ハンガリーの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は0.5%、前年のマイナスからプラス成長に転換。
  • 貿易は輸出入ともに減少も、貿易黒字は維持。電気・電子機器や発電機器の輸入が大幅減。
  • 中国、韓国などアジアからの対内直接投資(発表ベース)が総額の8割。
  • 対日貿易は輸出入ともに減少、日本からの投資は900万ユーロの引き揚げ超過。

公開日:2025年8月1日

マクロ経済 
実質賃金の伸びで消費が拡大、プラス成長へ

2024年のハンガリー経済は、インフレが落ち着き、実質賃金も伸びたことで、実質GDP成長率は前年のマイナス0.7%から0.5%とプラスに転じた。四半期別にみると、2024年第3四半期にマイナス成長となったものの、第4四半期にはプラスに転じ、通年ではかろうじてプラス成長となった。

2024年のGDP成長率を需要項目別にみると、EU復興基金の凍結に伴う公共投資の抑制が続き、国内総固定資本形成が前年比11.9%減と成長を押し下げた。一方、雇用の安定や実質賃金の上昇によって民間最終消費支出が3.5%増となり、プラス成長の要因となった。

産業別では、農業部門が前年比10.2%減となったのをはじめ、電気自動車(EV)用バッテリーの生産減少などに伴い製造業部門が4.2%減、公共投資の抑制で建設部門も0.6%減となり、GDPの下押し要因となった。一方、サービス部門は2.1%増と好調で成長を下支えした。

表1 ハンガリーの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 4.3 △ 0.7 0.5 1.6 1.2 △ 0.8 0.2
階層レベル2の項目民間最終消費支出 6.6 △ 0.3 3.5 3.1 3.6 3.8 3.5
階層レベル2の項目政府最終消費支出 1.3 3.2 △ 3.9 △ 2.9 △ 4.9 △ 4.6 △ 3.3
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 1.3 △ 7.4 △ 11.9 △ 7.7 △ 12.6 △ 13.9 △ 13.6
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 10.7 1.7 △ 3.0 △ 4.1 △ 2.3 △ 2.3 △ 3.2
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 10.7 △ 3.4 △ 4.0 △ 8.4 △ 3.2 △ 1.0 △ 3.0

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。物価、季節、稼働日調整済み。
〔出所〕ハンガリー中央統計局 (HCSO)

2025年の実質GDP成長率の見通しについて、ハンガリー政府は2025年3月に2.5%へと下方修正した。政府は家計の可処分所得の増加を目指す施策を推進しており、雇用の安定や消費の拡大も引き続き見込まれる。年後半には新たに複数のEV関連の大型施設で生産が開始される。一方、長引く地政学的対立や貿易政策面での緊張の高まりによる世界経済の不確実性を背景に、外需減少に伴う工業生産や家計・企業投資の低迷、公共投資の減少などが懸念されている。

貿易 
輸出、輸入ともに減少も、貿易収支は黒字を維持

2024年の貿易は、輸出が前年比3.6%減の1,441億7,700万ユーロ、輸入は5.7%減の1,325億3,100万ユーロとなり、ともに減少した。貿易収支は116億4,600万ユーロで昨年に引き続き黒字となった。

輸出を品目別にみると、医薬品(構成比6.7%)が前年比19.5%増、事務用機器・コンピュータ(4.7%)が29.5%増と好調だった一方、主力の電気・電子機器(15.9%、13.6%減)や道路走行車両(16.6%、5.9%減)で落ち込みがみられ、輸出額全体を押し下げた。

輸出を国・地域別でみると、全体の4分の3を占めるEU(構成比75.9%)が前年比5.2%減だった。最大の輸出先であるドイツ(25.1%)は8.5%減で、電気・電子機器(同国向けの26.1%)の落ち込み(18.0%減)が影響した。EU域外での最大の輸出先国は米国(4.1%)で6.9%増だった。アジアで最大の輸出先となる中国(1.2%)は5.0%減で、同じく電気・電子機器(同国向けの14.3%)が不振(26.7%減)だった。

