花きの輸入規制、輸入手続き
EUの輸入規制
1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)
調査時点:2024年12月
【植物検疫規制】
EUでは、規則(EU) 2016/2031ならびに実施規則(EU) 2018/2019および実施規則(EU) 2019/2072などにより植物検疫に関する規則が定められており、実施規則(EU)2018/2019のANNEXおよび実施規則(EU) 2019/2072のANNEX VIにEUへの輸入が禁止される植物、植物製品などのリストが、実施規則(EU) 2019/2072のANNEX IXに保護ゾーンへの輸入が禁止される植物、植物製品などのリストが規定されています。
日本からEUへの輸入が禁止されている主なものは、次のとおりです。詳細は実施規則(EU) 2019/2072のANNEX VIおよびANNEX IXならびに植物防疫所ウェブサイトなどを参照してください。
- 次の植物の生植物および生植物の部分
樹木類:ヒノキ属、マツ属、モミ属など(果実および種子を除く)
果樹類:カンキツ属、葉付きのクリ属など(果実および種子を除く)、ブドウ属(果実を除く)など - 次の栽培用植物
- カリン属、サクラ属、ナシ属、リンゴ属、およびこれらの交配種、ならびにオランダイチゴ属(種子を除く)
- カナメモチ属、サンザシ属、バラ属、ボケ属(葉、花および果実のない休眠状態のものを除く)
- 葉付きのクリ属、コナラ属、ハコヤナギ属(果実および種子を除く)
- イネ科(種子、ならびにオカメザサ属、クサヨシ属、キビ亜科、タケ亜科などの観賞用多年生草本を除く)
- ナス科(種子を除く)
- イチジク、アカシア属、イチイ属、イボタノキ属、カエデ属、カキ属、カバノキ属、キョウチクトウ属、クリ属、クルミ属、コナラ属、シナノキ属、ジャケツイバラ属、スイカズラ属、ソケイ属、トネリコ属、ナナカマド属、カワラケツメイ属、ニレ属、ネムノキ属、ハシバミ属、ハマカズラ属、ハリエンジュ属、ハンノキ属、バンレイシ属、ブナ属、マンサク属、ミズキ属、メギ属、ヤナギ属、ワニナシ属およびリンゴ属、サクラ/スモモ属の栽培用植物(種子、盆栽および組織培養体を除く)
ただし、マツ属(Pinus L.)、ヒノキ属(Chamaecyparis Spach)、ビャクシン属(Juniperus L.)の盆栽については、EUへの輸入禁止植物に指定されていますが、実施規則(EU) 2020/1217の「適用除外(特例措置)」により、日本産のマツ属(Pinus L.)、ヒノキ属(Chamaecyparis Spach)、ビャクシン属(Juniperus L.)については、同規則で定められた特別な条件を満たす場合に、一定の期間EUへの輸出が可能です。なお、マツ属については、既に検疫条件が定められていたゴヨウマツ(Pinus parviflora Sieb. & Zucc.)の盆栽に加え、2020年10月1日からクロマツ(Pinus thunbergii Parl.)の盆栽についても輸出が可能となっています。
輸入可能期間や検疫条件の詳細などに関しては、食品関連の規制の「7.その他」を参照してください。
また、土壌や有機物を含む培養資材(未使用のピートやココヤシ繊維を除く。)のEUへの輸入が禁止されています。輸入が許可される培養資材に係る要件は、実施規則(EU) 2019/2072のANNEX VIIに規定されています。
【ワシントン条約規制】
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保護を図るため、日本およびEUは、ワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora:CITES)を批准しています。輸出しようとする植物が、ワシントン条約規制対象種であるかどうかに関しては、経済産業省のウェブサイトで確認してください。
【東京電力福島第一原子力発電所事故の影響による輸入規制】
花きについては、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響による輸入規制の対象には含まれていません。
種苗等の海外持出制限
出願品種の保護が図られないおそれのある国への当該出願品種の種苗等の流出を防ぐため、 当該品種の出願者(育成者)が品種登録出願と同時に、いわゆる「海外持出制限の届出(種苗法第21条の2第1項第1号)」をした場合、出願者が当該品種の保護が図られないおそれがない国として指定する国(指定国)を除き、種苗等の国外への持ち出しが制限されます。
なお、「指定国なし」と届出のある登録出願品種は全ての国に対しての持ち出しに制限があります。
品種ごとの詳細は、関連リンクの「公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会 流通品種データベース」にてご確認ください。
また、登録品種の種苗等を育成者権者の許諾なく海外に持ち出す行為は禁止されており、損害賠償、刑事罰の対象となる場合があります。
