会社を設立する際の支店と現地法人の相違、税制、査証:米国

質問

米国への進出を検討しています。会社設立の手続き、支店と現地法人の相違、税制について教えてください。

回答

米国における会社手続きは州により異なる点がありますので、設立予定の州の規定を確認する必要があります。投資への優遇措置も各州で設けられています。

I. 会社設立の手続き

米国で設立できる主な企業形態は以下のとおりです。

Corporation 株式会社
(小規模法人と区別してC Corporationと呼ぶこともある)
S Corporation 小規模法人
Limited Liability Company(LLC) 有限責任会社
Limited Partnership(LP) 合資会社
Limited Liability Partnership(LLP) 有限責任共同事業体
General Partnership 合名会社
Sole Proprietorship 個人事業主

会社設立手続きは、州によって多少異なりますが、基本的には基本定款(charter)を州政府に提出し、登録に関する税、費用を払えば会社設立が認可されます。基本定款には、会社の名称、事業目的、株式の種類(無額面株式も多い)と授権株式数、必要に応じて州内の代理人氏名と住所を記載します。発起人(Incorporator)は、18歳以上の行為能力のある自然人であればよいとしている州が多くなっています。一般的に起業の際に国内の居住者か非居住者かは問われません。また、法人を発起人として認める州もあります。

最低資本金については、規定のない州がほとんどであり、あったとしても1,000ドル程度です。会社を設立後、業種によっては自治体の事業許可をとらなければ営業開始ができない場合がありますので、会社設立前に十分調査が必要です。投資に対する優遇措置は、各州や各自治体が様々なプログラムを設けています。

II. 支店、現地法人、LLCの相違

どの会社形態を選ぶかによって、法的、財務的リスクが異なってきます。また、税制面や運営面での取り扱いも異なります。
支店、現地法人、LLCには、それぞれメリット・デメリットがありますので、税務の専門家の助言を得た上でどの会社形態を選択するかを検討することをお勧めします。

  1. 訴訟事件が生じた場合
    米国拠点地の法人が法人格を有するかどうかで扱いが異なります。支店であれば直接、日本法人が原告または被告となります。この場合、日本本社が米国法の管轄下に置かれ、裁判所の裁定を受けることになります。一方、現地法人の場合は、通常、現地法人が原告または被告になり、現地法人のみの問題として対応されます。LLCの場合も現地法人と同様、LLCが当該裁判の原告または被告となります。
  2. 課税条件
    支店に適用される法人税等の税率は、株式会社等(現地法人を含む)への税率と同じです。LLCに対する課税は、選択により、会社レベルで納税する法人課税とすることも、LLCの構成員である出資者レベルで納税するパス・スルー(pass-through)課税とすることもできます。ただし、法人課税を選択しなければ、日米の税務上不利な結果を招くことになる可能性があるので注意が必要です。例えば、構成員が米国に居住していないLLCにおいてパス・スルー課税を選択すると、日米租税条約における特典条項が適用されない可能性があります。また、日本の親会社が米国税務当局による税務調査の対象となり得ますので、注意する必要があります。
  3. 運営上の違い
    支店は、株主総会や取締役会等の組織が不要で、本社の一部として迅速な意思決定ができる利点があります。

III. 税制

米国では連邦政府、州政府、郡や市などの地方自治体が、各種の税金を賦課します。ここでは財務省(Department of the Treasury)の内国歳入庁(Internal Revenue Service:IRS)が徴収する主な税金について説明します。

  1. 連邦法人所得税
    連邦税法上の規定により算出された利益(収入から売上原価および経費額を控除した残額)に対して課税されます。2017年12月にトランプ大統領が署名した税制改革法案(Tax cuts and jobs act)により、2018年1月1日から連邦法人所得税は一律21%となりました。税制改革に伴う変更の詳細については、 内国歳入庁(IRS)のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照してください。
  2. 代替ミニマム税(Alternative Minimum Tax)
    代替ミニマム税(AMT)とは、高所得者、高所得企業にも一定の税負担を求めるという趣旨の下、高所得者の税控除、優遇措置を制限するために1969年に創設された制度でしたが、トランプ大統領の税制改革案により2018年から廃止されました。
  3. 連邦個人所得税
    総所得から控除額を差し引いた課税所得に対して、2010年は最低10%、最高37%の累進課税が適用されます。

関係機関

米国財務省内国歳入庁(IRS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

ジェトロ:
米国:税制外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2011年12月
最終更新:2018年12月

記事番号: J-010487

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