ドイツの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年のGDP成長率はマイナス0.2%で、2年連続のマイナス成長。
  • 輸出は2年連続で減少、新車輸出も微減(マイナス1.3%)。
  • 対外直接投資は2023年比で220億5,100万ユーロ減、特に一部EU諸国向けが減少。
  • 日本との直接投資は2024年、双方向で引揚超過。

公開日:2025年9月25日

マクロ経済 
不況は継続、内政の混乱による経済成長の不調

2024年のドイツの実質GDP成長率(物価、季節、稼働日調整済)は、前年比0.5%減と、2023年の0.7%減に続いてマイナス成長を記録した。

2024年は、政治的に不安定な年であった。社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の連立政権内で意見がまとまらず、経済・財政政策をめぐって11月6日に連立政権が崩壊。それ以前から政権内の不和によって政治は停滞状態にあった。ロシアのウクライナ侵攻の影響などによる物価の高騰は一旦収まったものの、エネルギー、特に電力価格は高止まりしている。エネルギー集約型産業が多いドイツにおいて経済成長を実現するには、エネルギー価格の引き下げを求める声が高いが、前政権は有効な対策を打ち出すまでには至らなかった。

2024年のドイツの内需は、政府支出の増加が民間消費の微増と設備投資の減少を補い、全体として前年のマイナスからプラス成長に転じた。政府最終消費支出は前年の減少(0.2%減)から一転、2.6%のプラスを記録している。これは主に、年金、介護、市民手当などの金銭的な社会給付の大幅な増加、および病院治療や介護などの社会的な現物給付の増加の影響が大きい。他方で民間最終消費支出は、前年比0.5%にとどまった。財・サービスの輸出は前年比で2.1%減少した。減少の主な要因としては、輸出先第5位の中国への輸出額が2024年に減少したことが挙げられる。ドイツにとって最も重要な輸出品目である乗用車および自動車部品を含む道路走行車両の輸出入も減少し、輸出は4.3%減、輸入は9.3%減であった。

2025年の経済情勢について、ドイツ連邦統計局は同年8月、第2四半期の実質GDP成長率(前期比、確定値、物価・季節・営業日調整済み)を前期比でマイナス0.3%と発表した。第1四半期のプラス成長(0.3%)からの落ち込みの要因を、建設、製造、輸出の不振に求めている(詳細は2025年9月2日付ビジネス短信参照)。景気低迷に歯止めがかからなければ、統計が発表されている1950年以降で初の3年連続マイナス成長となる可能性もある。

表1 ドイツの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 1.9 △ 0.7 △ 0.5 △ 0.1 △ 0.3 0.0 0.2
階層レベル2の項目民間最終消費支出 6.5 △ 0.7 0.5 0.4 0.1 0.2 0.4
階層レベル2の項目政府最終消費支出 0.6 △ 0.2 2.6 △ 0.0 1.8 1.0 0.5
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 △ 0.1 △ 2.0 △ 3.3 △ 0.6 △ 1.6 △ 0.5 0.6
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 3.9 △ 1.4 △ 2.1 △ 1.0 0.6 △ 1.7 △ 2.1
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 7.6 △ 1.4 △ 0.6 △ 0.3 1.5 0.2 0.2

〔注〕四半期の伸び率は前期比。物価、季節、稼働日調整済み。需要項目別は物価調整済み。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

貿易 
機械・輸送用機器の不振で輸出は2年連続減少

ドイツ連邦統計局(以下、連邦統計局)のデータによると、2024年の貿易は、輸出が前年比1.7%減の1兆5,483億100万ユーロ、輸入が3.7%減の1兆3,077億7,700万ユーロで、輸出入ともに2年連続のマイナスを記録した。貿易黒字は2,405億2,500万ユーロで、前年の2,177億4,400万ユーロから227億8,100万ユーロ拡大した。

輸出を品目別に見ると、最大の機械および輸送用機器(構成比46.2%)が前年比4.5%減となり、輸出全体のマイナスにも影響した。同品目の内訳で減少が大きいものは、乗用車(10.4%)の1.9%減、自動車部品(3.9%)の7.3%減、電気回路開閉機器(2.4%)の6.9%減などであった。連邦統計局によると、新車の輸出額は前年比1.3%減で、新車輸出全体の42%がガソリンエンジン車、電気自動車(EV)が26%、ハイブリッド車が17%、ディーゼル車が15%という構成であった。次に輸出額が大きい化学製品(17.3%)は、前年比0.8%減で、前年の約11%減と比較すると、下げ幅は縮小した。その他医薬品(医薬品および製薬製品)(3.4%)は6.1%増、医薬品(動物用を含む)(4.0%)は1.7%減、その他化学物質および製品(2.5%)は2.4%減と、品目によって増減が分かれた。

輸出を国・地域別に見ると、最大の輸出先であるEU(構成比54.1%)は前年比2.5%減となった。EU域内最大の輸出先であるフランス(7.4%)は3.7%減だった。道路走行車両(14.4%)が2.1%減、一般工業用機械類およびその部分品(6.6%)は7.2%減、電気機器およびその部分品(6.5%)は8.1%減と、トップ3の機械および輸送用機器の輸出がふるわなかった。続くオランダ(7.0%)も2.4%減となった。内訳は、道路走行車両(11.9%)が7.1%減、電気機器およびその部分品(7.8%)が13.2%減と、フランスと同様の品目で輸出額が縮小した。非ユーロ圏への輸出では、ポーランド(6.0%)、チェコ(3.3%)、ハンガリー(2.1%)の順に輸出額が大きく、この3カ国では唯一ポーランドへの輸出のみが前年比2.7%増であった。チェコは3.1%減、ハンガリーは0.8%減となった。