詳細は、関連リンクの「農林水産省 種苗法の改正について」及び「農林水産省利用制限届出の手引き」を参照してください。
関連リンク
- 関係省庁
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欧州委員会 保健衛生・食の安全総局(英語)
-
経済産業省
-
農林水産省
- 根拠法等
-
指令2000/29/EC(英語)
-
規則(EU) 2016/2031(英語)
-
実施規則(EU) 2018/2019(英語)
-
実施規則(EU) 2019/2072(英語)
-
実施規則(EU) 2020/1217(英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。 -
規則(EC) 338/97(英語)
-
種苗法
- その他参考情報
-
経済産業省「ワシントン条約規制対象種の調べ方」
- ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」
-
農林水産省「種苗法の改正について」
-
農林水産省「品種登録ホームページ」
-
農林水産省「利用制限届出の手引き」
(1.7MB)
-
公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会「流通品種データベース」
2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)
調査時点:2021年6月
日本からEU域内に花きを輸出する際には、通常の船積み書類(輸出申告書、インボイス、パッキングリスト、シッピング・インストラクション(船積依頼書)、委任状、ブッキングリスト、海上貨物保険の申込書など)に加え、日本政府(植物防疫所)が発行する植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)の添付が必要です。
日本からEUへ輸出する場合の植物検疫証明書の様式は規則(EU) 2016/2031 ANNEX V Part A に記載されています。
また、日EU経済連携協定(日EU・EPA)の適用を受けるには、当該輸出品の原産地が日本である旨を証明する原産地証明が必要となります。日EU・EPAでは、自己申告による原産地証明制度が採用されており、輸出者、輸入者または通関業者のいずれかが、自ら原産地を証明することになります。書式に関しては税関のウェブサイト「原産地規則ポータル」を参照してください。
関連リンク
- 関係省庁
-
植物防疫所
- 根拠法等
-
規則 (EU) No 2016/2031(英語)
-
規則 (EU) 2016/341 (英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。 - その他参考情報
-
植物防疫所 各国の検疫条件(欧州連合)
-
欧州委員会 日EU・EPAガイダンス「特恵の要求、確認および否認」(英語)
(454KB)
-
欧州委員会日EU・EPAガイダンス「原産地に関する申告」(英語)
(481KB)
-
ジェトロ「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU・EPA)ガイダンス要求、確認および特恵の否認(2019年12月更新版)(ジェトロ仮訳)」
(722KB)
-
ジェトロ「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU・EPA)ガイダンス原産地に関する申告(ジェトロ仮訳)」
(711KB)
-
ジェトロ「日EU・EPA解説書:日EU・EPAの特恵関税の活用について(2020年3月)」
6.29MB
-
原産地規則ポータル「原産地証明手続」
-
財務省関税局・税関「日 EU・EPA 自己申告及び確認の手引き(2021 年 2 月)」
575KB
3. 動植物検疫の有無
調査時点:2021年6月
日本からEU向けに花きを輸出する場合は、植物防疫所に輸出検査の申請を行い、植物検疫証明書の交付を受ける必要があります。
植物検疫証明書の取得にあたっては、輸出検査を受けようとする植物防疫所に植物等輸出検査申請書を提出し、輸出検査を受ける必要があります。申請書の提出はNACCS植物検疫関連業務(APS)を用いても行うことができます。手続きなどの詳細については、最寄りの植物防疫所に問い合わせてください。
日本からEUへ輸出する場合の植物検疫証明書の様式は、規則(EU) 2016/2031 ANNEX V Part A に記載されています。
さらに一部の盆栽に関しては、1シーズンに6回、2年間にわたる栽培地検査証明が必要です。検査の適期を逃さないよう栽培地検査の受検申請を行い、輸送届の提出、植物輸出検査申請を経て合格証明の発給を受ける必要があります。詳細は、食品関連の規制「7. その他」を参照してください。
なお、輸出貨物は、植物検疫証明書の発給から14日以内に発送されなければなりません。
EU側での植物検疫 に関しては、輸入手続きの「3. 輸入時の検査・検疫」を参照してください。
関連リンク
- 関係省庁
-
