会社を設立する際の進出形態、支店と現地法人の相違、税制:米国
質問
米国への進出を検討しています。進出形態、支店と現地法人の相違、税制について教えてください。
回答
米国における会社手続きは州により異なる点がありますので、設立予定の州の規定を確認する必要があります。投資への優遇措置も各州で設けられています。
Ⅰ. 進出形態
米国への進出形態として、「駐在員事務所の設立」「支店の設立」「現地法人(会社)の 設立」の3種類が考えられます。
1. 駐在員事務所の設立(Representative Office)
米国では、「駐在員事務所」という事業体は登記上認識されていないため、州政府への登記が不要である州が多いです。駐在員事務所は事業所として認められないことから、商業活動を行えません。駐在員事務所は日米租税条約上で「恒久的措置」とみなされず、活動内容は一般的に、次の事項に限定されます。
- 日本の親会社が米国内に所有する物品または商品の管理や引き渡しのために施設を使用すること
- 日本の親会社のために商品を購入し、または情報を収集すること
- 日本の親会社のために準備または補助的な活動を行うこと
米国にて拠点を保有し活動する主体は「日本本社」です。独立の法人ではないため、駐在員事務所の活動は親会社の行為とみなされます。そのため、米国での訴訟対応の負担や巨額賠償のリスクを日本の親会社が抱える危険性があります。
2. 支店の設立(Branch)
当該州規定の書類をはじめ、登記料や手数料を添えて、「外国法人の支店」として当該州政府に登記します。設立州以外の州でも事業活動を行う場合、その州政府に外国法人として登記する必要があります。
米国にて拠点を保有し活動する主体は「日本本社」です。独立の法人ではないため、駐在員事務所の活動は親会社の行為とみなされます。そのため、米国での訴訟対応の負担や巨額賠償のリスクを日本の親会社が抱える危険性があります。
3. 現地法人(会社)の設立
米国における会社に対する規制は、州ごとに定められています。会社を設立する際、日本企業は 100%子会社を設立することが一般的です。この子会社は、米国での営利を目的として継続的に営業活動を行う法人であり、取引や訴訟の当事者となることができるように、日本の親会社から独立した法人格を取得します。
訴訟問題や税務問題を日本本社と分離することができ、訴訟などのトラブルが生じた際の責任所在が日本本社に及びません。現地法人は有限責任となります。販売拠点、製造品の権利や特許に絡む様な事業上様々なリスクが伴う場合には、現地法人化する事が重要です。
米国で設立できる主な法人形態は以下のとおりです。
| 法人形態 | 説明 |
|---|---|
| 株式会社(Corporation。小規模法人と区別してC Corporationと呼ぶ) | 定款を作成し、各州規定の必要書類を揃え、登記料や手数料とともに提出する(ファックスやオンラインでの登記が可能な州もある)。同時に、連邦政府機関の内国歳入庁(IRS)に納税者登録し、雇用主証明番号(EIN)の取得が必要。EINは会社の形態にかかわらず、すべての事業組織がIRSから取得する必要がある。 |
| 共同事業体(Partnership) | 2人以上または2つ以上の会社が合弁事業を行う時に多用される形態。各州政府は、パートナーシップ法を独自に整備しているため、規定内容は州によって異なる。税務上、法人課税されないため、事業費の損失をパートナー個人の所得と相殺できるという利点がある。 |
| 有限責任共同事業体(Limited Liability Partnership: LLP) | すべてのパートナーが「リミテッド・パートナーシップ(有限責任パートナー)」で、いかなるパートナーも無限責任を負わない形態。LLPとして登記できる事業体の種類は、法律事務所や会計事務所、何らかの専門的コンサルティング事務所に限定されるのが一般的。税務上は、パートナーシップとして扱われる。 |
| 有限責任会社(Limited Liability Company:LLC) | 基本的には、株式会社の一種。法務上は、有限責任を負い、税務上は、法人としての課税またはパートナーシップとしての課税のいずれかを選択することが認められている(株主が1人の場合、個人事業者と同じように所得申告が可能)。LLPとの違いは、LLCの登記では事業体の種類が問われないということと、パートナーシップの権利の委譲には他のパートナーの同意が必要だが、LLCでの権利(株式)の委譲が簡単であるということ。 |
| 小規模法人(S Corporation) | 形態上は株式会社だが、実際には個人の零細企業。発行株数や株主数に上限が設定されている。つまり、法務上はLLCと同様に有限責任を負い、税務上はパートナーシップとして扱われる。小規模法人の形態を認められない業種があり、金融会社や保険会社がそれに該当する。 |
| 個人事業主(Sole Proprietorship) | 個人が事業を興す時に多用される形態であり、日本では個人経営に相当し、事業主である個人と事業体が同一扱いされる。登記は非常に簡単だが、事業の債務が事業主個人の債務とみなされるため、無限責任を負う。 |
