台湾の貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年のGDP成長率は4.8%と前年の1.1%から3.7ポイント回復。
  • 貿易はAI関連需要が牽引し、輸出入ともに前年比増。
  • 対内直接投資は前年比30.2%減、対外投資は90.6%増。いずれも半導体関連が中心。
  • 日本からの直接投資は27.1%減、対日直接投資は半導体分野の大型投資で25.6倍。

公開日:2025年7月2日

マクロ経済 
好調な民間投資と内需により実質GDP成長率は4.8%

2024年の台湾の実質GDP成長率は4.8%となり、前年の1.1%から3.7ポイント回復した(2025年6月3日付ビジネス短信参照)。需要項目別寄与度でみると、内需(5.0ポイント)のうち、民間消費が1.3ポイント、固定資本形成が1.7ポイントとなった。民間消費は賃金および株価の上昇による所得増の影響を受け、小売りや飲食業が好調だった。固定資本形成は、人工知能(AI)など新興科学技術応用の需要が引き続き旺盛であることから企業の投資意欲も高く、機械設備、建設プロジェクト、知的財産関連への投資が伸びた。

外需のうち財・サービスの輸出は、AI関連および情報通信機器の需要が好調に推移し、5.4ポイントだった。財・サービスの輸入は輸出および設備投資の需要が牽引し、5.5ポイントだった。

行政院主計総処は、2025年通年の実質GDP成長率の予測値について、5月時点で3.1%と予測した。米国・トランプ政権が打ち出している追加関税政策によって、世界経済の不透明性が増していると指摘。内需については、固定資本形成の寄与が最も大きく、AI需要に対応するため半導体企業が積極的に先進プロセスなどの生産能力を拡充するほか、海外旅行需要の高まりを受けた航空会社の機体購入などで、好調に推移すると予測した。

外需については、AIおよび関連する応用技術が加速度的に広がっており、台湾企業のサプライチェーンも整備されていることから、引き続き輸出は増加するとの見込みを示した。

表1 台湾の需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
実質GDP成長率 1.1 4.8 6.6 4.9 4.2 3.8 5.5
階層レベル2の項目民間最終消費支出 3.6 1.3 2.0 1.4 0.9 1.0 0.6
階層レベル2の項目政府最終消費支出 0.1 0.4 0.2 0.3 0.6 0.4 0.1
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 △ 2.2 1.7 △ 1.0 1.8 1.7 3.8 4.5
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 △ 2.8 5.4 5.8 4.7 5.6 5.4 12.5
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 △ 3.0 5.5 0.8 5.6 6.7 8.5 11.8

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。2025年第1四半期は速報値。
〔出所〕行政院主計総処発表資料から作成

貿易 
ASEAN、米国との貿易が増加、それぞれ輸出入とも2桁増

2024年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比9.8%増の4,749億9,600万ドル、輸入は12.2%増の3,943億6,500万ドルで、貿易収支は806億3,000万ドルの黒字だった。

輸出を国・地域別にみると、中国向けは1.3%増にとどまったほか、香港向けも5.1%減だった。輸出全体に占める中国および香港のシェアは31.7%となった(2025年1月29日付ビジネス短信参照)。中国および香港のシェアは、米国が対中国追加関税を発動した2018年以降、減少傾向が顕著になっており、2018年比では9.6ポイント低下した。このほか、日本(17.8%減)と欧州(8.6%減)などで減少した一方、ASEANは15.1%増、米国は46.1%増と大きく伸び、ともに過去最高額を更新した。米国向けのうち伸びが大きい品目は電子部品(92.6%増)と情報通信機器(81.5%増)だった。米国が輸出に占めるシェアは、2024年は23.4%となり、2018年比では11.6ポイント上昇した。

輸入を国・地域でみると、主要国からの輸入は多くが前年比で増加し、最大の輸入先の中国は12.9%増、ASEANは20.1%増、米国は13.6%増、日本は4.8%増だった。一方、香港(11.1%減)と欧州(1.3%減)、中東(6.9%減)は減少した。