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局(英語)
-
植物防疫所
- 根拠法等
-
指令2000/29/EC(英語)
-
実施規則(EU)No 2018/2019 (英語)
-
実施規則(EU)2019/2072(英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。 - その他参考情報
-
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 輸入規制に関する情報(英語)
-
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 EUの植物検疫関係規則(英語)
-
植物防疫所「輸入規則等詳細情報 欧州連合(EU)」
-
植物防疫所「輸出植物検疫」
-
植物防疫所「植物等輸出検査申請書」
-
植物防疫所「NACCS植物検疫関連業務(APS)」
EUの食品関連の規制
1. 製品規格
調査時点:2021年6月
なし
2. 残留農薬
調査時点:2021年6月
なし
3. 重金属および汚染物質(最大残留基準値/禁止)
調査時点:2021年6月
なし
4. 食品添加物
調査時点:2021年6月
なし
5. 食品包装規制(食品容器の品質または基準)
調査時点:2021年6月
花きの包装に限った規制ではありませんが、第三国からEU への貨物の輸入に用いられる木材梱包材(パレットや木箱など)に関しては、規則(EU) 2016/2031第43 条に規定されるとおり、隔離病害虫の侵入およびまん延の経路となる可能性があることから、植物検疫措置に関する国際基準No. 15「ISPM 15」の要件を満たしている必要があります。
ISPM 15の付属書1に規定される処理(樹皮を除去した木材に適用される熱処理、臭化メチル処理、フッ化スルフリル処理など)が施されたことを証明するマークが刻印されている必要があります。
マークとその適用については、ISPM 15の付属書2に規定されています。IPPCのシンボル、国コード、生産者もしくは処置実施者コード、実施された処理のコード(例:熱処理は HT、臭化メチル処理は MB など)からなり、マークは判読可能で、耐久性があり、移動不可能で、手書きであってはならないとされています。また、赤色やオレンジ色も避けるよう規定されています。
これらの規定は、次のものには適用されません。
- 厚みが6 ミリメートル以下の薄い木材からなる梱包材
- 接着剤、熱もしくは圧力、またはそれらの組み合わせで製造された合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード、またはベニヤといった加工木材ですべてが作製された梱包材
- EU域内の取引で使用されている木製梱包材
なお、日本における輸出用木材梱包材の生産者や消毒認定業者に関しては、全国植物検疫協会のウェブサイトで確認できます。

「ISPM15」スタンプの一例
関連リンク
- 関係省庁
-
欧州委員会
-
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局(英語)
-
植物防疫所
- 根拠法等
-
規則 (EU) No 2016/2031(英語)
-
委任規則(EU) 2019/2125 (英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。 - その他参考情報
-
植物防疫所「植物検疫措置に関する国際基準ISPM 15国際貿易における木材こん包材の規制」
-
全国植物検疫協会
-
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 輸入規制に関する情報(英語)
6. ラベル表示
調査時点:2021年6月
盆栽や実施規則(EU) 2019/2072のANNEX XIIIに記載されている植物や植物生産物などを第三国からEU域内へ輸入し、EU域内で流通させる際には、植物パスポート(Plant Passports)とよばれるラベルを添付する必要があり、2019年12月14日から、EUで統一した植物パスポートのラベルが採用されます。
実施規則(EU) 2020/1217の「特例措置」により、日本産のマツ属、ヒノキ属、ビャクシン属の盆栽は植物パスポートが必要です。その他、種子を除くすべての植え付けを目的とした植物 、葉や花をつけたカンキツ属、キンカン属、カラタチの果実や一部の植物、木材にも植物パスポートが必要とされます(種子や個人使用、研究用など実施規則(EU) 2019/2072の第6条第3項に記載された例外を除く)。
植物パスポートの登録番号の取得方法については、輸入手続きの「3. 輸入時の検査・検疫」を参照してください。
実施規則(EU) 2017/2313のANNEXには植物パスポートの様式が掲載されており、2023年の12月14日までに定められた様式に適合したラベルを表示する必要があります。 ラベルの大きさ、枠線の有無、フォントなどは自由ですが、形は四角で、肉眼で読める大きさで印字されている必要があります。欧州旗はカラーまたは白黒でもよいとされています。
