接着剤の輸入手続き:日本

質問

接着剤の輸入手続きについて教えてください。

回答

接着剤は基本的に化学物質であり、用途や成分等により、輸入及び販売に際する法令や規制が異なります。

I. 関税分類番号(HSコード)

調製膠着剤その他の調製接着剤(他の項に該当するものを除く)および膠着剤または接着剤としての使用に適する物品(HS3506)

成分や性状等により異なる場合もあります。実際に輸入しようとする製品の詳細情報をもって税関相談官室に確認されることをお勧めします。
なお、接着剤は基本的に化学物質であり、用途や成分等により関連法令も異なります。注意してください。

II. 輸入時の規制

  1. 輸入承認の対象化学物質(事実上、輸入が禁止されている製品)
    1. ゴムまたはプラスチック系接着剤のうち、ベンゼンの含有量が5%を超える物(輸入貿易管理令(二の二号承認))HS Code No.3506-91
    2. 第一種特定化学物質を含有する物(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法))
  2. 輸入可能な製品

    既存化学物質名簿に記載されている化学物質、新規化学物質として官報に公表されている「白物質」は輸入できます(化審法第4条5項に基づき公示された物質)。

    なお、トルエン等の希釈液とのセットで輸入する場合、まれに麻薬および向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法で規制する麻薬向精神薬原料に該当する場合があります。

  3. 輸入手続き
    1. 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
      既存化学物質については通関時に輸入化学物質の類別整理番号を輸入申告書またはインボイスに記入します。第二種特定化学物質については、施行令第2条の号番号輸入予定数量、実績数量等を経済産業大臣へ届け出る必要があります。
      新規化学物質のうち、年間製造・輸入数量の合計が1トンを超える場合は経済産業大臣への事前届出義務があります。1トン未満の場合は事前確認が必要です。
      即ち、少量新規化学物質の製造・輸入開始前に、製造・輸入の予定数量について、(1)1年あたりの製造・輸入の総量が1トン未満であることと、(2)環境汚染が生じることなくかつ人の健康を損なう惧れがない旨の確認結果を厚生労働大臣、経済産業大臣、及び環境大臣に通知しなければなりません。特定化学物質は「化管法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律、SDS:危険物質として通告して販売する義務)」や「労働安全衛生法」にも関連しています。労働安全衛生法では、新規化学物質を含む製品を輸入販売(包装・表示・保管等含む)する場合、その製品情報(名称等)や有害性調査結果等を厚生労働大臣に届け出ることが定められています。 改正化審法についてはジェトロ貿易・投資相談Q&A「 化学物質の審査及び製造等の規則に関する法律(化審法)」を参照ください。

III. 販売時の規制

  1. 家庭用品品質表示法
    日本国内で一般消費者に対し対象商品の販売を行う場合、同法に基づく表示が義務付けられています。日本国内に営業拠点のある輸入業者や販売業者等が表示者となります。消費者にわかりやすい日本語表示が必要です。
    接着剤(動植物系およびアスファルト系のものを除く)は、同法の「雑貨工業品品質表示規程」に義務表示事項(種類、成分、毒性、用途、正味量、取扱上の注意)等が定められています。
  2. 化審法
    第二種特定化学物質は、使用製品の取扱事業者に対する技術上の指針遵守・表示義務等が定められています。
  3. 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(有害物質規制法)

    同法では、主に家庭用品に含有されてはならない化学物質規制を定めています。人の健康に害を及ぼすおそれのある規制有害物質のうち、以下については基準に適合しない製品の販売を禁止されています。

    接着剤に含まれる場合

    1. トリフェニル錫化合物
    2. トリブチル錫化合物
    3. ホルムアルデヒド(かつら、つけまつげ、つけひげ、靴下留めの接着剤に含まれる)
    4. 有機水銀化合物

    エアゾールタイプの場合
    塩化ビニル、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、メタノールを含有するもの