輸入を品目別でみると、医薬品(構成比5.3%)が前年比22.9%増、事務用機器・コンピュータ(3.8%)が36.2%増と高い伸びを示したが、上位品目の電気・電子機器(14.2%)が11.4%減、発電機器(3.8%)も14.7%減と振るわず、輸入額全体を押し下げた。

輸入を国・地域別でみると、EUが全体の7割(構成比71.7%)を占めて前年比2.4%減、最大の輸入元は輸出同様にドイツ(23.0%)で3.7%減だった。アジアでは、中国に次ぐ輸入元国の韓国(3.8%)が、化学材料・製品(同国全体の30.6%)の半減(50.7%減)が響き35.2%減と大きく落ち込んだ。

表2-1 ハンガリーの主要品目別輸出(FOB)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
道路走行車両 25,469 23,954 16.6 △ 5.9
電気・電子機器 26,503 22,912 15.9 △ 13.6
医薬品 8,037 9,604 6.7 19.5
発電機器 9,518 9,535 6.6 0.2
通信・録音機器 10,515 9,469 6.6 △ 10.0
事務用機器・コンピュータ 5,229 6,769 4.7 29.5
一般機器 6,249 6,061 4.2 △ 3.0
雑製品 4,000 4,136 2.9 3.4
科学・制御機器 3,778 3,438 2.4 △ 9.0
金属製品 3,284 3,162 2.2 △ 3.7
合計(その他含む) 149,627 144,177 100.0 △ 3.6

〔注〕EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ハンガリー中央統計局(HCSO)

表2-2 ハンガリーの主要品目別輸入(CIF)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
電気・電子機器 21,266 18,847 14.2 △ 11.4
道路走行車両 13,496 13,034 9.8 △ 3.4
医薬品 5,735 7,046 5.3 22.9
一般機械 7,272 6,860 5.2 △ 5.7
通信・録音機器 6,645 6,835 5.2 2.9
発電機器 5,890 5,022 3.8 △ 14.7
事務用機器・コンピュータ 3,673 5,002 3.8 36.2
石油製品 5,381 4,853 3.7 △ 9.8
雑製品 4,522 4,507 3.4 △ 0.3
金属製品 4,874 4,376 3.3 △ 10.2
合計(その他含む) 140,610 132,531 100.0 △ 5.7

〔注〕EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ハンガリー中央統計局(HCSO)

表3 ハンガリーの主要国・地域別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 115,462 109,407 75.9 △ 5.2 97,338 94,976 71.7 △ 2.4
階層レベル2の項目ユーロ圏 89,903 83,552 58.0 △ 7.1 75,445 73,846 55.7 △ 2.1
階層レベル3の項目ドイツ 39,502 36,154 25.1 △ 8.5 31,629 30,448 23.0 △ 3.7
階層レベル3の項目イタリア 8,526 7,390 5.1 △ 13.3 5,592 5,528 4.2 △ 1.1
階層レベル3の項目スロバキア 7,377 7,172 5.0 △ 2.8 7,623 7,905 6.0 3.7
階層レベル3の項目フランス 6,119 6,094 4.2 △ 0.4 4,552 4,206 3.2 △ 7.6
階層レベル3の項目オーストリア 5,930 5,681 3.9 △ 4.2 8,681 7,916 6.0 △ 8.8
階層レベル2の項目非ユーロ圏 25,559 25,856 17.9 1.2 21,893 21,130 15.9 △ 3.5
階層レベル3の項目ルーマニア 7,809 7,974 5.5 2.1 4,052 3,452 2.6 △ 14.8
階層レベル3の項目ポーランド 6,747 7,663 5.3 13.6 8,019 8,129 6.1 1.4
階層レベル3の項目チェコ 6,589 6,019 4.2 △ 8.6 7,470 7,191 5.4 △ 3.7
英国 5,194 5,321 3.7 2.4 1,351 1,385 1.0 2.6
アジア大洋州 5,961 5,402 3.7 △ 9.4 24,581 21,182 16.0 △ 13.8
階層レベル2の項目中国 1,827 1,736 1.2 △ 5.0 9,561 8,849 6.7 △ 7.4
階層レベル2の項目日本 995 865 0.6 △ 13.0 1,703 1,322 1.0 △ 22.3
階層レベル2の項目ASEAN 817 740 0.5 △ 9.4 2,663 2,654 2.0 △ 0.3
階層レベル2の項目韓国 582 478 0.3 △ 17.8 7,679 4,974 3.8 △ 35.2
北米 5,979 6,329 4.4 5.9 2,931 2,762 2.1 △ 5.8
階層レベル2の項目米国 5,561 5,945 4.1 6.9 2,836 2,663 2.0 △ 6.1
セルビア 2,760 2,665 1.8 △ 3.4 2,158 1,810 1.4 △ 16.1
ウクライナ 2,627 2,878 2.0 9.5 1,297 789 0.6 △ 39.2
ロシア 1,100 885 0.6 △ 19.6 5,738 4,885 3.7 △ 14.9
合計(その他含む) 149,627 144,177 100.0 △ 3.6 140,610 132,531 100.0 △ 5.7