会社設立手続きは、州によって多少異なりますが、基本的には基本定款(charter)を州政府に提出し、登録に関する税、費用を払えば会社設立が認可されます。基本定款には、会社の名称、事業目的、株式の種類(無額面株式も多い)と授権株式数、必要に応じて州内の代理人氏名と住所を記載します。発起人(Incorporator)は、18歳以上の行為能力のある自然人であればよいとしている州が多くなっています。一般的に起業の際に国内の居住者か非居住者かは問われません。また、法人を発起人として認める州もあります。
最低資本金については、規定のない州がほとんどであり、あったとしても1,000ドル程度です。会社を設立後、業種によっては自治体の事業許可をとらなければ営業開始ができない場合がありますので、会社設立前に十分調査が必要です。投資に対する優遇措置は、各州や各自治体が様々なプログラムを設けています。
Ⅱ. 支店、C Corporation、LLCの相違
どの会社形態を選ぶかによって、法的、財務的リスクが異なってきます。また、税制面や運営面での取り扱いも異なります。
本章では、日本企業が米国進出時に一般的に選択することが多い形態である(1)支店(Branch)、現地法人(本章では(2)C Corporation、(3)LLC)の三形態を取り上げます。これらには、それぞれメリット・デメリットがありますので、税務の専門家の助言を得た上でどの会社形態を選択するかを検討することをお勧めします。
1. 訴訟事件が生じた場合
米国拠点地の法人が法人格を有するかどうかで扱いが異なります。支店は法人格を有さないため、支店であれば直接、日本法人が原告または被告となります。この場合、日本本社が米国法の管轄下に置かれ、裁判所の裁定を受けることになります。一方、C Corporationの場合は、通常、現地法人が原告または被告になり、現地法人のみの問題として対応されます。LLCの場合も現地法人と同様、LLCが当該裁判の原告または被告となります。
2. 課税条件
支店に適用される連邦法人所得税の税率は、C Corporationへの税率と同じ21%ですが、支店利益税が課される可能性があります。LLCに対する課税は、選択により、会社レベルで納税する法人課税とすることも、LLCの構成員である出資者レベルで納税するパス・スルー(pass-through)課税とすることもできます。ただし、法人課税を選択しなければ、日米の税務上不利な結果を招くことになる可能性があるので注意が必要です。例えば、構成員が米国に居住していないLLCにおいてパス・スルー課税を選択すると、日米租税条約における特典条項が適用されない可能性があります。また、日本の親会社が米国税務当局による税務調査の対象となり得ますので、注意する必要があります。
3. 運営上の違い
支店は、米国において独立した法人格を持たないため、株主総会や取締役会等の組織が不要で、本社の一部として迅速な意思決定ができる利点があります。
Ⅲ. 税制
米国では連邦政府、州政府、郡や市などの地方自治体が、各種の税金を賦課します。ここでは財務省(Department of the Treasury)の内国歳入庁(Internal Revenue Service:IRS)が徴収する主な税金について説明します。
1. 連邦法人所得税
連邦税法上の規定により算出された利益(収入から売上原価および経費額を控除した残額)に対して課税されます。2017年の税制改革法案(Tax cuts and jobs act)により、2018年1月1日から連邦法人所得税は一律21%となりました。税制改革に伴う変更の詳細については、 内国歳入庁(IRS)のウェブサイト
を参照してください。
2. 法人代替ミニマム税(Corporate Alternative Minimum Tax:CAMT)
2017年の税制改革で廃止された法人版AMTに代わり、2022年のインフレ削減法(Inflation Reduction Act of 2022)によって2023年より再導入された米国連邦法人税の制度です。CAMTの対象は、過去3年間の調整後財務諸表利益(Adjusted Financial Statement Income:AFSI)の平均が10億ドルを超えた大企業ですが、米国外に親会社を持ち日系企業のようなインバウンド企業の場合、全世界のグループ会社のAFSIが10億ドルを超え、かつ米国内のグループ会社のAFSIが1億ドルを超える場合にCAMTの対象となります。CAMTは、企業のAFSIに対して15%の税率をかけて計算されます。
3. 連邦個人所得税
総所得から控除額を差し引いた課税所得に対して、2025年は10~37%の累進課税が適用されます。
関係機関
参考資料・情報
調査時点:2011年12月
最終更新:2026年1月
記事番号: J-010487
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