EUの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のGDP成長率は1.5%と安定成長を維持、2026年は1.1%と減速の予測。
  • 貿易額は輸出入ともに前年より微増、貿易黒字額は縮小。
  • 対内直接投資は3割減、データセンター投資が活況。
  • 対日貿易黒字は縮小、乗用車や鉄鋼の輸入が減少。
  • 日本とEU間の直接投資は、対内外ともに非製造業が下押し。

公開日:2026年9月10日

マクロ経済

2025年の実質GDP成長率は1.5%と安定した成長を維持

2025年のEUの実質GDP成長率は1.5%、そのうちユーロ圏では1.4%だった。前年に比べ、それぞれ0.4ポイント、0.5ポイント増加した。2025年のEU経済は、堅調な労働市場やインフレ率の低下、個人消費が景気を底支えし、安定した成長を維持した。

EUの実質GDP成長率を需要項目別に見ると、全体の52.6%を占める民間最終消費支出が前年比1.7%増加、国内総固定資本形成(全体の21.3%)が2.8%増加した。寄与度はそれぞれ0.9%、0.6%だった。消費者物価上昇率は2.5%と低水準で安定し、失業率も6.0%と歴史的な低水準を維持した。財・サービスの輸出(全体の49.6%)は2.3%増加したが(寄与度1.2%)、輸入が3.7%増(寄与度マイナス1.7%)となって輸出を上回り、純輸出は成長率を0.6ポイント押し下げた。2025年第1四半期には、輸出が前期比2.2%、輸入が2.0%増加し、第2四半期には輸出入ともに鈍化したが、第3四半期にはそれぞれ0.9%、1.6%増加した。

欧州委員会は2025年5月に発表した春季経済予測で、米国による一連の関税引き上げの影響や貿易政策の不確実性により、2025年の実質GDP成長率を1.1%と下方修正していた。また同年11月に発表した秋季経済予測では1.4%成長としていたが、EU経済は予測を上回る成長を遂げた。当初は関税引き上げを見越した輸出の急増が牽引したが、設備投資も堅調だった。輸入増加の背景として、個人消費や内需の拡大に加え、本来は米国向けだった第三国からの輸入品が米国の関税措置によってEU市場に振り向けられた可能性が指摘されている。

EU加盟国の実質GDP成長率を比較すると、アイルランド(12.3%)、マルタ(4.0%)、キプロス(3.8%)、ポーランド(3.6%)など6カ国で3%を超えた。全加盟国でプラス成長となり、エストニア(0.6%)、オーストリア(0.6%)、ドイツ(0.2%)は、2年連続のマイナス成長から脱した。

2026年の実質GDP成長率の予測は1.1%に下方修正

今後の経済見通しについて、欧州委員会は中東情勢の影響を受け、2026年5月の春季経済予測で2026年の実質GDP成長率をEUで1.1%、ユーロ圏で0.9%と予測した。前回(2025年11月)の予測からそれぞれ0.3ポイント下方修正した(2026年6月3日付ビジネス短信参照)。EUはエネルギー供給を輸入に依存するが、ロシアによるウクライナ侵攻後に進めた供給元の多角化、脱炭素化、エネルギー消費量の削減により、ショックを吸収する力は高まっており、成長は減速するものの持続するとした。2026年のEU加盟国別の実質GDP成長率は、前年の成長率が10%を超えたアイルランド(マイナス1.2%)を除き、プラス成長を予測した。2026年の消費者物価上昇率は、前回予測(2025年11月)では2.1%とし、欧州中央銀行(ECB)の目標値の2%に近づくとしていたが、2026年春季予測では3.1%と上昇し、2027年には2.4%に低下する見通しとした。エネルギー価格の上昇率は、2026年末まで前年同期比10%を上回るが、2027年初頭に低下し、第2四半期以降はマイナスに転じると予測した。

失業率は2027年まで6.0%の低水準で安定し、雇用も2026年に前年比0.3%、2027年に0.4%の緩やかな増加を見込む。インフレの悪化により、個人消費の伸び率は2026年に1.1%(前回予測から0.4ポイント下方修正)と予測した。名目賃金は2026年と2027年に3.5%の増加を見込むが、実質賃金は物価上昇が購買力を圧迫し2026年には鈍化するとした。ECBは2025年7月から主要政策金利を据え置いていたが、2026年6月、2年9か月ぶりに引き上げを決定した(2026年6月12日付ビジネス短信参照)。