表2 台湾の主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 290,423 298,980 62.9 2.9 206,142 238,421 60.5 15.7
階層レベル2の項目中国 95,726 96,975 20.4 1.3 70,232 79,305 20.1 12.9
階層レベル2の項目香港 56,513 53,636 11.3 △ 5.1 1,486 1,321 0.3 △ 11.1
階層レベル2の項目日本 31,435 25,836 5.4 △ 17.8 44,344 46,453 11.8 4.8
階層レベル2の項目韓国 18,203 20,792 4.4 14.2 28,415 43,707 11.1 53.8
階層レベル2の項目ASEAN 76,275 87,768 18.5 15.1 41,031 49,269 12.5 20.1
階層レベル3の項目シンガポール 29,738 33,743 7.1 13.5 9,524 9,704 2.5 1.9
階層レベル3の項目マレーシア 15,166 19,918 4.2 31.3 9,688 14,619 3.7 50.9
階層レベル3の項目ベトナム 11,725 14,276 3.0 21.8 6,157 7,925 2.0 28.7
階層レベル3の項目タイ 10,859 11,820 2.5 8.9 5,381 6,231 1.6 15.8
階層レベル3の項目フィリピン 5,062 4,249 0.9 △ 16.1 2,348 2,462 0.6 4.9
階層レベル3の項目インドネシア 3,010 3,064 0.6 1.8 7,389 7,714 2.0 4.4
階層レベル2の項目インド 6,010 7,892 1.7 31.3 2,211 2,716 0.7 22.9
階層レベル2の項目オーストラリア 5,797 5,675 1.2 △ 2.1 17,349 14,598 3.7 △ 15.9
北米 78,869 113,969 24.0 44.5 42,914 48,522 12.3 13.1
階層レベル2の項目米国 76,234 111,362 23.4 46.1 40,882 46,455 11.8 13.6
欧州 42,283 38,635 8.1 △ 8.6 46,606 46,002 11.7 △ 1.3
階層レベル2の項目EU 36,821 33,471 7.0 △ 9.1 37,055 35,288 8.9 △ 4.8
階層レベル2の項目英国 3,626 3,655 0.8 0.8 2,729 2,788 0.7 2.2
階層レベル2の項目ロシア 793 599 0.1 △ 24.5 4,187 4,557 1.2 8.8
中南米 8,093 10,869 2.3 34.3 8,197 9,586 2.4 16.9
中東 5,902 5,836 1.2 △ 1.1 26,498 24,666 6.3 △ 6.9
アフリカ 1,941 1,660 0.3 △ 14.5 2,798 1,817 0.5 △ 35.1
合計(その他含む) 432,420 474,996 100 9.8 351,632 394,365 100.0 12.2

〔注〕アジア大洋州は、ASEAN10+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港を加えた合計値。
〔出所〕財政部統計処データベースから作成

AIサーバーなどを含む情報通信機器が輸出を牽引

輸出を品目別にみると、構成比73.2%と最大の機械および電気機器が前年比15.9%増となった。このうち、人工知能(AI)関連製品への需要の高まりを受け、原子炉、ボイラー、機械および部分品に含まれる高性能コンピューティング(HPC)やAIサーバーなどの情報通信機器が59.0%増となり、輸出全体の伸びに貢献した。他方、電気機器および部品は0.7%増にとどまった。グローバルサプライチェーンの再編と台湾ODM・OEMメーカーの台湾における生産規模拡大に伴い、主要品目の集積回路(IC)を中心とした一部の電子部品が輸出から国内向けに切り替えられたことにより、ICは0.9%減、電子部品全体では0.8%減となったことが響いた。このほかの主要品目では、化学品(1.3%減)、卑金属および同製品(0.7%減)、原油・鉱産物(4.6%減)など軒並み減少した。輸入は、構成比48.0%の機械および電気機器が前年比20.3%増となったほか、化学品(4.1%増)や卑金属および同製品(16.6%増)、精密・光学機器(15.9%増)など増加した品目が多かった。

財政部は2025年4月、今後の貿易見通しについて、AIの応用関連需要は引き続き拡大しているものの、米国の関税政策および各国の対応策、地政学的な要素などの不確実性が高まり、グローバル経済の下押しリスクが増加していることから、状況を注意深く見守る必要があるとした。

