知財判例データベース オンラインショッピングモールのプラットフォーム模倣行為が不正競争防止法の成果物盗用不正競争行為に該当しないと判断した事例

基本情報

区分
不正競争
判断主体
大法院
当事者
原告 A社 vs 被告 B社
事件番号
2020ダ268807
言い渡し日
2022年10月14日
事件の経過
上告棄却/確定

概要

オンラインショッピングモール(オープンマーケット)を運営する原告は、他のオンラインショッピングモールを運営する被告のウェブサイトの体系である「単一商品サービス」というプラットフォームが、原告の成果物である、商品登録の単位を個別商品として販売者が一緒に陳列したい商品をグループにまとめてウェブページに個別商品と一緒に現出させる「グルーピングサービス」機能を持たせた商品登録システムである「商品2.0」というプラットフォームを模倣したものなので、不正競争防止法第2条第1号ル目の不正競争行為に該当すると主張して、差止等の請求をした事案である。

大法院は、原告が公開した類似商品をまとめて1つのウェブページに現出させようとする「グルーピングサービス」のアイデア自体は、伝統的な販売方式をオンラインで具現したものに過ぎないだけでなく被告も既に認識していたものなので特に独創的であるとは認められず、これを具現する技術的手段も、技術的に保護する価値があるほど高度化されたり独創的であるとは認め難いとして、「グルーピングサービス」は原告の相当な投資や労力により作成された保護価値のある成果に該当せず、仮に「グルーピングサービス」が原告の成果等と認められるとしても、被告が単一商品ロードマップ等の自己の研究成果及び既存のオープンマーケット運営経験に基づいて独自に現在の「単一商品サービス」を構築したものと認められるという点等を考慮するとき、被告が原告の成果を公正な商取引慣行又は競争秩序に反する方法により無断で使用したとは認められないので、被告の行為は不正競争防止法の成果物盗用不正競争行為に該当しないと判断した。

判決内容

(1)関連法理

「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」(2021年12月7日法律第18548号で改正される前のもの)第2条第1号ル目(以下「ル目」という)は、その保護対象である「成果等」の類型に制限をおいていないので、有形物だけでなく無形物もこれに含まれ、従来、知的財産権法により保護を受けるのが難しかった新たな形態の結果物も含まれ得る。「成果等」を判断するときには、結果物が持つようになった名声や経済的価値、結果物に化体された顧客吸引力、当該事業分野において結果物が占める比重や競争力等を総合的に考慮すべきである。また、このような成果等が「相当な投資や労力により作成されたもの」であるかは、権利者が投入した投資や労力の内容と程度をその成果等が属する産業分野の慣行や実態に照らして具体的・個別的に判断するものであって、成果等を無断で使用することにより侵害された経済的利益が、誰でも自由に利用することが可能な、いわゆる公共領域(public domain)に属さないと評価できなければならない。
さらに、ル目が定める「公正な商取引慣行又は競争秩序に反する方法により自身の営業のために無断で使用」した場合に該当するためには、権利者と侵害者が競合関係にあるか、近い将来、競合関係におかれる可能性があるか、権利者が主張する成果等が含まれた産業分野の商取引慣行や競争秩序の内容及びその内容が公正であるか、上記のような成果等が侵害者の商品やサービスにより市場で代替され得るか、需要者や取引者に成果等がどの程度知られているか、需要者や取引者の混同の可能性があるか等を総合的に考慮すべきである。

(2)具体的判断

原審は、次のような理由により、被告の行為はル目の不正競争行為に該当しないと判断している。

  1. オンラインショッピングモール「Gマーケット」と「オークション」を運営する原告は、オンラインショッピングモール運営者ではない個別販売者と購買者間で商品取引がなされるようにする電子取引システムであるオープンマーケットを提供してきた。ところで、オンラインショッピングモールが複数の商品を一つの画面に広告して最初の画面に最も安い商品の価格のみを表示していた広告慣行が、消費者に全ての商品がそのような価格で販売されるものと誤認させるおそれがある、いわゆる「オンラインショッピングモールの欺瞞的価格表示」として問題になると、原告は、公正取引委員会が提案した4つの代案のうちの1つである「最初の画面に個別商品別に広告する案」を受け入れ、商品登録の単位を個別商品に切り替え、販売者が一緒に陳列したい商品をグループにまとめてウェブページに個別商品と一緒に現出させることができる「グルーピングサービス」機能を持たせた商品登録システム「商品2.0」を公開した。
  2. ところで、「個別商品単位での登録構造切替」というアイデアは、上記代案を選択する場合に最も直観的に予想される措置であり、商品登録構造を切り替えるようにすると発生し得る販売者の離脱問題を防止するために、類似商品をまとめて1つのウェブページに現出させようとする「グルーピングサービス」のアイデア自体は伝統的な販売方式をオンラインで具現したものに過ぎないだけでなく、被告も既に認識していたものであり、特に独創的であると認められず、これを具現する技術的手段も技術的に保護する価値があるほど高度化されているまたは独創的であるとは認め難い。結局、個別商品単位の登録を前提とした「グルーピングサービス」は、原告の相当な投資や労力により作成された保護価値ある成果に該当しない。
  3. 仮に、「商品2.0」や「グルーピングサービス」が原告の成果等と認められるとしても、被告が単一商品ロードマップ等、自己の研究成果及び既存のオープンマーケット運営経験に基づいて独自に現在の単一商品サービスを構築したものと認められる点等を考慮すると、被告が原告の成果を公正な商取引慣行又は競争秩序に反する方法により無断で使用したとは認められない。

原審判決理由を先に検討した法理と記録に照らして詳察すると、上記のような原審の判断には、上告理由の主張のようにル目の成立と関連して成果等や無断使用に関する法理を誤解する等の判決に影響を及ぼしたとする誤りはない。従って、上告を棄却し、上告費用は敗訴者が負担するものとして、関与する大法官の一致の意見により主文のとおり判決する。

専門家からのアドバイス

不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律のうち一般条項に関するものは、2013年7月30日に改正されて2014年1月31日に施行されているところ、改正当初はヌ目に該当していたのが、その後の改正により、本件が適用された法律ではル目に該当し、現行法ではワ目に該当している。
こうした一般条項が導入される前の法律は不正競争行為の類型のみが限定的に列挙されていたのであるが、それだけでは技術の発展や社会環境の変化に応じて新たに生じてくる多様な類型の不正競争行為を規制することが難しいという限界があったため、これを克服すべく一般条項が導入されたのである。この条項が導入された後、多数の下級審判例が出されているとともに、これまで韓国の大法院は下表にあるような判決を通じて同条項の適用に積極的な立場を取ってきている。
本件も韓国大法院の判決であって、争いの対象になった行為が原告の相当な投資や労力により作成された保護価値ある成果に該当しないだけでなく、被告が自己の研究成果及び運営経験に基づいて独自に構築した成果に該当することから、不正競争防止法の成果物盗用不正競争行為に該当しないと判断された事例であった。下記判例とともに参考にされたい。

事件番号 判決要旨
2016ダ276467 【スクリーンゴルフシミュレーター関連事件】
不正競争防止法第2条第1号(ル)目の保護対象である「成果等」には無形物も含まれ、「成果等」が相当な投資または労力により作られたものに該当するか否かは具体的かつ個別的に判断するとしながら、そうした成果等を無断で使用することで侵害された経済的利益が誰もが自由に利用できる公共領域(public domain)に属しないものと評価できなければならない。
(具体的な内容は、JETRO判例データベース参照)
2017ダ217847 【エルメスの鞄 vs. 目玉鞄事件】
2016ダ276467判決と同一の法理を提示した上で、被告が契約等による提携や協業をしていない状態において無断で需要者に広く知られたブランドのバッグ形態をそのまま活用した行為はファッション雑貨分野の公正な商取引慣行および公正な競争秩序に合致せず、他人の経済的利益を侵害する行為に該当する。
(具体的な内容は、JETRO判例データベース参照)

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