表1 EUの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前期比、季節調整値。 〔注2〕民間最終消費支出には対家計非営利団体(NPISH)消費支出も含む。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
EU 実質GDP成長率 0.4 1.1 1.5 0.5 0.3 0.4 0.2
民間最終消費支出 0.3 1.6 1.7 0.3 0.4 0.3 0.5
政府最終消費支出 1.6 2.4 1.7 △0.3 0.6 0.7 0.6
国内総固定資本形成 2.6 △2.2 2.8 2.2 △1.1 1.3 0.7
財・サービスの輸出 △0.4 0.8 2.3 2.2 △0.1 0.9 △0.3
財・サービスの輸入 △1.8 0.4 3.7 2.0 0.3 1.6 △0.1
ユーロ圏 実質GDP成長率 0.4 0.9 1.4 0.6 0.1 0.3 0.2
民間最終消費支出 0.5 1.4 1.5 0.3 0.3 0.2 0.4
政府最終消費支出 1.5 2.3 1.6 △0.2 0.5 0.7 0.5
国内総固定資本形成 2.4 △2.5 2.9 2.7 △1.4 1.2 0.7
財・サービスの輸出 △1.2 0.5 2.1 2.4 △0.4 0.8 △0.4
財・サービスの輸入 △2.0 △0.1 3.6 2.3 0.0 1.7 △0.2

〔注〕四半期の伸び率は前期比、季節調整値。
〔注2〕民間最終消費支出には対家計非営利団体(NPISH)消費支出も含む。

〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)

貿易

貿易額は輸出入ともに前年より微増、黒字は12.0%減

ユーロスタット(2026年6月1日時点)によると、2025年のEUの貿易は輸出が前年比2.3%増の6兆7,860億300万ユーロ、輸入が2.8%増の6兆5,672億5,700万ユーロだった。貿易収支は2,187億4,600万ユーロの黒字だったが、黒字額は前年から12.0%減少した。EUの域内貿易と域外貿易の構成比は輸出入ともに域内が6割を占めた。

EUの2025年の域内貿易は、輸出が前年比2.6%増の4兆1,428億3,400万ユーロ、輸入が3.0%増の4兆502億300万ユーロとなり、輸出入ともに3年ぶりに増加に転じた。ユーロ圏内の貿易では、輸出が2.0%増、輸入が2.3%増となった。域内貿易を主要品目別に見ると、前年に引き続き、輸出入ともに機械・輸送機器類が構成比35.4%を占めて最大品目となり、同品目の輸出は3.2%増、輸入は2.8%増となった。その中でも、輸出入ともに構成比約6%を占める乗用車は輸出が4.0%増、輸入が3.9%増となった。雑製品、化学工業製品も輸出入ともに増加した。後者では特に構成比約7%を占める医薬品が大幅に伸び、輸出は8.7%増、輸入は8.5%増だった。鉱物性燃料・潤滑油などは輸出入ともに減少し、輸出は8.4%減、輸入は6.2%減だった。うち石油・石油製品は、輸出入ともに12%減少した。

表2 EUの主要品目別輸出入(域内貿易)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注1〕各企業のインボイス報告などに基づく。 〔注2〕輸出がFOB、輸入がCIFのため、輸出入金額が一致しない。
項目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器類 1,419,526 1,465,423 35.4 3.2 1,394,237 1,433,435 35.4 2.8
雑製品 1,067,373 1,086,266 26.2 1.8 1,002,886 1,030,405 25.4 2.7
化学工業製品 681,886 698,650 16.9 2.5 685,202 702,949 17.4 2.6
食料品、飲料およびたばこ 455,924 490,422 11.8 7.6 448,068 484,098 12.0 8.0
鉱物性燃料・潤滑油など 252,399 231,287 5.6 △ 8.4 241,084 226,057 5.6 △ 6.2
原料別半製品 135,171 138,623 3.3 2.6 139,280 143,365 3.5 2.9
合計(その他含む) 4,036,000 4,142,834 100.0 2.6 3,931,215 4,050,203 100.0 3.0

〔注1〕各企業のインボイス報告などに基づく。
〔注2〕輸出がFOB、輸入がCIFのため、輸出入金額が一致しない。

〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)

