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知財判例データベース 商標権者が故意に指定商品に登録商標に類似し対象商標と実質的に同一の実使用商標を使用することにより需要者が商品の出所を誤認・混同するおそれがあると判断した事例

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
原告 A社 vs 被告 B社
事件番号
2020ホ1779
言い渡し日
2020年12月10日
事件の経過
確定(2020年12月28日)

概要

特許法院は、本件登録商標の商標権者である原告が、本件登録商標に類似し対象商標と実質的に同一の実使用商標を、本件登録商標の指定商品に含まれるスリッパ、運動靴等について使用したことにより、一般需要者が対象商標との関係で本件登録商標をそのまま使用した場合より商品の出所を誤認・混同するおそれが更に大きくなり、これに対する原告の故意も認められるので、本件登録商標は旧商標法第73条第1項第2号(注1)に該当して商標登録が取り消されるべきであると判断した。

事実関係

被告は、原告を相手取り、特許審判院に原告の本件登録商標が旧商標法第73条第1項第2号に該当すると主張しながら本件登録商標に対する登録取消審判を請求し、特許審判院は「原告は本件登録商標の商標権者として故意にその指定商品である『スリッパ、サンダル』に本件登録商標に類似する実使用商標を使用することにより一般取引者または需要者に被告の対象商標に関連する商品と誤認・混同を生じさせたので、本件登録商標は旧商標法第73条第1項第2号に該当する」という理由で被告の上記審判請求を認容する審決をした。

原告の本件登録商標および原告の実使用商標と被告の対象商標は下表のとおりである。

区分 本件登録商標 実使用商標 対象商標
標章 原告の本件登録商標であるチャンピオン商標 原告が実使用しているチャンピオン商標 チャンピオン商標と類似の対象商標
指定商品/使用商品 運動靴、スリッパ等 運動靴、スリッパ 運動靴、スリッパ等

判決内容

(1) 関連法理

旧商標法第73条第1項第2号において、商標権者が故意に指定商品について登録商標に類似する商標を使用し、または指定商品に類似する商品について登録商標もしくはこれに類似する商標を使用することにより需要者に商品の品質を誤認させまたは他人の業務に関連する商品と混同を生じさせた場合に、その商標登録を取り消すことができるようにしたことは、商標権者が商標制度の本来の目的に反して、自己の登録商標をその使用権の範囲を超えて不正に使用できないように規制することにより商品取引の安全を図り、他人の商標の信用または名声に便乗しようとする行為を防止して、取引者および需要者の利益保護はもちろん、他の商標を使用する者の営業上の信用および権益も併せて保護しようとするところにその趣旨がある。

一方、旧商標法第73条第1項第3号において、商標権者または専用使用権者等が正当な理由なしに国内で登録された商標を指定商品に使用しない場合にその商標登録を取り消すことができるようにしたことは、登録商標の使用を促進すると同時に、その不使用に対する制裁を加えようとするところにその趣旨がある。したがって、旧商標法第73条第1項第2号で定めた不正使用を理由とする商標登録取消審において、商標権者が登録商標を使用したのか、あるいはそれに類似する商標を使用したのかは、旧商標法第73条第1項第3号で定めた不使用を理由とする商標登録取消審判での商標同一性の判断基準と関係なく旧商標法第73条第1項第2号の先に見たような立法趣旨に沿って独自に判断すべきである。

すなわち、実使用商標が登録商標を他人の対象商標と同一または類似に見えるように変形したものであってその使用により対象商標との関係で登録商標をそのまま使用する場合より需要者が商品の出所を誤認・混同するおそれが更に大きくなったとすれば、旧商標法第73条第1項第2号で定めた不正使用を理由とした商標登録取消審判ではその実使用商標の使用を登録商標に類似する商標の使用と見ることができると言うことができ、このとき、その対象商標が周知・著名なものであることを要するものではない。

(2)判決の内容

イ.商標権者の実使用商標の使用か否か

弁論全体の趣旨などを総合して認められる事実または事情に照らしてみると、商標権者である原告が実使用商標が付されたスリッパ、運動靴等の商品を生産し、これらをオンライン市場で販売することによって実使用商標を使用したことを認めることができる。

ロ.実使用商標と本件登録商標の標章類似および商品の同一・類似について

  1. 両標章の類否
    実使用商標と本件登録商標は、形状を構成する線、図形の太さに微細な差があり、構成左側部分の内側空間が赤色で満たされているか否かに差があるだけで、外観の面で互いに類似し、その他に上記各標章構成から導き出される特定の観念または呼称が存在しないところ、全体的に実使用商標と本件登録商標は互いに類似する。原告は、実使用商標が本件登録商標と一部色彩のみ異なって使用されただけなので互いに類似するものでなく、同一性の範囲内にある商標に該当すると見るべきである主張するが、実使用商標と対象商標の同一性は、本件登録商標の構成を構成左側部分の内部空き空間に赤色が満たされるように変更させることによって発生したものであるところ、これを先に見た関連法理に照らしてみると、実使用商標が本件登録商標を対象商標と同一または類似に見えるように変形したものであるので、その使用により対象商標との関係で本件登録商標をそのまま使用する場合より需要者が商品の出所を誤認・混同するおそれが更に大きくなった事情に該当するので、旧商標法第73条第1項第2号で定めた不正使用を理由とする商標登録取消審判では、実使用商標の使用を本件登録商標の同一性範囲を逸脱した類似する商標の使用と見ることができる。
  2. 両商品の同一・類似の該否
    実使用商標の使用商品(運動靴、スリッパ等)は、本件登録商標の指定商品(商品類区分第25類の運動靴、スリッパ等)と同一である。