表3 台湾の主要品目別輸出入[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械および電気機器 299,903 347,633 73.2 15.9 157,309 189,167 48.0 20.3
階層レベル2の項目電気機器および部品 222,646 224,314 47.2 0.7 107,320 133,345 33.8 24.3
階層レベル2の項目原子炉、ボイラー、機械および部分品 77,256 123,320 26.0 59.6 49,989 55,822 14.2 11.7
化学品 38,374 37,870 8.0 △ 1.3 37,285 38,806 9.8 4.1
階層レベル2の項目プラスチック・ゴム 19,957 19,586 4.1 △ 1.9 8,598 9,351 2.4 8.8
階層レベル2の項目化学工業品 18,418 18,284 3.8 △ 0.7 28,687 29,455 7.5 2.7
卑金属および同製品 28,737 28,527 6.0 △ 0.7 22,674 26,436 6.7 16.6
原油・鉱産物 14,619 13,951 2.9 △ 4.6 61,541 58,260 14.8 △ 5.3
精密・光学機器 13,237 11,515 2.4 △ 13.0 14,906 17,278 4.4 15.9
輸送機器 12,440 10,876 2.3 △ 12.6 15,743 16,162 4.1 2.7
食料品 5,059 5,053 1.1 △ 0.1 17,197 16,512 4.2 △ 4.0
合計(その他含む) 432,420 474,996 100.0 9.8 351,632 394,365 100.0 12.2

〔注〕食料品はHS分類における第1~4部。
〔出所〕財政部統計処データベースから作成

通商政策 
輸出先の多角化を継続、米国関税政策にかかる企業支援策を発表

両岸関係では、中国の関税措置などを踏まえ、引き続き対中国依存の引き下げと輸出先の多角化を目指している。中国国務院関税税則委員会は2023年12月21日、海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)に基づき、台湾に対して実施しているパラ-キシレン、プロペン(プロピレン)、塩化ビニル(クロロエチレン)など石油化学品12品目の関税引き下げ措置を停止すると発表、2024年1月1日から実施した。これに続き、中国財政部は石油化学品や紡績、鉄鋼、金属、輸送機器部品など134品目に対して、2024年6月15日からECFAに基づく関税引き下げ措置(物品貿易)を停止した。その後2024年9月25日からは、台湾産の34品目(注1)の農水産物の関税免除措置を停止した。

台湾の経済部は、「関連する業種の企業とコミュニケーションを取りながら、産業の高度化や市場の分散(多角化)などの対応を既に行っている」と強調。関連企業に対し、差別化・高付加価値化した製品の開発、市場の分散(多角化)、製造工程の低炭素化とデジタル化といった3大戦略を実行に移し、政策的支援を行うとした。

米国との関係では、2023年5月18日に合意した「21世紀の貿易に関する米国・台湾イニシアチブ」の第1段階が2024年12月10日に発効した(2024年12月11日付ビジネス短信参照)。第1段階の協定では、貿易円滑化、良き規制慣行、腐敗防止、サービスの域内規制、中小企業などが規定されている。具体的には、貿易円滑化では通関書類の電子化、良き規制慣行では中小企業が両市場の規制手続きをより理解できるツールやメカニズムの創設、腐敗防止では贈収賄などを防止する包括的な汚職防止対策の実施、サービスの域内規制ではサービス提供者が事業許可を申請する際に公平に扱われることの保証、中小企業では研修、教育、ミッションなどを通じた中小企業の貿易投資の支援などが規定されている。

第2段階合意に向けた2回目の対面交渉は2024年5月3日に終了し、農業、環境、労働の3分野について重点的に議論を行った。鄧振中総談判代表は「第2段階合意までのスケジュールは未定だが、現状では双方に解決しなければならない課題があり、詳細をさらに議論していく必要がある」と述べた。

一方、米国のトランプ大統領が2025年4月2日、米国政府による世界共通関税と相互関税を課す大統領令を発表し、台湾に対する税率は32%とされた(注2)。これを受けて、頼清徳総統は4月6日、米国に対して対抗措置はとらず、「五大戦略」で対応するとした。五大戦略の概要は、(1)交渉チームによる米国とのゼロ関税交渉、(2)米国からの農業、工業、エネルギー、軍事などの各種製品の購入拡大、(3)対米投資の拡大、(4)非関税障壁の撤廃、(5)企業支援策の策定からなる。企業支援策については、4月4日に行政院が総経費880億台湾元(約3,872億円、1台湾元=約4.4円)からなる「9つの主要分野と20項目の対策」(以下、同対策)を発表した。同対策は財政部や経済部、労働部、農業部によるパッケージとなっており、工業分野については、貿易融資の利息や輸出保険料の減免、輸出通関手続きの軽減、研究開発への補助金、農業分野については、輸出コールドチェーン整備の補助金、国際認証取得の支援、労働分野については、就業支援補助金などが含まれる。4月24日には、行政院が同対策を拡大し、総経費4,100億台湾元からなる「国際情勢に対応した経済社会および台湾の安全とレジリエンスを強化する特別条例」草案を閣議決定し、支援の対象を民生分野や防衛力の強化にも拡大する、とした。草案の施行期間は2025年3月12日~2027年12月31日とされ、今後立法院で審議される。