EU域内向け | 保護地域向け |
---|---|
左上に欧州旗のロゴ | |
右上に英語で「Plant Passport」 EU加盟国の公式言語での追記も可(図中1) |
右上に英語で「Plant Passport -PZ」 EU加盟国の公式言語での追記も可(図中1) |
病害虫からの保護地域または機関の学術名またはコード(図中9) | |
植物(種)の学名や生物分類名(図中2) | |
植物パスポートを発行する専門事業者の2桁の加盟国国名コード*1(図中3)、ハイフンに続き登録番号(図中4) | |
必要な場合には「保護地域向け」と同様に記載*2 | 当該植物の追跡コード(図中5)、必要な場合には、バーコード、二次元コード(図中6)、ホログラム、ICチップなど追跡コードを補完するもの |
EU加盟国から発送の場合には2桁の出荷国の国名コード*1(図中7) 第三国から発送の場合には原産国の国名または2桁の国名コード*1(図中8) |
|
植物パスポートが変更になる場合は、最初に発行された事業者の登録番号 |
図1:EU域内での移動のための植物パスポートのモデルの一部


図2:保護区域への導入および保護区域内での移動のための植物パスポートのモデルの一部


なお、輸入される木製梱包材(厚さが6 mm以上のパレットや木箱など)が植物衛生措置の国際規格「ISPM15」の基準に従って承認された処理を受けたことを示す「ISPM15」スタンプに関しては、前述の「5. 食品包装規制」に記載しています。
関連リンク
- 関係省庁
-
欧州委員会(英語)
- 根拠法等
-
指令2000/29/EC(英語)
-
実施規則 (EU) 2020/1217(英語)
-
実施規則(EU)No 2017/2313(英語)
-
実施規則(EU)2019/2072(英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
7. その他
調査時点:2021年5月
【特別な条件を満たすことで、輸入が認められる盆栽など】
日本産の盆栽については、病害虫などのまん延防止のため、輸出国での栽培地検査や消毒などの特別な条件が規定されています。
輸入規制の「1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」に示した輸入禁止品目に該当しない日本産の盆栽については、実施規則(EU) 2019/2072のANNEX VII 30項に規定する次の条件【A】を満たすことの裏付けとなる植物検疫証明書がある場合に、EU域内への輸出が可能となっています。
また、一定の期間「特例措置」とされているヒノキ属(Chamaecyparis Spach)、ビャクシン属(Juniperus L.)、マツ属の一部 (ゴヨウマツ(Pinus parviflora Sieb. & Zucc.)ならびに日本産のほかのマツ属に接ぎ木されたゴヨウマツ、クロマツ(Pinus thunbergii Parl.)および日本産のほかのマツ属に接ぎ木されたクロマツ)については、本条件【A】に加え、実施規則(EU) 2020/1217に規定される条件【B】を満たすことで、EU域内への輸出が可能となっており、重複するものについては、【B】の条件が優先されます。
ヒノキ属、ビャクシン属および一部のマツ属(ゴヨウマツ、クロマツ)の特例措置を利用したEU加盟国への輸入可能期間は次のとおりです
- ヒノキ属
- :2020年10月1日〜2023年12月31日
- ビャクシン属
- :2023年12月31日までの毎年11月1日〜3月31日
- マツ属 (ゴヨウマツ、クロマツなど)
- :2020年10月1日〜2023年12月31日
- 【A】実施規則(EU) 2019/2072のANNEX VII 30項に規定される「種子を除く自然にあるいは人工的に成長を抑制された植え付け目的の植物」に関する条件
- 出荷前の少なくとも2年間、植物防疫所に公的登録された盆栽園で栽培管理すること。
- 盆栽園での栽培管理の間、地面から50cm以上離れた棚に置かれた鉢で栽培すること。
- 欧州で未発生のサビ病に関して適切な措置が実施されており、実施した措置の内容が植物検疫証明書に記載されていること。
- EU隔離病害虫の有無に関して、隣地に生育する植物も含めて年間少なくとも6回の植物防疫所による栽培地検査が実施されること。
- 栽培地検査でEU隔離病害虫の寄生および付着のないことを確認のうえ、寄生が確認された場合は当該植物を除去すること。
- 培地(天然または人工を問わない)は薫蒸または熱処理による消毒をすること。
-
培地はEU隔離病害虫の寄生・付着がない状態を維持し、出荷前2週間以内に次のいずれかの措置をとること。
- 栽培土を除去・洗浄し、根を裸の状態にする。
- 栽培土を除去・洗浄し、薫蒸または熱処理により消毒された培地に植え替える。
- 培地から有害生物を除去するための適切な措置をとり、実施した措置の内容と実施日を植物検疫証明書に記載する。
- 輸送容器は公的に封印され(officially sealed)、輸出検査に合格した盆栽の登録園番号が梱包上および植物検疫証明書に記載されていること。