〔注1〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔注2〕EU 域外貿易は通関ベース、EU 域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ハンガリー中央統計局(HCSO)

対内・対外直接投資 
低調だった対内直接投資、発表ベースではアジア勢が8割

ハンガリー国立銀行(中央銀行)によると、2024年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比10.6%減の54億1,400万ユーロだった。

国・地域別にみると、2024年の最大の投資元はオーストリアで20億4,100万ユーロとなり、これに韓国の16億1,700万ユーロが続いた。米国は前年比86.9%減の2億400万ユーロと大きく落ち込んだ。

表4 ハンガリーの国・地域別対内・対外直接投資 [国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
EU 5,913 3,625 △ 38.7 3,853 3,422 △ 11.2
階層レベル2の項目ユーロ圏 5,276 3,341 △ 36.7 3,442 2,939 △ 14.6
階層レベル3の項目オーストリア 3,044 2,041 △ 33.0 30 △ 2
階層レベル3の項目オランダ △ 2,063 1,358 △ 465 224
階層レベル3の項目ベルギー 782 550 △ 29.6 7 110 1,536.5
階層レベル3の項目イタリア 183 456 149.8 214 161 △ 24.5
階層レベル3の項目スロバキア 13 75 471.2 617 846 37.1
階層レベル3の項目フィンランド 13 32 145.7 C 0
階層レベル3の項目ラトビア 3 6 75.8 C △ 3
階層レベル3の項目リトアニア △ 0 4 8 26 210.7
階層レベル2の項目非ユーロ圏 637 284 △ 55.4 412 483 17.4
階層レベル3の項目デンマーク 292 315 8.1 △ 0 2
階層レベル3の項目スウェーデン △ 24 28 △ 4 △ 6
階層レベル3の項目ブルガリア 12 △ 2 356 311 △ 12.4
階層レベル3の項目チェコ 206 △ 8 △ 182 298
スイス △ 1,195 828 7 61 771.9
英国 △ 255 466 47 45 △ 4.2
ロシア 110 195 77.1 263 △ 8
ノルウェー 51 114 123.3 35 44 26.9
米国 1,559 204 △ 86.9 △ 335 △ 130
韓国 △ 695 1,617 2 △ 4
中国 863 753 △ 12.8 △ 6 △ 17
香港 127 226 78.3 32 10 △ 69.9
台湾 5 24 351.1 C 5
日本 118 △ 9 0 24 7,404.8
合計(その他含む) 6,056 5,414 △ 10.6 4,635 4,600 △ 0.8

〔注〕「-」は負の値に関わる伸び率。「C」は該当企業が3社未満のための非公表。
〔出所〕ハンガリー国立銀行

業種別にみると、製造業では自動車・輸送用機器が前年比31.8%増の15億3,900万ユーロと好調だった。一方、機械は5,600万ユーロの引き揚げ超過となった。サービス業では前年同様、小売り・卸売り・車両修繕への投資が拡大し16億6,600万ユーロ(92.9%増)だった。賃金上昇が家計消費の回復と内需拡大につながったためと考えられる。専門・科学・技術は前年に続き23億1,600万ユーロの引き揚げ超過となった。