EUの2025年の域外貿易は、輸出が前年比1.9%増の2兆6,431億6,800万ユーロ、輸入が2.6%増の2兆5,170億5,400万ユーロだった。貿易収支は1,261億1,400万ユーロの黒字となり、黒字額は前年から10.1%減少した。

域外貿易を品目別に見ると、輸出では最大品目の機械・輸送機器類(構成比38.9%)が前年比1.1%増の1兆279億500万ユーロとなった。そのうち、乗用車(5.9%)が6.6%減となったが、原動機(3.9%)が9.9%増加し、全体では微増となった。2位の化学工業製品(22.9%)は約6割を占める医薬品(13.8%)が15.9%増加し、7.4%増となった。3位の雑製品(21.0%)は計測機器および制御機器(3.4%)が3.2%増、衣類(1.5%)が2.1%減などとなり、全体では0.6%減となった。11.8%減と減少率が最大となった鉱物性燃料・潤滑油など(4.4%)は、大半を占めた石油・石油製品(3.9%)が13.7%減を記録したことが主因だった。原料別半製品(2.6%)は、鉄鋼(1.3%)が10.2%減となる一方、非鉄金属(1.5%)が10.8%増となり、全体では微増となった。

域外からの輸入では、最大品目の機械・輸送機器類(構成比33.9%)は前年比6.0%増加した。うち、原動機(3.3%)が11.0%増加した一方、乗用車(3.0%)が2.4%減少した。続く雑製品(23.6%)、化学工業製品(13.8%)はそれぞれ3.1%増、7.2%増となった。後者では特に医薬品(5.8%)が21.0%増となり、伸びが顕著だった。鉱物性燃料・潤滑油など(16.5%)は前年の14.6%減に引き続き11.7%減となり、うち石油・石油製品(11.2%)は17.9%減、前年に31.3%減となった天然・製造ガス(4.2%)は6.2%増となった。食料品、飲料およびたばこ(7.0%)は11.2%増となり、特にコーヒー、茶、ココア、香辛料およびその製品(1.7%)が36.2%増と前年に続き大幅に増加した。

表3 EUの主要品目別輸出入(域外貿易)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注〕通関ベース
項目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器類 1,016,924 1,027,905 38.9 1.1 804,900 853,357 33.9 6.0
化学工業製品 562,419 604,124 22.9 7.4 323,977 347,150 13.8 7.2
雑製品 558,256 555,159 21.0 △ 0.6 575,028 593,128 23.6 3.1
食料品、飲料およびたばこ 209,771 214,357 8.1 2.2 157,294 174,967 7.0 11.2
鉱物性燃料・潤滑油など 131,498 115,929 4.4 △ 11.8 470,068 414,874 16.5 △ 11.7
原料別半製品 68,531 68,997 2.6 0.7 96,339 97,583 3.9 1.3
合計(その他含む) 2,594,397 2,643,168 100.0 1.9 2,454,143 2,517,054 100.0 2.6

〔注〕通関ベース

〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)

域外貿易を国・地域別に見ると、輸出ではEU域外で最大の相手国の米国(構成比21.0%)が前年比3.5%増と2年連続で増加し、5,546億1,200万ユーロとなった。米国向けの輸出額で最大品目の化学工業製品(37.1%)は20.0%増と大幅に伸びた。これは医薬品(28.9%)が32.5%増となったことが要因である。2位の機械・輸送機器類(36.0%)は、道路走行車両(7.5%)が20.0%減少したことが影響し、4.4%減となった。米国に次ぐ輸出相手国である英国(13.1%)は最大品目の機械・輸送機器類(39.3%)が横ばい、医薬品(6.0%)が10.6%増、石油・石油製品(3.4%)が6.4%減などとなり、英国向け輸出全体では0.5%増とほぼ横ばいだった。3位のスイス(8.3%)は13.4%増加した。

輸入では最大相手国の中国(構成比22.2%)が前年比6.5%増の5,599億9,000万ユーロとなった。最大品目の機械・輸送機器類(54.1%)は道路走行車両(5.2%)、バッテリー・蓄電池(4.9%)がそれぞれ10.5%増、27.8%増となり、品目全体で5.8%増加した。化学工業製品(9.8%)も有機化学品(4.7%)の伸び(9.3%増)などを受け、23.9%増と大幅に伸びた。次いで米国(14.2%)は、鉱物性燃料・潤滑油など(19.9%)、石油・石油製品(11.2%)がそれぞれ8.0%減、26.0%減となったが、医薬品(16.9%)が29.4%増となり、全体では5.4%増加した。3位の英国(6.3%)は、鉱物性燃料・潤滑油など(13.8%)、石油・石油製品(10.4%)、道路走行車両(9.0%)がそれぞれ20.5%減、21.3%減、13.8%減となり、全体では3.3%減少した。