(注1)
果物15種類(パイナップル、バンレイシ、マンゴー、スターフルーツ、マンゴーなど)、野菜11種類(カンラン、カリフラワー、ヘチマなど)、水産品8種類(マナガツオ、サバ、タチウオなど)
(注2)
米国政府は4月9日、対米報復に踏み切らない国・地域の相互関税の適用は90日猶予すると発表。猶予期間中の関税率は10%。

対内・対外直接投資 
対内直接投資は3割減も、半導体や洋上風力で大型増資

経済部投資審議司(以下、投資審議司)によると、2024年の対内直接投資額(認可ベース、中国除く)は前年比30.2%減の78億5,800万ドルとなった。大型投資としては、オランダのASMLによる台湾子会社への3億1,732万ドルの増資、デンマークのオーステッド・ウインド・パワー・TWホールディング(Orsted Wind Power TW Holding)による洋上風力発電の沃旭東南大彰化に対する2億3,423万ドルの増資、英国のコンピュータ・リンクス(Computer Links)による半導体・電子部品商社大手である米国のアロー・エレクトロニクス(Arrow Electronics)の台湾子会社に対する2億771万ドルの増資などがあった。

業種別では、専門・科学・技術サービスの構成比が25.4%で最大となり、次いで金融・保険22.5%、卸・小売り10.8%であった。

中国からの直接投資は前年の約10倍の2億9,700万ドルとなった。中国からの大型投資としては、鴻海が中国からシンガポールの子会社鴻運科(クラウドネットワークテクノロジーシンガポール)を通じてAI生産管理業務などに従事する台湾支社に対する90億台湾元の投資案件があった。

表4 台湾の国・地域別対内・対外直接投資[認可ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 3,722 1,303 16.6 △ 65.0 6,988 16,043 35.7 129.6
階層レベル2の項目シンガポール 2,282 327 4.2 △ 85.7 2,438 5,806 12.9 138.2
階層レベル2の項目日本 620 452 5.8 △ 27.1 215 5,490 12.2 2,455.9
階層レベル2の項目香港 227 158 2.0 △ 30.5 242 447 1.0 84.5
階層レベル2の項目韓国 37 38 0.5 3.3 404 158 0.4 △ 60.9
階層レベル2の項目タイ 121 7 0.1 △ 94.3 928 681 1.5 △ 26.6
階層レベル2の項目インドネシア 3 3 0.0 15.7 266 184 0.4 △ 30.9
階層レベル2の項目ベトナム 1 3 0.0 133.8 1,033 1,033 2.3 △ 0.1
階層レベル2の項目インド 4 3 0.0 △ 22.9 163 188 0.4 15.2
階層レベル2の項目サモア 289 154 2.0 △ 46.7 424 1,063 2.4 150.7
階層レベル2の項目オーストラリア 14 20 0.3 45.7 154 38 0.1 △ 75.3
欧州 4,082 2,924 37.2 △ 28.4 5,399 2,069 4.6 △ 61.7
階層レベル2の項目オランダ 856 381 4.8 △ 55.5 41 82 0.2 96.9
階層レベル2の項目ルクセンブルク 91 368 4.7 306.8 1 1 0.0 7.0
階層レベル2の項目デンマーク 404 253 3.2 △ 37.3 1 327 0.7 32,589.4
階層レベル2の項目ドイツ 1,553 58 0.7 △ 96.3 3,911 488 1.1 △ 87.5
階層レベル2の項目イタリア 7 18 0.2 137.8 194 765 1.7 295.4
階層レベル2の項目英国 838 1,545 19.7 84.5 58 29 0.1 △ 50.0
中南米 1,346 2,554 32.5 89.8 1,398 8,942 19.9 539.5
階層レベル2の項目英領中南米地域 1,225 2,487 31.7 103.0 1,276 8,783 19.5 588.5
北米 2,019 993 12.6 △ 50.8 9,705 17,826 39.7 83.7
階層レベル2の項目米国 933 938 11.9 0.5 9,690 14,126 31.4 45.8
階層レベル2の項目カナダ 1,086 55 0.7 △ 95.0 15 3,700 8.2 24,489.7
アフリカ 86 84 1.1 △ 2.3 86 52 0.1 △ 39.6
合計(その他含む) 11,255 7,858 100.0 △ 30.2 23,577 44,932 100.0 90.6
中国 30 297 901.0 3,037 3,654 20.3

