原産地規則と原産地証明書:シンガポール

質問

シンガポールの原産地規則と原産地証明書について教えてください。また、どのような場合に原産地証明書が必要ですか。

回答

原産地規則とは、産品の原産地を判定するための基準です。二国間あるいは国際的な協定に基づく特恵関税の適用を受ける場合は協定で定められた原産地規則に従い、一般特恵関税制度(Generalized System of Preference: GSP) に基づく特恵関税の適用を受ける場合には一般特恵関税供与国が定める一般特恵関税適用のための原産地規則に従います。

Ⅰ. 原産地規則

一般特恵関税適用のための原産地証明書発給に係る原産地規則は一般特恵関税供与国の国内法に従います。自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の原産地規則は、それぞれの協定で規定されています。

  1. 原産地規則の基本的な基準
    基本的には以下のような基準になっていますが、付加価値の割合や関税番号変更の桁数などは、協定やGSP供与国の定めにより異なります。
    1. 完全生産品
    2. 原産材料のみから加工された産品(我が国のGSPにはこの規定はない)
    3. 非原産材料を用いて加工した産品で、下記の基準を満たすことにより、実質的な変更がなされたものとみなし、原産品とする。
      1. 付加価値基準
      2. 関税番号変更基準
      3. 加工工程基準
  2. 品目別規則等
    経済連携協定では、品目ごとに原産地規則が規定されています。付加価値基準、関税番号変更基準、加工工程基準のいずれかが規定されているもの、2種類以上の基準のいずれかを選択するもの、2種類以上の基準を同時に満たさなければならないと規定するものなどがあります。

Ⅱ. 原産地証明書

一般特恵関税による優遇税率を受ける場合は一般特恵制度原産地証明書(様式A)が、FTA/EPAによる優遇税率を受ける場合は、FTA/EPA原産地証明書が必要です。また、優遇税率の適用を受けるため以外にも、商取引上求められるもの、輸出先国の国内法により求められる原産地証明書(非特恵原産地証明書)があります。

  1. 輸入通関時点で必要となる原産地証明書
    1. 輸入国政府がその時点で国民の健康、あるいは環境衛生に影響を与えると公表している物品を輸入する場合の原産地証明書
    2. 商取引上、取引先から求められる一般の原産地証明書
    3. FTAやEPAに基づく優遇税率の適用を受けるためのFTA/EPA原産地証明書
    シンガポールでは一部のアルコール製品(ビールなど4品目)を除き、一般関税率が無税となりますので、FTA/EPA原産地証明書の対象となる品目は限定されます。
  2. 原産地証明書発給機関
    日本からシンガポールへの輸出の場合で、一般の原産地証明書及び日シンガポール協定(JSEPA)のEPA原産地証明書は各地の商工会議所から発給を受け、日ASEAN包括的経済連携協定協定(AJCEP)と地域的な包括的経済連携協定(RCEP)のEPA原産地証明書の発給機関は日本商工会議所となります。環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)は自己申告制度に基づく原産地証明を採用しており、輸出者、生産者、輸入者のいずれかが原産地証明書を作成します。シンガポールから日本に輸出する際のベトナム原産品であることを証明する原産地証明書はシンガポール税関、並びに下記の商工会議所から発給されます。
    • Singapore Chinese Chamber of Commerce and Industry
    • Singapore Indian Chamber of Commerce and Industry
    • Singapore International Chamber of Commerce
    • Singapore Malay Chamber of Commerce and Industry
    • Singapore Manufacturing Federation

FTA/EPA原産地証明書は自己申告制度のCPTPPを除きシンガポール税関からの発給となります。

Ⅲ. シンガポールが締約しているFT

  1. ASEAN物品貿易協定(ATIGA)
  2. ニュージーランド・シンガポール経済緊密化協定
  3. 日本・シンガポール新時代経済連携協定(JSEPA)
  4. EFTA・シンガポールFTA
  5. シンガポール・オーストラリアFTA
  6. 米国・シンガポール自由貿易協定
  7. ASEAN・中国FTA
  8. シンガポール・インド包括経済協力協定
  9. シンガポール・ヨルダンFTA
  10. 韓国・シンガポールFTA
  11. シンガポール・ブルネイ・ニュージーランド・チリ戦略的経済パートナーシップ協定
  12. パナマ・シンガポールFTA
  13. ASEAN・韓国FTA
  14. ASEAN・日本包括的経済連携協定(AJCEP)
  15. 中国・シンガポールFTA
  16. ペルー・シンガポールFTA
  17. ASEAN・インドFTA
  18. ASEAN・オーストラリア・ニュージーランドFTA
  19. シンガポール・コスタリカFTA
  20. GCC・シンガポールFTA
  21. 台湾・シンガポール経済パートナー協定
  22. トルコ・シンガポールFTA
  23. シンガポール・スリランカFTA
  24. 環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)
  25. 香港・ASEANFTA
  26. EU・シンガポールFTA
  27. 英国・シンガポールFTA
  28. 地域的な包括的経済連携協定(RCEP)

関係機関

参考資料・情報

シンガポール税関:
Handbook on Rules of Origin for Preferential Certificates of OriginPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(914KB)
ジェトロ:
海外のビジネス情報(シンガポール)
日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)
CPTPPについて
地域的な包括的経済連携協定(RCEP)
ASEANの締約するFTA活用マニュアル
日本商工会議所:
EPAに基づく特定原産地証明書発給事業 利用条件の確認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2017年3月
最終更新:2025年8月

記事番号: A-041146

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