表5 ハンガリーの業種別対内・対外直接投資 [国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 伸び率 金額 金額 伸び率
製造業 6,036 5,201 △ 13.8 655 954 45.7
階層レベル2の項目自動車・輸送用機器 1,168 1,539 31.8 8 △ 122
階層レベル2の項目電気機器 842 651 △ 22.8 C 7
階層レベル2の項目化学・化学製品 △ 155 553 2 64 3,303.9
階層レベル2の項目医薬品 332 467 40.6 200 479 140.1
階層レベル2の項目食品・飲料・たばこ 378 455 20.3 52 △ 26
階層レベル2の項目木材・製紙 163 449 176.5 38 44 17.3
階層レベル2の項目ゴム・プラスチック 252 433 71.8 29 △ 22
階層レベル2の項目その他の非金属鉱物製品 41 292 603.7 112 16 △ 85.7
階層レベル2の項目電子・光学機器、コンピュータ △ 511 153 △ 659 △ 298
階層レベル2の項目基礎金属・金属加工製品 94 130 37.4 C △ 30
階層レベル2の項目繊維・衣料品・皮革製品 △ 37 39 △ 7 △ 2
階層レベル2の項目コークス・石油 △ 37 △ 15 888 979 10.2
階層レベル2の項目機械 166 △ 56 △ 54 △ 85
鉱業、採石 △ 46 466 △ 162 △ 26
建設 215 91 △ 57.8 47 △ 6
不動産取引 58 56 △ 4.3 989 1,034 4.5
農業、狩猟、林業 20 41 104.2 C 2
上水道、下水道、廃棄物管理 12 18 55.5 2 5 210.6
サービス業 △ 183 △ 283 3,754 2,608 △ 30.5
階層レベル2の項目小売り・卸売り・車両修繕 864 1,666 92.9 368 903 145.3
階層レベル2の項目運輸・倉庫 249 △ 629 173 204 18.3
階層レベル2の項目宿泊・飲食 67 38 △ 44.0 7 32 344.6
階層レベル2の項目情報通信 △ 1,380 △ 170 △ 217 △ 161
階層レベル2の項目金融・保険 2,235 891 △ 60.1 3,019 1,598 △ 47.1
階層レベル2の項目不動産 △ 406 87 △ 43 △ 51
階層レベル2の項目専門・科学・技術 △ 2,023 △ 2,316 106 327 208.2
電気・ガス・冷暖房供給 △ 56 △ 190 △ 651 29
合計(その他含む) 6,056 5,414 △ 10.6 4,635 4,600 △ 0.8

〔注〕「-」は負の値に関わる伸び率。「C」は該当企業が3社未満のための非公表。
〔出所〕ハンガリー国立銀行

外国からの投資誘致を所管するハンガリー投資促進庁(HIPA)によると、2024年に発表された対内直接投資額は102億9,600万ユーロで、2年連続で100億ユーロを超えた(2023年は約130億ユーロ)。直接投資件数は77件だった。金額ベースで最大の投資国は中国で52億8,400万ユーロ、次いで韓国の26億4,000万ユーロで、アジアからの投資は82億5,700万ユーロとなり全体の約8割を占めた。また、産業分野別では、自動車産業が40億9,000万ユーロと最大で、以下、電子機器産業が39億8,000万ユーロ、食品産業が8億700万ユーロと続く。

2024年の主な対内直接投資案件をみると、ドイツのシーメンス・エナジー(Siemens Energy)は5月、ガスタービンバーナー製造工場、トレーニングセンター、1.5メガワット(MW)のソーラーパーク開設などの大規模投資を完了した。ハンガリーでターボチャージャーを生産する米国のボルグワーナー(Borg Warner)は3月に工場を拡張し、ハイブリッド車やEV向けパワートレイン新製品の生産体制を整えた。中国のファイバーホーム(Fiber Home)は5月、同社として欧州初の工場を建設し、年間300万キロメートルの光ファイバーケーブルの生産を開始すると発表した。ドイツのヘンケル(Henkel)は2025年1月、既設の接着剤工場への新しい押出機技術の生産ライン導入により、生産能力を倍増した。

