花きの輸入規制、輸入手続き
EUの食品関連の規制
1. 製品規格
調査時点:2021年6月
なし
2. 残留農薬
調査時点:2021年6月
なし
3. 重金属および汚染物質(最大残留基準値/禁止)
調査時点:2021年6月
なし
4. 食品添加物
調査時点:2021年6月
なし
5. 食品包装規制(食品容器の品質または基準)
調査時点:2021年6月
花きの包装に限った規制ではありませんが、第三国からEU への貨物の輸入に用いられる木材梱包材(パレットや木箱など)に関しては、規則(EU) 2016/2031第43 条に規定されるとおり、隔離病害虫の侵入およびまん延の経路となる可能性があることから、植物検疫措置に関する国際基準No. 15「ISPM 15」の要件を満たしている必要があります。
ISPM 15の付属書1に規定される処理(樹皮を除去した木材に適用される熱処理、臭化メチル処理、フッ化スルフリル処理など)が施されたことを証明するマークが刻印されている必要があります。
マークとその適用については、ISPM 15の付属書2に規定されています。IPPCのシンボル、国コード、生産者もしくは処置実施者コード、実施された処理のコード(例:熱処理は HT、臭化メチル処理は MB など)からなり、マークは判読可能で、耐久性があり、移動不可能で、手書きであってはならないとされています。また、赤色やオレンジ色も避けるよう規定されています。
これらの規定は、次のものには適用されません。
- 厚みが6 ミリメートル以下の薄い木材からなる梱包材
- 接着剤、熱もしくは圧力、またはそれらの組み合わせで製造された合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード、またはベニヤといった加工木材ですべてが作製された梱包材
- EU域内の取引で使用されている木製梱包材
なお、日本における輸出用木材梱包材の生産者や消毒認定業者に関しては、全国植物検疫協会のウェブサイトで確認できます。

「ISPM15」スタンプの一例
関連リンク
- 関係省庁
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欧州委員会
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欧州委員会 保健衛生・食の安全総局(英語)
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植物防疫所
- 根拠法等
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規則 (EU) No 2016/2031(英語)
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委任規則(EU) 2019/2125 (英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。 - その他参考情報
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植物防疫所「植物検疫措置に関する国際基準ISPM 15国際貿易における木材こん包材の規制」
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全国植物検疫協会
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欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 輸入規制に関する情報(英語)
6. ラベル表示
調査時点:2021年6月
盆栽や実施規則(EU) 2019/2072のANNEX XIIIに記載されている植物や植物生産物などを第三国からEU域内へ輸入し、EU域内で流通させる際には、植物パスポート(Plant Passports)とよばれるラベルを添付する必要があり、2019年12月14日から、EUで統一した植物パスポートのラベルが採用されます。
実施規則(EU) 2020/1217の「特例措置」により、日本産のマツ属、ヒノキ属、ビャクシン属の盆栽は植物パスポートが必要です。その他、種子を除くすべての植え付けを目的とした植物 、葉や花をつけたカンキツ属、キンカン属、カラタチの果実や一部の植物、木材にも植物パスポートが必要とされます(種子や個人使用、研究用など実施規則(EU) 2019/2072の第6条第3項に記載された例外を除く)。
植物パスポートの登録番号の取得方法については、輸入手続きの「3. 輸入時の検査・検疫」を参照してください。
実施規則(EU) 2017/2313のANNEXには植物パスポートの様式が掲載されており、2023年の12月14日までに定められた様式に適合したラベルを表示する必要があります。 ラベルの大きさ、枠線の有無、フォントなどは自由ですが、形は四角で、肉眼で読める大きさで印字されている必要があります。欧州旗はカラーまたは白黒でもよいとされています。
EU域内向け | 保護地域向け |
---|---|
左上に欧州旗のロゴ | |
右上に英語で「Plant Passport」 EU加盟国の公式言語での追記も可(図中1) |
