食品衛生法の審査・検査:日本

質問

食品衛生法に基づく手続きとして行われる、審査・検査の内容について教えてください。

回答

日本国内で食品を販売または営業上使用する場合、食品衛生法による規制の対象となります。輸入者は輸入食品等について、国内の製造者や販売者と同等の責任を負うことになりますので、輸入食品の衛生管理には万全を期す必要があります。

I. 輸入時の届出

  1. 販売または営業のために輸入する場合
    販売または営業上使用する目的で、食品、添加物、器具、容器包装および特定の玩具を日本に輸入しようとする者は、食品等輸入届出書(正副2部)を貨物を輸入する場所を管轄する厚生労働省検疫所食品監視課(以下「検疫所」と記す)に提出します。この届出書は、貨物到着予定日の7日前から提出することができます。食肉や食肉製品、フグの輸入に際しては輸出国政府が発給する衛生証明書の添付が必要です。届出方法については、上記の書面で届出をする方法の他に、通関情報処理センター(NACCS)を利用して届出を行う方法があります。ただしNACCSを利用して届出を行う場合は、輸入食品監視支援システム(FAINS)の設置届出を行う必要があります。なお、「営業」とは、「業として、食品もしくは添加物を採取し、製造し、輸入し、加工し、調理し、貯蔵し、運搬し、もしくは販売すること、または器具もしくは容器包装を製造し、輸入し、もしくは販売すること」を意味します(食品衛生法第4条7項)。
  2. 個人用、サンプル輸入、展示会・社内検討のために輸入する場合
    国内において販売または営業上使用することを目的としないことが明らかである場合、食品等輸入届出書の提出は不要です。 ただし、不特定多数へ無償配布する場合は輸入届出が必要です。

II. 検疫所での審査

所轄の検疫所では、食品等輸入届書に記載されている輸出国、輸入品目、製造者、製造所、原材料製造方法、添加物の使用の有無等を審査します。

  1. 主な審査項目
    1. 食品衛生法に規定される製造基準に適合しているか
    2. 添加物の使用基準は適切であるか
    3. 有毒有害物質が含まれていないか
    4. 過去衛生上の問題があった製造者・所であるか
  2. 主な確認項目

    審査の結果、食品衛生法上での問題がなく、現物検査の必要がないと判断された貨物については、食品等輸入届出書に「届出済」印が押され、輸入者に返却されます。提出書類だけで同法による規格基準等への適合性の判定が困難な場合は、必要事項の報告などが求められます。

III. 検疫所による検査

届出書類等の審査の結果、検疫所がその安全性の確認のため検査が必要と判断した場合、以下の各種検査が行われます。

  1. 命令検査
    検疫所による審査の結果、政令などで定められている検査命令対象食品が、食品衛生法などの規定に反する疑いがあるときは、厚生労働大臣は当該食品(貨物)の輸入者に受検を命令します(食品衛生法第26条)。この場合、同大臣指定の登録検査機関での検査結果が判明するまで同貨物は留置され、検査結果が法に適合するものであれば輸入者は当該貨物を輸入することが可能となります。なお、検査費用は輸入者の負担となります。
  2. 行政検査
    1. モニタリング検査
      食品衛生法対象の輸入商品の衛生上の実態把握を目的とし、検疫所が対象商品の種類ごとに輸入量、違反率、衛生上の問題が生じた場合の危険性を勘案し、年間計画に従って実施します。検査結果の判明前に貨物の輸入手続き、流通を進めることができますが、後日、法令違反が判明した場合は、回収等の必要な行政措置が講じられます。検査費用は無料ですが、開梱などの荷役費用は輸入者の負担となります。
    2. モニタリング検査以外の行政検査
      輸送途上の事故などで、衛生上の問題があると思われる場合は、食品衛生監視員が当該貨物の置かれている場所へ赴き、現物検査を行います。状況によっては、サンプルを採取して検疫所や国立医薬品食品試験所で微生物や添加物、残留農薬等の検査・分析を行います。検査結果が判明するまで、当該貨物は留置されます。検査費用は無料ですが、開梱などの荷役費用は輸入者の負担となります。
  3. 指導検査(行政指導による検査)
    食品衛生法においては、本来、輸入しようとする商品の安全性、規定に適合するか否かは輸入者が自らの責任において検査を行い、確認するべきものとされています。このような観点から検疫所では、輸入者に対して、規格基準の定められた食品等および命令検査対象品目以外の食品等については、安全性確認のための検査の指導を行っています。なお、検疫所は輸入者が下記の検査機関で実施した検査結果の受け入れを行っています。
    1. 厚生労働大臣登録検査機関
    2. 輸出国公的検査機関(輸出国政府から一定の技術水準を有するとして登録要請があった検査機関)

IV. 検査結果による措置

合格判定された貨物は、書面による届け出の場合、食品等輸入届出書に「合格」の印が押され輸入者に返却され、輸入者はこれを輸入申告書に添付して、通関手続きを行います。またFAINSによる届出の場合は、輸入者の入出力装置から届出済証が出力されます。
食品衛生法の規格・基準等に適合せずに「不合格」となった場合は、輸入者は検疫所長からの指示に従って、積み戻し、廃棄または食品以外への転用などの措置を行います。

V. 輸入手続きの簡素化・迅速化の制度

一連の輸入手続きの簡素化等のために、検疫所は以下の各制度を導入しています。詳細は文末の厚生労働省「食品等輸入届出手続きの簡素化・迅速化の制度」、「品目登録制度」をご参照ください。

  1. 事前届出制度
  2. 計画輸入制度
  3. 外国検査機関の検査結果の受入
  4. 同一食品等の継続的輸入
  5. 輸入食品等事前確認制度
  6. 品目登録制度

関係機関

関係法令

参考資料・情報

厚生労働省:
食品衛生法上の登録検査機関について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
輸出国公的検査機関一覧外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品衛生法に基づく輸入手続きについて:食品等輸入届出書フォーム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品等輸入届出手続きの簡素化・迅速化の制度外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
品目登録制度外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ:
輸入食品における品目登録制度、計画輸入制度および海外検査の活用法:日本

調査時点:2017/1

記事番号: A-010155

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