電池の輸入手続き:日本

質問

電子製品用の電池の輸入手続きについて教えてください。

回答

電池には素材、形状とも様々な種類があります。電子製品用にはマンガン乾電池、アルカリ乾電池、リチウム電池などが使われます。リチウムイオン蓄電池(リチウムイオン単電池からなる組電池)を除き、電池の輸入・販売に際して特別な法規制はありません。リチウムイオン蓄電池は、体積エネルギー密度が高く、発煙、発熱により大きな事故につながる恐れがあるため、電気用品安全法の規制対象です。また、危険物として輸送規制があります。

I. 電池の種類

電池の種類は、関税分類番号(HSコード、7桁目~9桁目は日本の輸入統計品目番号)ごとに以下のようなものがあります。これらのものを日本に輸入する際の関税はすべて無税です。

8506 :一次電池
8506.10 :二酸化マンガン電池
8506.10.011 :アルカリボタン電池
8506.10.019 :アルカリ乾電池
8506.30 :酸化水銀電池
8506.40 :酸化銀電池
8506.50 :リチウム電池
8506.60 :空気・亜鉛電池
8506.80 :その他の一次電池

8507 :蓄電池
8507.10 :ピストンエンジンの始動に使用する種類の鉛蓄電池
8507.20 :その他の鉛蓄電池
8507.30 :ニッケル・カドミウム蓄電池
8507.40 :ニッケル・鉄蓄電池
8507.50 :ニッケル・水素蓄電池
8507.60 :リチウムイオン蓄電池
8507.80 :その他の蓄電池

II. 輸入時の規制

  1. 輸入通関時の規制
    輸入通関時(税関への輸入申告の際)の規制は、一次電池(HS8506)のうち、特定水銀使用製品及びこれを部分品として使用する製品は、外国為替及び外国貿易法(外為法)及び輸入貿易管理令の規制により輸入承認を受ける必要があるものがあります(2の2号承認品目)。また、蓄電池(HS8507)の中には、麻薬及び向精神薬取締法または毒物及び劇物取締法の規制を受ける可能性があるものがあります。
    1. 規制対象品目
      電気用品安全法の規制対象となるリチウムイオン蓄電池(電気用品安全法施行令第1条別表第2の「特定電気用品以外の電気用品」)は、単電池一個当たりの体積エネルギー密度が400ワット時毎リットル以上のものです。自動車用、原動機付自転車用、医療用機械器具用および産業用機械器具用のものは、それぞれ道路運送車両法、医薬品医療機器等法、労働安全衛生法により規制されているため、電気用品安全法の規制対象外です。電気用品安全法規制対象となる体積エネルギー密度が高いリチウムイオン蓄電池を使っている機器としては、ノートパソコン、携帯電話、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯ゲーム機、DVDプレーヤー等の携帯用電子機器等があります。
    2. 規制の運用
      電気用品安全法に該当する品目の輸入を行う事業者は、事業開始の日から30日以内に電気用品輸入事業届出書によって所定の事項を経済産業大臣(経済産業局)に届け出る義務があります(法第3条)。また、そのリチウムイオン蓄電池は国の定める技術基準に適合しなければなりません(法第8条第1項)。さらに製造、輸入または販売業者がリチウムイオン蓄電池を販売目的で陳列する時は、その基準適合義務を満たしていることを表すPSEマークをつけなければなりません(法第27条)。ただし、一部のリチウムイオン蓄電池(2011年11月19日以前に製造・輸入された機器に装着されるもの、2008年11月19日以前に製造・輸入された機器用の蓄電池でJIS規格またはUL規格において一定の安全性が確認されていること、電池が小さくて表示できない場合などに所定の表示のあるもの等)については、例外的に経済産業大臣の承認を受けて技術基準適合性にかかわらず製造または輸入(法第8条第1項)、ないしはPSEマーク表示なしで販売(法第27条第2項、ただし書き)することができるとされています。
  2. 危険物輸送規定
    リチウムイオン電池(ワット時定格量が20Whを超える単電池又はワット時定格量が100Whを超える組電池)は、国連番号(UN)3480の危険物に該当します。危険物船舶運送および貯蔵規則、船舶により危険物の運送基準等を定める告示、航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示等で規定されている容器・包装の方法や品名、分類、積載方法、危険性等について規定があります。
    2025年1月1日、国際航空運送協会(IATA)危険物規則書第66版(DGR)が発効され、リチウム電池の輸送規則に関し一部変更がなされました。これによると、国連規格容器が不要なリチウム電池の包装について、以下の「積み重ね要件」の規定が追加されました。
    1. セル又は組電池の個々の包装物、又は完成した包装物は、それらの包装物と同一の物を、テストの為のサンプルを含み、高さ 3 メートルまで積み重ねたのと同一の力を 24 時間与えたとしても、そこに含まれるセル又は組電池に損傷が生じることがなく、又、有効性が減じることがないように耐えることが出来なければならない。
    2. 容器の有効性は、試験、審査、又は経験によって証明出来る。 このほか、リチウム電池駆動の乗り物は、2025 年末までは、電池は充電率が 30%以下であること、または表示された電池容量が 25%以下であることが推奨されます。2026 年より、これらの制限は 100wh を超える電池を有する乗り物について必須となります。

III. 資源有効利用促進法

  1. リサイクルの義務
    小形二次電池は、資源有効利用促進法により2001年4月から、小形二次電池メーカーと小形二次電池を使用する機器メーカーに、回収・リサイクルが義務付けられています。小形二次電池とは充電して繰り返し使えるもので、携帯電話やコードレス電話、ノートパソコンなどに使われています。
  2. リサイクルの対象となる小形二次電池
    ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、小形制御弁式鉛蓄電池が対象となります。電池に表示された4種のリサイクルマーク(ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、小型シール鉛蓄電池)で見分けることができます。

IV. その他

小さなボタン型あるいはコイン型の電池を子供が誤飲する事故が相次いでいます。一般社団法人日本玩具協会では玩具安全基準(ST 基準)として、ボタン電池が収納されている部分の蓋は容易に開かない構造であることなどを定めています。また、一般社団法人電池工業会では、消費者の安全確保のため、マンガン乾電池、アルカリ乾電池、円筒形リチウム電池、コイン形リチウム電池、ボタン形電池、ボタン形電池(空気亜鉛)の一次電池に関して表示に関するガイドラインを定め、「一次電池安全確保のための表示に関するガイドライン(第8版)」を公開しています。電池メーカー、輸入者に対し、電池を乳幼児のそばに放置しない、高温になる場所に放置しないなど消費者が電池の正しい使い方、保管方法などを守るような注意喚起を推奨しています。

関係機関

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一般社団法人電池工業会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
一般財団法人JBRC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
一般社団法人航空危険物安全輸送協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

経済産業省:
電気用品安全法法令業務実施ガイドPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2,035KB)

一般社団法人電池工業会:
一次電池安全確保のための表示に関するガイドライン(第8版)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(798KB)

日本玩具工業会:
国内のボタン電池等及びボタン電池等使用製品の市場と安全対策PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(514KB)

一般社団法人航空危険物安全輸送協会:
IATA航空危険物規則書 第66版(2025年)主要な改定点PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(188KB)

ジェトロ:
家電製品の輸入手続き:日本

調査時点:2017年3月
最終更新:2025年9月

記事番号: M-010984

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