知財判例データベース 単なる広告文やスローガン的標章としては認識されないとして出願商標の識別力を認めた事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 請求人(原告) vs 特許庁長(被告)
- 事件番号
- 2022ホ3793拒絶決定
- 言い渡し日
- 2023年04月14日
- 事件の経過
- 審決取り消し
概要
出願商標「GLOBALIZATION PARTNERS」が指定商品について出所表示として使用された場合、単純な広告文やスローガン程度として認識されるはずであるとは断定できないことから、商標法33条1項7号の「需要者が何人かの業務に関連した商品を表示するものであるかを識別できない商標」に該当しないと判示した。
事実関係
原告は商品区分35類の「human resources services, namely, personnel selection for others」(人事業、すなわち職員採用代行業)等を指定商品として2019年7月25日付で国際登録したが、これに対して特許庁は2021年2月3日付で、性質表示(品質、効能等)に該当し(商標法33条1項3号)指定商品にありふれて使用される宣伝文句又は広告文に過ぎないスローガン的標章として自他商品の出所を表示する標章といえないため識別力がないという理由(商標法33条1項7号)で拒絶決定をした。原告はこれを不服として拒絶決定不服審判を請求したが、特許審判院は2022年5月17日付で、出願商標は観念において「世界化」を意味する「GLOBALIZATION」と「パートナー」を意味する「PARTNERS」とが結びついて「世界化パートナー」であると容易に認識され、指定商品に関連して「世界化に関連した業務(国際業務)」を担当する職員の採用のための広告宣伝文等としてただちに認識される可能性が高く、自他商品の識別力機能を発揮できないので商標法33条1項7号に該当する旨の棄却審決をした。
判決内容
本件で特許法院は、まず「ある商標が識別力がない商標に該当するかは、その商標が有する観念、指定商品との関係及び取引社会の実情等を勘案して客観的に決めるべきであるところ、社会通念上自他商品の識別力を認めることが困難であるとか、公益上特定人にその商標を独占させることが適当でないと認められる場合、その商標は識別力がない(大法院2020年5月14日付言渡し2019フ11794判決等参照)」とする既存の大法院判決を引用した。これに基づき特許法院は、インターネット検索サイトNaverにおいて「~partner採用」および「global partner採用」等を検索したときに多数の掲示文が検索される点、就業情報サイトにおいて「GLOBALIZATION PARTNER(S)」を検索したとき「採用情報」には検索結果がなく「企業情報」として原告の韓国法人だけが検索され、又はgoogleにおいて検索したとき大部分は原告に関する内容だけが検索される点、「partner(s)」を含む類似商品が多数登録されている又は特許審判院の審決によって登録されたという点等を総合してみると、商標法33条1項7号の「識別力がない商標」には該当しないと判示した。
すなわち、1) 出願商標は「世界化パートナー」の意味として観念されるが、2) 「世界化」のための業務は人事関連業務に限定されるものではなく人事業務以外の多様な業務が存在するため指定商品を直感させるとは認められず、3) 各種企業の採用広告文のなかでは「global XXX partner」等の文言が使用されているところ、これは記述的な形と内容として「世界的な人材」を探すという意味で使用されているだけで、出願商標と同じ文言は一般スローガンとしてはもちろん出所表示としても原告以外によっては使用されていない点から、単純な広告文やスローガン程度に認識されるはずであるとは断定できず、出願商標が登録されたとしても各種企業の採用広告や宣伝文に「global XXX partner」等を記述的に使用することには何らの制約もなく、出願商標が自由な使用を制限し公益上特定人に独占させることが適当でないと認める証拠もないと判断した。
専門家からのアドバイス
スローガンや広告文のような商標に対しては商標登録が可能であるか。こうした態様の商標については識別力が認められず登録が拒絶された事例が多数存在している。具体的な例として「果物ジュース」等を指定商品とした「Drink in the Sun」(大法院1994年12月22日言渡し94フ555判決)、「靴下」を指定商品とした「THE BEST SOCKS ON TWO FEET」(特許法院2019年8月23日言渡し2019ホ2707判決)、「履物」等を指定商品とした「JUST DO IT」(特許法院2009年6月26日言渡し2008ホ14230判決)等が、識別力がないという判断を過去に受けている。
一般的にスローガンや広告文句といった態様を企業はマーケティング手段として好んで用いるのではあるが、それらについて識別力が認められて商標登録を受けることは、その商標の使用による識別力が立証された等の例外的な場合を除き容易ではない。これに対し本事例は、出願商標の観念自体は一般需要者に容易に認識されるとしても、韓国国内で一般的に広く使用されるインターネット検索エンジン等での検索結果や、指定商品に密接な関係があるインターネット就職情報サイト等での商標構成単語の使用事例等、具体的な取引実情が考慮されて識別力が認められ商標登録がなされた。すなわち商標を構成する各単語の使用実例だけでなく、商標の構成全体としての使用実例等を確認した結果、商標登録が認められたといえ、かかる積極的な商標登録の主張が功を奏した事例だったといえよう。
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