右上に英語で「Plant Passport -PZ」 EU加盟国の公式言語での追記も可(図中1) |
病害虫からの保護地域または機関の学術名またはコード(図中9) | |
植物(種)の学名や生物分類名(図中2) | |
植物パスポートを発行する専門事業者の2桁の加盟国国名コード*1(図中3)、ハイフンに続き登録番号(図中4) | |
必要な場合には「保護地域向け」と同様に記載*2 | 当該植物の追跡コード(図中5)、必要な場合には、バーコード、二次元コード(図中6)、ホログラム、ICチップなど追跡コードを補完するもの |
EU加盟国から発送の場合には2桁の出荷国の国名コード*1(図中7) 第三国から発送の場合には原産国の国名または2桁の国名コード*1(図中8) |
|
植物パスポートが変更になる場合は、最初に発行された事業者の登録番号 |
図1:EU域内での移動のための植物パスポートのモデルの一部


図2:保護区域への導入および保護区域内での移動のための植物パスポートのモデルの一部


なお、輸入される木製梱包材(厚さが6 mm以上のパレットや木箱など)が植物衛生措置の国際規格「ISPM15」の基準に従って承認された処理を受けたことを示す「ISPM15」スタンプに関しては、前述の「5. 食品包装規制」に記載しています。
関連リンク
- 関係省庁
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欧州委員会(英語)
- 根拠法等
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指令2000/29/EC(英語)
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実施規則 (EU) 2020/1217(英語)
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実施規則(EU)No 2017/2313(英語)
-
実施規則(EU)2019/2072(英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
7. その他
調査時点:2021年5月
【特別な条件を満たすことで、輸入が認められる盆栽など】
日本産の盆栽については、病害虫などのまん延防止のため、輸出国での栽培地検査や消毒などの特別な条件が規定されています。
輸入規制の「1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」に示した輸入禁止品目に該当しない日本産の盆栽については、実施規則(EU) 2019/2072のANNEX VII 30項に規定する次の条件【A】を満たすことの裏付けとなる植物検疫証明書がある場合に、EU域内への輸出が可能となっています。
また、一定の期間「特例措置」とされているヒノキ属(Chamaecyparis Spach)、ビャクシン属(Juniperus L.)、マツ属の一部 (ゴヨウマツ(Pinus parviflora Sieb. & Zucc.)ならびに日本産のほかのマツ属に接ぎ木されたゴヨウマツ、クロマツ(Pinus thunbergii Parl.)および日本産のほかのマツ属に接ぎ木されたクロマツ)については、本条件【A】に加え、実施規則(EU) 2020/1217に規定される条件【B】を満たすことで、EU域内への輸出が可能となっており、重複するものについては、【B】の条件が優先されます。
ヒノキ属、ビャクシン属および一部のマツ属(ゴヨウマツ、クロマツ)の特例措置を利用したEU加盟国への輸入可能期間は次のとおりです
- ヒノキ属
- :2020年10月1日〜2023年12月31日
- ビャクシン属
- :2023年12月31日までの毎年11月1日〜3月31日
- マツ属 (ゴヨウマツ、クロマツなど)
- :2020年10月1日〜2023年12月31日
- 【A】実施規則(EU) 2019/2072のANNEX VII 30項に規定される「種子を除く自然にあるいは人工的に成長を抑制された植え付け目的の植物」に関する条件
- 出荷前の少なくとも2年間、植物防疫所に公的登録された盆栽園で栽培管理すること。
- 盆栽園での栽培管理の間、地面から50cm以上離れた棚に置かれた鉢で栽培すること。
- 欧州で未発生のサビ病に関して適切な措置が実施されており、実施した措置の内容が植物検疫証明書に記載されていること。
- EU隔離病害虫の有無に関して、隣地に生育する植物も含めて年間少なくとも6回の植物防疫所による栽培地検査が実施されること。
- 栽培地検査でEU隔離病害虫の寄生および付着のないことを確認のうえ、寄生が確認された場合は当該植物を除去すること。
- 培地(天然または人工を問わない)は薫蒸または熱処理による消毒をすること。
-
培地はEU隔離病害虫の寄生・付着がない状態を維持し、出荷前2週間以内に次のいずれかの措置をとること。
- 栽培土を除去・洗浄し、根を裸の状態にする。
- 栽培土を除去・洗浄し、薫蒸または熱処理により消毒された培地に植え替える。
- 培地から有害生物を除去するための適切な措置をとり、実施した措置の内容と実施日を植物検疫証明書に記載する。
- 輸送容器は公的に封印され(officially sealed)、輸出検査に合格した盆栽の登録園番号が梱包上および植物検疫証明書に記載されていること。