EU域外では、最大の輸出先である米国(構成比10.4%)が全体では2.2%増で、道路走行車両(20.3%)が2.1%増、医薬品(17.2%)が6.7%増など、堅調な伸びを見せた。なお、2024年のドイツからの医薬品輸出のうち、約4分の1(23.8%)が米国向けであった。航空・宇宙機器(輸出額58億ユーロ)や光学・写真機器(118億ユーロ)においても、米国はそれぞれ17.1%、14.9%と特に高い割合を占める輸出先で、後者には、医療機器、X線装置、放射線治療装置、その他の測定・検査機器などが含まれる。さらに、ドイツから輸出された自動車および陸上車両の13.0%(340億ユーロ)、機械類の12.6%(318億ユーロ)も米国向けであった。

そのほか、中国向け(構成比5.8%)は前年比7. 6%減と大きく輸出額を減らした。道路走行車両(21.6%)が18.1%減、電気機器およびその部分品(16.8%)が2.1%減、一般工業用機械類およびその部分品(10.2%)が1.2%減、計測機器および制御機器(8.4%)が5.3%減と、上位品目で軒並み輸出額を減らしている。

EU諸国を中心に輸入も微減

2024年の輸入を品目別に見ると、最大の機械および輸送用機器(構成比36.8%)は前年比で7.6%輸入額を下げた。同品目の内訳をみると、乗用車(5.0%)が10.3%減、自動車部品(3.3%)が2.1%減と自動車関連の輸入額を押し下げ、結果として道路走行車両(9.9%)が9.3%減となった。同じく電気機器およびその部分品(10.1%)の輸入も振るわず11.1%減、内訳は、その他電気機器(3.1%)が8.6%減、熱電子管・半導体(1.9%)が27.0%減、電気回路開閉機器(1.8%)が7.9%減などであった。その次に輸入額が大きい化学製品(14.0%)は1.5%減で、医薬品(5.6%)は4.8%増だったものの、有機化学品(2.7%)の9.3%減、その他化学物質および製品(1.7%)の5.5%減、プラスチック(1.4%)の4.4%減など、医薬品以外の品目においてはマイナス傾向が強かった。鉱物性燃料、潤滑剤(8.1%)も前年の38.3%減に引き続き9.9%減と大きく減少した。

輸入を国・地域別にみると、最大の輸入元であるEU(構成比52.0%)は前年比4.5%減、うちユーロ圏(34.4%)は5.3%減だった。ユーロ圏内最大の輸入元オランダ(7.2%)は前年比8.9%減で、輸入品目トップの石油、石油製品(14.0%)の14.9%減や医薬品(6.7%)の14.5%減などが響いた。またイタリア(5.1%)が5.7%減、フランス(5.1%)が4.1%減、オーストリア(3.9%)が5.2%減など、EU域内からの輸入は総じてマイナス傾向を示した。非ユーロ圏からの輸入でもポーランド(5.9%)が4.4%減、チェコ(4.5%)が2.5%減、ハンガリー(2.7%)が6.0%減で、上位国でプラスとなったのはルーマニア(1.5%)の1.6%増のみであった。ロシア(0.1%)は、経済制裁とロシア産エネルギー輸入からの脱却が進み50.3%減となり、2023年に89.9%減となった減少傾向が継続している。

国別で最大の相手国(構成比11.9%)となる中国からの輸入は、前年比0.5%減と微減にとどまった。電気機器およびその部分品(21.4%)が11.0%減、通信機器、音声記録および音声再生装置(12.2%)が6.6%減、道路走行車両(4.5%)が8.1%減など、機械および輸送用機器関連のマイナスが目立ったが、事務用機器および自動データ処理機械(11.5%)の3.5%増、その他金属製品(4.0%)の6.9%増、一般工業用機械類およびその部分品(4.3%)の5.2%増、特殊取扱品(種類別に分類されないもの)(4.1%)の61.7%増などによってマイナスが相殺された形だ。米国からの輸入(7.0%)は3.3%減であった。

表2-1 ドイツの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023 2024
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 749,050 715,679 46.2 △ 4.5
階層レベル2の項目道路走行車両 264,449 253,133 16.3 △ 4.3
階層レベル3の項目乗用車 164,820 161,665 10.4 △ 1.9
階層レベル3の項目自動車部品 64,800 60,082 3.9 △ 7.3
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 143,533 133,324 8.6 △ 7.1
階層レベル3の項目電気回路開閉機器 40,745 37,932 2.4 △ 6.9
階層レベル2の項目一般工業用機械類およびその部分品 115,367 112,384 7.3 △ 2.6
階層レベル3の項目空気ポンプ・圧縮機 26,421 25,696 1.7 △ 2.7
階層レベル3の項目荷役機械 15,883 14,732 1.0 △ 7.2
階層レベル2の項目産業用機械 70,443 63,955 4.1 △ 9.2
階層レベル2の項目原動機 49,304 49,039 3.2 △ 0.5
階層レベル2の項目その他輸送機器 41,358 41,691 2.7 0.8
化学製品 270,475 268,372 17.3 △ 0.8
階層レベル2の項目医薬品 112,061 113,987 7.4 1.7
階層レベル3の項目医薬品(動物用を含む) 62,823 61,747 4.0 △ 1.7
階層レベル3の項目その他医薬品(医薬品および製薬製品) 49,238 52,240 3.4 6.1
階層レベル2の項目その他化学物質および製品 39,721 38,778 2.5 △ 2.4
階層レベル2の項目プラスチック 27,615 27,438 1.8 △ 0.6
階層レベル2の項目有機化学品 27,024 26,340 1.7 △ 2.5
原料別製品 185,529 176,279 11.4 △ 5.0
階層レベル2の項目その他金属製品 48,810 46,814 3.0 △ 4.1
階層レベル2の項目非鉄金属 38,944 36,718 2.4 △ 5.7
階層レベル2の項目鉄鋼 25,232 23,487 1.5 △ 6.9
雑製品 170,970 169,796 11.0 △ 0.7
階層レベル2の項目計測機器および制御機器 57,594 57,182 3.7 △ 0.7
階層レベル3の項目測定・分析・制御機器 34,059 33,588 2.2 △ 1.4
階層レベル2の項目その他雑製品 46,889 46,107 3.0 △ 1.7
食料品および生きた動物 77,783 79,824 5.2 2.6
特殊取扱品 46,727 65,255 4.2 39.7
鉱物性燃料、潤滑剤 36,010 35,341 2.3 △ 1.9
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 25,335 24,866 1.6 △ 1.9
飲料およびたばこ 9,715 9,858 0.6 1.5
動植物性油脂、脂肪、ろう 3,614 3,031 0.2 △ 16.1
合計(その他含む) 1,575,209 1,548,301 100.0 △ 1.7