表6-1 ハンガリーの主な対内直接投資案件(2024年~2025年1月)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
機械 シーメンス・エナジー
(Siemens Energy)
ドイツ 2024年 5月 6,000万ユーロ シーメンス・エナジーはブダペストで、(1)ガスタービンバーナー製造の新工場、(2)トレーニングセンター、(3)1.5メガワット(MW)のソーラーパークを開設するという、3つのプロジェクトの大規模投資を完了した。
自動車部品 ボルグワーナー
(Borg Warner)
米国 2024年 3月 5,960万ユーロ 米国の自動車部品サプライヤーであるボルグワーナーは、e-モビリティ分野への戦略的シフトを目的として5,960万ユーロを投じた。3月にハンガリーの既設工場を拡張し、現在のターボチャージャー生産からハイブリッド車や電気自動車向けパワートレイン新製品の生産体制を整えた。
化学 ヘンケル
(Henkel)
ドイツ 2025年 1月 3,000万ユーロ ドイツのヘンケルは、既設の接着剤工場に、家具や食品産業で使用される熱可塑性接着剤用の革新的な押出機技術の新生産ラインを設置し、生産能力を倍増した。
電子部品 ファイバーホーム
(FiberHome)
中国 2024年 5月 2,.000万ユーロ 中国のファイバーホームは5月、同社初の欧州工場をハンガリー北西部キスバーに建設し、年間300万キロメートルの光ファイバーケーブルを生産すると発表した。
自動車部品 ゼット・エフ・シャシー
(ZF Chassis)
ドイツ 2024年10月 1,460万ユーロ ドイツの自動車部品大手ゼット・エフ・シャシーは10月、ハンガリーの既設工場に、電気自動車用部品モジュールの完全自動化生産ラインを導入し、450人の新規雇用を創出した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成。

表6-2 ハンガリーの主な対内直接投資案件(2024年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
医療 オミクソン
(Omixon)
ヴェルフェン
(Werfen)
スペイン 2024年10月 約2,500万米ドル スペインの医療診断機器・ソリューション会社ヴェルフェンは、ハンガリーのバイオテック企業オミクソンを買収した。オミクソンは、臓器移植診断における次世代シークエンス技術の開発と商業化に注力している。買収により、ヴェルフェンは臓器移植診断ソリューションのポートフォリオを拡大する。
金融 マジャール・セテレム(Magyar Cetelem) コフィディス
(Cofidis)
フランス 2024年10月 非公表 フランスの消費者金融会社コフィディスは、BNPパリバ・パーソナルファイナンスグループのハンガリー子会社であるマジャール・セテレム銀行を買収した。買収により、銀行ライセンスの取得とともに商業パートナーのネットワークを拡大する。
物流 iロジスティック
(iLogistic)
GLS オランダ 2024年7月 非公表 オランダの小包物流サービス会社GLSは、協力パートナーであったハンガリーのeコマース物流専門会社iロジスティックを買収した。GLSは、ハンガリー国内外の顧客に対するピッキング、梱包、在庫管理、返品処理などの包括的フルフィルメントサービスを提供することで、欧州事業拡大戦略を強化し、より多様な物流プロバイダーを目指す。
化学 ENEOS MOL Synthetic Rubber(EMSR) ENEOS 日本 2024年11月 非公表 ハンガリーのエネルギー大手MOLは、ENEOSホールディングス子会社のENEOS Materialsとの合弁会社である在ハンガリーの合成ゴムメーカーENEOS MOL Synthetic Rubber(EMSR)の49%の持分を売却する契約を締結した。同取引が完了すると、ENEOSがEMSRの全株式を保有する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成。