- 【B】(EU)2020/1217のANNEXで規定する特定条件(ヒノキ属、ビャクシン属、ゴヨウマツあるいはクロマツなど)
- 自然にあるいは人工的に成長を抑制されたヒノキ属およびビャクシン属の植物。また、マツ属の場合は、ゴヨウマツあるいはクロマツの種に完全に属する植物であるか、その他のマツ属の種にゴヨウマツあるいはクロマツが接ぎ木された植物であること。後者の場合、根には新芽が一切含まれていないこと。
- 植物の総数は、検疫能力を考慮し、輸入するEU加盟国が定めた数量を超えないこと。
- 植物はEUに輸出される前に、植物防疫所に登録されたほ場(以下「登録ほ場」という。)で少なくとも2年間栽培管理されること。
- ビャクシン属については、その輸入前の直近2年間に登録ほ場およびその隣接地帯で栽培されているボケ属、サンザシ属、マルメロ属、ビャクシン属、リンゴ属、カナメモチ属、ナシ属の植物について、少なくとも年に6回、検疫対象病害虫の付着について、植物防疫所による検査を実施すること。なお、検疫対象病害虫とは、本規則(EU)2020/1217のANNEX Point4 に規定されているものをいう(以下同じ)。
- また、マツ属とヒノキ属の植物については、登録ほ場およびその隣接地帯で栽培されているマツ属とヒノキ属の植物について、少なくとも年に6回、検疫対象病害虫の付着について植物防疫所による検査を実施すること。
- 検査の際に検疫対象病害虫が発見された場合は、その旨を記録し、欧州委員会から要請があった場合は記録簿を提出できるよう保存すること。検疫対象病害虫が発見された登録ほ場は、登録を取り消される(当該登録の取り消しについては欧州委員会にただちに通知され、再登録は翌年にならなければ行えない)。
-
EUに輸出される前に少なくとも2年間、次の条件を満たしていること。
- 地面から少なくとも50cm以上離れた棚の上に置かれた鉢で栽培するか、ネマトーダ(線虫類)が侵入できないよう、コンクリートの床の上に置かれた鉢で栽培していること。
- 前述の検査の際に検疫対象病害虫が発見されず、登録ほ場の登録が取り消されていないこと。
- なお、これらの植物がマツ属に属する場合で、ゴヨウマツとクロマツ以外の台木に接木する場合は、健全なものであり、植物防疫所によって認められた供給元の台木を使用していること。
- それぞれの植物に、登録ほ場が特定でき、植え付けた年を識別できる特定のラベルや標識を付すこと。当該ラベルは、植物防疫所に通知されたものであること。
- 登録ほ場を出てから輸出の船積みまでの間、輸送車両の密閉などにより、植物体の識別が追跡可能である(トレーサビリティである)こと。
- 植物および当該植物に付着あるいは一体化した培地に関して、植物防疫所が発行した植物検疫証明書を添付することにより、上記および前述の【A】(実施規則(EU)2019/2072 ANNEX VII 30項)が順守されていることを証明する。植物検疫証明書には、登録ほ場の名前、前述の植え付けた年を識別できる特定のラベル、最後に施した処理の詳細と発送通知、さらに、Additional Declarationの欄に「This consignment meets the conditions laid down in Commission Implementing Regulation (EU) 2020/1217」と記載する。
-
受託品の責任を負うオペーレーターは、EU域内に到着する前に、IMSOC経由で共通衛生入域文書(CHED-PP)の関連部分を完成させ、各ロットの少なくとも植物および培地のタイプ、数量、輸入申告日、輸入検疫中に植物を保管する認可された場所を送信する。加盟国は輸入者に対し、輸入前に本規則で規定されている条件を通知する必要がある。
輸入通関前に検疫所または認定された隔離施設(保管倉庫)で次の期間、隔離栽培・検査の対象となる。- マツ属、ヒノキ属については、少なくとも3カ月以上
- ビャクシン属については、4月1日から6月30日まで
- 隔離検疫中に検疫対象病害虫が発見された場合、当該盆栽を含むロットはすべて当局または専門事業者の監視のもと、ただちに廃棄される。
- また、輸入国は、欧州委員会およびほかの加盟国に隔離検疫中に検疫対象病害虫が発見された旨を通知し、欧州委員会はその旨を日本に通知する。その場合、当該登録ほ場の登録は取り消される。
- 隔離期間中に検疫対象病害虫が存在しないことが明らかになった盆栽は、規則(EU)2016/2031の第79条に規定される植物パスポートが発行され、当該植物パスポートが添付されている場合に限り、EU域内で移動させることができる。
植物パスポートは、隔離検疫をクリアすれば自動的に発行されるわけではありません。EU域内での移動が必要な場合は、隔離検疫クリア後に、植物パスポートを取得する必要があります。英国においても、当面の間EU規則と同様の対応が必要です。
なお、植物パスポートのラベル表示の詳細は、食品関連の規制「6. ラベル表示」を参照してください。植物パスポートの登録番号の取得方法については、輸入手続き「3. 輸入時の検査・検疫」を参照してください。
なお、その他のマツ属(Pinus L)およびベイマツ(Pseudotsuga menziesii)の盆栽に関する緊急措置に関しては、輸入関税等の「3.その他」を確認してください。