  4. 建築基準法
    シックハウス症候群対策としてのホルムアルデヒド規制(室内濃度指針値:30分平均値で0.1mg/立法メートル以下)等があります。また、日本建築仕上材工業会では建材(内装等に使用される接着剤も含む)のホルムアルデシド放散等級自主表示規程を設けています。
  5. 工業標準化法(JIS規格)/業界規格(JAIマーク)

    接着剤に関連する規格は数多くあります。

    【例】
    「建築材料の揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒドおよび他のカルボニル化合物放散量測定におけるサンプル採取、試験片作製及び試験条件−第2部:接着剤(JISA1902-2)」

    「ホルムアルデヒド系樹脂木材用液状接着剤の一般試験方法(JISK6807 ISO8989)」
    日本接着剤工業会によるJAIA規格(JAIマーク認定制度)(建材用等について)

  6. 船舶安全法/港則法/航空法/消防法など
    一定以上の危険物を輸送する場合、その容器・包装・表示・積載方法等の運送基準(危険物船舶運送及び貯蔵規則)が定められています。危険物輸送の際、船長は積付検査を受ける義務があります。コンテナ輸送の場合は、荷送人は収納方法について検査を受けます。また、港則法では蔵置所に関する規制があります。引火性危険物についても航空法施行規則で規制されています。
    輸入通関後も有機溶剤・シンナー類等は消防法に基づく危険物に該当する場合があります。各自治体条令など、運送・貯蔵・取扱い規制(許可申請・資格要件等)に注意が必要です。
  7. その他の国内関連法
    1. 毒物及び劇物取締法
      内容成分によっては同法に基づき化審法以上の厳しい規制が講じられている物質もあります。同法に基づく輸入手続きについてはジェトロ貿易投資・相談Q&A「 毒物及び劇物取締法 」を参照ください。
      なお、「 毒物及び劇物指定令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」(2019年6月一部改正、同年7月施行))の詳細は厚生労働省のウェブサイトを参照ください。
    2. 労働安全衛生法
      製品によっては同法に基づく「有機溶剤中毒予防規則」が適用される場合があります。また、引火点65℃未満の液体は同法施行令別表第1危険物(引火性のもの)に該当します。
    3. 高圧ガス保安法
      スプレータイプのエアゾル製品を輸入するには、同法の適用除外とみなす旨の試験成績書が必要です。輸入者自らが所定の試験成績書を作成し、経済産業大臣が告示で定めている要件(内容量1リットル以下、内圧0.8メガパスカル以下)に合致することが確認された場合に適用除外とみなされます。
    4. その他、消費生活用製品安全法(重大製品事故報告・公表制度)や景品表示法(過大な景品付販売や消費者に誤認されるおそれのある誇大・虚偽表示等の禁止)等への対応も考えられます。

関係機関

税関手続きや税番、税率に関する問い合わせ(税関相談官室)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
日本建築仕上材工業会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
日本産業標準調査会(JIS規格)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
日本接着剤工業会(JAIA規格)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
社団法人 日本エアゾール協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

経済産業省:
輸入公表(2019年6月24日 経済産業省告示第38号)(2019年10月現在の最新公表)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(348KB)
消費者庁 表示対策課:
家庭用品品質表示法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
雑貨工業品品質表示規程;接着剤外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
厚生労働省 化学物質安全対策室:
化審法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

厚生労働省 医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室:
家庭用品の安全対策外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
有害物質を含有する家庭用品の規制基準概要外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
東京都福祉保健局:
有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律のあらまし外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
経済産業省 化学物質管理課:
化学物質の輸入通関手続きについて外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
国土交通省:
建築基準法に基づくシックハウス対策について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
危険物の海上運送等に係る安全対策(海事局検査測度課)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
総務省 消防庁危険物保安室、所轄消防署:
危険物安全対策の推進外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
経済産業省:
エアゾール製品等(スプレー缶、ライター等)の輸入の取扱いについて外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2013年10月
最終更新:2020年1月

記事番号: M-010938

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