知財判例データベース 登録商標の不使用取消審判において、不使用の正当な理由が一部期間に存在していても、不使用取消しを免れることができないと判断された事例

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
原告(商標権者) vs 被告(審判請求人)
事件番号
2024ホ15431登録取消(商)
言い渡し日
2025年04月17日
事件の経過
確定

概要

登録商標の不使用取消審判において、不使用の正当な理由が不使用の全体期間のうち一部期間に存在していても相当期間において使用可能な状態にあったとすれば、不使用取消しを免れることができないと判断した。

事実関係

原告は、商品類区分第5, 35, 41, 42, 43, 44, 45類、「遠隔医療サービス業、遠隔地医療サービス業」等を含む計64個の指定商品について2015年3月5日に商標登録を受けた。被告は、2022年11月28日に当該登録商標に対し指定商品全部への不使用取消審判を請求し、特許審判院は審判請求日前3年以内に使用事実がないため不使用に対する正当な理由は認められないとして登録取消の審決をした。これに対し原告は、登録商標の不使用の事実は認めるが、不使用対象期間である3年(2019年11月28日から2022年11月27日まで)のうち2020年12月15日の前までは法律上非対面診療が許可されていなかったために取消対象指定商品のうち「遠隔医療サービス業、遠隔地医療サービス業」について商標を使用できなかったことには正当な理由があるとして、審決取消訴訟を提起した。
原告の主張に関連し、COVID-19対策のため2020年12月15日から施行された「感染病の予防及び管理に関する法律」の第49条の3は、COVID-19感染病危機対応深刻段階の危機警報発令期間において一時的に非対面診療ができるとし、すなわち医師、歯科医等は一定の条件のもとで有線、無線、画像通信、コンピュータ等の情報通信技術を活用して医療機関外部にいる患者に診断、相談及び処方等ができるように許可していた。

判決内容

特許法院は、登録商標の不使用に対する正当な理由とは「病気その他天災等の不可抗力により営業をすることができない場合だけでなく、法律による規制、販売禁止又は国家の輸入制限措置等によりやむをえず登録商標の指定商品が国内で一般的・正常に取引されることができない場合のように、商標権者の帰責事由によらない商標不使用の場合も含まれる」とする大法院の判例(大法院1982年2月23日言渡し80フ70判決、大法院2001年4月24日言渡し2001フ188判決等参照)を引用した上で、少なくとも非対面診療に対する法律的規制が一時的に解禁され始めた2020年12月15日からは特段の法律上の障害があったとか商標権者の帰責事由によらない商標不使用の事情があったとは認められず、むしろ2022年3月14日頃の新聞記事には2020年2月から2022年1月までの間、非対面診療サービスを受ける患者数が増加し、関連サービスを提供するアプリケーションも約20種に上ると報道している点等に照らし、原告は十分に「遠隔医療サービス業、遠隔地医療サービス業」に関連するサービスを提供できたものと認められると判断した。
また、3年の全体期間を基準としてその全部又は実質的な相当期間にわたって商標を使用できなかった不可抗力的な事情が客観的に存在したと認められる場合に限り正当な理由があると認めるべきであり、単に一部期間においてのみ商標の使用が制限され、残りの相当期間は使用が可能であったにもかかわらず使用しなかったのであれば、3年の全体期間において不使用の正当な理由があったとは断定できないとして、一部期間において商標の使用が難しかったとしても残りの期間は十分に使用が可能な状態にあった以上、不使用に正当な理由があったとは認められないと判断した。

専門家からのアドバイス

本件での特許法院の判断は、商標不使用の「正当な理由」に関する法理について大法院の立場を改めて示した上で、正当な理由があった期間に関しては、3年の全体期間のうち一部期間にのみ不使用の正当な理由が存在するような場合に「正当な理由」があったとは認められないと判示している。
本件で審判請求の対象となった登録商標の指定商品は全体で67個であったが、特許法院の段階では、このうち「遠隔医療サービス業、遠隔地医療サービス業」の2つの指定商品について法的規制下の一部の期間で不使用であったことを「正当な理由」であるとして原告である商標権者は争っており、その結果、登録商標の不使用取消しが認められている。これに関連し、韓国の特許法院の既存判決では、不使用登録取消審判において審判請求の対象である指定商品を不可分一体として取り扱い全体を一つの請求と認める点において、取消対象となった指定商品が多数存在していても、そのうち一つの商品に対してのみ不使用の正当な理由を証明した場合には審判請求は全体として認容されないと判断しているので参考にされたい(特許法院2013年4月18日言渡し2012ホ10136判決)。
今回の判決に照らしてみると、医薬品や酒類のような販売に許認可が必要となる指定商品の場合には、法的規制等により一時的に商標不使用の期間があったことは不使用の正当な理由として認められないこともあり得ることから、この点を加味して商標管理をする必要がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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