非居住者が国内取引を行う場合の手続き:シンガポール

シンガポールで非居住者が国内取引を行うとき、必要な手続きはありますか。

シンガポールで非居住者が国内取引を行うとき、直近12カ月間の物品サービス税(Goods and Services Tax: GST)課税対象売上高実績が100万シンガポールドル(SGD)を超える場合など、特定の条件下においてはシンガポール居住者をGST代理人として任命し、内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore: IRAS)への必要書類の提出が必要です。

I. GST登録条件

シンガポールでは、下記のいずれかに該当する場合にはGSTの納税義務者として内国歳入庁(IRAS)への登録が必要です。当該登録を怠った場合は、顧客からのGST徴収の有無に関わらず、GST登録を行うべきであった日以降の売上に係るGSTの納付義務を負います。また、ペナルティとして1万SGDおよび支払うべきであったGSTの10%相当額が課税される可能性があります。

  1. 当該非居住者の直近12カ月間のGST課税対象売上高実績が100万SGDを超える場合(その後12カ月間の予想売上高が100万SGDを超えないことが確実な場合を除く)
  2. 今後12カ月間の予想売上高が100万SGDを超えると十分な根拠をもって判断される場合

なお、課税対象売上高実績が100万SGDを超えない場合でも、GST課税業者として登録する方が、輸出免税の適用等で有利なことがあります。この場合、任意に登録することが認められています。ただし一旦登録すると、最低2年間は課税業者であり続ける必要があります。

II. GST課税業者の登録

  1. IRASへの登録
    GST課税業者となる場合、通常GST F1という所定の書類をIRASへ提出するか、myTax Portalと呼ばれるシステム上で電子申請を行います。提出後、紙媒体での提出の場合は10営業日程度、電子申請の場合には2営業日程度で処理が行われます。IRASでの処理が完了するとGST登録番号およびGST登録の有効日がIRASから届きます。このGST登録の有効日から課税対象取引に対してGSTの請求と徴収を開始する必要があります。
  2. 代理人の任命手続き
    シンガポール非居住者は、シンガポール国内で取引を行うにあたり、自らGSTの課税業者として登録できないため、GSTを徴収することができません。しかし、上述のとおり、一定の要件を満たす場合はIRASへ課税業者として登録することが義務付けられています。非居住者は自身に代わってGST関連業務を取り扱う代理人を任命し、手続きを行う必要があります。なお、シンガポール国内に支店を設立した海外企業については、自らGSTの課税業者として登録することができます。
    代理人を任命した後、任命書(Letter of Appointment)を指定した代理人に交付します。また、IRASには代理人の署名入りの所定の書類を提出します。IRASへの提出時には以下の情報も併せて提出しなければなりません。
    1. 法人の場合は非居住法人の設立証明書
    2. ビジネス内容の詳細(シンガポールでの取引内容を含む)
    3. シンガポールに支店を設立するか否か(設立する場合は、登録証明書のコピー、しない場合はその理由)
    4. 代理人の職務と責任に関する詳細
    5. 代理人が行っているビジネスの業種

III. インターネットを活用したオンライン販売について

GST代理人への任命が必要となるケースとして、シンガポールに恒久的施設(Permanent Establishment: PE)を有していない非居住者が、海外のサーバーを活用しオンライン取引によりシンガポールに商品を輸出する場合が挙げられます。この場合に留意すべき点について紹介します。

  1. GST
    既述の通り、シンガポール非居住者である事業者は原則、シンガポールでの取引においてGSTを徴収することはできません。GSTを徴収するためには現地において代理人を通じてIRASに課税業者として登録します(GST課税売上高が100万SGDを超過する場合、登録は義務です)。
  2. 一般電子商取引に関わる法規制
    オンラインにて販売する商品によって、各種規制法令を遵守する必要があります。各種規制法令に関しては、「オンラインビジネスを行うにあたっての留意点:シンガポール」を参照ください。
  3. 非居住者名義での輸入申告に関して
    インターネットによるオンライン取引で販売された商品をシンガポールに発送するためには、シンガポールにおいて輸入申告が必要です。しかし、非居住者は、自己の名義で輸入申告を行うことはできません。
    非居住者である販売業者の名義の商品をシンガポールへ輸入するためには、シンガポール会計企業規制庁(Accounting and Corporate Regulatory Authority: ACRA)に登記をし、個別企業登録番号(Unique Entity Number: UEN)を取得している現地の事業者に輸入業務及び購入者への発送業務を委託する必要があります。

関係機関

シンガポール内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore: IRAS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

Attorney General's Chambers:
財・サービス税法(Goods and Services Tax Act)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

外務省:
日本・シンガポール租税条約_1PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1,152KB)
日本・シンガポール租税条約_2PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1,087KB)

参考資料・情報

シンガポール内国歳入庁:
GST登録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
GST登録申請外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
GST申告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ジェトロ:
非居住者が保有する貨物の通関制度:シンガポール

調査時点:2017/1

記事番号: S-140101

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