2025年の米国向け輸出を四半期別に見ると、米国の関税措置を見越した駆け込み需要により、第1四半期に前年同期比34.4%増(前期比25.2%増)と大幅に増加した。第2四半期以降は減少に転じ、第4四半期には14.9%減(10.7%減)となった。中国との貿易では輸出が6.6%減、輸入が6.5%増、貿易赤字は3,605億5,800万ユーロとなり、3年連続で貿易赤字が拡大した。特に機械・輸送機器類の貿易赤字が約6割を占めた。

表4 EUの主要国・地域別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注1〕 EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。 〔注2〕 EU貿易統計の金額は、輸出がFOB、輸入がCIF。そのため域内貿易で輸出入金額が一致しない。 〔注3〕 EU加盟候補国はトルコ、セルビア、モンテネグロ、北マケドニア、アルバニア、ウクライナ、モルドバ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ジョージアの9カ国の合計値。 〔注4〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。 〔注5〕南米南部共同市場は、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイの4カ国の合計値。
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU域内 4,036,000 4,142,834 61.0 2.6 3,931,215 4,050,203 61.7 3.0
ユーロ圏内 2,575,671 2,627,818 38.7 2.0 2,511,236 2,569,376 39.1 2.3
EU域外 2,594,397 2,643,168 39.0 1.9 2,454,143 2,517,054 38.3 2.6
EU加盟候補国 211,798 219,546 8.3 3.7 160,010 165,040 6.6 3.1
トルコ 113,195 114,174 4.3 0.9 98,055 103,328 4.1 5.4
ウクライナ 42,567 46,412 1.8 9.0 24,714 21,729 0.9 △ 12.1
ロシア 31,986 30,177 1.1 △ 5.7 36,263 27,929 1.1 △ 23.0
英国 343,710 345,349 13.1 0.5 164,079 158,730 6.3 △ 3.3
スイス 193,418 219,424 8.3 13.4 134,898 143,167 5.7 6.1
アジア大洋州 576,693 559,837 21.2 △ 2.9 956,190 1,005,707 40.0 5.2
中国 213,504 199,432 7.5 △ 6.6 525,726 559,990 22.2 6.5
ASEAN 94,424 95,097 3.6 0.7 165,099 179,776 7.1 8.9
マレーシア 17,892 18,558 0.7 3.7 28,802 30,349 1.2 5.4
タイ 14,686 14,368 0.5 △ 2.2 27,550 29,817 1.2 8.2
シンガポール 30,266 30,050 1.1 △ 0.7 17,793 17,686 0.7 △ 0.6
日本 67,423 65,750 2.5 △ 2.5 64,202 63,328 2.5 △ 1.4
韓国 55,860 54,533 2.1 △ 2.4 68,609 69,733 2.8 1.6
インド 48,828 48,883 1.8 0.1 71,481 69,477 2.8 △ 2.8
オーストラリア 38,806 36,934 1.4 △ 4.8 10,755 10,256 0.4 △ 4.6
北米 583,877 603,350 22.8 3.3 365,959 389,045 15.5 6.3
米国 535,628 554,612 21.0 3.5 337,997 356,231 14.2 5.4
カナダ 48,249 48,738 1.8 1.0 27,962 32,814 1.3 17.3
GCC(湾岸協力会議)諸国 99,695 109,969 4.2 10.3 64,161 55,585 2.2 △ 13.4
アラブ首長国連邦(UAE) 44,609 51,753 2.0 16.0 11,338 9,311 0.4 △ 17.9
南米南部共同市場(メルコスール) 55,341 55,022 2.1 △ 0.6 56,142 54,532 2.2 △ 2.9
ブラジル 43,808 42,744 1.6 △ 2.4 46,090 44,344 1.8 △ 3.8
南アフリカ共和国 24,219 23,833 0.9 △ 1.6 20,568 21,737 0.9 5.7
合計(その他含む) 6,630,397 6,786,003 100.0 2.3 6,385,358 6,567,257 100.0 2.8