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

表2-2 ドイツの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 520,773 481,429 36.8 △ 7.6
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 148,793 132,206 10.1 △ 11.1
階層レベル3の項目その他電気機器 43,661 39,889 3.1 △ 8.6
階層レベル3の項目熱電子管・半導体 33,639 24,567 1.9 △ 27.0
階層レベル3の項目電気回路開閉機器 26,067 24,004 1.8 △ 7.9
階層レベル2の項目道路走行車両 142,489 129,281 9.9 △ 9.3
階層レベル3の項目乗用車 73,353 65,801 5.0 △ 10.3
階層レベル3の項目自動車部品 44,645 43,728 3.3 △ 2.1
化学製品 185,965 183,252 14.0 △ 1.5
階層レベル2の項目医薬品 69,871 73,254 5.6 4.8
階層レベル3の項目医薬品(動物用含む) 30,461 32,189 2.5 5.7
階層レベル2の項目有機化学品 39,413 35,740 2.7 △ 9.3
階層レベル3の項目有機置換無機化合物 21,253 18,818 1.4 △ 11.5
階層レベル2の項目その他化学物質および製品 22,940 21,670 1.7 △ 5.5
階層レベル3の項目他の化学工業生産品 16,629 15,688 1.2 △ 5.7
階層レベル2の項目プラスチック 18,495 17,684 1.4 △ 4.4
雑製品 157,650 155,624 11.9 △ 1.3
階層レベル2の項目その他雑製品 41,747 40,852 3.1 △ 2.1
階層レベル3の項目プラスチック製品 14,115 14,368 1.1 1.8
階層レベル2の項目衣類およびその付属品 38,205 38,002 2.9 △ 0.5
階層レベル2の項目計測機器および制御機器 33,368 33,210 2.5 △ 0.5
階層レベル3の項目測定・分析・制御機器 17,571 16,964 1.3 △ 3.5
原料別製品 154,914 144,466 11.0 △ 6.7
階層レベル2の項目非鉄金属 38,379 35,417 2.7 △ 7.7
階層レベル2の項目その他金属製品 35,988 33,609 2.6 △ 6.6
鉱物性燃料、潤滑剤 118,137 106,497 8.1 △ 9.9
階層レベル2の項目石油,石油製品 74,714 71,358 5.5 △ 4.5
階層レベル3の項目原油・粗油 42,695 44,702 3.4 4.7
階層レベル3の項目石油製品 30,122 24,661 1.9 △ 18.1
食料品および生きた動物 87,167 92,694 7.1 6.3
特殊取扱品 72,559 86,748 6.6 19.6
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 43,652 40,616 3.1 △ 7.0
飲料およびたばこ 12,138 12,057 0.9 △ 0.7
動植物性油脂、脂肪、ろう 4,512 4,393 0.3 △ 2.6
合計(その他含む) 1,357,465 1,307,777 100.0 △ 3.7

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

表3-1 ドイツの主要国・地域別輸出(FOB)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 859,537 838,320 54.1 △ 2.5
階層レベル2の項目ユーロ圏 603,547 583,334 37.7 △ 3.3
階層レベル3の項目フランス 119,825 115,335 7.4 △ 3.7
階層レベル3の項目オランダ 111,835 109,135 7.0 △ 2.4
階層レベル3の項目イタリア 85,403 80,195 5.2 △ 6.1
階層レベル3の項目オーストリア 80,355 76,279 4.9 △ 5.1
階層レベル3の項目ベルギー 60,749 58,084 3.8 △ 4.4
階層レベル3の項目スペイン 54,037 53,648 3.5 △ 0.7
階層レベル2の項目非ユーロ圏 255,990 254,986 16.5 △ 0.4
階層レベル3の項目ポーランド 90,645 93,104 6.0 2.7
階層レベル3の項目チェコ 52,865 51,215 3.3 △ 3.1
階層レベル3の項目ハンガリー 32,523 32,261 2.1 △ 0.8
階層レベル3の項目スウェーデン 29,684 27,984 1.8 △ 5.7
階層レベル3の項目デンマーク 22,273 22,280 1.4 0.0
英国 78,427 80,304 5.2 2.4
アジア大洋州 212,193 203,774 13.2 △ 4.0
階層レベル2の項目ASEAN 28,269 27,561 1.8 △ 2.5
階層レベル3の項目シンガポール 7,428 7,053 0.5 △ 5.0
階層レベル3の項目マレーシア 6,280 6,602 0.4 5.1
階層レベル3の項目タイ 5,331 5,048 0.3 △ 5.3
階層レベル2の項目中国 97,346 89,941 5.8 △ 7.6
階層レベル2の項目韓国 20,423 19,589 1.3 △ 4.1
階層レベル2の項目日本 20,238 21,555 1.4 6.5
階層レベル2の項目インド 16,507 16,920 1.1 2.5
米国 157,930 161,343 10.4 2.2
スイス 66,780 68,015 4.4 1.8
トルコ 30,712 28,310 1.8 △ 7.8
メキシコ 18,959 17,562 1.1 △ 7.4
ブラジル 12,800 13,189 0.9 3.0
ロシア 8,897 7,568 0.5 △ 14.9
合計(その他含む) 1,575,209 1,548,301 100.0 △ 1.7

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

表3-2 ドイツの主要国・地域別輸入(CIF)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 712,019 679,793 52.0 △ 4.5
階層レベル2の項目ユーロ圏 474,607 449,510 34.4 △ 5.3
階層レベル3の項目オランダ 102,911 93,765 7.2 △ 8.9
階層レベル3の項目イタリア 71,323 67,282 5.1 △ 5.7
階層レベル3の項目フランス 69,872 67,015 5.1 △ 4.1
階層レベル3の項目オーストリア 53,744 50,961 3.9 △ 5.2
階層レベル3の項目ベルギー 52,507 47,775 3.7 △ 9.0
階層レベル3の項目スペイン 38,636 38,034 2.9 △ 1.6
階層レベル3の項目アイルランド 25,615 24,288 1.9 △ 5.2
階層レベル2の項目非ユーロ圏 237,412 230,283 17.6 △ 3.0
階層レベル3の項目ポーランド 80,835 77,300 5.9 △ 4.4
階層レベル3の項目チェコ 60,898 59,391 4.5 △ 2.5
階層レベル3の項目ハンガリー 36,991 34,767 2.7 △ 6.0
階層レベル3の項目ルーマニア 19,284 19,595 1.5 1.6
英国 36,770 36,143 2.8 △ 1.7
アジア大洋州 286,144 278,236 21.3 △ 2.8
階層レベル2の項目ASEAN 52,716 52,174 4.0 △ 1.0
階層レベル3の項目ベトナム 13,549 15,085 1.2 11.3
階層レベル3の項目マレーシア 11,479 10,793 0.8 △ 6.0
階層レベル3の項目タイ 8,694 8,590 0.7 △ 1.2
階層レベル2の項目中国 156,831 156,094 11.9 △ 0.5
階層レベル2の項目日本 25,568 22,631 1.7 △ 11.5
階層レベル2の項目台湾 15,800 13,992 1.1 △ 11.4
階層レベル2の項目韓国 13,862 13,336 1.0 △ 3.8
米国 94,634 91,521 7.0 △ 3.3
スイス 51,757 52,576 4.0 1.6
ノルウェー 30,640 27,258 2.1 △ 11.0
トルコ 24,321 23,438 1.8 △ 3.6
南アフリカ共和国(南ア) 11,973 10,503 0.8 △ 12.3
ロシア 3,598 1,788 0.1 △ 50.3
合計(その他含む) 1,357,465 1,307,777 100.0 △ 3.7

〔注〕アジア・大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

対内・対外直接投資 
対内直接投資はやや低調も、米国企業等が大型投資

ドイツ連邦銀行(以下、中銀)の統計によると、2024年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は434億3,800万ユーロとなり、前年の716億4,500万ユーロから39.4%減少した。

一方、ドイツ貿易・投資振興機関(GTAI)が発表した2024年の投資動向によれば、国外からの投資案件数は1,724件で、前年比で2%減少したものの、過去5年間の平均水準を維持している。投資総額は232億ユーロに達し、これはドイツ史上3番目に高い水準であり、新型コロナ禍前の水準を大きく上回る。投資元の地域別では、EU加盟国からの投資が全体の約35%を占めているが、国別では米国が229件で最多となり、次いでスイス(202件)、中国(199件)、英国(137件)、オランダ(97件)が上位を占めている。業種別では、デジタル分野が全体の17%と最も多く、次いでエネルギー・資源(16%)、電子・自動化(15%)、モビリティ・物流(13%)の順となっており、持続可能性や技術革新への関心の高さがうかがえる。

2024年の対内直接投資額を国・地域別にみると、EU域外では、英国からの対内直接投資が大幅に減少し、前年の381億7,700万ユーロから155億7,000万ユーロの引き揚げ超過となった。また、アジアでは日本、中国、香港が引き揚げ超過だった。一方、米国からの投資は前年の15億ユーロから133億7,800万ユーロへと急増した。

個別投資案件では、M&A分野において空調管理システムのキャリア・グローバル(Carrier Global)によるフィースマン・クライメート・ソリューションズ(Viessmann Climate Solutions)の141億5,700万ドルでの買収や、KPSキャピタルパートナーズ(KPS Capital Partners)による電気モーター大手のイノモティクス(Innomotics)の32億ユーロでの買収など、米国企業による大型案件が目立った。M&A以外では、TSMCによるドレスデン工場建設(約35億ユーロ)、マイクロソフトによるAIインフラ構築(総額32億ユーロ)など、AIや半導体関連分野への投資が引き続き活発である。

外国資本によるドイツ企業の買収や資本参加は、対外経済法に基づく事前投資審査制度の対象とすることができる。事前審査によりドイツや他のEU加盟国の公の秩序や安全保障への脅威につながる投資案件と判断されれば、ドイツ連邦政府は買収の禁止を含め投資制限を命じることができる。ドイツ経済・エネルギー省によれば、事前審査が行われた投資案件は、2021年と2022年は306件と横ばいだったところ、2023年は257件に減少、2024年は261件に微増した。投資元国別にみると、2024年に事前審査対象となった261件のうち、米国が112件と全体の3分の1以上を占めており、英国(チャネル諸島含む)が29件、中国が27件、日本が18件、EUと欧州自由貿易連合(EFTA)が合わせて15件と続いた。2024年の事前審査対象となった261件中、投資制限を受けたのは8件(暫定値、2025年1月の発表時点で2024年に受理された19件が審査継続中)となっている。

対外直接投資もやや減速、中国への投資は引き続き堅調

2024年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は737億5,000万ユーロとなり、前年の958億100万ユーロから減少した。

国・地域別にみると、最大の投資先であるEU域内への投資は293億1,700万ユーロと前年から約7割(69.4%)減少した。うち、ユーロ圏は177億1,600万ユーロだった。EU域内最大の投資先はオランダ(177億3,900万ユーロ)で、前年3位のルクセンブルクも2位(143億9,900万ユーロ)に順位を上げた。

EU域外では、米国に対し199億7,800万ユーロが投資され、国別で最大の投資先となっている。中国は前年とほぼ変わらず43億5,800万ユーロ、また英国への投資は前年の213億3,600万ユーロから一転、28億3,000万ユーロに大きく減少した。

2024年の主な投資案件を見ると、主要投資先は米国であり、同国の求心力の高さは2024年も健在であった。米国以外の案件としては、エネルギー企業のベイワ・アール・イー(BayWa r.e.)による、イタリアの洋上風力発電所投資が大型案件として挙げられる。

表4 ドイツの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 金額 金額
EU 8,668 33,904 95,722 29,317
階層レベル2の項目ユーロ圏 1,604 30,193 65,518 17,716
階層レベル3の項目ルクセンブルク 9,678 16,955 13,596 14,399
階層レベル3の項目オランダ △ 30,632 10,348 256 17,739
階層レベル3の項目アイルランド △ 15,419 8,788 △ 1,701 △ 3,693
階層レベル3の項目ベルギー 9,557 2,119 7,979 △ 15,485
階層レベル3の項目オーストリア 13,463 1,515 17,114 3,471
階層レベル3の項目フランス 12,237 1,127 17,202 2,085
階層レベル3の項目スロバキア 1,390 1,102 1,023 468
階層レベル2の項目非ユーロ圏 7,064 3,712 8,867 8,771
階層レベル3の項目スウェーデン 1,867 1,074 △ 2,555 4,099
階層レベル3の項目チェコ △ 583 766 1,407 1,373
階層レベル3の項目ポーランド 2,322 526 3,831 2,526
階層レベル3の項目デンマーク 925 316 4,873 1,157
英国 38,177 △ 15,570 21,336 2,830
スイス 11,664 5,441 4,379 6,342
トルコ △ 15 △ 111 2,601 1,462
ロシア △ 931 △ 138 1,976 1,909
ノルウェー △ 213 4,252 1,096 2,151
北米 3,019 12,854 △ 23,558 20,660
階層レベル2の項目米国 1,500 13,378 △ 23,327 19,978
アジア大洋州 3,071 1,647 11,656 5,016
階層レベル2の項目中国 1,687 △ 100 4,535 4,358
階層レベル2の項目日本 846 △ 443 △ 380 △ 878
階層レベル2の項目シンガポール 1,825 1,476 334 △ 2,111
階層レベル2の項目香港 △ 1,227 △ 140 △ 220 1,372
階層レベル2の項目インド 167 164 3,293 2,057
階層レベル2の項目タイ △ 143 112 347 750
中南米 △ 3,768 △ 1,491 △ 859 5,690
階層レベル2の項目チリ △ 531 889 318 89
階層レベル2の項目バミューダ △ 1,860 320 △ 2,162 155
中近東 5,962 2,318 2,688 2,395
アフリカ △ 19 △ 144 992 479
合計(その他含む) 71,645 43,438 95,801 73,750

〔出所〕ドイツ連邦銀行

表5-1 ドイツの主な対内直接投資案件(2024年)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
半導体 TSMC 台湾 2024年8月 約35億ユーロ ザクセン州ドレスデンに、TSMCとボッシュ(Bosch)、インフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)、NXPセミコンダクターズ(NXP Semiconductors)の合弁による「ヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(ESMC)」の半導体工場の建設を開始。ドイツ政府はこのプロジェクトに対し、最大50億ユーロの補助金を拠出する予定である。工場は2027年末の稼働を目指しており、月産4万枚(年間約48万枚)の300mmウエハーを生産する計画。年間売上は約19億ユーロと見込まれている。
通信 マイクロソフト(Microsoft ) 米国 2024年2月 32億ユーロ 今後2年間で総額32億ユーロを投資し、ドイツ国内におけるクラウドおよびAIインフラを整備すると発表。この取り組みは、デジタル化とAI技術の普及を加速させることを目的としており、企業や公共機関のIT基盤強化にも寄与する見込みである。さらに、2025年末までに120万人以上の人々に対して、AIやクラウド関連のデジタルスキル研修の機会を提供する計画。投資の中心はフランクフルトおよびノルトライン=ウェストファーレン州であり、これらの地域で新たなデータセンターの建設や既存施設の拡張が予定されている。マイクロソフトはこのプロジェクトを通じて、ドイツのデジタル競争力を高めるとともに、持続可能な技術インフラの構築を目指している。
データセンター開発・運営 サイラスワン(CyrusOne) 米国 2024年7月 10億ユーロ以上 フランクフルトで新たなデータセンター(FRA7)の建設を開始した。2026年第2四半期に最初のフェーズが完成予定。欧州最大級の廃熱活用プロジェクトの1つとして、フル稼働後には最大40メガワット(MW)の熱を地域暖房ネットワークに供給する。設計・建設期間中に500人以上の直接・間接雇用を創出するとし、地域経済への貢献を重視している。
製薬 第一三共 日本 2024年11月 10億ユーロ バイエルン州プファフェンホーフェンの研究・開発拠点で2024年11月にがん治療薬用抗体薬物複合体(ADC)の製造施設の起工式を行った。同施設を国際イノベーションセンターに拡張する計画。2026年末の完成を予定している。このプロジェクトは、がん治療薬分野でのグローバルな製造体制の強化に加え、循環器疾患治療薬の生産能力増強や研究施設の整備も含まれており、2030年までにプロセスエンジニアやバイオテクノロジー専門家など350人以上の新規雇用を見込む。第一三共はこの拠点から50カ国以上に医薬品を供給しており、今後は生産と技術革新の拠点としての役割を担う。
半導体 ネクスペリア(Nexperia) オランダ 2024年6月 2億ドル Nexperiaは2024年6月から需要増加への対応として、ハンブルク工場において段階的な設備投資を開始した。次世代ワイドバンドギャップ半導体(WBG)の開発を中心に、生産能力の拡大、200mmウェーハ対応の製造ライン導入、研究開発ラボの新設などが主な目的とされている。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 ドイツの主な対内直接投資案件(2024年)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
機械 フィースマン・クライメート・ソリューションズ(Viessmann Climate Solutions) キャリア・グローバル
(Carrier Global)
米国 2024年1月 141億5,700万ドル 空調管理システムを提供するキャリア・グローバルは、気候・エネルギーソリューション分野でのグローバルリーダーを目指す戦略の一環として、空調ソリューション(ヒートポンプ、太陽熱を活用した暖房・給湯システム、マイクロCHP(燃料電池を使用した熱電供給設備)など)、冷却システムメーカーのフィースマン・クライメート・ソリューションズを買収した。2023年には他ほかの事業を売却し、ポートフォリオ再編をはかっている。
その他エネルギー、電力 イノモティクス(Innomotics) KPSキャピタルパートナーズ(KPS Capital Partners) 米国 2024年10月 32億ユーロ 投資ファンドのKPSキャピタルパートナーズは、新たに設立した関連会社を通じ、シーメンス(Siemens)から電気モーターなどの世界的大手サプライヤーであるイノモティクスを買収した。買収により、電気化・脱炭素化などの世界的メガトレンドに対応すると共に、技術力と製造力を活かして企業価値を高め、持続可能性の推進と欧州市場でのプレゼンス強化を目的としている。
バイオテクノロジー カーディオール・ファ ーマシューティカルズ(Cardior Pharmaceuticals) ノボ・ノルディスク(Novo Nordisk) デンマーク 2024年3月 非公表 ノボ・ノルディスクはRNAを標的とした心疾患の予防・修復・回復を目的とする治療法の研究開発に特化したドイツのバイオ医薬企業カーディオール・ファーマシューティカルズの買収に合意したと発表。循環器疾患領域への本格参入を進める戦略の一環。
その他工業 EAエレクトロオートマティック(EA Elektro-Automatik) フォーティブ・コーポレーション(Fortive Corporation) 米国 2024年1月 17億2,000万ドル 産業用テクノロジー企業のフォーティブは、エネルギー貯蔵、モビリティ、水素、再生可能エネルギー用途向けの高出力電子テストソリューションに特化したEAエレクトロオートマティックを買収した。本買収により、エネルギー転換などの成長市場に対応し、電子テスト・測定ソリューション分野での地位を強化する狙い。
無線 オーク・ホールディングス(Oak Holdings) 投資家コンソーシアム(グローバル・インフラストラクチャー・グループ(Global Infrastructure Partners)とコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)) 米国 2024年7月 13億ユーロ ボーダフォン・グループ(Vodafone Group)は、同社が設立した通信インフラ会社、バンテージ・タワーズ(Vantage Towers)の株式の約9割を保有する合弁会社、オーク・ホールディングスの持ち分の一部(10%)を投資家コンソーシアム、グローバル・インフラストラクチャー・グループとコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に追加で売却した。この売却で同社と投資家コンソーシアムとの間で、当初想定されていた50::50の共同所有構造が実現した。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-1 ドイツの主な対外直接投資案件(2024年)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
エネルギー ベイワ・アール・イー(BayWa r.e.) イタリア 2024年2月 60億ユーロ ミュンヘンに本社を置く再生可能エネルギー企業ベイワ・アール・イーは、イタリアで合計14件の浮体式洋上風力発電所の開発・建設に向けて、約60億ユーロの投資を行う意向を示した。これらのプロジェクトがすべて実現すれば、イタリアでの同社の総発電容量は約9ギガワット(GW)に達する見込み。
エンジニアリング ボッシュ(Bosch) 米国 2024年12月 19億ドル ボッシュは、カリフォルニア州ローズビルにある半導体工場をシリコンカーバイド(SiC)チップの製造施設へと転換するため、最大19億ドルを投資する計画を発表した。2026年の稼働開始を目指している。新施設では、200mmウエハーによる製造体制の導入が予定されており、高効率かつ高性能な生産が可能となる。
ローズビル拠点は、ドイツ・ロイトリンゲン工場に次ぐ第2のSiC製造拠点として、ボッシュのグローバルな供給能力の強化に貢献することが期待されている。
自動車 フォルクスワーゲン・グループ(Volkswagen Group) 米国 2024年11月 10億ドル 米国のEVメーカー、リビアン・オートモーティブ(Rivian Automotive)と共に、最大58億ドル規模の合弁事業(JV)を立ち上げると発表した。フォルクスワーゲンはまず10億ドルをリヴィアン・オートモーティブに投資しており、さらに最大で48億ドルをJVに追加投資する可能性がある。合弁事業は両社が共同で経営し、2026年から製品展開の開始を予定している。
銅サプライヤー ウィーランド(Wieland) 米国 2024年1月 5億ドル ウィーランドは、米国での製造能力を強化しエネルギー転換と電気自動車(EV)市場の成長に対応するため、イリノイ州イーストオールトン施設への大規模な設備投資計画を発表した。この投資には、最新鋭の熱間圧延機の追加設置が含まれており、EV、EV充電インフラ、再生可能エネルギーなどの先進的なエネルギー分野で使用される重要な銅・銅合金部品の生産能力を向上・拡大することを目的としている。
自動車 シェフラー(Schaeffler) 米国 2024年2月 2億3,000万ドル シェフラーは、米国オハイオ州ドーバーに新しい最先端の自動車用電動モビリティソリューション製造施設を建設する計画を発表。2025年第3四半期に完成予定で、2032年までに650人の新規雇用も予定している。また、オハイオ州立大学と連携し2025年に新しいバッテリーセル研究開発センターの開設も予定されている。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 ドイツの主な対外直接投資案件(2024年)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
シーメンス(Siemens) 情報技術 アルテア(Altair) 米国 2024年10月 約106億ドル シーメンスは、株式取得により情報技術企業アルテアのを買収に合意したと発表。アルテアは、シミュレーション、HPC(高性能計算)、データサイエンス、AI技術に強みを持つ。買収完了は2025年後半を予定。シーメンスはこの買収により、世界で最も包括的なAI駆動型設計・シミュレーションポートフォリオの構築を目指す。アルテアの買収額は約106億ドルにのぼる。
ボッシュ(Bosch) エネルギー・建築技術 ジョンソン・コントロールズ(Johnson Controls) 米国 2024年7月 74億ユーロ ボッシュはHVAC(暖房・換気・空調)市場におけるグローバルリーダーの地位を確立するため、ジョンソン・コントロールズから住宅・小規模商業施設向けHVAC事業および日立との合弁事業を買収する計画を発表した。この取引は、ボッシュにとって過去最大規模の買収案件となり、30カ国以上に展開する16の製造拠点と12のエンジニアリング拠点が対象となる。契約は2024年7月に締結され、買収手続きは2025年7月31日に完了した。これにより、ボッシュの「Home Comfort」事業の売上は、約50億ユーロから90億ユーロへと倍増することが期待されている。
ベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim) バイオ医薬 ネリオ・セラピューティクス(Nerio Therapeutics) 米国 2024年7月 13億ドル ドイツの製薬会社ベーリンガーインゲルハイムは、米国のバイオ医薬系企業ネリオ・セラピューティクスを買収した。免疫腫瘍学分野事業の強化、がん治療の新たな治療方法の創出などを目指している。
クノールブレムゼ(Knorr-Bremse) 鉄道・輸送機器製造業 アルストム(Alstom) フランス 2024年9月 6億9,000万ドル ドイツの鉄道・商用車向けブレーキシステムの大手メーカー、クノールブレムゼはアルストムから北米の従来型鉄道信号事業を買収した。これにより同社は、鉄道インフラの中でも成長性が高い制御・指令・信号(CCS)分野に初めて参入し、北米市場での地位強化を目指す。
ハイデルベルク・マテリアルズ(Heidelberg Materials ) セメント製造 ジャイアント・セメント・ホールディング(Giant Cement Holding)およびその関連会社 米国 2024年11月 約6億ドル セメント製造大手のハイデルベルク・マテリアルズは、米国東海岸を拠点とする同業のジャイアント・セメント・ホールディングを買収する契約を締結した。米国南東部およびニューイングランド市場でのプレゼンス強化を図るとともに、供給網の拡充により広範な顧客基盤への対応力を高め、既存インフラとの統合によるシナジー創出を目指す。買収手続きは2025年4月に完了。
メルク(Merck) 製薬 ミラスバイオ(Mirus Bio) 米国 2024年7月 6億ドル ウイルスベクター製造能力の強化を目的として、トランスフェクション試薬技術に特化した米国のバイオテクノロジー企業、ミラスバイオを買収した。同社は、細胞・遺伝子治療分野で重要な役割を果たす技術を持ち、特にウイルスベクターの製造工程において高い評価を受けている。メルクはこの買収を通じて、同社の技術を自社の製造プロセスに統合し、前臨床段階から商業生産に至るまでの全工程を一貫して支援できるソリューションの提供体制を構築する方針。これにより、革新的な治療法の開発を加速させることを目指している。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日貿易では、輸出はやや増加したものの、輸入が約1割減

2024年の対日貿易は、輸出は前年比6.5%増の215億5,600万ユーロとやや増加した一方、輸入は11.5%減の226億1,700万ユーロであった。輸入縮小を受けて対日貿易赤字は、10億6,200万ユーロと、前年の53億3,000万ユーロから大きく減少した。日本はドイツにとって輸出相手国としては18位、輸入では17位の相手国となっている。従来からの対日輸入超過は変わらないものの、貿易赤字額の差は縮まっている。

対日輸出を主要品目別にみると、主力の化学製品(構成比37.4%)が前年比33.6%増、うち医薬品(25.0%)が82.6%増と大きく数字を伸ばしたが、化学製品以外の品目においては小幅であるもののマイナスが目立った。乗用車(18.0%)の前年比0.5%減、電気機器およびその部分品(7.0%)の7.5%減などのマイナスを化学製品が吸収する形となった。

対日輸入では、乗用車(構成比10.6%)が前年比0.1%増と微増ながら3年連続で増えたほか、機用品・再輸入品(4.0%)が28.0%増と、前年の66.7%増に続いて高い伸びを示している。それ以外の主力品目においては機械および輸送用機器全般(構成比56.2%)の前年比14.7%減、雑製品(17.1%)の9.3%減などが響き、大幅な減少につながった。

2023年に続き、両国間の直接投資は共にふるわず

日本からの投資は2024年、4億4,300万ユーロの引き揚げ超過となり、日本への投資も8億7,800万ユーロの引き揚げ超過と、どちらも減少した。

日本の企業では、第一三共がバイエルン州プファフェンホーフェンのがん治療薬の開発拠点を製造施設に拡大するため、10億ユーロの投資を発表した。また買収額は不明であるが、日立製作所は世界各地でのロボティクスSI事業拡大のため、同事業を展開するドイツのMA マイクロ・オートメーション(MA micro automation)を買収した。

表7-1 ドイツの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 9,978 9,542 44.3 △ 4.4
階層レベル2の項目道路走行車両 4,620 4,568 21.2 △ 1.1
階層レベル3の項目乗用車 3,892 3,874 18.0 △ 0.5
階層レベル3の項目自動車部品 494 462 2.1 △ 6.6
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 1,624 1,502 7.0 △ 7.5
階層レベル3の項目熱電子管・半導体 481 469 2.2 △ 2.5
階層レベル2の項目一般工業用機械類およびその部分品 1,303 1,245 5.8 △ 4.4
階層レベル3の項目空気ポンプ・圧縮機 340 316 1.5 △ 7.0
化学製品 6,038 8,068 37.4 33.6
階層レベル2の項目医薬品 2,950 5,387 25.0 82.6
階層レベル3の項目その他医薬品(医薬品および製薬製品) 1,539 1,688 7.8 9.7
階層レベル3の項目医薬品(動物用を含む) 1,411 3,699 17.2 162.2
階層レベル2の項目有機化学品 1,505 1,044 4.8 △ 30.6
階層レベル3の項目有機置換無機化合物 1,162 706 3.3 △ 39.2
階層レベル2の項目その他化学物質および製品 718 718 3.3 0.0
階層レベル3の項目その他の化学工業生産品 506 518 2.4 2.4
雑製品 2,258 2,072 9.6 △ 8.2
階層レベル2の項目計測機器および制御機器 1,405 1,316 6.1 △ 6.3
階層レベル3の項目測定・分析・制御機器 821 759 3.5 △ 7.6
階層レベル3の項目医療用機器 328 325 1.5 △ 0.7
原料別製品 1,317 1,226 5.7 △ 6.9
階層レベル2の項目非鉄金属 558 469 2.2 △ 15.9
食料品および生きた動物 308 300 1.4 △ 2.4
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 171 171 0.8 △ 0.2
特殊取扱品 88 102 0.5 16.1
飲料およびたばこ 52 50 0.2 △ 4.3
鉱物性燃料、潤滑剤 21 18 0.1 △ 15.5
動植物性油脂、脂肪、ろう 6 5 0.0 △ 11.4
合計(その他含む) 20,238 21,556 100.0 6.5

〔出所〕 ドイツ連邦統計局

表7-2 ドイツの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 14,907 12,718 56.2 △ 14.7
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 4,715 3,877 17.1 △ 17.8
階層レベル3の項目熱電子管・半導体 1,496 1,249 5.5 △ 16.5
階層レベル3の項目その他電気機器 1,822 1,455 6.4 △ 20.1
階層レベル2の項目道路走行車両 3,299 3,119 13.8 △ 5.5
階層レベル3の項目乗用車 2,393 2,394 10.6 0.1
階層レベル2の項目事務用機器および自動データ処理機械 1,655 1,556 6.9 △ 6.0
階層レベル3の項目事務用機器 1,319 1,371 6.1 3.9
階層レベル2の項目一般工業用機械類およびその部分品 1,697 1,295 5.7 △ 23.7
階層レベル2の項目産業用機械 1,293 861 3.8 △ 33.4
階層レベル3の項目その他の産業用機械 947 654 2.9 △ 31.0
雑製品 4,276 3,878 17.1 △ 9.3
階層レベル2の項目計測機器および制御機器 2,204 2,085 9.2 △ 5.4
階層レベル3の項目医療用機器 584 580 2.6 △ 0.6
階層レベル3の項目測定・分析・制御機器 1,428 1,356 6.0 △ 5.0
階層レベル2の項目その他雑製品 1,334 1,063 4.7 △ 20.3
化学製品 3,568 3,172 14.0 △ 11.1
階層レベル2の項目有機化学品 1,068 1,000 4.4 △ 6.3
階層レベル3の項目有機置換無機化合物 821 766 3.4 △ 6.7
階層レベル2の項目その他化学物質および製品 865 773 3.4 △ 10.6
階層レベル3の項目その他の化学工業生産品 821 723 3.2 △ 11.9
原料別製品 1,693 1,554 6.9 △ 8.2
特殊取扱品 713 911 4.0 27.9
階層レベル3の項目機用品,、再輸入品 706 905 4.0 28.0
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 246 220 1.0 △ 10.6
食料品および生きた動物 81 92 0.4 12.6
鉱物性燃料、潤滑剤 33 29 0.1 △ 13.1
動植物性油脂、脂肪、ろう 29 23 0.1 △ 20.7
飲料およびたばこ 21 21 0.1 △ 1.1
合計(その他含む) 25,568 22,617 100.0 △ 11.5

〔出所〕 ドイツ連邦統計局

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 1.9 △ 0.7 △ 0.5
1人当たりGDP (米ドル) 49,725 53,565 54,990
消費者物価上昇率 (%) 6.9 5.9 2.2
失業率 (%) 5.3 5.7 6.0
貿易収支 (100万ユーロ) 133,232 227,114 236,866
経常収支 (100万ユーロ) 152,037 232,793 243,782
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 98,414 100,392 96,792
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ) 6,085,408 6,170,728 6,377,543
為替レート (1米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.95 0.92 0.92


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:ドイツ連邦統計局
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):ドイツ連邦銀行