〔注〕合計に中国は含まない。中国を含めた2024年の合計は81億5,534万ドル(対内)、485億8,622万ドル(対外)。地域分類は経済部投資審議委員会の定義に基づく。
〔出所〕経済部投資審議委員会発表資料から作成

表5 台湾の業種別対内・対外直接投資[認可ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 対内直接投資 対外直接投資
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
鉱業 1 0.0 100 4 0.0 △ 95.5
製造業 1,386 1,343 17.1 △ 3.1 16,027 26,206 58.3 63.5
階層レベル2の項目電気・電子 523 456 5.8 △ 12.7 14,238 24,767 55.1 73.9
階層レベル2の項目機械 216 381 4.8 76.5 83 157 0.4 89.6
階層レベル2の項目化学・薬品 107 227 2.9 111.4 441 312 0.7 △ 29.2
階層レベル2の項目輸送機器 52 93 1.2 78.0 154 138 0.3 △ 10.2
階層レベル2の項目食品・飲料・タバコ 37 60 0.8 64.5 33 20 0.0 △ 40.3
階層レベル2の項目金属 263 58 0.7 △ 78.0 434 280 0.6 △ 35.4
階層レベル2の項目ゴム・プラスチック 14 6 0.1 △ 55.6 323 149 0.3 △ 53.8
階層レベル2の項目木材・製紙 5 2 0.0 △ 59.0 70 35 0.1 △ 49.6
階層レベル2の項目プリンター・複合機 0 2 0.0
階層レベル2の項目繊維・アパレル 18 1 0.0 △ 92.7 121 208 0.5 71.8
専門・科学・技術サービス 735 1,999 25.4 172.1 80 416 0.9 419.3
金融・保険 5,359 1,767 22.5 △ 67.0 4,860 10,814 24.1 122.5
卸・小売り 989 846 10.8 △ 14.5 1,759 6,907 15.4 292.7
エネルギー・水供給 1,571 761 9.7 △ 51.5 39 28 0.1 △ 28.4
情報通信 704 573 7.3 △ 18.6 106 94 0.2 △ 12.0
不動産 238 262 3.3 10.3 285 319 0.7 12.0
建設 65 66 0.8 1.3 130 10 0.0 △ 92.0
運輸・倉庫 57 53 0.7 △ 6.2 35 33 0.1 △ 4.6
宿泊・飲食 27 35 0.5 29.7 7 27 0.1 288.5
合計(その他含む) 11,255 7,858 100.0 △ 30.2 23,577 44,932 100.0 90.6

〔注〕中国は含まない。
〔出所〕 経済部投資審議委員会発表資料から作成

表6 台湾の主な対内直接投資案件(2024年)(単位:万ドル)
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
電気・電子 ASML オランダ 10月 31,732 台湾ASMLに増資し、半導体設備部品の販売を行う。
電力 オーステッド・ウインド・パワー・TWホールディング(Orsted Wind Power TW Holding) デンマーク 9月 23,423 風力発電関連の投資業務を行う沃旭西北大彰化控股への増資。
電気・電子 コンピュータ・リンクス
(COMPUTER LINKS)
英国 9月 20,771 米国アロー・エレクトロニクス(Arrow Electronics)の台湾子会社に増資し、ICおよび電子部品の代理商業務を行う。
ソフトウェア マイクロソフト 米国 10月 14,658 マイクロソフト・オペレーション台湾に増資し、ソフトウェアサービスなどを行う。
電気・電子 コペンハーゲン基礎設施フウ(=さんずいに風「渢」)妙
(CI FENGMIAO )
ルクセンブルグ 12月 8,523 洋上風力発電関連の投資業務を行う哥本哈基礎設施渢妙への増資。
電気・電子 クーパン(COUPANG) 米国 12月 6,340 クーパン(台湾)に増資し、自社倉庫管理等のサービスを行う。
ソフトウェア BDx台湾ホールディングス
(BDx TAIWAN HOLDINGS)
シンガポール 7月 4,880 BDx データセンター (台湾) に増資し、インフォメーションソフトサービスを行う。
電力 雲林(YUNLIN) 英国 5月 2,102 允能風力発電に投資し、電子部品製造、発電業務等を行う。
電気・電子 プライム・ベース(Prime Base) 英国 3月 601 プライム・ベース台湾支店に増資し、電子部品製造、電脳および周辺設備の製造および一般器具製造業を行う。
化学 レプリジェン・スウェーデン
(REPLIGEN SWEDEN)
スウェーデン 10月 165 台湾創新材料に増資し、基礎化学と研究開発サービス業務などを行う。