〔注1〕 EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔注2〕 EU貿易統計の金額は、輸出がFOB、輸入がCIF。そのため域内貿易で輸出入金額が一致しない。
〔注3〕 EU加盟候補国はトルコ、セルビア、モンテネグロ、北マケドニア、アルバニア、ウクライナ、モルドバ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ジョージアの9カ国の合計値。
〔注4〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔注5〕南米南部共同市場は、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイの4カ国の合計値。

〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)

ロシアからのエネルギー輸入が減少、ウクライナ向け輸出は好調

EUは2022年2月23日以降、2026年4月までに20回に及ぶ対ロシア制裁パッケージを発表した。第19弾では、2027年1月から長期契約によるロシア産液化天然ガス(LNG)輸入の禁止を決定するなど、輸出入制限措置の対象品目を拡大した。一連の措置により、ロシアとの貿易は前年に続いて縮小し、輸出(1.1%)が5.7%減、輸入(1.1%)が23.0%減となった。特に、輸入の47.5%を占める天然・製造ガスが16.9%減、石油・石油製品(15.1%)が36.8%減少した。ウクライナとの貿易は輸出(1.8%)が9.0%増、輸入(0.9%)が12.1%減となった。同国向け輸出が好調だった要因として、機械・輸送機器類(34.3%)の輸出が21.5%増と伸びたこと、その中でも特に通信機器(4.1%)が31.3%増、乗用車(4.0%)が22.8%増だったことが挙げられる。

通商政策

メルコスールなどとのFTA交渉を積極的に推進

EUは、米国の関税措置による対米関係の不確実性や米中依存への危機感から、2025年は幅広い国・地域とのFTA交渉を積極的に推進し、貿易パートナーの多角化を進めている。2025年11月時点で44本の協定を通じて、76カ国・地域とEPA/FTAを締結するに至った。

1999年に交渉開始したメルコスールとの自由貿易協定(FTA)は、25年以上の交渉を経て2024年12月に経済や政治面での協力に関する包括的な協定であるEUメルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)に政治合意した。以前からフランスやポーランドなどの農業国やEU域内の農業部門が批准に反対する中、欧州委員会はFTAを含むEMPAの早期批准に向け、2025年9月にEMPA本体と、本体における通商部分のみを分離した暫定貿易協定案(iTA)を発表した。2026年1月17日、EUとメルコスール加盟4カ国はEMPAおよびiTAに署名し、5月1日からiTAの適用が始まった。同協定の適用開始により、EUからメルコスール向け輸出の91%以上、メルコスールからEU向け輸出の92%に対する関税を段階的に撤廃する。EUはメルコスールから輸出される主要な農産品について関税割当数量枠を設け、セーフガード条項を導入する。また、2025年1月にはメキシコとの間のFTAを含む総合協定(経済パートナーシップ・政策調整・協力協定)の現代化に向けた交渉が完了し、9月に協定案を発表、2026年5月に署名した。

さらに、2025年1月には12年間の中断を経てマレーシアとのFTA交渉再開を発表し、5月にはアラブ首長国連邦(UAE)とのFTA交渉も再開した。9月にインドネシアとの包括的経済連携協定(CEPA)の交渉で最終合意に達し、2026年1月にはインドと、3月にはオーストラリアとのFTA交渉がそれぞれ妥結した。フィリピンやタイとの交渉も進展している。2025年11月には初めて「CPTPP・EU貿易投資対話」を開催し、多角的貿易体制をさらに向上させるとともに、CPTPP加盟国とEUとの間の協力を強化するとした。英国とはEU離脱(ブレグジット)後初となる2025年5月19日のEU英国首脳会談(2025年6月4日付ビジネス短信参照)で、農産品、防衛・安全保障、エネルギーなど多分野での関係深化に向け合意し、関係の再構築が進んでいる。

対内・対外直接投資

対内直接投資額は3割減、AIデータセンター分野で大型案件

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2025年のEU加盟国への対内直接投資(EU加盟国間の投資も含む)は前年比28.9%減の1,642億5,380万ドル(国際収支ベース、ネット、フロー)だった。オランダ(331億7,250万ドル)、ルクセンブルク(330億5,770万ドル)、ベルギー(267億9,300万ドル)が大幅な引き揚げ超過となり、対内直接投資額全体を押し下げた。他方、EU加盟27カ国中11カ国では前年から投資額が増加した。中でもキプロス(49億8,310万ドル)は10倍以上、ドイツ(742億7,200万ドル)とマルタ(143億6,040万ドル)は約3.6倍の伸びを見せた。

