環境規制:EU
質問
EUの環境規制の概要について教えてください。
回答
欧州では従来から資源の有効活用や環境保護への取り組みが積極的であり、国際的な環境規制に大きな影響を与えています。EU向けに製品を輸出して市場流通販売を行う際には ユーザー保護の観点より製品の安全性や環境への対応配慮が不可欠となっています。特定の製品分野においてはCEマーク制度として対象法令への遵守が求められ、以下に説明する環境法令もCEマーク制度の対象となる法令もあります。法令が要求する事項への適合性評価を行って法令への遵守を証明する必要があります。
Ⅰ. ELV (End-of Life ehicles)指令
ELV指令は使用済み自動車(廃車)に関する欧州連合(EU)の環境規制として2000年に制定されました。この指令は、自動車および自動車部品に含まれる有害な重金属物質の含有を制限し環境負荷の低減を目的としています。さらに廃車の回収やリサイクルを促進して廃棄物の適正処理を義務付けるとともに、製造者に廃車のリサイクル費用の負担を課す仕組みを設けています。
2023年7月には欧州委員会が現行のELV指令と「自動車型式認証における再使用、再利用、再生可能性に関する指令(3R指令)」を統合して車両設計から生産、廃車までの循環性を高める新たな規則案を発表しました。この規則案には、再生プラスチックの使用義務(新車に必要なプラスチックの25%以上うち廃車由来25%)や部品の再利用促進、廃車回収の強化、事業者間の公正なコスト負担分担などが盛り込まれています。新規則案は欧州議会および理事会での細目の修正審議を経て採択後施行が開始となります。
Ⅱ. 包装、包装廃棄物規則(PPWR: Packaging and Packaging Waste Regulation)
海洋プラスチック問題の原因となる環境負荷の大きいプラスチック製品について規制する法令に関連して、包装廃棄物の削減を目的とする法令として2024年12月に採択がされ2026年8月から適用開始となります。EU域内における包装廃棄物の増加やEU各国での運用対応が異なることから現行の包装材指令を改正しての法案が策定されています。従来の「指令」から「規則」としてEU加盟国に直接効力を持つ法令としてEU各国での法令解釈の齟齬が無いよう、また運用における統一整合性を図ることで、より厳格な対応を求めるものとして包装材使用量の抑制 、再利用、リサイクルの促進、分別廃棄の促進が挙げられています。法令においては全包装材が対象となり、使用される材質また使用発生する工業・製造・流通・販売の分野にかかわらず、またオフィス・サービス、家庭用といった用途も問わないことから、製造から消費廃棄への全サイクルにおける対応が求められます。法令の遵守事項としては包装材に含まれる有害物質の規制(重金属に加えて食品包装対象にPFASも制限物質に追加)、リサイクル率への適合、分別のための表示など細目については適用開始時期も含めて具体的なガイドラインが策定されていく流れとなっています。
詳しくは、「EU循環型経済関連法の最新概要‐エコデザイン規則、修理する権利指令、包装・包装廃棄物規則案」をご覧ください。
Ⅲ. RoHS指令(Directive on the Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical equipment)
電気電子機器を対象に環境や人体に有害な化学物質が自然界に暴露されないことを目的に、懸念の大きい特定有害化学物質の使用を制限する法令として2006年に施行されました。その後、製品分野の適合拡大や規制対象物質の追加などにより2011年以降は改正RoHS指令として運用されています。当法令はCEマーク制度の対象法令として対象となる最終製品の製造者は法令の要求事項への適合性評価を実施する中で製品を構成する部品材料についても適合の遵守が求められるため、最終製品の製造者はサプライチェーンを通じて規制対象となる有害化学物質の含有の有無の検証確認を行う必要があります。同様に、部品材料を供給する製造者においても間接的に適合遵守が求められます。RoHS指令の詳細についてはジェトロ貿易投資相談Q&A「RoHS(特定有害物質使用制限)指令の概要:EU」をご参照下さい。
ジェトロ貿易投資相談Q&A「RoHS(特定有害物質使用制限)指令の概要:EU」
Ⅳ. WEEE指令(Directive on Waste Electrical and Electronic Equipment)
WEEE指令は、EUにおける電気電子機器廃棄物の回収・リサイクルに関する指令として2005年に施行された法令です。製造段階での特定有害化学物質の使用を制限するRoHS指令に対しWEEE指令は市場での製品流通、最終消費後の廃棄における不法な処理により自然環境が汚染破壊されることを防御する目的においてリサイクルシステムの構築を図るものでRoHS指令に呼応する関係にあります。
指令に基づきEU加盟国はWEEE処理システムを構築する中で製造者においては再利用、解体、回収を考慮した設計を心掛け、必要な情報を提供することや製品自体には「アンダーライン付きゴミ箱マーク」を表示することが求められています。廃棄製品の回収率目標などの運用についてはEU加盟国各国の国内法で策定されており各国で法規内容の差異があるため、輸出する際には当該国の輸入者とよく相談をして対応方法を検討されることが望まれます。WEEE指令の詳細についてはジェトロ貿易投資相談Q&A「WEEE(電気電子廃棄物)指令の概要:EU」をご参照下さい。
ジェトロ貿易投資相談Q&A「WEEE(電気電子廃棄物)指令の概要:EU」
Ⅴ.エコデザイン規則 ESPR (Eco-design for Sustainable Products Regulation)
エコデザイン規則は製品の持続可能性を高めるための規則として従来のエコデザイン指令に替わり2024年7月18日から施行されています。従来のエコデザイン指令では対象を冷暖房機器や冷蔵庫をはじめエネルギー消費の大きい家電製品などに限定をしていましたが、対象製品を大幅に拡大し、エネルギー効率に加えて耐久性、信頼性、修理可能性、リサイクル・再利用性などの持続可能性要件も追加されたため、リサイクル材の含有量、カーボンフットプリントなどの検証が求められます。対象となる品目は鉄、鉄鋼、アルミニウム、繊維製品(特に衣類と履物)、家具、タイヤ、洗剤、塗料、潤滑剤、化学品が優先品目とされています。さらに企業に対して売れ残った消費財の廃棄を禁止する規定も設け、当初は衣類や履物が対象となるものの将来的に拡大される可能性もあります。法令の要件運用の細目については段階的に実施される予定であり、今後対象製品の拡大と合わせて具体的な要件を確認する必要があります。
詳しくは、 「EU循環型経済関連法の最新概要‐エコデザイン規則、修理する権利指令、包装・包装廃棄物規則案」をご覧ください。
Ⅵ. REACH規則 (the Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)
REACH規則は、2007年6月1日に発効した「化学物質の登録・評価・認可・制限に関する規則」で、既存、新規の化学物質を対象(ただし農薬や医薬品、食品添加物などは除く)に欧州化学品庁(European Chemicals Agency: ECHA)が運用を管理しています。 REACH規則においてはEU域内の製造または輸入する当事者が、物質(Substance)ごとの年間の取り扱い総量が1トンを超える場合には欧州化学品庁への当該物質の登録が義務付けられます。登録は物質ですが、混合物(Mixture)や成形品(Article)を構成する物質についても年間1トンを超える製造もしくは輸入においてその物質の意図的放出があれば当該物質の登録が必要です。また高懸念物質(SVHC-Substance of Very Hight Concern)と呼ばれる発がん性、有毒性、残留性のリスクの高い物質が重量比で0.1%を超えて含有されている場合にも当該物質の届出が必要です。これに関連してSCIPと呼ばれるデーターベースにSVHC含有情報を登録する必要があります。サプライチェーン全体での化学物質管理が求められるため国・地域や業界、企業間ベースでの情報伝達のシステムツールの構築が進んでいます。REACH規則の詳細についてはジェトロ貿易投資相談Q&A「REACH規則と欧州既存商業化学物質リスト(EINECS):EU」をご参照下さい。
ジェトロ貿易投資相談Q&A「REACH規則と欧州既存商業化学物質リスト(EINECS):EU」
ⅦI. CBAM規則(Regulation on establishing a carbon border adjustment mechanism )
EU域内における温室効果ガス削減規制が強化される一方で、規制の緩いEU域外への製造拠点の移転やEU域外からの輸入製品の増加などが懸念されてきた中で新たな取り組みとして炭素国境調整メカニズム(CBAM)の設置が採択されました。EU域外からの輸入に対しEU域内の排出量取引に基づく炭素価格に対応した税金の支払いが義務づけられ、これにより排出コストがEU域内製品と域外輸入製品で均一公平化されることで域内産業の競争力の維持やEUの排出量目標達成が阻害されないことを目的とするものです。 対象製品はセメント、肥料、鉄鉱石、鉄鋼製品、アルミニウム、水素 電気エネルギーとしていますが今後拡大される動きです。EU排出量取引制度(EU ETS)に基づいてEU域内で生産される対象製品に関連する炭素価格に対応した税価格が、域外から輸入される対象製品に課されます。さらに、輸入者が「認定CBAM申告者」として申請を行い「CBAM証書」を購入し納付する運用となっています。但しEU域内へのCBAM対象製品の年間の輸入量が50トン未満の事業者については適用除外となります。2025年末までは移行期間として、対象製品を輸入する事業者に対しての排出量の報告義務のみが求められますが、2026年以降は排出量に応じた課税制度が開始されます。
詳しくは、「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」をご覧ください。
関係法令
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EVL指令(欧州議会・理事会指令 2000/53/EC)
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ELV指令の附属書II(適用除外リスト)改正(欧州委員会指令 2011/37/EU
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包装廃棄物指令(欧州議会・理事会指令 94/62/EC)
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改正RoHS指令(欧州議会・理事会指令 2011/65/EU)
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改正WEEE指令(欧州議会・理事会指令 2012/19/EU
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エコデザイン規則 (欧州議会・理事会規則 (EU) 2024/1781)
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REACH規則(欧州議会・理事会規則(EC)No 1907/2006)
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CBAM規則(欧州議会・理事会規則 (EU) 2023/956)
参考情報・資料
- 欧州委員会:
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EU ETS (欧州連合域内排出量取引制度)
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欧州委員会環境部会
- ジェトロ:
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EU貿易管理制度(CEマーク詳細)
(361KB)
調査時点:2015年2月
最終更新:2025年9月
記事番号: A-081201
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