〔注〕 (1)1台湾元=0.03003ドル、1ユーロ=1.0898ドルで換算。(2)投資額は経済部投資審議委員会への申請ベース。

対外直接投資は半導体分野を中心に増加基調続く

2024年の対外直接投資額(認可ベース、中国除く)は前年比90.6%増の449億3,200万ドルとなった。国・地域別では、1位は米国で141億2,600万ドル(構成比31.4%)、2位は英領中南米地域(主にケイマン諸島、バージン諸島)87億8,300万ドル(19.5%)、3位はシンガポール58億600万ドル(12.9%)となった。

対外投資は、引き続き台湾積体電路製造(TSMC)が全体を牽引した。 TSMCをはじめとする台湾半導体メーカーは特に2020年以降、それまで台湾域内に一極集中していた生産拠点を、徐々に海外へ分散させる動きをみせている(2024年5月13日付地域・分析レポート参照)。2024年にTSMCは、米国のTSMCアリゾナに対する125億ドルの増資を行ったほか、英領ケイマン諸島のTSMC GLOBALに対して80億ドル、熊本のJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)に対して52億6,200万ドルを増資した。シンガポール向けでは、鴻海精密工業が子会社のフォックスコン・シンガポール(Foxconn Singapore)に15億5,300万ドルを増資したほか、半導体ファウンドリーの世界先進積体電路(Vanguard)がオランダの半導体メーカーNXPセミコンダクターズ(NXP Semiconductors)と設立した合弁会社ビジョン・パワー・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(Vision Power Semiconductor Manufacturing Company)に対して24億ドルの投資を行った。

中国への投資は、前年比20.3%増の36億5,400万ドルだった。2021年以降は前年比減が続いていた対中国投資が2桁増となった点について投資審議司は、「2024年は台湾企業による多国籍企業の買収案件が多く(注3)、買収先の企業による実施済みの対中投資が含まれるためで、台湾企業による実際の対中投資とは異なる」と説明した。

(注3)
鴻海によるドイツのZFシャシーモジュール(ZF Chassis Modules)の買収、友達光電(AUO)によるドイツの自動車部品大手ベーア・ヘラ・サーモコントロール(BHTC)の買収、半導体商社の文曄科技(WTマイクロエレクトロニクス)によるカナダの同業フューチャーエレクトロニクス(Future Electronics)の買収などがあった。
表7 台湾の主な対外直接投資案件(2024年)(単位:万ドル)
業種 企業名 投資国・地域 時期 投資額 概要
電気・電子 台湾積体電路製造(TSMC) 米国 9月 750,000 TSMCアリゾナへの増資。
電気・電子 台湾積体電路製造(TSMC) 日本 6月 526,200 JASM (Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)への増資。
電気・電子 台湾積体電路製造(TSMC) 米国 6月 500,000 TSMCアリゾナへの増資。
電気・電子 台湾積体電路製造(TSMC) 英領中南米地域 7月 500,000 TSMC GLOBALへの増資。
電気・電子 文曄科技
(WTマイクロエレクトロニクス)
カナダ 3月 398,000 フューチャーエレクトロニクス(Future Electronics)の全株式を取得。
電気・電子 台湾積体電路製造(TSMC) 英領中南米地域 3月 300,000 TSMC GLOBALへの増資。
電気・電子 世界先進積体電路
(Vanguard)
シンガポール 7月 240,000 NXPと合弁でVSMC(VisionPower Semiconductor Manufacturing Company)を設立。
電気・電子 鴻海精密工業 シンガポール 2月 155,300 フォックスコン・シンガポール(Foxconn Singapore)への増資