2025年末時点のEU加盟国の対内直接投資残高は13兆166億4,040万ドルだった。2025年のEU加盟国へのグリーンフィールド投資件数の合計は前年より1,153件少ない4,472件となった。前年同様、ドイツ(803件)、スペイン(733件)、フランス(625件)、ポーランド(368件)などに集中した。2025年のEU域内企業を合併や買収の対象とするクロスボーダーM&Aの合計は、前年より91 件多い3,059件だった。

対内M&A案件では、フランスの製薬会社サノフィ(Sanofi)は2025年4月、コンシューマー・ヘルスケア事業会社のオペラ(Opella)を米国のプライベート・エクイティ投資企業クレイトン・デュビリエ&ライス(CD&R)に約100億ユーロで売却した。UAEのアブダビ国営石油会社(ADNOC)は12月、ドイツ化学品大手コベストロ(Covestro AG)を約117億ユーロで買収した。

M&A以外では、AIインフラ関連の投資が相次いで発表された。2025年2月、カナダの資産運用会社のブルックフィールド・アセット・マネジメント(Brookfield Asset Management)は、傘下のデータセンター開発会社Data4を通じ、2030年までにフランスのAIデータセンター建設・関連インフラに総額200億ユーロを投資すると発表した。UAEの投資ファンドMGXは5月、フランス公的投資銀行(Bpifrance)、生成AI企業ミストラルAI(Mistral AI)、米国の半導体大手エヌビディア(NVIDIA)と共同で、電力容量1.4ギガワット(GW)を備える欧州最大級のAIキャンパスをパリのイル・ド・フランス地域圏に設立すると発表した。モデル設計から実装までAIのライフサイクル全体を支援する拠点の設立を目指す。米国のバンテージ・データ・センターズ(Vantage Data Centers)も9月、32億ユーロを投じ、スペイン・サラゴサ近郊にデータセンター・キャンパスを開発する計画を発表した。10月には米国のグーグル(Google)がベルギーのサン・ギスランに設置した同社のデータセンター・キャンパス拡張のため、総額50億ユーロ(2026~2027年)を投資し、300人を新たに雇用する計画を発表した。半導体関連では、スイスの半導体生産大手STマイクロエレクトロニクス(ST Microelectronics)は4月、イタリアのアグラーテとフランスのクロルの300ミリメートル(mm)半導体ウエハー工場をそれぞれ拡張し、生産能力を拡大する計画を発表した。電気自動車(EV)関連では、中国の大手EVメーカー比亜迪(BYD)が5月にハンガリー・ブダペストに欧州統括本部と研究開発拠点を設立することを発表(2025年5月20日付ビジネス短信参照)したほか、9月にはトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・チェコ(TMMCZ)が約6億8,000万ユーロを投資し、バッテリー式電気自動車(BEV)の生産をチェコの既存工場で開始すると発表した(2025年9月17日付ビジネス短信参照)。

対外直接投資額は8.4%増、エネルギー分野の投資が活発に

一方、2025年のEU加盟国の対外直接投資(EU加盟国間の投資も含む)の合計は、前年比8.4%増の4,959億410万ドル(国際収支ベース、ネット、フロー)だった。前年に流出超過だったベルギーが引き揚げ超過(185億8,370万ドル)に転じたが、ルクセンブルク(1,013億8,430万ドル)、ドイツ(868億3,660万ドル)、オランダ(581億520万ドル)の投資額上位3カ国がそれぞれ前年比35.8%増、90.1%増、48.2%増と大幅に伸び、対外直接投資額の増加を牽引した。マルタ(114億260万ドル)、リトアニア(8億2,910万ドル)も、それぞれ約690倍、約260倍と大きく増加した。2025年末時点の対外直接投資残高は15兆6,305億9,440万ドルだった。同年のEU域内企業が出資したグリーンフィールド投資件数は前年より1,040件少ない5,496件だった。件数全体の6割弱を占めるドイツ(1,245件)、フランス(916件)、スペイン(484件)、オランダ(479件)などの大幅減が主因だった。2025年のEU域内企業によるクロスボーダーM&A件数は前年より103件多い2,431件だった。スウェーデン(550件)が前年から146件増加し、最多となった。

