知的財産に関する情報韓国IPGミニセミナー(特許庁委託事業)開催レポート

開催概要

開催日時 2018年5月8日(火曜)17時00分 ~ 18時00分
場所 SJC(ソウルジャパンクラブ)大会議室
ソウル特別市 鍾路区 清渓川路 41永豊ビル12F
主催 韓国IPG/SJC知財委員会(事務局 ジェトロ・ソウル事務所知財チーム)
内容
17:00~17:05
韓国IPGリーダー・SJC委員長あいさつ
武内 敬司 株式会社韓国日立 社長
17:05~17:55
日本政府の模倣品対策の取り組みについてPDFファイル(2.5MB)(50分)
北中 忠 経済産業省製造産業局模倣品対策室 室長補佐
17:55~18:00
韓国IPGについて(5分)
浜岸 広明 ジェトロ・ソウル事務所 副所長
18:15~
閉会

レポート

韓国IPGミニセミナー「日本政府の模倣品対策の取り組みについて」を開催しました。

近年の模倣品を巡る状況は、一部改善の兆しもみられるものの、依然として世界中で被害が発生しており、日本では官民を挙げて模倣品対策に取り組んでいます。そこで、韓国IPGは、去る5月8日にSJC(ソウルジャパンクラブ)大会議室にて、経済産業省製造産業局模倣品対策室の北中忠 室長補佐をお迎えし、「日本政府の模倣品対策の取り組みについて」をテーマに韓国IPGミニセミナーを開催しました。

以下は、模倣品対策室の北中室長補佐よりご講演いただいた内容です。

1. 経済産業省製造産業局の模倣品対策室の役割と活動について

模倣品対策室は、企業などから、模倣品・海賊版対策に関して「相談先が分かりにくい」、「複数官庁に関係することも総合的に対応すべき」との指摘あり、2004年度に政府模倣品・海賊版対策総合窓口として設置されました。

企業や個人から模倣品や海賊版対策に関する相談先が、METI、文化庁、警察庁、関税庁、特許庁、外務省など複数の官庁があるので、どの機関に相談すればよいのだろうか。

(出所)ミニセミナーの発表資料から抜粋

模倣品対策室では、相談の受付や情報提供、助言、日本国内各担当政府機関の紹介のほか、日本国内の各担当政府機関への情報提供、日本国外の当局・機関への政府間会合や各事業等による要請及び協力などの働きかけを行っています。

日本国内の相談の場合は、企業や個人からの相談窓口として政府模倣品・海賊版対策総合窓口があります。この窓口を通して模倣品対策についてのアドバイス、警察、税関、消費生活センター、ISPなどの関係当局と機関の紹介や情報提供や連携を行い、模倣品の排除を行います。

2016年度の相談・情報提供の受付件数をみると、相談が348件、情報提供が550件で相談案件数は過去最多となっています。また、2016年度の商品分野別の相談案件の割合をみると、雑貨類が44.7%で相談件数が最多となっています。

この他にも、模倣品対策室では、ジェトロを通して各国の模倣対策の制度や運用状況、模倣品による被害実態調査などを実施しており、ジェトロの知的財産権保護ウェブサイトにてご覧いただくことができます。

2. 日本国内の模倣品問題の現状について

日本の税関における水際での取り締まりは、2017年度の知的財産侵害物品の輸入差止実績構成比の推移をみると、件数ベースでは98.0%が商標権によるものであり、点数ベースでは61.8%が商標権、26.7%が意匠権で、意匠権の差止が増加しています。また、同年の品目別の輸入差止実績構成比の推移をみると、件数ベースではバッグ類が38.8%で、その次が衣類14.0%であり、点数ベースでは電気製品23.1%で、その次が携帯電話及び付属品12.8%です。また、2017年度の輸送形態別輸入差止実績構成比の推移をみると、件数ベースでは郵便物が92.5%、一般貨物が7.5%であり、点数ベースでは郵便物が43.5%、一般貨物が56.5%でした。

また、日本の警察庁による取り締まりは、2016年度の商標権侵害事犯の検挙事件数が304件で、著作権侵害事犯の検挙事件数が238件であり、この二つの事犯の検挙事件に占めるインターネット利用事犯の割合が、商標権侵害事犯が82.2%で、著作権侵害事犯が91.2%であり著作権侵害事犯の割合が最多でした。

3. 中国の模倣品問題の現状と対策について

2017年度に日本特許庁で行った模倣被害調査報告書の「海外において模倣被害を受けた国・地域の被害社数(複数回答)」によると、中国(香港を含む)において、製造会社が3,315社、経由会社が2,066社、販売会社が2,623社で、その次に韓国において、製造会社が486社、経由会社が732社、販売会社が1,098社であり、中国の模倣品被害が依然として重大であることが分かります。

中国の模倣品問題は日本の企業名、地名、キャラクターなどが多数出願・登録される冒認出願が多く、中国で自己の商標の登録・使用ができなくなります。また、争うことに関するコストは甚大で、期間も4~5年かかることも決して珍しくありません。最終的に勝てても、争っている間は、権利侵害を主張される可能性もありビジネスができない可能性があります。 模倣品対策室では、中国の模倣品問題の対策として官民合同ミッションの派遣を行い、中国政府に法制度・運用面の改善などの要請・働きかけを行っています。また、日中知的財産権ワーキング・グループを設置し、知的財産保護に関する法制度から執行・運用面まで幅広いテーマを議題として取り扱い、おおむね毎年1回、日中交互で開催しています。さらに、日中知的財産権エンフォースメント共同セミナーの開催や、中国国家工商行政管理総局(SAIC)等、知的財産に関わる中国政府機関を招聘し議論を行っています。

4. その他地域の模倣品問題の現状と対策について

ベトナムとの三者連携プロジェクト、ミャンマーとの税関差止プロジェクトを実施しました。UAE政府機関に対しては、税関での水際取締りの強化、刑事罰の厳罰化、フリーゾーン内での模倣品取締り強化などを働きかけています。サウジアラビア商業投資省との間では、模倣品対策協力に関する覚書を締結しています。

5. インターネット上の模倣品問題の現状と対策について

消費者が日本ショッピングモールオークションを通して購入すると、海外の模倣品業者が消費者に直送するインターネット上の模倣品被害が発生しています。このような被害に対する対策としては、権利者、ISP(Internet Services Provider)事業者、ECサイト(Electronic Commerce site)事業者と協力して問題解決を目指しています。

インターネット上の模倣品被害は、消費者がインターネットを利用して日本のショッピングモールオークションを通して購入をすると、海外の模倣品業者が消費者に直送することにより模倣品の被害が発生しています。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195