〔注〕1ユーロ=1.0803米ドルで換算。投資額は経済部投資審議委員会への申請ベース。
〔出所〕経済部投資審議委員会発表資料から作成

対日関係 
対日輸出は2年連続減少、輸入は増加に転じる

台湾の通関統計によると、2024年の台湾の対日輸出は前年比17.8%減の258億3,600万ドルとなった。品目別にみると、構成比63.2%の機械および電気機器が、電子部品の大幅な減少に一般機器の減少も加わり24.3%減と過去15年で最大の落ち込みとなった。電子部品のうち最大のシェアを占める集積回路(IC)については、単価が下落したことにより輸出額が減少したと推察される。そのほか、卑金属および同製品が2.8%減、プラスチック・ゴムおよび同製品が1.8%減、化学工業品が2.2%減と主要品目軒が並み減少した。

対日輸入は前年比4.8%増の464憶5,300万ドルとなった。構成比44.1%の機械および電気機器が7.1%増、化学工業品が6.3%増となり、主要品目がマイナスとなった2023年から増加に転じた。

表8 台湾の対日主要品目別輸出入[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械および電気機器 21,570 16,321 63.2 △ 24.3 19,148 20,499 44.1 7.1
階層レベル2の項目電子部品 16,049 10,789 41.8 △ 32.8 9,011 10,290 22.2 14.2
階層レベル2の項目情報通信機器 2,624 3,036 11.8 15.7 464 415 0.9 △ 10.6
階層レベル2の項目一般機器 1,996 1,775 6.9 △ 11.1 7,726 8,087 17.4 4.7
階層レベル2の項目電子機器 860 683 2.6 △ 20.6 1,652 1,431 3.1 △ 13.4
卑金属および同製品 2,512 2,442 9.5 △ 2.8 4,534 4,767 10.3 5.1
プラスチック・ゴムおよび同製品 1,684 1,653 6.4 △ 1.8 2,542 2,696 5.8 6.0
化学工業品 1,429 1,397 5.4 △ 2.2 7,009 7,451 16.0 6.3
精密・光学機器 1,059 1,062 4.1 0.3 2,654 2,457 5.3 △ 7.4
食料品 712 646 2.5 △ 9.3 1,009 1,031 2.2 2.2
鉱物品 426 450 1.7 5.6 467 510 1.1 9.1
輸送機器 484 435 1.7 △ 10.2 3,765 3,470 7.5 △ 7.8
繊維製品 279 256 1.0 △ 8.2 175 175 0.4 △ 0.1
合計(その他含む) 31,435 25,836 100.0 △ 17.8 44,344 46,453 100.0 4.8

〔注〕食料品は、酒・たばこを含む。
〔出所〕 財政部統計処データベースから作成

日本からの直接投資は27.1%減、対日直接投資は25.6倍

投資審議司によると、2024年の日本からの対台湾直接投資は前年比27.1%減の4億5,200万ドル、件数は296件であった。件数の内訳を業種別にみると、卸・小売りが最も多く88件(7,150万ドル)、次いで専業科学技術サービス業が52件(4,150万ドル)、ホテルおよびレストラン業が50件(697万ドル)であった。

対日直接投資は前年比25.6倍増の54億9,000万ドルとなり、このうち95.8%がTSMCの熊本JASM向けの投資であった。投資件数は99件と2023年の45件から倍増しており、対日投資への関心は高まっている。件数の内訳を業種別にみると、卸・小売りが最も多く33件(3,305万ドル、19件増)、次いで情報通信産業12件(927万ドル、8件増)、電子部品製造11件(52億6,544万ドル、8件 増)であった。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 2.7 1.1 4.8
1人当たりGDP (米ドル) 32,909 32,337 33,437
消費者物価上昇率 (%) 3.0 2.5 2.2
失業率 (%) 3.7 3.5 3.4
貿易収支 (100万米ドル) 68,699 95,617 100,669
経常収支 (100万米ドル) 101,445 105,849 113,834
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 554,932 570,595 576,677
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 202,146 206,499 219,947
為替レート (1米ドルにつき、台湾元、期中平均) 29.8 31.2 32.1


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率:行政院主計総処
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):中央銀行