化粧品の現地輸入規則および留意点:タイ向け輸出
質問
タイに化粧品を輸出します。現地での輸入規制および輸出者として留意すべき事項があれば教えてください。
回答
I. 輸入規制概要
- 適用法令
タイは、2003年9月のASEAN経済閣僚会議で化粧品統一規則に関する枠組み(ASEAN Harmonized Cosmetic Regulatory Scheme)に署名しました。それに付随するSchedule A、Schedule Bを経て、タイ国の化粧品の種別に関する規定が改定され、すべての化粧品は食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)による管理化粧品に指定されています。これにより事業主はすべての化粧品について製造、輸入、販売前に製品の内容について申告することが義務となりました。
※Schedule A:
化粧品登録認証の相互承認協定[Mutual Recognition Arrangement(MRA)of Product Registration Approvals for Cosmetics]の締結
※Schedule B:
化粧品の管理に関する統一規則、ASEAN化粧品指令(ASEAN Cosmetic Directive: ACD)の導入。(すべての加盟国が、2008年1月1日までに導入義務)
II. 輸入手続き
- 輸入時の必要書類
- 輸入通関
輸入通関に際しては、通常の必要書類およびタイ国食品医薬品局(FDA)化粧品管理部発行の輸入承認書が必要です。
- インボイス
- パッキングリスト
- B/L またはAWB
- 外国為替取引申請書
- 通関細目リスト
- 貨物受渡書(D/O)
- 保険証券
- 輸入承認書(上述)
- その他
- 原産地証明書
日本・タイ経済連携協定(JTEPA)に基づく原産地規則を満たした製品で、優遇関税率の適用を受ける場合に必要です。 - GMP(製造管理および品質管理の基準)適合証明書
タイ保健省の通達により、保健省が定める基準又は以下に規定する基準を下回らない製造基準に従って製造された化粧品に限り輸入することができるとしている。
(ア)世界保健機関(WHO)が定める医薬品等製造管理および品質管理基準(Good Manufacturing Practice(GMP)for Pharmaceutical Products)
(イ)医薬品査察協定および医薬品査察共同スキーム(Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme: PIC/S)
(ウ)オーストラリア医薬品等製造管理および品質管理基準(Australian Good Manufacturing Practice(GMP)for Pharmaceutical Products)
(エ)ISO 22716化粧品製造管理および品質管理基準(Cosmetics Good Manufacturing Practice(GMP)–GMPのためのガイドライン(Guideline for Good Manufacturing Practices)
(オ)米国化粧品工業会(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association: CTFA)化粧品製造管理および品質管理基準(CTFA Guideline for Cosmetic Good Manufacturing Practices, U.S.A)
(カ)欧州化粧品工業会(European Cosmetic, Toiletry and Perfumery Association)化粧品製造管理および品質管理基準(Cosmetic Good Manufacturing Practices, COLIPA)
(キ)ASEAN GMPのためのガイドライン(ASEAN Guideline for Cosmetic Good Manufacturing Practice)
- 原産地証明書
- 輸入通関
- 輸入申告者の事業登録と化粧品の内容申告
これらは事業実施の基礎となります。下記の必要書類をもって、輸入申告者の事業登録および化粧品の内容を申告をします。
- 事業登録(法人の場合)
- 申告者の家籍登録簿のコピーおよび身分証コピー
- 事務所と化粧品保管場所の家籍登録簿コピー
- 会社登記簿謄本、他
- 化粧品の内容申告
- 会社商号と化粧品名
- 製品の様式の別(単一、同種単一、複合、他)
- 使用されている成分
- 事業登録(法人の場合)
- 事前の手続き(通知および輸入許可の取得)
これらは具体的に輸入を実施する前に行います。輸入の際、少なくとも15日前に、食品医薬品局(FDA)化粧品管理部または各地方保健事務所へ輸入を行う旨の通知をすることが必要です。なお、すべての化粧品は2008年9月からFDAの輸入許可取得が必要となりました。
III. 販売許可の手続き(安全基準、表示・ラベル)
タイで化粧品を販売する際、販売の30日以上前にラベル承認手続きを行う必要があります。また、流通に必要なバーコードを取得するには、あらかじめタイ工業連盟(GS1 Thailand)のバーコード会員への登録をします。
- 化粧品の成分規制
化粧品法付属書に、化粧品に使用できない成分と化粧品に使用できる成分が詳細に定められています。文末URL「化粧品成分リスト」を参照ください。 - 表示、ラベル
化粧品のラベル表示事項は下記のとおりです。販売時の表示に関してはすべての化粧品にタイ語表示が義務付けられています。
- 化粧品名、商標名(他の項目よりもサイズを大きくすること)
- 化粧品の様式と種別(詳細は文末のURL「タイにおける化粧品の輸入制度」をご参照)
- 使われているすべての成分(FDAが定めたとおりの名称を使用し、量が多い順から並べる)
- 使用方法
- 輸入者名と住所、および製造者名と製造国名
- 実量
- 製造番号
- 製造年月日
- 使用期限(30ヵ月未満の化粧品の場合)
- 人体に与えるかもしれない害に関する注意書き(あれば)
- 申告受理番号
IV. 輸入関税、その他諸税
- 輸入関税
輸入化粧品に対する関税率(一般税率MFN)は、CIF価格に対し、HSコード3303、 3304 は30%、HSコード3305、3306(うち3306.20.000デンタルフロスは10%)および3307 は20%、HSコード3401は10%です(2016年4月現在)。
2009年6月1日発効の日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)に基づく原産地規則を満たせば、同協定の譲許表に定める関税が適用されます。
また2007年11月1日発効のJTEPAにより段階的減税措置適用の化粧品もあります。関税は毎年4月1日に順次引き下げられ、最終的には無税となります。協定・品目別の減免については文末URL「日本・タイ経済連携協定」を参照ください。このように複数の関税体系があるので、輸入側とよく打合せし、有利な税率の適用を受けることが肝要です。 - その他諸税
関税の他に、付加価値税7%がCIF価格、関税および各種手数料の合計額に対して、さらに香水には物品税15%が課せられます。
World Tariff(世界各国の関税率)等にて最新の税率をご確認ください。
V. その他日本からの輸出時の注意事項
その他輸出時の注意事項:輸出用化粧品製造届の提出
詳細は、文末の貿易・投資相談Q&A「化粧品を輸出する際の注意事項:日本」を参照ください。
関係機関
関係法令
- Food & Drug Administration(タイ国食品医薬品局化粧品管理部):
-
Agreement on the Asean Harmonized Cosmetic Regulatory Shceme(化粧品の管理・規制に関する統一規則の枠組み協定。アセアン化粧品指令含む)
参考資料・情報
- 外務省:
-
Agreement between Japan and The Kingdom of Thailand for an Economic Partnership(日・タイ経済連携協定)
- ジェトロ:
- 化粧品を輸出する際の注意事項:日本
- タイにおける化粧品の輸入制度(2022年3月)
- 世界各国の関税率
- Food & Drug Administration(タイ国食品医薬品局化粧品管理部):
-
化粧品成分リスト(禁止品、制限品、着色剤、防腐剤、日焼け防止剤。タイ語)
(596KB)
調査時点:2016年4月
最終更新:2020年12月
記事番号: A-030130
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