知財判例データベース 地図のみからなる商標の識別力を否定し、当該地図と他の文字が結合した標章の使用による識別力の取得も認めなかった大法院判決

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
原告 A社(上告人) vs 被告 特許庁長(被上告人)
事件番号
2023フ10453拒絶決定(商)
言い渡し日
2024年10月31日
事件の経過
上告棄却

概要

「地図のみからなる商標」は登録を受けることができず、また、使用による識別力を認められるために提出された実使用商標が地図以外の他の文字部分が結びついた標章である場合には、使用による識別力を取得したかを判断する資料と認めることができないとして識別力を否定した。

事実関係

原告(上告人、以下「原告」という)は、韓半島の地図形態の標章「「調味海苔等」を指定商品として出願された韓半島の地図形態の標章」を「調味海苔等」を指定商品として2019年10月15日付で出願したが、特許庁は「顕著な地理的名称の地図のみからなる商標」に該当するという理由で拒絶し、特許審判院は拒絶の取消しを求める原告の請求を棄却した。これに対し原告は、特許法院及び大法院において、自身の出願標章は地図そのものではなく相当な省略、変形を経て地図をモチーフにした図形商標に該当し、また、出願前から同一性が認められる実使用商標を長期間使用してきた結果、特定人の商品に関する出所を表示するものと識別できるに至ったという理由で使用による識別力を取得したと主張した。

判決内容

(1) 特許法院の判断
原審は、実際の地図と異なる色彩で表現したり、海岸線を単純に表現したり、韓半島とその付属島嶼の比率を一部歪曲して表現する等の表現方法は大韓民国地図を表す通常の表現方法に過ぎない等の理由で一般需要者に社会通念上大韓民国地図と認識されるとして識別力を認めなかった。
また、使用による識別力の取得の有無についても、原告が25年以上出願商品の販売業等を営んできた事実、国内で200か所余りの総販売店及び代理店を保有している事実、2016年から毎年約600億ウォン以上の売上を記録し2020年には調味海苔関連の市場占有率1位を記録した事実などは認められるが、実使用商標は「韓半島の地図形態の中に商品名が記載されている実使用商標韓半島の地図形態の中に商品名が記載されている実使用商標韓半島の地図形態の中に「ソンギョン(会社名)」と「地図じるし」等の文字が共に使用されている実使用商標」のように「ソンギョン(会社名)」と「地図じるし」等の文字が共に使用されている点で、地図だけを別個に分離して需要者間で使用することによる識別力を取得することはできなかったとした。

(2) 大法院の判断
大法院は原審の判断を維持し、使用による識別力取得が認められるための出願商標と実使用商標との関係については「使用による識別力を取得する出願商標は実際に使用した商標そのものに限定され、それに類似する商標に対して識別力取得を認めることはできないが、出願商標と同一性が認められる商標の長期間にわたる使用は上記の識別力取得に役立つ要素である。一方、出願商標と同一若しくは同一性が認められる部分が、その部分だけで独立性を維持し分離認識されることができるのであれば、他の標章と共に使用されたとしても、その使用実績を出願商標が使用による識別力を取得したかを判断する資料と認めることができる」という既存の法理を引用した。その上で大法院は、実使用商標の使用事実、マスコミでの紹介、販売量、市場占有率が相当な水準に達した事実は認めながらも、出願商標を単独で使用した事実は見出しがたく、実使用商標はいずれも出願商標の他に一つ以上の文字部分が結合した標章であって、図形のみからなる出願商標と同一の標章とは認められないと判示した。

専門家からのアドバイス

地図のみからなる標章だけでなく顕著な地理的名称のみからなる商標は、商標法33条1項4号により登録が拒絶されており、これにより本件の出願商標も登録が認められなかった。
特に同規定は、当該地理的名称と関係がない指定商品であっても適用され(指定商品を「接続および案内用導尿管」とした出願商標「SOFIA」(特許法院2016年6月24日言渡し2016ホ502判決))、法令で定められた行政区域名称ではなくても該当の可能性があり「EMIRATES」(特許法院2007年10月11日言渡し2007ホ5529判決))、使用者が意図せずに顕著な地理的名称と同音異義語に該当する場合にも適用される可能性がある(出願商標「ZEJU」は済州島(チェジュド)と同じ称呼で同規定に該当)。本判決と併せ、ブランド選定において実務上の参考にされたい。

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