ハ.実使用商標と対象商標の誤認・混同のおそれの有無

  1. 実使用商標と対象商標の各標章および商品の同一性
    実使用商標と対象商標の各標章が互いを区分できない程度に同一であるという点、実使用商標と対象商標の各商品がスリッパ、運動靴等の靴類商品で同一であるという点は先に見たとおりである。
  2. 対象商標が知られている程度
    対象商標は、米国で1965年靴下に、1986年靴に、1992年下着およびアンダーシャツにそれぞれ初めて使用されて以来、現在まで使用され続けており、現在300を超える国で登録商標として管理されている。
    実使用商標が表示された、原告商品(靴)の販売のためのネイバーストアのオンライン販売ページには、「とても偽物っぽいです。子供が履かずにそのまま置いてあります。」などの消費者レビュー内容と共に、「Q & A」欄に「正規品でしょうか」という消費者の質問が掲示されているところ、上記のようなレビューおよび質問の各内容に照らしてみると、上記原告商品の販売当時、一般需要者は靴類商品と関連して既に原告の商品と異なる別個の「正規品」の出所としての被告を確実に認識していたものと考えられる。このように認められた事実または事情によると、対象商標は実使用商標の使用当時、靴類商品と関連して国内で少なくとも周知性を獲得した商標であると判断することが妥当である。
  3. 実使用商標と対象商標の実際の使用態様
    原告は実使用商標を「原告は実使用商標を使ったサンダル」のような態様で使用し、被告は対象商標を「被告は対象商標を使ったサンダル」のような態様で使用したところ、実使用商標と対象商標が実際に使用された各スリッパの製品形態および商標付着態様が互いに非常に類似する。
  4. 不正使用の故意の有無
    商標権者が誤認・混同を引き起こすような対象商標の存在を知りながら、その対象商標と同一・類似の実使用商標を使用する限り商標不正使用の故意があると言え、特に、その対象商標が周知・著名商標の場合には、その対象商標やその標章商品の存在を認識できないなどの特段の事情がない限り故意の存在が推定されるが、先に見たとおり、被告の対象商標は実使用商標の使用当時、靴類商品と関連して少なくとも国内に広く知られていた周知商標である点が認められるので、原告の不正使用についての故意は推定される。

ニ.結論

原告が、本件登録商標と類似し、対象商標と実質的に同一の実使用商標を本件登録商標の指定商品に含まれるスリッパ、運動靴等に使用することによって一般需要者が対象商標との関係で本件登録商標をそのまま使用する場合より商品の出所を誤認・混同するおそれが更に大きくなり、これに対する原告の故意も認められるので、本件登録商標は旧商標法第73条第1項第2号に該当する。

専門家からのアドバイス

仮に商標権者として登録商標を保有している場合であっても、需要者に商品の品質を誤認させまたは他人の業務に関連する商品と混同を生じさせる方法で使用する場合であれば、登録商標の取消事由に該当することがある(旧商標法第73条第1項第2号;現行商標法第119条第1項第1号)。その一方で、商標を登録だけしておいて、正当な理由なしに相当な期間の間にわたって使用しない場合にも、登録商標の取消事由に該当することになる(旧商標法第73条第1項第3号;現行商標法第119条第1項第3号)。このうち本件判決では、前者の商標使用の解釈について判示された事案であったが、後者の商標使用の解釈との関係についても判決文の中で説明されている。

具体的には、登録商標の取消審判事由のうち、前者は禁止権の範囲に関するものであって商標を変更して使用したか否かが争点になる一方、後者は商標の同一性が争点になるという点で互いに立法趣旨が異なるので、登録商標と実使用商標間の同一性の判断においても、その解釈を異にせざるを得なくなる。というのも、商標法は、第三者との関係では商標権の禁止的効力が類似の範囲にまで及ぶことを認めているが、これは出所の混同を防止し、商標権者の信用および流通取引秩序を保護するためのものであって、商標権者が類似の範囲で商標を直接使用することによって他人の業務上の信用を害したり、取引秩序を混乱させたりする場合には、これを制裁する一環として商標登録が取り消されるべきであるというのが立法趣旨にある。

本件判決は、特定の商標権者が自己の登録商標を故意に変更して不正に使用した場合の登録商標の取消しの事例について詳細に説明しているという点で、商標権者の立場、またはその商標を取り消そうとする立場の観点から実務的に参考にすることができる。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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