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サレンダードB/Lと海上運送状(Sea Waybill)の違い

最近、「サレンダードB/L」という言葉をよく聞きますが、海上運送状(Sea Waybill)とどう違うのでしょうか。法的な意味と、また、利用する場合どちらのほうが便利なのかなどについて教えてください。

近年、コンテナ船の登場による船舶輸送の高速化で、貨物の荷揚港到着にB/L到着が間に合わず貨物が引き取れないという事態が発生するようになりました(いわゆる「船荷証券の危機(B/L Crisis)」)。このようなトラブルを回避し、貨物をスムーズに引き取るために登場したのが、サレンダードB/L(Surrendered B/L)および海上運送状(Sea Waybill)です。
両者の特徴・違いは以下のとおりです。


I. サレンダードB/L(Surrendered B/L)
B/Lはわが国の「商法」や商法の特別法である「国際海上物品運送法」に基づく有価証券で(商法第767条〜第776条、国際海上物品運送法第6条〜第10条)、貨物の引取りの際には証券原本の提示が必要となります。しかし、本船の輸入港への到着が早かった、または輸出者がB/Lを送付し忘れていたなど、貨物の引取りにB/Lの到着が間に合わない場合に利用されるのがこのサレンダードB/Lです。
サレンダードB/Lにする場合は、本船が出港しB/Lが発行された後、荷送人の依頼により、船積地の船会社が荷送人の白地裏書きのあるオリジナルB/L全てを回収します。船会社は回収したB/Lにその旨を証明する“SURRENDERED”の記載をします(TELEX RELEASEと記載されている場合もあります)。このように一度発行されたB/Lを荷送人が裏書して船会社に返却することを「B/Lの元地回収」といい、荷送人に返却されたB/Lのことを「サレンダードB/L」と呼んでおり、特別に「サレンダードB/L」という書式が存在するわけではありません。船会社はサレンダードB/Lであることを、輸入地の支店または代理店に連絡をします。サレンダードB/Lは元地で回収されるため、荷送人はB/Lコピーを荷受人にFAXするだけでよく、荷受人もオリジナルB/Lなしで輸入貨物の引取りができます。
ただし、サレンダード B/Lは、条約等で規定されたものではありません。このため、事故が発生した場合、判例がまちまちであり紛争解決に問題が生じやすいといえます。
[注]B/L原本の受渡しがなくても、元のB/Lが表章していた船会社の運送責任と貨物の荷受人への引渡し義務、および荷受人の貨物引渡し請求権は消えたわけではありませんので、B/Lなしであっても、荷受人は貨物を引き取ることが可能となります。


II. 海上運送状(Sea Waybill)
海上運送状も近代のコンテナ船の高速化により登場したもので、現在のスピードを重視した海上輸送取引の主流の方法となっています。
海上運送状は、貨物の受領書と運送引受条件記載書を兼ね備えたもので、また表面の記載事項欄もB/Lと同じです。ただし、B/Lと違って有価証券ではないので裏書譲渡はできませんが、貨物引取り時の提示は必要なく、海上運送状に記載された荷受人(CONSIGNEE)であることが確認できれば貨物引取りができます。これにより、荷受人は到着後すぐに貨物を引き取ることができ、B/Lと違って、未着や紛失の際の保証渡しのために、銀行保証状を手配する必要がありません。具体的な貨物の引取方法としては、本船入港前に海上運送状記載のNOTIFY PARTY宛にARRIVAL NOTICEが送付されるので、ARRIVAL NOTICEに荷受人の署名をして提出すれば、D/O(荷渡指図書)が発行されます(海貨業者など、荷受人以外が代理でD/Oを受け取る場合には、その代理人の名前も併記)。また、海上運送状は、「海上運送状に関するCMI規則」を採用しており、貨物を本船から荷揚げするまでは、荷送人(SHIPPER)が荷揚地、荷受人などの変更を指示することができます。また、信用状取引に使用される運送書類として、ICCの信用状統一規則(現行は、UCP600)でも「流通性のない海上運送状(第21条)」として、船荷証券や航空運送状とともに、規定があります。これらの利便性により、近年では十分に信用ある取引先との継続的・長期的な取引で使用が急増しています。


III. サレンダードB/Lと海上運送状との違い
サレンダードB/Lと海上運送状との違いは、海上運送状は信用状統一規則(UCP600)にその取扱いについて規定があるのに対して、サレンダードB/Lはその規定がないことです。
サレンダードB/Lは、本来B/Lが持つ荷為替手形の担保としての機能がなく、このため、L/C取引や荷為替手形による決済では、原則使用できません。サレンダードB/Lを信用状条件とする場合もありますが、この場合サレンダードB/Lに担保としての機能がないため、信用状開設銀行は別途担保提供を要求することがあります。取引銀行と事前に十分な確認が必要です。また、サレンダードB/Lはコンテナ船のトランジットタイムの短いアジア域内の航路での取引には一般的に使用されますが、航海期間の長い北米・欧州航路ではあまり一般的ではないようです。
他方、海上運送状は通常のB/Lと同じように国内法の適用が受けられると共に、国際統一ルール(CMI国際統一ルール)によって輸出入国間での標準的な運用が明確化できるため、国連はその利用を推奨しています(UNECE勧告12号)。また、海上運送状は、B/Lの本来的機能を失ったサレンダードB/Lを使用している多くのケースで利用できることから、グローバルな大手船会社の間でも取り扱いが急増しています。
サレンダードB/Lは現状として利用が続けられていますが、適用される国際的なルールがなく、紛争解決にリスクを伴いますので、デメリットをよく理解しておくことが重要です。国連や一般財団法人日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)は、リスクを低減させ、電子化を促進するためにも海上運送状の利用を推奨しています。

サレンダードB/Lについては、貿易・投資相談Q&A「 サレンダードB/Lの仕組みと留意点 」も併せてご参照ください。


関係機関
国際商工会議所日本委員会(ICC JAPAN)


関係法令
法令データ提供システム(e-Gov):
国際海上物品運送法
万国海法会 CMI (Comite Maritime International):
海上運送状に関するCMI統一規則(CMI Uniform Rules for Sea Waybills)


参考資料・情報
MOL Japan:
Waybill利用のご案内
ジェトロ:
貿易・投資相談Q&A 「 サレンダードB/Lの仕組みと留意点

一般財団法人 日本貿易関係手続簡易化協会:
海上運送書類に関する手続簡素化に向けた調査研究委員会報告書


調査時点:2012/09(2014/04一部加筆)

記事番号: C-070301

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