- 【B】(EU)2020/1217のANNEXで規定する特定条件(ヒノキ属、ビャクシン属、ゴヨウマツあるいはクロマツなど)
- 自然にあるいは人工的に成長を抑制されたヒノキ属およびビャクシン属の植物。また、マツ属の場合は、ゴヨウマツあるいはクロマツの種に完全に属する植物であるか、その他のマツ属の種にゴヨウマツあるいはクロマツが接ぎ木された植物であること。後者の場合、根には新芽が一切含まれていないこと。
- 植物の総数は、検疫能力を考慮し、輸入するEU加盟国が定めた数量を超えないこと。
- 植物はEUに輸出される前に、植物防疫所に登録されたほ場(以下「登録ほ場」という。)で少なくとも2年間栽培管理されること。
- ビャクシン属については、その輸入前の直近2年間に登録ほ場およびその隣接地帯で栽培されているボケ属、サンザシ属、マルメロ属、ビャクシン属、リンゴ属、カナメモチ属、ナシ属の植物について、少なくとも年に6回、検疫対象病害虫の付着について、植物防疫所による検査を実施すること。なお、検疫対象病害虫とは、本規則(EU)2020/1217のANNEX Point4 に規定されているものをいう(以下同じ)。
- また、マツ属とヒノキ属の植物については、登録ほ場およびその隣接地帯で栽培されているマツ属とヒノキ属の植物について、少なくとも年に6回、検疫対象病害虫の付着について植物防疫所による検査を実施すること。
- 検査の際に検疫対象病害虫が発見された場合は、その旨を記録し、欧州委員会から要請があった場合は記録簿を提出できるよう保存すること。検疫対象病害虫が発見された登録ほ場は、登録を取り消される(当該登録の取り消しについては欧州委員会にただちに通知され、再登録は翌年にならなければ行えない)。
-
EUに輸出される前に少なくとも2年間、次の条件を満たしていること。
- 地面から少なくとも50cm以上離れた棚の上に置かれた鉢で栽培するか、ネマトーダ(線虫類)が侵入できないよう、コンクリートの床の上に置かれた鉢で栽培していること。
- 前述の検査の際に検疫対象病害虫が発見されず、登録ほ場の登録が取り消されていないこと。
- なお、これらの植物がマツ属に属する場合で、ゴヨウマツとクロマツ以外の台木に接木する場合は、健全なものであり、植物防疫所によって認められた供給元の台木を使用していること。
- それぞれの植物に、登録ほ場が特定でき、植え付けた年を識別できる特定のラベルや標識を付すこと。当該ラベルは、植物防疫所に通知されたものであること。
- 登録ほ場を出てから輸出の船積みまでの間、輸送車両の密閉などにより、植物体の識別が追跡可能である(トレーサビリティである)こと。
- 植物および当該植物に付着あるいは一体化した培地に関して、植物防疫所が発行した植物検疫証明書を添付することにより、上記および前述の【A】(実施規則(EU)2019/2072 ANNEX VII 30項)が順守されていることを証明する。植物検疫証明書には、登録ほ場の名前、前述の植え付けた年を識別できる特定のラベル、最後に施した処理の詳細と発送通知、さらに、Additional Declarationの欄に「This consignment meets the conditions laid down in Commission Implementing Regulation (EU) 2020/1217」と記載する。
-
受託品の責任を負うオペーレーターは、EU域内に到着する前に、IMSOC経由で共通衛生入域文書(CHED-PP)の関連部分を完成させ、各ロットの少なくとも植物および培地のタイプ、数量、輸入申告日、輸入検疫中に植物を保管する認可された場所を送信する。加盟国は輸入者に対し、輸入前に本規則で規定されている条件を通知する必要がある。
輸入通関前に検疫所または認定された隔離施設(保管倉庫)で次の期間、隔離栽培・検査の対象となる。- マツ属、ヒノキ属については、少なくとも3カ月以上
- ビャクシン属については、4月1日から6月30日まで
- 隔離検疫中に検疫対象病害虫が発見された場合、当該盆栽を含むロットはすべて当局または専門事業者の監視のもと、ただちに廃棄される。
- また、輸入国は、欧州委員会およびほかの加盟国に隔離検疫中に検疫対象病害虫が発見された旨を通知し、欧州委員会はその旨を日本に通知する。その場合、当該登録ほ場の登録は取り消される。
- 隔離期間中に検疫対象病害虫が存在しないことが明らかになった盆栽は、規則(EU)2016/2031の第79条に規定される植物パスポートが発行され、当該植物パスポートが添付されている場合に限り、EU域内で移動させることができる。
植物パスポートは、隔離検疫をクリアすれば自動的に発行されるわけではありません。EU域内での移動が必要な場合は、隔離検疫クリア後に、植物パスポートを取得する必要があります。英国においても、当面の間EU規則と同様の対応が必要です。
なお、植物パスポートのラベル表示の詳細は、食品関連の規制「6. ラベル表示」を参照してください。植物パスポートの登録番号の取得方法については、輸入手続き「3. 輸入時の検査・検疫」を参照してください。
なお、その他のマツ属(Pinus L)およびベイマツ(Pseudotsuga menziesii)の盆栽に関する緊急措置に関しては、輸入関税等の「3.その他」を確認してください。
EUでの輸入手続き
1. 輸入許可、商品登録、輸入ライセンス等(登録に必要な書類)
調査時点:2021年6月
EUでは、規則(EU) 2016/2031の第65条に基づき、植物検疫証明書または植物パスポートが必要とされる植物を輸入する事業者や物流業者は専門事業者(Professional Operator)として各加盟国の当局への登録が義務付けられています。
専門事業者(Professional Operator)とは、植物、植物製品、その他のものに関して次の活動を専門的に実施し、「隔離病害虫を発見した場合、ただちに関係当局に通知する」など、法的責任を有する事業者を指します。さらに、当局に認可された「専門事業者」は生産地や保管倉庫などで管轄品目の植物パスポートを発行する権限を認められています。
- 栽植 (planting)
- 育種 (breeding)
- 生産 〔育成 (growing)、増殖 (multiplying)、管理 (maintaining)を含む〕
- EU への導入
- EU 域内の移動
- EU 域内の移動
- 市場への導入 (making available on the market)
- 保管、収集、発送、加工(processing)
フランスの場合、フランス農業・食料省管轄の地域食品農林局(DRAAF:Direction Régionale de l'Alimentation, de l'Agriculture et de la Forêt)が管轄で、「専門事業者の登録」手続きは2019年までは書類での申請でしたが、2019年11月27日から電子化が進められており、電子システムでの登録に統一されています。うまくいかない場合は紙での申請も可能です。アカウント作成方法や詳細は、フランス農業・食料省のウェブサイトで確認することができます。
また、盆栽や実施規則(EU) 2019/2072の ANNEX XIII に記載されている一部の植物を第三国からEU域内へ輸入し、EU域内で流通させる際には、植物パスポート(Plant Passports)とよばれるラベルを添付する必要があります。旧制度では特定の栽植用植物についてのみ植物パスポートが求められていましたが、新制度の下ではすべての栽植用植物に対して、EU 域内での移動に際し、遠隔販売を含め、植物パスポートが要求されるようになっています。
主に、種子以外のすべての栽植用の植物(苗、球根、塊茎など)、カンキツ属、キンカン属、カラタチ、サンショウ属、ブドウ属の植物(果実と種子を除く)、カンキツ属、キンカン属、カラタチの果実で、葉と花柄(枝と果実をつなぐ軸の部分)を伴うもの、一部の樹木や一部の種子などが対象となります。
第三国から輸入され「植物パスポート」が必要な場合は、国境管理所(BCP: Border Control Post)において、書類検査、リスクに応じて同一性検査(添付書類とのチェック)、あるいは現物検査(サンプル検査など)が行われ、要件を満たされていることが確認されると、発行されます。なお、各加盟国の手続きについては、輸入手続きの「3 . 輸入時の検査・検疫」を確認してください。
その他、「専門事業者」や「植物パスポート」に関連する規制に関しては、ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」で確認してください。
関連リンク
- 関係省庁
-
フランス農業・食料省
- 根拠法等
-
規則 (EU) No 2016/2031(英語)
-
実施規則(EU)2019/2072(英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。 - その他参考情報
-
フランス農業・食料省(フランス語)
-
フランス農業・食料省 ホームページ「植物専門事業者の登録手続き」(フランス語)
-
フランス農業・食料省 「電子手続きユーザーガイド」(フランス語)
-
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局「EU以外の国からの植物および植物製品の取引」(Trade in plants & plant products from non-EU countries)(英語)
-
ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」
2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)
調査時点:2021年6月
日本から花きを輸入するにあたっては、次の書類が必要になります。
- 通関申告書(単一管理文書 (SAD : Single Administrative Document)) EU域外の第三国とのすべての輸出入手続きに必要な共通申請書。様式は委員会実施規則(EU) 2016/341 Appendix B1に記載されています。
- インボイス(商業送り状)
- パッキングリスト(包装明細書: P/L)
- 価格申告書(Customs Value Declaration)
CIF価格が2万ユーロを超える場合、SADと併せて価格申告書の提出を求められます。様式は規則 (EU) 2016/341 ANNEX 8に記載されています。 - 船荷証券(Bill of Lading: B/L)/航空運送状(Air Waybill: AWB)
- 植物検疫証明書
- 共通衛生入域文書(Common Health Entry Documents: CHED-PP)
2019年12月14日から、公的管理の新規則 (EC) 2017/625 が適用開始となり、貨物の到着1日前までに共通衛生入域文書(CHED : Common Healthy Entry Document)をTRACES などの電子システム経由で国境管理所(BCP:Border Control Post)に通知する必要があります。
なお、日EU・EPAの特恵税率の適用を受けるには、当該輸出品の原産地が日本である旨を証明する原産地証明が必要となります。日EU・EPAでは、自己申告による原産地証明制度が採用されており、輸出者、輸入者または通関業者のいずれかが、自ら原産地を証明することになります。原産地証明に関する詳細は、税関のウェブサイトで確認できます。
関連リンク
- 関係省庁
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欧州委員会(英語)
- 根拠法等
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規則 (EU) No 2016/2031(英語)
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規則 (EU) No 2017/625 (英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。 - その他参考情報
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実施規則 (EU) 2016/341 (英語)
3. 輸入時の検査・検疫
調査時点:2021年5月
EUへ花きを輸入するにあたっては、公的管理の対象となるため、EU域内の国境管理所(BCP: Border Control Post)において、書類検査、リスクに応じて同一性検査(添付書類とのチェック)、あるいは現物検査(サンプル検査など)が行われます。なお、国境管理所(BCP)で実施される輸入品に対する公的管理(輸入検疫)には、関係当局より、当該公的管理の対象となった事業者(輸入品の場合は当該貨物に責任を有する者)に対して一定の手数料が課されます。手数料については、公的管理の新規則(EC)2017/625 のANNEX IV (VIII) に記載されています(書類検査 7ユーロ、同一性検査7〜14 ユーロ、現物検疫検査アイテム・重量により変動)。
また、公的管理の強化期間中に同じ業者または国からの貨物が同じ違反を3回した場合は、欧州委員会は第三国の発送国の当局に対し必要な調査と是正を要請します。
国境管理所での公的管理の結果、当該貨物が公的管理の対象法令などに適合していることを確認された場合、共通衛生入域文書 (CHED-PP) は関係当局により最終化(finalize)されます。税関は、正式に最終化された CHED-PPが提示された場合にのみ、貨物の自由流通を許可すると規定されており、当該貨物の責任者(輸入業者や乙仲)は、最終化された CHEDを税関に提示することで、通関手続き(カスタム・クリアランス)を行うことができます。これらはTRACES などの電子システム経由で処理されます。
フランスにおいては、税関に植物検疫証明書が必要な植物や植物製品が到着すると、植物検疫検査が国境動植物検疫所(SIVEP:service d'inspection vétérinaire et phytosanitaire aux frontières)により行われます。書類確認、現物チェックまたは検疫検査が終わると(あるいは、フランスの検疫当局と協定を結んでいるほかの加盟国の検疫検査当局による検査が終了している場合は)、「防疫移動書類(Document Phytosanitaire de transport)」が検査終了までに発行され、「植物通行許可証(Laissez-Passer phytosanitaire)」が発給されると通関することができます。到着した税関とは別の税関局を通った場合、さらに検査が必要と判断されたときは追加の検査が行われます。
関連リンク
- 関係省庁
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欧州委員会(英語)
- 根拠法等
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規則 (EU) No 2017/625 (英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。 - その他参考情報
- ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」
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各加盟国の国境管理所(BCP)の連絡先(英語)
4. 販売許可手続き
調査時点:2021年5月
規則(EU) 2016/2031第79条に基づき、種子を除くすべての栽培用植物の販売、遠隔販売を含めたEU域内の移動には、原則としてEUで統一された植物パスポートが必要です(個人使用など一部例外を除く)。
植物パスポートは、管轄当局または管轄当局から認可を受けた専門事業者が発行します。
フランスの場合、フランス農業・食料省管轄の地域食品農林局(DRAAF:Direction Régionale de l'Alimentation, de l'Agriculture et de la Forêt)により認可された専門事業者(Opérateurs professionnels) が植物パスポートを発行します。対象植物の輸入者は、専門事業者に申請し、梱包材を含め、要件を満たしていることが確認されると植物パスポートが発行されます。ただし、一部の植物に関しては例外として、直接当局(DRAAF、フランス・アグリメール または全国種苗業種間連合会(GNIS-SOC))からの発給が必要となります。検査方法の手法などの詳細は管轄地域にあるDRAAFまたは輸入業者へ問い合わせてください。
さらに、「1.輸入許可、商品登録、輸入ライセンス(登録に必要な書類)」で説明したとおり、植物検疫証明書や植物パスポートが必要とされる植物を輸入する事業者や物流業者は「専門事業者の登録(Professional Operator)」が必要とされていますが(規則(EU) 2016/2031第65条)、手続きは各国で異なるため確認が必要です。
フランスの場合、フランス農業・食料省管轄の地域食品農林局(DRAAF:Direction Régionale de l'Alimentation, de l'Agriculture et de la Forêt)が管轄で、「専門事業者の登録」手続きは2019年までは書類での申請でしたが、2019年11月27日から電子化が進められており、すべて電子システムでの登録に統一されています。システムで手続きが完了できない場合は紙での申請も可能です。既に農業食糧省の食品総局 (DGAL)、フランス・アグリメール 、全国種苗業種間連合会(GNIS-SOC)により、発給された登記番号INUPPを取得済みの場合、新たな登録は不要です。フランスまたはEU域内で植物などの生産や販売にかかわる場合は、事業をはじめる前に申請する必要があります。また、情報の更新がある場合は、毎年4月30日より前に申し出る必要があります。
関連リンク
- 関係省庁
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欧州委員会(英語)
- 根拠法等
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指令2000/29/EC(英語)
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規則 (EU) No 2016/2031(英語)
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実施規則(EU)2019/2072(英語)
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規則 (EU) No 2017/625 (英語)
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。 - その他参考情報
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欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 Trade in plants & plant products from non-EU countries(英語)
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フランス農業・食料省「植物パスポートに関連する事業者の年次活動報告」(フランス語)
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フランス農業・食料省「植物パスポートが必要とされる場合について」(フランス語)
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フランス農業・食料省 ホームページ「植物専門事業者の登録手続き」(フランス語)
- ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」
5. その他
調査時点:2021年6月
なし