先評価化学物質、一般化学物質に区分され、区分に応じた対応が必要です。難分解の低蓄積で全国総量10トン以下の物質は、「特例申請」をすることにより、事前審査を受けずに輸入できます。ただし、事後監視措置の対象となります。 - 全国総量で年間1トン未満等の場合
「年間製造・輸入数量1トン未満」または「政令で定める中間物等の場合」あるいは「基準に該当する低懸念の高分子化合物」の場合は、事前確認を受けることにより審査を受けずに輸入できます。
II. 既存化学物質、公示化学物質又は監視化学物質、優先評価化学物質を輸入する場合
- 既成化学物質名簿に収載されている化学物質
化審法附則第2条に規定する既存化学物質名簿に収載されている化学物質(以下「既存化学物質」という)に関しては、輸入申告書またはインボイスに既存化学物質にかかわる官報告示の類別整理番号を記入します。 - 名称が公示された化学物質
化審法第4条第4項の規定によりその名称が公示された化学物質(以下「公示化学物質」という)に関しては、輸入申告書またはインボイスに公示化学物質にかかわる官報告示の通し番号および類別整理番号を記入します。 - 監視化学物質および優先評価化学物質
化審法第2条第8項の規定によりその名称が公示された同条第4項の監視化学物質、同条第5項の優先評価化学物質に関しては、輸入申告書またはインボイスに当該監視化学物質にかかわる官報告示の通し番号および類別整理番号を記入します。
III. 化学物質の分類
- 第一種特定化学物質(例:PCB、DDTなど31物質)
ヒト等への長期毒性(難分解性・高蓄積性)があり、その製造・輸入について事前の許可が必要な物質です。認められた用途以外の使用は禁止されます。また、第一種特定化学物質が使用されている製品については輸入を禁止する等の措置が講じられています。当該物質のみならず使用製品も含めて取扱事業者に対する技術上の基準適合・表示義務等が定められています。
(参考)
2013年6月28日に開催された化学物質審議会審査部会において、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約締約国会議で廃絶・制限の対象とすることが決定されたエンドスルファン(別呼称ベンゾエピン)およびヘキサブロモシクロドデカンについては、化審法に基づく第一種特定化学物質相当の有害性等を有するものと判断され、この2物質は2014年5月に、ペンタクロロフェノール又はその塩若しくはエステルが2016年4月に第一種特定化学物質に追加されました。 - 第二種特定化学物質(例:トリクロロエチレンなど23物質)
人や環境等への毒性(難分解性でない物質含む)や残留性があり、リスクが高いとされる物質です。輸入予定/実績数量等の届出義務があります。当該物質のみならず使用製品も含めて取扱事業者に対する技術上の指針遵守・表示義務等が定められています。届出予定数量を超えて輸入する場合は法35−2に規定する変更手続が必要です。 - 監視化学物質(酸化水銀Ⅱなど39物質)
難分解性かつ高蓄積性であり、人または高次捕食動物に対する長期毒性が明らかでない物質です。輸入実績数量や用途等の届出が必要で、有毒性情報の報告および取扱事業者への情報伝達努力義務もあります。必要に応じて取扱状況報告や有害性調査指示があり、これに応じなければなりません。 - 優先評価化学物質
人または生活環境動植物への長期毒性を有しないことが明らかであるとは認められず、かつ相当広範な地域の環境中に相当程度残留している、またはその状況に至る見込みがあり、人または生活環境動植物への被害を生ずるおそれがないと認められないため、そのおそれがあるかどうかについての評価(リスク評価)を優先的に行う必要がある物質です。輸入・製造業者の義務は3の監視化学物質とほぼ同様です。 - 一般化学物質
一般化学物質として区分されるものは主として以下の2種です。一般化学物質を輸入する際も、輸入実績数量等の届出は必要です。 - 既存化学物質(1973年10月の化省法公布の際に輸入・製造されていた物質)から第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、監視特定化学物質、優先評価化学物質を除いた化学物質
- 1973年10月以降に輸入・製造された「新規化学物質」で、法4条-4の規定で公示されたもののうち、第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、監視特定化学物質、優先評価化学物質を除いた化学物質(白物質)です。
IV. 化審法の改正
化審法では、化学物質による人体や環境への悪影響を防止する観点から、新規化学物質の事前審査を行うとともに、既存化学物質についても有毒性等に基づく判断から特定化学物質を指定し、輸入・製造・使用について必要な規制が設けています。
V. 化審法の適用範囲
同法の対象とする化学物質は、元素または化合物に化学反応を起こさせることにより得られる化合物です。別の法令で規制されている物質については、それぞれの法律が適用されます。
- 化審法と同等以上の厳しい規制が講じられているもの
放射性物質
毒物取締法に基づく特定毒物(毒物劇物取締法)
覚せい剤および同原料(覚せい剤取締法)
麻薬(麻薬および向精神薬取締法) - 用途に応じた他の規制法との関係で適用除外とされるもの
食品添加物(食品衛生法)
農薬(農薬取締法)
普通肥料(肥料取締法)
飼料、飼料添加物(飼料の安全性の確保および品質の改善に関する法律)
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器のうち対外診断用医薬品、獣医薬(薬事法)
さらに、廃棄物規制(廃棄物処理法など)および排出規制(大気汚染防止法、水質汚濁防止法など)との関係、家庭用品(有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律、消費生活用製品安全法)などとも目的・対象・手段等で適用が異なるため、化審法は特定用途以外の産業用化学物質を対象とする製造・輸入・販売の規制と位置付けられます。
一方、化審法は化学物質排出把握管理促進法(化管法)や労働安全衛生法などとも密接に関係しています。
参考資料・情報
経済産業省:
化学物質の輸入通関手続き
化審法改正の概要(製造産業局化学物資管理課)(2.13MB)
独立行政法人 製品評価技術基盤機構:
化学物質総合情報提供システム
厚生労働省:
化学物質の安全対策サイト
環境省:
環境リスクの低減
ジェトロ:
貿易・投資相談Q&A「 化学品輸入における化学品METI登録番号 」
調査時点:2013/08
最終更新:2017/12
記事番号: M-030006
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