2024年の対外直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比0.8%減の46億ユーロだった。

表7-1 ハンガリーの主な対外直接投資案件(2024年)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
医療機器 77 エレクトロニカ
(77 Elektronika)
中国 2024年10月 200万米ドル 医療機器メーカーの77 エレクトロニカは、上海近郊に中国初の製造拠点を設立した。中国市場向けの自動尿検査装置の製造を開始し、初年度に300台、数年後に1,000台への増産を目指す。
航空機 マグナス・エアクラフト
(Magnus Aircraft)
中国 2024年11月 非公表 小型軽飛行機メーカーのマグナス・エアクラフトは同社初の海外生産拠点として、中国での組立生産を計画し、第1ステップとして、中国江蘇省の無錫市に1,500平方メートルのショールームをオープンした。次ステップとして、中国での組立および部材のカーボンファイバー複合材料製造の拠点構築に、1億7,500万ユーロ規模の投資を計画している。
医療機器 メドレス・インターナショナル
(MedRes International)
米国 2024年5月 非公表 ハンガリーの医療機器開発会社であるメドレスは、米国カリフォルニア州に医療技術開発センターを新設した。同センターで、心臓血管治療や低侵襲手術向けの医療機器の設計・試作・開発を行い、米国とハンガリーの研究開発チームが連携し世界最先端の医療サービスを提供する。
情報通信技術 ライトウエア・ビジュアル・エンジニアリング
(Lightware Visual Engineering)
ドイツ、シンガポール、スイス、スペイン、ポーランド 2024年6月、9月 非公表 ハンガリーのプロフェッショナルオーディオ・ビジュアル(AV)技術企業であるライトウエア・ビジュアル・エンジニアリングは、ドイツ・デュッセルドルフにトレーニングセンターを新設した。同センターでは、パートナーや顧客が最新のオーディオ・ビジュアル技術について実践的な研修や製品の紹介を受けることができる。2024年9月にシンガポールにもトレーニングセンター、さらに同年末までにスイス、スペイン、ポーランドに体験型ショールームを開設した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成。

表7-2 ハンガリーの主な対外直接投資案件(2024年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
ゲデオン・リヒター
(Gedeon Richter)
製薬 エステトラ(Estetra)、ニュラリス(Neuralis) ベルギー 2024 年 6 月 1億7,500万ユーロ ハンガリーを拠点とする中・東欧の大手製薬会社ゲデオン・リヒターは、女性の健康に特化したベルギーのバイオテック企業ミスラ・ファーマシューティカルズ(Mithra Pharmaceuticals)から、医薬品開発会社のエステトラとニュラリスの全株式、およびミスラが保有する新しいホルモン(E4)に関する資産・ライセンスを取得した。この取引によってゲデオン・リヒターは、女性の健康分野での国際的な事業展開と研究開発体制を強化する。
ゲデオン・リヒター
(Gedeon Richter)
製薬 フォルミコン
(Formycon)
ドイツ 2024 年 1 月 8,284万ユーロ ハンガリーを拠点とする中・東欧の大手製薬会社ゲデオン・リヒターは戦略的投資として、ドイツの医薬品開発会社フォルミコンの株式9.08%に相当する新株を取得した。両社は市場拡大するバイオシミラー分野での専門性とシナジーを活かし、患者の生物学的製剤へのアクセス拡大を図る。
OTPグループ 金融 SKBバンカ、ノヴァKBM
(SKB Banka, Nova KBM)
スロベニア 2024 年 8 月 非公表 ハンガリーのOTP銀行は、スロベニアの子会社SKBバンカとノヴァKBMの合併を完了した。合併新会社(ブランド名:OTP Banka)は、スロベニアにおける融資と預金のマーケット・リーダーとなり、OTPグループの非ハンガリー企業としてはブルガリア子会社に次いで2番目に大きな企業となった。
MVMグループ エネルギー 南部ガス回廊 CJSC
(Southern Gas Corridor CJSC)
アゼルバイジャン 2024 年 8 月 非公表 ハンガリー国営の総合エネルギー企業MVMグループは、世界最大級のコンデンセート・ガス田であるアゼルバイジャンのシャーデニズ海上ガス田の5%の権益と、アゼルバイジャン・ガス・サプライ・カンパニーの4%の株式を南部ガス回廊CJSCから取得した。MVMグループは、天然ガス供給網の多角化を進め、EUのエネルギー資源調達先の多角化方針にも合致する。
オートワリス
(AutoWallis)
自動車小売 ストラトス・オート(Stratos Auto) チェコ 2024 年 7月 非公表 ハンガリーの自動車大手ディーラー兼モビリティ・サービス・プロバイダーのオートワリスは、チェコのストラトス・オートからBMWディーラー3店舗を買収し、チェコの自動車小売市場に参入した。この買収により、オートワリスはチェコにおけるBMW車販売台数の10%(プレミアムカー販売台数の約4%に相当)を獲得した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成。