対外M&A案件としては、ドイツのシーメンス(Siemens AG)が2025年7月に米国のライフサイエンス分野の研究開発(R&D)ソフトウエアプロバイダーであるドットマティクス(Dotmatics)を51億ドルで買収した。創薬・研究開発分野のデジタル化対応を強化するのが目的だ。M&A以外では、エネルギー関連の投資案件が目立った。スペインの電力大手イベルドローラ(Iberdrola)は3月、傘下の米国電力大手アバングリッド(Avangrid)を通じ、2030年までに米国の電力網インフラに200億ドルを投資する計画を発表した。ポーランドのグリーン水素とアンモニアの技術の統合・システム設計などを手掛けるヒンフラ(Hynfra)は7月、インドのJK・スリバスタバ・グループ(JK Srivastava Group)と、インド南部のアンドラ・プラデシュ(AP)州に40億ドル規模のグリーン水素・アンモニア製造拠点を建設すると発表した。マルタのテクノロジー企業ハンズオン・システムズ(HandsOn Systems)は12月、チュニジアの太陽光発電所建設プロジェクト(350 メガワット(MW)規模)に総額5億2,000万ユーロを投資する計画を発表した。

EU加盟国間の大型案件としては、M&Aではデンマークの物流大手DSVが2025年4月、ドイツ鉄道(DB)の物流子会社DBシェンカー(Schenker)を約143億ユーロで買収した。また、M&A以外では、11月にドイツの防衛装備大手ラインメタル(Rheinmetall)が5億3,500万ユーロを投資し、ルーマニア・ブラショフ県ヴィクトリアに弾薬用推進薬およびモジュール式発射装薬工場を建設する計画を発表した。2028年に生産開始予定で、約700人の雇用創出を見込む。そのほか2月にスウェーデンのクラウド企業エヴロック(Evroc)が、フランス南部・ムージャンに初のAIデータセンター(96MW規模)を建設する計画(最大40億ユーロ規模)を発表した。さらに、10月にはアイルランドのエシェロン・データセンター(Echelon Data Centres)がイタリア・ミラノ近郊にイタリア最大級のデータセンター・キャンパスを建設する計画(最大30億ユーロ規模)を発表するなど、加盟国間でもAIデータセンター関連投資が活発だった。

対日関係

乗用車や鉄鋼の輸入が減少、対日貿易黒字は縮小

ユーロスタットによると、2025年のEUの対日貿易は輸出が前年比2.4%減の657億9,100万ユーロ、輸入が1.3%減の633億6,100万ユーロとなり、いずれも減少した。EUの対日貿易収支は24億3,000万ユーロの黒字となり、2年連続の黒字となったが、黒字幅は24.6%縮小した。

対日輸出を主要品目別に見ると、最大品目の機械・輸送機器類(構成比35.5%)が前年比3.7%増となり、うち乗用車(9.7%)が6.9%増、船舶類などその他の輸送機器(4.4%)が25.5%増となった。2位の化学工業製品(24.8%)は、前年に大幅増となっていた医薬品(15.0%)が16.4%減となり、11.0%減少した。3位の雑製品(17.4%)は、旅行用品・ハンドバッグ(3.5%)が9.3%減などとなり、2.0%減だった。食料品・動物(6.5%)は、肉類・同調製品(1.8%)が19.8%減などとなり、6.0%減だった。アルコール飲料(1.7%)は6.0%減少した。

対日輸入は主要品目が前年に続き軒並み減少したが、減少幅は縮小した。最大品目の機械・輸送機器類(構成比63.9%)、雑製品(13.1%)、化学工業製品(12.3%)、原料別半製品(7.9%)がそれぞれ前年比0.2%減、2.6%減、4.1%減、7.6%減となった。具体的には乗用車(18.0%)が9.1%減、自動車部品(4.0%)が3.3%減、有機化学品(2.7%)が23.9%減、鉄鋼(1.5%)が33.4%減、鉄鋼フラットロール製品(0.5%)が58.7%減と軒並み減少した。一方、産業用機械(7.3%)は21.5%増、バイク(3.4%)は19.8%増、医薬品(2.5%)は21.5%増と大幅に増加し、荷役機械(1.7%)は約3倍、航空機類(1.3%)は約2倍の伸びを見せた。

表5-1 EUの対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器類 22,517 23,352 35.5 3.7
化学工業製品 18,362 16,343 24.8 △ 11.0
雑製品 11,680 11,449 17.4 △ 2.0
食料品・動物 4,538 4,264 6.5 △ 6.0
原料別半製品 3,807 3,894 5.9 2.3
飲料・たばこ 3,053 2,908 4.4 △ 4.7
合計(その他含む) 67,423 65,791 100.0 △ 2.4

〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)、2026年7月のデータに基づく

表5-2 EUの対日主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
機械・輸送機器類 40,576 40,510 63.9 △ 0.2
雑製品 8,524 8,305 13.1 △ 2.6
化学工業製品 8,137 7,802 12.3 △ 4.1
原料別半製品 5,431 5,016 7.9 △ 7.6
食料に適さない原材料(燃料を除く) 725 798 1.3 10.1
食料品・動物 395 454 0.7 15.0
合計(その他含む) 64,202 63,361 100.0 △ 1.3

〔出所〕EU統計局(ユーロスタット)、2026年7月のデータに基づく

日本とEU間の直接投資は対内外ともに非製造業が下押し

日本の財務省によると、2025年の日本からEUへの直接投資額は前年比24.4%減の3兆4,362億円だった。全体の8割以上を占める製造業は36.8%増と好調で、2兆8,694億円となった。食料品が91.6%増の1兆1,026億円、化学・医薬が33.0%増の6,827億円、輸送機械器具が2.8倍増加して2,970億円となった。欧州での日本食需要の拡大やEV向けバッテリーや資源循環技術など、EUで進む脱炭素化・循環型経済に向けた取り組みに対応した投資案件が見られた。しかし、鉄・非鉄・金属が17.4%減の1,202億円、一般機械器具が49.9%減の821億円と大幅に減少した。一方、非製造業は76.8%減の5,668億円だった。運輸業が約3倍の5,878億円と伸びたが、卸売・小売業が72.2%減の2,258億円、サービス業が56.6%減の1,732億円と縮小した。EU域外も含めた欧州の国別では、前年比約8.8倍となったスイス向けの5兆3,735億円を筆頭に、オランダ向け2兆3,409億円、ドイツ向け9,387億円の順に大きかった。企業が海外事業体制の再編に際し、税制面で優位性を有するスイスにグローバル販売の統括本部を置き、一元化した動きがあったとみられる。

EUから日本への直接投資額は、2,991億円の引き揚げ超過に転じた。非製造業が4,007億円の引き揚げ超過となったことが響いた。特に卸売・小売業が2年連続で引き揚げ超過(3,873億円)となったこと、サービス業が1,401億円の引き揚げ超過となったことなどが影響した。一方、製造業は化学・医薬(996億円)や輸送機械器具(652億円)などが寄与し、前年比2.3倍増の1,016億円を記録した。欧州製薬企業による日本の生産拠点や研究開発機能への投資が継続し、製造業への投資拡大を後押しした。EU域外も含めた欧州の国別では、スイスの2,204億円が最大の投資額となった一方、ルクセンブルクが1,416億円、オランダが1,271億円の大幅な引き揚げ超過となった。

基礎的経済指標

注 貿易収支:国際収支ベース(財のみ) 外貨準備高(グロス):EU20(ユーロ圏)のデータに基づく。 対外債務残高(グロス):2023~2024年はEU20(ユーロ圏)、2025年はブルガリア含むEU21(ユーロ圏)のデータに基づく。 実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支:EU統計局(ユーロスタット) 対外債務残高(グロス):欧州中央銀行(ECB) 1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 0.4 1.1 1.5
1人当たりGDP (米ドル) 41,604 43,329 47,088
消費者物価上昇率 (%) 6.4 2.6 2.5
失業率 (%) 6.1 5.9 6.0
貿易収支 (100万ユーロ) 257,672 360,797 386,046
経常収支 (100万ユーロ) 341,256 464,610 359,136
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 553,397 546,006 594,385
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 16,250,331 16,706,785 16,959,672
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.9248 0.9239 0.8850

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
外貨準備高(グロス):EU20(ユーロ圏)のデータに基づく。
対外債務残高(グロス):2023~2024年はEU20(ユーロ圏)、2025年はブルガリア含むEU21(ユーロ圏)のデータに基づく。
〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支:EU統計局(ユーロスタット)
対外債務残高(グロス):欧州中央銀行(ECB)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF