ドイツの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • GDP成長率は0.3%増を記録。2年続いたマイナス成長から脱却した。
  • 輸出入は3年ぶりに増加。輸出では航空機・関連機器が、輸入では航空機・関連機器とその他医薬品が増加に寄与。
  • 対内・対外直接投資額は増加。対外直接投資では、米国向けM&Aや防衛投資が拡大。
  • 対日輸出入はともに減少。日独間の直接投資は低調。

公開日:2026年10月2日

マクロ経済

3年ぶりのプラス成長も、輸出は低迷

2025年のドイツの実質GDP成長率(物価、季節、稼働日調整済み)は前年比0.3%増となり、2023年0.7%減、2024年0.5%減と2年続いたマイナスからプラス成長に転じた。

2025年2月の総選挙を経て、5月にキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)による新連立政権が発足した。新政権は投資促進や法人税減税、エネルギー価格引き下げなどを盛り込んだ経済政策を掲げたが(2025年4月11日付ビジネス短信参照)、2025年の実質GDP成長率は小幅なプラスにとどまった。

2025年の内需は、民間消費や政府支出の増加が経済成長を下支えした。民間最終消費支出は前年比1.3%増、政府最終消費支出は1.5%増となったほか、国内総固定資本形成も前年の3.0%減から3.3%増へと回復した。

一方で、輸出は引き続き減少した。ドイツ連邦統計局(以下、連邦統計局)によると、ドイツの輸出産業は米国の関税引き上げ、ユーロ高、中国企業との競争激化といった逆風に直面した。また、設備投資や建設投資も低調で、機械・設備および建設分野の固定資本形成は前年を下回った。

産業別では、製造業の総付加価値が3年連続で減少した。なかでも自動車産業と機械産業は世界市場での競争激化の影響を受けたほか、化学産業などエネルギー多消費型産業も低迷が続いた。建設業も厳しい状況が続き、総付加価値は前年比3.6%減となった。

2026年の経済見通しについて、ドイツ連邦政府は実質GDP成長率を1.0%と予測している。政府は、公共投資の拡大や税制優遇措置を背景に国内経済が回復すると見込む一方、米国の関税措置や中国との競争激化などを受け、輸出環境は引き続き厳しいとの見方を示している。また、インフラ投資や構造改革を通じて潜在成長の底上げを図る方針を示している。

表1 ドイツの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前期比かつ物価、季節、稼働日調整済み。需要項目別は物価調整済み。年間の実質GDP成長率は物価、季節、稼働日調整済み。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 △ 0.7 △ 0.5 0.3 0.4 △ 0.2 0.0 0.3
民間最終消費支出 △ 0.7 0.5 1.3 1.1 0.1 △ 0.3 0.6
政府最終消費支出 △ 0.2 2.6 1.5 △ 0.7 0.2 0.7 1.5
国内総固定資本形成 △ 1.9 △ 3.0 3.3 0.5 △ 0.9 0.1 1.3
財・サービスの輸出 △ 1.4 △ 2.1 △ 0.9 3.4 △ 1.2 △ 1.1 △ 1.5
財・サービスの輸入 △ 1.4 △ 0.6 3.1 1.6 0.8 △ 0.4 1.0

〔注〕四半期の伸び率は前期比かつ物価、季節、稼働日調整済み。需要項目別は物価調整済み。年間の実質GDP成長率は物価、季節、稼働日調整済み。

〔出所〕ドイツ連邦統計局

貿易

EU向け輸出が回復、米中向けは減少

連邦統計局のデータによると、2025年の貿易は輸出が前年比0.9%増の1兆5,641億4,900万ユーロ、輸入が4.2%増の1兆3,618億7,400万ユーロで、輸出入ともに3年ぶりに増加へ転じた。貿易黒字は2,022億7,500万ユーロで、輸入の伸びが輸出のそれを上回り、前年の2,428億8,700万ユーロから406億1,200万ユーロ縮小した。

輸出を品目別に見ると、最大の機械および輸送用機器(構成比46.2%)が前年比0.2%増の7,233億100万ユーロとほぼ横ばいであった。同品目の内訳を見ると、乗用車(10.0%)が3.5%減、自動車部品(3.6%)が6.6%減、貨物自動車(1.0%)が3.5%減となり、自動車関連輸出は低迷が続いた。一方、電気機器およびその部分品(8.8%)は2.8%増となり、電気回路開閉機器(2.6%)の5.6%増、熱電子管・半導体(1.6%)の1.7%増など増加した品目もあった。輸出額2位の化学製品(17.1%)は0.8%減となった。一方、その他輸送機器(3.0%)は10.6%増で、このうち航空機・関連機器(2.3%)は8.4%増と輸出額増加に寄与した。

輸出を国・地域別に見ると、最大の輸出先であるEU(構成比55.8%)は前年比4.1%増となった。このうちユーロ圏向け(39.2%)は4.0%増で、EU域内最大の輸出先であるフランス(7.5%)は1.9%増だった。内訳では、乗用車(8.1%)が10.2%減となった一方、航空機・関連機器(6.2%)が32.2%増、機用品・再輸入品(3.6%)が27.0%増となった。このほかユーロ圏では、オランダ(7.2%)が2.8%増、イタリア(5.3%)が4.0%増、オーストリア(5.1%)が4.7%増、スペイン(3.8%)が10.0%増となった。非ユーロ圏ではポーランド(6.4%)が7.1%増、チェコ(3.4%)が4.8%増となった一方、ハンガリー(2.0%)は5.0%減となった。

EU域外では、最大の輸出先である米国(構成比9.4%)が前年比8.9%減となった。内訳を見ると、乗用車(13.7%)が19.8%減、航空機・関連機器(1.9%)が51.5%減となり、前年から一転してマイナスに転じた。医薬品(12.3%)は8.0%増だった一方、その他医薬品(6.5%)は13.0%減だった。

そのほか、中国向け(構成比5.2%)も前年比9.7%減と大きく輸出額を減らした。光学機器(2.1%)の18.5%増、航空機・関連機器(5.2%)の74.8%増などがあった一方、乗用車(7.6%)の43.6%減、自動車部品(8.2%)の20.1%減など構成比が高い品目の下げ幅が大きく、全体で大幅減となった。

機械・輸送用機器の輸入増により輸入は回復

輸入を品目別に見ると、最大の機械および輸送用機器(構成比38.2%)は前年比6.5%増となった。同品目の内訳を見ると、乗用車(5.1%)が2.5%増、自動車部品(3.2%)が3.7%増となったほか、航空機・関連機器(1.3%)は54.9%の大幅増となった。第2の輸入品目である化学製品(13.9%)は2.4%増となり、なかでもその他医薬品(2.9%)の20.2%増などが全体の増加に寄与した。鉱物性燃料・潤滑剤(7.5%)は3.4%減となった。品目別の内訳を見ると、原油・粗油(2.6%)の20.0%減、石油製品(1.6%)の8.9%減など、石油・石油製品が大幅に減少した一方で、天然ガス(2.1%)は41.8%増となり、品目内での増減が分かれた。また、特殊取扱品(3.8%)については29.4%減と下げ幅が大きく、非貨幣用金(1.0%)は93.7%と2倍に迫る増加が見られたが、機用品・再輸入品(2.6%)が45.7%減と大幅に減少した。

輸入を国・地域別に見ると、最大の輸入元であるEU(構成比51.4%)は前年比3.1%増、うちユーロ圏(34.5%)は2.5%増だった。ユーロ圏内最大の輸入元オランダ(7.1%)は4.3%増で、輸入品目トップの石油製品(12.7%)が11.5%減となったほか、炭化水素・同誘導体(1.0%)は30.4%減、機用品・再輸入品(3.7%)は54.6%減となった。一方で、その他電気機器(1.0%)が85.6%増、電力(1.3%)が64.7%増となり、全体では増加を維持した。また、イタリア(5.3%)の7.7%増、フランス(5.1%)の3.2%増、オーストリア(3.9%)の3.2%増などが寄与し、ユーロ圏からの輸入はプラスに転じた。非ユーロ圏(17.0%)も4.3%増加した。主要な輸入元であるポーランド(5.9%)が4.0%増、チェコ(4.6%)が5.7%増、ハンガリー(2.6%)が1.8%増だった。

構成比が最大(12.6%)の中国は、前年比9.1%増と伸長した。電気機器およびその部分品(21.8%)の12.5%増、衣類およびその他付属品(6.1%)の21.2%増、その他雑製品(6.9%)の16.7%増などが寄与した。中国に次ぐ相手国である米国(6.9%)は2.7%増と小幅な増加にとどまった。石油・石油製品(7.9%)は30.5%減と大幅減となった一方で、その他輸送機器(5.3%)の86.9%増、医薬品(15.7%)の8.8%増などにより、全体としては増加した。

表2-1 ドイツの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 721,933 723,301 46.2 0.2
道路走行車両 254,749 245,362 15.7 △ 3.7
乗用車 162,350 156,643 10.0 △ 3.5
自動車部品 60,649 56,662 3.6 △ 6.6
貨物自動車 15,621 15,074 1.0 △ 3.5
電気機器およびその部分品 134,557 138,338 8.8 2.8
電気回路開閉機器 38,320 40,485 2.6 5.6
その他電気機器 28,031 27,688 1.8 △ 1.2
熱電子管・半導体 25,069 25,483 1.6 1.7
一般工業用機械類およびその部分品 113,414 113,120 7.2 △ 0.3
産業用機械 64,713 62,972 4.0 △ 2.7
原動機 49,692 51,792 3.3 4.2
その他輸送機器 42,091 46,549 3.0 10.6
航空機・関連機器 33,816 36,658 2.3 8.4
事務用機器および自動データ処理機械 23,834 25,778 1.6 8.2
通信機器,音声記録および音声再生装置 23,895 25,547 1.6 6.9
化学製品 270,006 267,968 17.1 △ 0.8
医薬品 114,876 116,806 7.5 1.7
その他医薬品 62,921 65,369 4.2 3.9
医薬品 51,954 51,438 3.3 △ 1.0
その他化学物質および製品 38,964 37,724 2.4 △ 3.2
プラスチック 27,517 26,024 1.7 △ 5.4
有機化学品 26,444 25,428 1.6 △ 3.8
原料別製品 178,073 177,225 11.3 △ 0.5
その他金属製品 47,300 47,182 3.0 △ 0.2
非鉄金属 29,498 32,605 2.1 10.5
鉄鋼 31,383 28,986 1.9 △ 7.6
雑製品 171,887 175,969 11.3 2.4
計測機器および制御機器 57,633 59,363 3.8 3.0
その他雑製品 46,870 49,044 3.1 4.6
食料品および生きた動物 80,975 85,932 5.5 6.1
特殊取扱品 52,588 61,743 3.9 17.4
鉱物性燃料、潤滑剤 35,716 32,821 2.1 △ 8.1
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 25,310 25,722 1.6 1.6
飲料およびたばこ 10,041 10,249 0.7 2.1
動植物性油脂、脂肪、ろう 3,048 3,219 0.2 5.6
合計(その他含む) 1,549,577 1,564,149 100.0 0.9

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。

〔出所〕ドイツ連邦統計局

表2-2 ドイツの主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 487,878 519,782 38.2 6.5
電気機器およびその部分品 133,332 142,613 10.5 7.0
その他電気機器 39,407 43,044 3.2 9.2
電気回路開閉機器 24,461 25,962 1.9 6.1
熱電子管・半導体 24,947 25,193 1.8 1.0
道路走行車両 131,397 136,154 10.0 3.6
乗用車 67,150 68,827 5.1 2.5
自動車部品 42,360 43,943 3.2 3.7
一般工業用機械類およびその部分品 55,332 59,004 4.3 6.6
原動機 41,523 44,997 3.3 8.4
通信機器,音声記録および音声再生装置 42,319 43,047 3.2 1.7
事務用機器および自動データ処理機械 37,228 40,680 3.0 9.3
その他輸送機器 19,758 24,747 1.8 25.3
航空機・関連機器 11,271 17,461 1.3 54.9
化学製品 185,374 189,769 13.9 2.4
医薬品 73,495 76,869 5.6 4.6
その他医薬品 32,338 38,860 2.9 20.2
医薬品 41,157 38,009 2.8 △ 7.6
有機化学品 35,947 33,597 2.5 △ 6.5
有機置換無機化合物 18,850 17,717 1.3 △ 6.0
雑製品 157,586 173,587 12.7 10.2
その他雑製品 41,263 46,893 3.4 13.6
衣類およびその付属品 38,498 42,435 3.1 10.2
計測機器および制御機器 33,567 35,127 2.6 4.6
原料別製品 146,385 156,411 11.5 6.8
非鉄金属 30,672 33,166 2.4 8.1
その他金属製品 34,085 38,024 2.8 11.6
食料品および生きた動物 93,926 106,496 7.8 13.4
鉱物性燃料、潤滑剤 105,174 101,620 7.5 △ 3.4
石油,石油製品 71,403 59,933 4.4 △ 16.1
原油・粗油 44,761 35,816 2.6 △ 20.0
石油製品 24,620 22,427 1.6 △ 8.9
天然ガスおよび製造ガス 21,473 29,887 2.2 39.2
天然ガス 20,154 28,585 2.1 41.8
特殊取扱品 72,836 51,431 3.8 △ 29.4
特殊取扱品(種類別に分類されないもの) 64,150 34,837 2.6 △ 45.7
機用品,再輸入品 64,150 34,837 2.6 △ 45.7
金(非貨幣用。金の加工くずを含み,金鉱は除く) 8,567 16,469 1.2 92.2
非貨幣用金 7,130 13,812 1.0 93.7
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 40,900 45,067 3.3 10.2
飲料およびたばこ 12,210 13,011 1.0 6.6
動植物性油脂、脂肪、ろう 4,422 4,702 0.3 6.3
合計(その他含む) 1,306,690 1,361,874 100.0 4.2

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。

〔出所〕ドイツ連邦統計局

表3-1 ドイツの主要国・地域別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
国・地域 輸出(FOB)
2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 839,346 873,569 55.8 4.1
ユーロ圏 590,068 613,716 39.2 4.0
フランス 115,151 117,336 7.5 1.9
オランダ 109,343 112,400 7.2 2.8
イタリア 80,271 83,492 5.3 4.0
オーストリア 76,440 80,014 5.1 4.7
スペイン 53,758 59,145 3.8 10.0
ベルギー 58,408 58,548 3.7 0.2
非ユーロ圏 249,279 259,853 16.6 4.2
ポーランド 93,464 100,139 6.4 7.1
チェコ 51,037 53,469 3.4 4.8
ハンガリー 32,155 30,555 2.0 △ 5.0
英国 80,324 79,857 5.1 △ 0.6
アジア大洋州 203,777 189,389 12.1 △ 7.1
ASEAN 27,548 25,993 1.7 △ 5.6
シンガポール 7,059 6,544 0.4 △ 7.3
マレーシア 6,600 5,908 0.4 △ 10.5
タイ 5,049 4,906 0.3 △ 2.8
中国 89,934 81,250 5.2 △ 9.7
韓国 19,592 17,875 1.1 △ 8.8
日本 21,572 21,003 1.3 △ 2.6
米国 161,427 147,046 9.4 △ 8.9
スイス 67,964 73,808 4.7 8.6
トルコ 28,319 29,370 1.9 3.7
ロシア 7,568 6,907 0.4 △ 8.7
合計(その他含む) 1,549,577 1,564,149 100.0 0.9

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。

〔出所〕ドイツ連邦統計局

表3-2 ドイツの主要国・地域別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
国・地域 輸入(CIF)
2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 679,386 700,387 51.4 3.1
ユーロ圏 457,884 469,356 34.5 2.5
オランダ 93,049 97,041 7.1 4.3
イタリア 67,232 72,395 5.3 7.7
フランス 66,928 69,077 5.1 3.2
オーストリア 51,953 53,632 3.9 3.2
ベルギー 47,472 47,132 3.5 △ 0.7
スペイン 39,470 39,174 2.9 △ 0.7
非ユーロ圏 221,502 231,032 17.0 4.3
ポーランド 77,314 80,394 5.9 4.0
チェコ 58,769 62,111 4.6 5.7
ハンガリー 34,265 34,894 2.6 1.8
英国 36,183 38,541 2.8 6.5
アジア大洋州 279,300 298,332 21.9 6.8
ASEAN 52,267 56,951 4.2 9.0
ベトナム 15,269 18,202 1.3 19.2
マレーシア 10,793 10,730 0.8 △ 0.6
タイ 8,483 9,426 0.7 11.1
中国 156,847 171,174 12.6 9.1
日本 22,591 22,047 1.6 △ 2.4
台湾 13,982 14,547 1.1 4.0
韓国 13,633 12,189 0.9 △ 10.6
米国 91,828 94,351 6.9 2.7
スイス 52,582 55,459 4.1 5.5
ノルウェー 25,807 26,538 1.9 2.8
トルコ 23,461 25,476 1.9 8.6
ロシア 1,826 1,272 0.1 △ 30.4
合計(その他含む) 1,306,690 1,361,874 100.0 4.2

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。

〔出所〕ドイツ連邦統計局

対内・対外直接投資

対内直接投資額は増加、AI・半導体関連投資が活発に

ドイツ連邦銀行(以下、中銀)によると、2025年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は861億4,500万ユーロとなり、前年の573億5,100万ユーロから50.2%増加した。

国・地域別に見ると、EUからの投資が431億2,200万ユーロと最大となった。国別では、英国からの投資が前年の引き揚げ超過から263億6,500万ユーロの流入超へ転じた一方、米国からの投資は前年から減少した。

M&Aの個別投資案件としては、米国のカーライル・グループ(Carlyle Group)とカタール投資庁(QIA)による化学大手BASFの77億ユーロでの買収や、ドイツの総合金融・保険グループのアリアンツ(Allianz)や米国のブラックロック(BlackRock)などによる生命保険大手ヴィリディウム(Viridium Group)の35億ユーロでの買収など、大型案件が目立った。

M&A以外では、オランダの年金運用会社APGアセットマネジメント(APG Asset Management)などのコンソーシアムによる送配電事業者テネット・ジャーマニー(TenneT Germany)への95億ユーロの出資や米国のグーグル(Google)による約55億ユーロのAI・クラウドインフラ投資が発表された。半導体分野では米国のグローバル・ファウンドリーズ(GlobalFoundries)がドレスデン工場に11億ユーロを投資すると発表したほか、同じく米国のオラクル(Oracle)も今後5年間でドイツ国内のAI・クラウド基盤に20億ドルを投じる計画を明らかにしており、2024年に引き続きAIや半導体関連分野への投資が活発となっている。

外国資本によるドイツ企業の買収や資本参加は、対外経済法に基づく事前投資審査制度の対象となる。審査の結果、ドイツや他のEU加盟国の公の秩序や安全保障を脅かすと判断された場合には、ドイツ連邦政府は買収の禁止を含む投資制限措置を講じることができる。連邦経済・エネルギー省によると、事前審査が行われた投資案件は2021年と2022年は306件で横ばいだったが、2023年は257件、2024年は261件となった後、2025年は339件へ増加した。投資元国別に見ると、2025年に事前審査の対象となった339件のうち、米国が159件と最も多く、英国(チャネル諸島含む)が41件、中国が33件となった。また、これら339件のうち、投資制限措置が講じられた案件は8件だった。なお、2026年1月15日時点で、2025年に受理された45件については審査が継続中であり、今後数値が変動する可能性がある。

一方、ドイツ貿易・投資振興機関(GTAI)によると、2025年の国外からの投資案件数(新規進出、事業拡張、事業移転)は1,564件となり、前年比9.3%減少した。これは2020年以降では最も低い水準である。また、2025年は世界的に投資活動が低迷し、投資案件数は世界全体で前年比9.5%減、欧州で15.7%減、EUでは18.1%減となったが、ドイツの減少幅(9.3%減)はこうした世界・欧州の動向と比べると小幅にとどまった。なお、同統計は企業の新規進出、事業拡張および事業移転を対象としており、買収・合併(M&A)は含まれていない。投資元地域別では、EUが全体の33%を占めて最大となり、アジア(25%)、EU域外の欧州諸国(24%)、北米(15%)が続いた。国別では中国が228件でトップとなり、米国(206件)、スイス(174件)、英国(117件)、オランダ(89件)が続いた。また、投資総額は118億ユーロとなり、前年の232億ユーロから約半減した。一方、5億ユーロ超の大型案件は7件となった。業種別では、デジタル分野が全体の17%と最も多く、次いで電子・自動化(16%)、モビリティ・物流(15%)、エネルギー・資源(14%)となった。事業活動別では販売・マーケティング・サポート拠点が34%を占めたほか、生産・研究開発拠点は19%となった。

対外直接投資額も増加、米国向けM&Aや防衛投資が拡大

中銀によると、2025年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は772億5,000万ユーロとなり、前年の421億9,100万ユーロから83.1%増加した。国・地域別に見ると、北米向けが284億8,300万ユーロと最大となり、次いでEU向けが246億2,700万ユーロだった。国別では、米国向けが266億4,600万ユーロと最も多く、前年の260億6,900万ユーロから増加した。一方、中国向けも35億500万ユーロとなり、前年の11億8,000万ユーロから拡大した。また、英国向けも49億9,400万ユーロと前年から2.4倍増加した。

個別投資案件では、M&A分野において、シーメンスによる米国ソフトウエア企業ドットマティクス(Dotmatics)の約51億ドルでの買収や、メルク(Merck)による米国バイオ医薬品企業スプリングワークス・セラピューティクス(SpringWorks Therapeutics)の約34億ドルでの買収、インフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)による米国マーベル・テクノロジー(Marvell Technology)の車載イーサネット事業の25億ドルでの買収など、米国企業・事業を対象とした大型案件が相次いだ。M&A以外では、アルディ(Aldi)による英国での小売店舗拡充に向けた投資や、ボッシュ(Bosch)による中国での自動運転関連の研究開発・生産拠点整備が発表された。また、防衛装備大手ラインメタル(Rheinmetall)はブルガリア、ルーマニア、ラトビアで防衛関連の生産能力拡大を進めており、防衛産業分野への投資も目立った。

表4 ドイツの国・地域別対内・対外直接投資〔国際収支ベース、ネット、フロー〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 金額 金額
EU 44,328 43,122 △ 4,130 24,627
ユーロ圏 39,746 25,075 △ 3,194 25,099
ルクセンブルク 18,832 10,049 △ 8,972 △ 10,878
オランダ 8,832 10,530 17,189 20,476
アイルランド 9,133 △ 2,368 △ 11,144 △ 2,321
ベルギー 1,475 △ 7,300 △ 15,720 5,378
オーストリア 2,182 3,028 2,962 3,188
フランス 8,540 10,063 492 △ 649
イタリア 602 2,360 17 162
非ユーロ圏 4,582 18,046 △ 936 △ 472
スウェーデン 1,971 351 △ 3,885 △ 1,207
チェコ 1,358 1,202 246 455
ポーランド 215 2,210 2,338 361
デンマーク 121 13,637 744 △ 1,629
英国 △ 14,346 26,365 2,094 4,994
スイス 4,050 2,656 2,199 5,448
ジャージー △ 236 △ 655 △ 187 △ 768
ロシア △ 145 △ 31 2,071 2,726
ノルウェー 2,026 △ 778 405 1,421
北米 20,837 10,153 26,731 28,483
米国 20,833 11,763 26,069 26,646
カナダ 4 △ 1,610 662 1,836
アジア 801 2,646 6,908 5,469
中近東 358 1,111 1,396 △ 5
サウジアラビア 763 1,088 149 △ 413
その他のアジア 442 1,535 5,512 5,474
中国 132 199 1,180 3,505
日本 1,044 694 100 △ 28
シンガポール 1,382 △ 919 △ 477 △ 1,073
香港 △ 2,737 536 954 796
韓国 56 695 327 642
台湾 321 404 △ 288 △ 171
インド 189 △ 87 1,632 1,044
大洋州 728 293 △ 2,028 △ 305
オーストラリア 661 247 △ 2,170 △ 365
ニュージーランド 25 41 110 24
中南米 △ 1,018 2,535 5,998 2,437
メキシコ △ 197 482 3,147 2,772
ケイマン諸島 △ 653 △ 367 △ 205 △ 491
ブラジル 97 71 2,217 73
チリ 2,005 2,836 △ 3 3
アフリカ △ 368 △ 335 397 406
合計(その他含む) 57,351 86,145 42,191 77,250

〔出所〕ドイツ連邦銀行

表5-1 ドイツの主な対内直接投資案件(2025年)〔M&A以外〕
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
送配電 APGアセットマネジメント(APG Asset Management)
ノルウェー中央銀行投資管理部門( Norges
Bank Investment Management)
シンガポール政府投資公社(GIC)
オランダなど 2025年9月 95億ユーロ オランダ政府は2025年9月、年金運用会社APG(オランダの公的年金基金(ABP)傘下)、ノルウェー政府系ファンド、シンガポール政府系ファンドの三者が、オランダ政府系テネットグループであるドイツの送電業者テネット・ジャーマニー(TenneT Germany)に最大95億ユーロを出資すると発表した。株式の私募を通じて最終的に約46%を取得し、エネルギー転換に伴う送電網投資で拡大する自己資本需要に対応した。IPOは実施せず、投資後もオランダ政府が最大株主の地位を維持する。なお、その後、2026年7月にドイツ政府系金融機関KfWがドイツ政府を代表し25.1%を取得した。
テネット・ジャーマニーは、ドイツの陸上および洋上送電網の大部分を運営する大手送電事業者で、今回の資本強化は欧州の電力ネットワーク強化とエネルギー安全保障を目的とするものと位置付けられている。
AI グーグル(Google) 米国 2025年11月 55億ユーロ グーグルは2026年から2029年にかけてドイツ国内のインフラとオフィスに総額55億ユーロを投資する計画を発表した。このプロジェクトは同社の欧州への継続的コミットメントの一環であるとされ、経済効果として、2029年までドイツの国内GDPを年間平均約10億ユーロ超押し上げ、約9,000人の雇用創出が見込まれている。
IT オラクル(Oracle) 米国 2025年7月 20億ドル オラクルは、ドイツにおけるAI・クラウド基盤需要の拡大に対応するため、今後5年間で20億ドルを投資すると発表した。投資の目的は、フランクフルト地域を中心とした、オラクル・クラウド・インフラストラクチャー(Oracle Cloud Infrastructure/OCI)の拡張とAIインフラ能力の大幅増強である。これにより、製造業、自動車、再生可能エネルギー、研究、医療などの分野で、民間・公共部門のクラウド移行やAI活用を支援する。ドイツ国内の主権型クラウドやAIサービス需要の拡大にも対応する。
半導体 グローバル・ファウンドリーズ
(GlobalFoundries)
米国 2025年10月 11億ユーロ グローバル・ファウンドリーズは、ドイツ東部ドレスデンの製造拠点に11億ユーロを投資し、半導体製造能力とインフラを拡張する計画を発表した。この拡張により、2028年末までに年100万枚超のウエハー生産能力を確保する計画で、完成後、同拠点は欧州最大級の半導体製造拠点となる見通し。本プロジェクトは、欧州半導体法の枠組みの下で、EUの承認を前提としてドイツ連邦政府とザクセン州政府の支援が見込まれている。今回の拡張投資は、欧州の半導体供給網の強靭化と地域内で完結する製造・データフロー体制の整備を目的とし、低消費電力、組み込み型セキュアメモリ、無線接続機能といった差別化技術に重点を置く。
蓄電池 トタル・エナジーズ
(TotalEnergies)
フランス 2025年3月 1.6億ユーロ トタル・エナジーズは蓄電池事業を拡大するため、ドイツ国内で6件の電池エネルギー貯蔵プロジェクト(計221MW)に1億6,000万ユーロを投資すると発表した。2026年中の稼働を予定している。子会社キヨン・エナジー(Kyon Energy)が本プロジェクトを開発し、グループ会社ザフト(Saft)が次世代電池を供給する。送電網の混雑を緩和するとともに電力システムの柔軟性を高めることで、ドイツにおける再生可能エネルギーの導入拡大を後押しし、電力システムの強靭性向上に寄与するとしている。ドイツは同社にとって欧州最大の電力市場と位置付けられている。
表5-2 ドイツの主な対内直接投資案件(2025年)〔M&A〕
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
化学(機能性コーティング) BASF(自動車向けコーティング事業) カーライル・グループ(Carlyle Group)
カタール投資庁(QIA)
米国
カタール
2025年10月 77億ユーロ 化学大手BASFは、同社の自動車向けコーティングおよび表面処理事業について、米投資ファンドのカーライルおよびカタール投資庁(QIA)と売却契約を締結したと発表した。買収額は約77億ユーロとされる。BASFは新会社に40%出資を維持する。売却対象にはOEM向けおよび補修用の自動車塗料、表面処理事業が含まれ、2024年の売上高は約38億ユーロ。取引完了は規制当局の承認などを経て2026年第2四半期を予定している。
生命保険ポートフォリオ管理 ヴィリディウム(Viridium) T&Dホールディングス
ブラックロック(BlackRock)
アリアンツ(Allianz)
ゼネラリ(Generali)
日本
米国
ドイツ
イタリア
2025年3月 35億ユーロ アリアンツ、ブラックロック、T&Dホールディングスなどを含むコンソーシアムは、生命保険ポートフォリオ管理会社ヴィリディウムを投資会社シンベンから取得することを発表した。取引額は約35億ユーロで、出資比率はコンソーシアム参加企業および金融投資家に配分され、T&Dホールディングスが最大の出資比率を確保する。ヴィリディウムは既存の経営体制の下で独立したプラットフォームとして運営を継続し、生命保険契約の統合・管理に特化した事業を維持する。
本件は、プライベートエクイティであるシンベンによる長期投資の終了に伴うエグジットであり、複数国の保険会社や資産運用会社が参加するコンソーシアムによる国際的なM&Aに位置付けられる。新たな出資体制のもとで、ヴィリディウムの成長および財務基盤の強化を図るとともに、細分化された欧州生命保険市場から生じる成長機会の獲得を目指す。また、保険および資産運用の専門性と資本力を背景に、契約者へのリターン向上や安定的な収益創出を目指すとしている。取引は規制当局の承認などの条件を経て完了している。
建材 クセラ(Xella) ホルシム(Holcim) スイス 2025年10月 18億5,000万ユーロ スイスの建材大手ホルシムは、欧州で持続可能な壁材システムを手がけるクセラを買収する契約を締結したと発表した。取引額は約18億5,000万ユーロで、クセラは2025年に約10億ユーロの売上高を見込む。クセラは欧州の複数市場で事業を展開する壁材分野の有力企業である。本件はホルシムの成長戦略「NextGen Growth 2030」に沿ったもので、同社は従来の建材から高付加価値の建設ソリューションへのシフトを進め、壁材分野における製品ポートフォリオの強化やクロスセル機会の拡大を図る。また、クセラ製品やデジタル建設技術を取り込むことで、持続可能な建設や低炭素化への対応を加速する狙いもある。両社は買収後3年目までに年間6,000万ユーロのシナジー創出を見込み、ホルシムの収益力向上にも寄与するとしている。取引は規制当局の承認などを条件に2026年後半の完了を予定しており、それまで両社は独立して事業を継続する。クセラ側もホルシムのグローバル展開を活用し、革新的建材ソリューションの開発を見込む。
空調 フレクト・グループ(FläktGroup) サムスン電子(Samsung Electronics) 韓国 2025年5月 15億ユーロ サムスン電子は、欧州の投資ファンドが保有していたドイツの空調・換気大手フレクトグループ(FläktGroup)の全株式を15億ユーロで取得することを発表した。フレクトグループは、エネルギー効率に優れた室内空気技術分野における欧州を代表する専門企業であり、年間売上高は7億ユーロ超、世界65カ国で事業を展開し、14カ所の生産拠点で約3,300人を雇用している。同社はデータセンター、空港、病院など向けに高効率な空調・冷却ソリューションを提供、特にデータセンター向け冷却分野で実績を有する。サムスンは本買収を通じ、AIデータセンター需要の拡大を背景に、成長が見込まれるHVAC事業を新たな成長エンジンとして強化するとしている。
AI コグニジー(Cognigy) ナイス(NiCE) イスラエル 2025年7月 約9億5,500万ドル イスラエルの顧客体験(CX)分野の大手ナイスは、ドイツのAIスタートアップ、コグニジーを約9億5,500万ドルで買収すると発表した。コグニジーは音声AIエージェントを主力とし、ルフトハンザやトヨタ、DHLなどを顧客に持つ。ナイスは同社の会話型AIを自社CXプラットフォームに統合し、AI主導のカスタマーサービスを加速する方針。
表6-1 ドイツの主な対外直接投資案件(2025年)〔M&A以外〕
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
小売 アルディ(Aldi) 英国 2025年9月 16億ポンド 小売大手アルディは、英国での事業拡大に向け、今後2年間で16億ポンドを投資すると発表した。80店舗を新規出店し、店舗網の拡充を進める計画。既存店舗数は1,060店で、同社は英国で約1,500店舗体制を目指している。今回の投資は過去最大規模であり、需要拡大に対応する形で英国事業の強化を図る。
自動車部品 ボッシュ(Bosch) 中国 2025年8月 約100億元 ボッシュ傘下の中国企業である博世汽車部件(蘇州)は中国江蘇省蘇州市の蘇州工業園区との間でインテリジェントドライビングの制御システムに関する産業革新プロジェクトの協力覚書を締結した。ボッシュは今後5年間で約100億元を投じ、同工業園区に自動運転関連のイノベーション拠点を建設する。技術開発、人材確保、試作車開発を中心に、自動運転支援システムやスマートコックピット関連製品の開発・生産を行う。
防衛 ラインメタル(Rheinmetall) ブルガリア 2025年10月 約10億ユーロ 防衛装備大手ラインメタルは、ブルガリアの国営企業VMZと合弁会社を設立し、砲弾および火薬など弾薬関連製品の生産を行うと発表した。総投資額は約10億ユーロで、ブルガリアのソポト地域に生産拠点を建設する。ラインメタルが51%、VMZが49%を出資し、約1,000人の雇用創出を見込む。生産能力は年間約10万発の砲弾と、最大15万発分の関連推進薬で、2027年以降の稼働を予定している。欧州連合およびNATOの防衛能力支援強化を目的とした取り組みの一環として位置付けられている。
防衛 ラインメタル ルーマニア 2025年11月 5億ユーロ超 防衛装備大手ラインメタルは、ルーマニアの国営企業ピロキム・ビクトリア(Pirochim Victoria)と合弁会社を設立し、弾薬用推進薬の生産を行うと発表した。総投資額は5億ユーロ超で、ルーマニア中部ブラショフ県ビクトリアに工場を建設する。合弁会社にはラインメタルが51%、ピロキム・ビクトリア側が49%出資し、約700人の雇用創出を見込む。2028年の生産開始を予定しており、欧州防衛産業における供給不足が指摘される推進薬の生産能力強化を図る。
防衛 ラインメタル ラトビア 2025年9月 2億7,500万ユーロ 防衛装備大手ラインメタルは、ラトビアにおいて155mm砲弾の生産施設を建設する計画を発表した。ラトビア政府系企業との合弁で整備するもので、覚書(MoU)を締結した。投資額は2億7,500万ユーロで、出資比率はラインメタル子会社のRWMが51%、ラトビア側が49%となる。工場は2026年春に建設を開始し、2027年ごろの生産開始を見込む。年間で数万発規模の砲弾を生産し、少なくとも150人の雇用創出を予定している。
表6-2 ドイツの主な対外直接投資案件(2025年)〔M&A〕
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
シーメンス IT ドットマティクス(Dotmatics) 米国 2025年7月 約51億ドル シーメンスは、米国ボストンに本社を置くライフサイエンス向け研究開発ソフトウエア企業ドットマティクスを買収したことを発表し、AIを活用したプロダクトライフサイクル管理(PLM)ソフトウェアのポートフォリオをライフサイエンス分野へ拡張する。これにより、研究から製造に至るまでのデータを統合するエンドツーエンドのデジタル基盤の構築を進め、創薬・開発プロセスの効率化を図るとしている。
本件はシーメンスの成長戦略「ONE Tech Company」の一環に位置付けられ、産業ソフトウェア事業の対象市場の拡大に寄与するものとされる。買収後、ドットマティクスはデジタルインダストリーズソフトウェア部門に統合される。シーメンスは、ドットマティクスの高い収益性により、中長期的には年間約1億ドル、長期的には年間5億ドル超の売上効果を見込んでいる。
メルク(Merck) 製薬 スプリングワークス・セラピューティクス(SpringWorks Therapeutics) 米国 2025年7月 約34億ドル メルクは2025年4月28日、米国のバイオ医薬企業スプリングワークス・セラピューティクスの買収契約を発表し、同年7月1日に当該買収を完了した。本件はヘルスケア事業の持続的成長の加速と希少腫瘍領域の強化を目的とするもので、買収額は約34億ドル(約30億ユーロ)とされている。
スプリングワークス・セラピューティクスは当該領域向け治療薬の開発・商業化を手掛ける企業であり、買収によりデスモイド腫瘍およびNF1関連腫瘍向け治療薬のポートフォリオが加わる。本件はメルクのヘルスケア事業において過去約20年で最大の買収と位置付けられており、買収後は売上への即時寄与と中長期的な成長の加速が見込まれている。
インフィニオン・テクノロジーズ 半導体 マーベル・テクノロジー(Marvell Technology) 米国 2025年4月 25億ドル インフィニオン・テクノロジーズは2025年4月、マーベル・テクノロジーの自動車向けイーサネット事業を買収する契約を締結した。対象事業は、低遅延・高帯域の車載通信を実現するための、自動車向けイーサネット製品群およびその関連資産である。インフィニオンは本件により、既存のマイクロコントローラー製品群との統合を通じてソフトウェア定義車両向けシステム能力の強化を図るとしている。また、本件は将来的なIoT分野やロボティクスなどへの応用機会の拡大にも資するものとされ、同社の成長戦略の一環として位置付けられている。

対日関係

輸出入ともに減少、貿易赤字は小幅拡大

連邦統計局によれば、2025年の対日貿易は輸出が前年比2.6%減の210億300万ユーロとなった。輸入は220億4,700万ユーロで、前年の225億9,100万ユーロから2.4%減となった。対日貿易赤字は、10億4,400万ユーロと、前年の10億1,900万ユーロから小幅ながら拡大した。日本はドイツにとって輸出相手国としては18位、輸入では17位の相手国で、輸出入ともに順位に変動はなかった。

対日輸出を主要品目別に見ると、主力の機械および輸送用機器(構成比47.5%)が前年比4.4%増となった。乗用車(18.1%)は1.8%減となったが、船舶・浮遊構造体(2.4%)が前年比267.9倍と急増したことなどにより、品目全体としては増加となった。その一方、化学製品(33.0%)は14.0%減となった。内訳を見ると、その他医薬品(10.5%)が40.2%減と大幅に減少し、有機置換無機化合物(5.1%)の52.0%増、医薬品(8.7%)の7.6%増を上回るマイナス要因となった。

対日輸入では、玩具・スポーツ用品(構成比3.0%)の35.5%増、二輪自動車・自転車(2.1%)の27.6%増など、増加が見られた品目もあった。しかし、有機置換無機化合物(2.3%)の35.1%減、乗用車(9.3%)の14.7%減、機用品・再輸入品(1.8%)の50.0%減などが全体の減少要因となった。

2024年に続き、両国間の投資は低調

2025年も両国間の直接投資は低調だった。日本からドイツへの直接投資は6億9,400万ユーロとなり、前年の10億4,400万ユーロから減少した。2025年の日本企業の主な投資案件としては、2025年3月、金融持ち株会社のT&Dホールディングスが、ドイツの総合金融・保険グループのアリアンツ(Allianz)、米国のブラックロック(BlackRock)などと共同でドイツの生命保険ポートフォリオ管理会社ヴィリディウム(Viridium Group)の株式を取得することを発表した。取引額は35億ユーロで、出資比率はコンソーシアム参加企業および金融投資家に配分される。

一方、ドイツから日本への直接投資は2,800万ユーロの引き揚げ超過となり、前年の1億ユーロの流入から引き揚げ超過に転じている。2025年の日本への主な投資案件としては、2025年7月、ドイツの自動車部品大手ボッシュ(Bosch)が、日立グローバルライフソリューションズおよび米国のジョンソン・コントロールズ・インターナショナル(Johnson Controls International)との合弁会社であるジョンソン・コントロールズ日立空調の買収を完了した。取引額は80億ドルで、日立グローバルライフソリューションズが保有する40%、ジョンソン・コントロールズが保有する60%の株式を取得した。この買収により、ボッシュは暖房・換気・空調(HVAC)事業の強化を図る。

表7-1 ドイツの対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 9,551 9,970 47.5 4.4
道路走行車両 4,568 4,439 21.1 △ 2.8
乗用車 3,873 3,803 18.1 △ 1.8
その他輸送機器 79 667 3.2 747.9
航空機・関連機器 54 142 0.7 165.3
船舶・浮遊構造体 2 502 2.4 26,791.4
化学製品 8,074 6,942 33.0 △ 14.0
有機化学品 1,045 1,363 6.5 30.5
有機置換無機化合物 707 1,074 5.1 52.0
医薬品 5,392 4,034 19.2 △ 25.2
医薬品 1,695 1,824 8.7 7.6
その他医薬品 3,697 2,211 10.5 △ 40.2
その他化学物質および製品 718 669 3.2 △ 6.8
他の化学工業生産品 518 454 2.2 △ 12.3
雑製品 2,073 2,110 10.0 1.8
原料別製品 1,227 1,306 6.2 6.5
非鉄金属 470 588 2.8 24.9
銀・白金属金属 309 408 1.9 31.9
食料品および生きた動物 301 315 1.5 4.8
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 171 157 0.7 △ 8.1
特殊取扱品 102 132 0.6 28.8
飲料およびたばこ 50 47 0.2 △ 6.0
鉱物性燃料、潤滑剤 18 18 0.1 △ 0.4
動植物性油脂、脂肪、ろう 5 6 0.0 17.0
合計(その他含む) 21,572 21,003 100.0 △ 2.6

〔出所〕 ドイツ連邦統計局

表7-2 ドイツの対日主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 12,790 12,529 56.8 △ 2.0
原動機 767 806 3.7 5.1
産業用機械 871 986 4.5 13.1
金属加工機械 370 314 1.4 △ 15.2
一般工業用機械類およびその部分品 1,294 1,343 6.1 3.8
電気機器およびその部分品 3,934 4,004 18.2 1.8
道路走行車両 3,122 2,896 13.1 △ 7.2
乗用車 2,397 2,046 9.3 △ 14.7
二輪自動車・自転車 356 455 2.1 27.6
雑製品 3,890 4,153 18.8 6.8
計測機器および制御機器 2,087 2,193 9.9 5.1
その他雑製品 1,065 1,227 5.6 15.2
玩具・スポーツ用品 481 652 3.0 35.5
化学製品 3,175 3,039 13.8 △ 4.3
有機化学品 1,001 730 3.3 △ 27.1
有機置換無機化合物 766 498 2.3 △ 35.1
プラスチック 323 387 1.8 19.8
その他化学物質および製品 773 806 3.7 4.3
他の化学工業生産品 723 761 3.5 5.2
原料別製品 1,561 1,532 6.9 △ 1.9
特殊取扱品 788 427 1.9 △ 45.9
特殊取扱品(種類別に分類されないもの) 782 391 1.8 △ 50.0
機用品,再輸入品 782 391 1.8 △ 50.0
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 221 206 0.9 △ 6.7
食料品および生きた動物 92 116 0.5 25.3
飲料およびたばこ 20 22 0.1 7.7
動植物性油脂、脂肪、ろう 23 16 0.1 △ 32.1
鉱物性燃料、潤滑剤 29 8 0.0 △ 72.6
合計(その他含む) 22,591 22,047 100.0 △ 2.4

〔出所〕 ドイツ連邦統計局

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) △ 0.7 △ 0.5 0.3
1人当たりGDP (米ドル) 54,793 56,087 60,439
消費者物価上昇率 (%) 2.2 2.2 5.9
失業率 (%) 6.2 6.5 6.8
貿易収支 (100万ユーロ) 225,374 236,745 185,243
経常収支 (100万ユーロ) 232,441 255,115 202,131
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 100,391 96,792 101,729
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ) 6,182,201 6,385,000 6,775,802
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.92 0.92 0.88

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、経常収支、対外債務残高(グロス):ドイツ連邦統計局
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
貿易収支:ドイツ連邦銀行