対日関係 
対日貿易は輸出入ともに減少、日本からの投資は引き揚げ超過に

2024年の対日輸出は、前年比13.0%減の8億6,500万ユーロ、対日輸入は22.3%減の13億2,200万ユーロと、いずれも前年水準を下回った。EVの販売不振など、欧州の景気低迷に伴う需要の鈍化などが要因として考えられる。

輸出では、通信・録音機器(構成比2.4%)が前年比76.7%減の大幅減となったほか、道路走行車両(42.7%)が8.7%減、電気・電子機器(5.5%)が33.6%減と、前年の上位品目が低調だった。

輸入では、道路走行車両(構成比24.3%)が前年比22.1%減となったほか、特定産業用機械(2.7%)が70.0%減、発電機器(12.2%)が33.7%減と落ち込んだ。

表8-1 ハンガリーの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
道路走行車両 405 370 42.7 △ 8.7
事務機器・コンピュータ 79 135 15.6 71.5
医薬品 66 52 6.0 △ 21.6
電気・電子機器 72 48 5.5 △ 33.6
有機化学品 50 41 4.8 △ 17.1
科学・制御機器 35 36 4.2 2.9
非金属鉱物製品 15 26 3.0 71.5
一般機械 35 24 2.8 △ 30.8
通信・録音機器 90 21 2.4 △ 76.7
砂糖・加糖調製品および蜜 18 14 1.6 △ 25.2
合計(その他含む) 995 865 100.0 △ 13.0

〔出所〕ハンガリー中央統計局 (HCSO)

表8-2 ハンガリーの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
電気・電子機器 361 367 27.7 1.6
道路走行車両 412 321 24.3 △ 22.1
発電機器 243 161 12.2 △ 33.7
一般機械 196 149 11.3 △ 23.9
通信・録音機器 57 44 3.3 △ 22.8
科学・制御機器 47 43 3.3 △ 8.5
特定産業用機械 120 36 2.7 △ 70.0
金属製品 40 32 2.4 △ 20.3
非金属鉱物製品 20 23 1.7 11.9
プラスチック 31 21 1.6 △ 31.5
合計(その他含む) 1,703 1,322 100.0 △ 22.3

〔出所〕ハンガリー中央統計局 (HCSO)

2024年の日本からの直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は、900万ユーロの引き揚げ超過だった。主な案件としては、11月に電子部品メーカーのシークスハンガリーが2025年3月末までに生産活動を終了し、全ての製造品目をスロバキアの生産拠点に集約することが発表された。一方、6月にTDKハンガリーコンポーネンツが260億フォリント(約6,500万ユーロ)を投じて、自動車用電子部品の新たな生産棟を完成させた。また、10月に音響メーカーのフォスター電機がハンガリー中西部のフェイェール県モールに欧州初となる製造拠点を開所した。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 4.3 △ 0.7 0.5
1人当たりGDP (米ドル) 18,556 22,302 23,272
消費者物価上昇率 (%) 14.5 17.6 3.7
失業率 (%) 3.6 4.1 4.5
貿易収支 (100万ユーロ) △ 7,977 9,099 11,470
経常収支 (100万ユーロ) △ 14,366 624 4,593
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 35,713 39,453 37,194
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ) 109,687 125,489 128,116
為替レート (1米ドルにつき、ハンガリー・フォリント、期中平均) 372.60 353.09 365.69


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:ハンガリー中央統計局 (HCSO)
貿易収支(ネット)、経常収支(ネット)、対外債務残高(グロス):ハンガリー国立銀行
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF