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知財判例データベース 審決確定後に再度請求された無効審判において新たに提出された証拠が確定審決の結論を覆すほどの有力な証拠に該当し、一事不再理の原則に抵触しないと判断された事例

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
原告(上告人) A社 vs 被告(被上告人、商標登録権者) B社
事件番号
2020フ10810
言い渡し日
2021年01月14日
事件の経過
原審破棄差戻し

概要

2012年に本件登録商標が旧商標法第7条第1項第12号に該当するという理由により請求された商標登録無効審判は棄却され、その審決が確定している。

2017年に本件登録商標が旧商標法第7条第1項第12号に該当するという理由により請求された商標登録無効審判の審決取消訴訟において、特許法院は、新たに提出された証拠によっても当該証拠は先行確定審決の結論を覆すことができるほど有力な証拠ではないとして、本件審判請求は、先行確定審決と同一事実および同一証拠によるものとして一事不再理の原則に違背し、認められないと判示した。

しかし大法院は、本件で新たに提出された証拠は先行確定審決の結論を覆すほどの有力な証拠に該当するため一事不再理の原則に抵触するとはいえないと判断し、原審判決を破棄差戻しした。

事実関係

2012年、訴外C社は本件登録商標が旧商標法第7条第1項第12号に該当するという理由で商標登録無効審判を請求したが、棄却され、訴外C社が不服を申し立てなかったことにより審決は確定した(このとき確定した審決を「先行確定審決」という)。

2017年、原告は本件登録商標が旧商標法第7条第1項第12号に該当するという理由で商標登録無効審判を請求したところ(本件審判)、特許審判院は、本件審判請求がすでに確定した審決と同一事実および同一証拠によるものとして一事不再理の原則に違反する不適法な審判請求に該当するという理由で審判請求を却下した。

その審決取消訴訟でも、特許法院は、本件審決において新たに提出された証拠によっても本件登録商標が旧商標法第7条第1項第12号に該当するとはいえないため、上記証拠は、先行確定審決の結論を覆すことができるほどの有力な証拠ではないとし、先行確定審決と同一事実および同一証拠によるものとして一事不再理の原則に違背し許容されないと判断した。

本件登録商標と先使用商標は、下表のとおりである。

区分 被告の本件登録商標 原告の先使用商標
標章 被告の本件登録商標であるcervelo商標 原告の先使用商標1 (先使用商標1)

原告の先使用商標2(先使用商標2)

原告の先使用商標3(先使用商標3)
指定商品
(使用商品)
自転車など 自転車など

判決内容

1.関連法理

一事不再理の原則を定めた商標法第150条で規定された「同一の証拠」には、先に確定した審決の証拠と同じ証拠だけでなく、その審決を覆すことができるほどに有力ではない証拠も含まれる。したがって、確定した審決の結論を覆すほどの有力な証拠が新たに提出された場合には、一事不再理の原則に違反するということはできない。

旧商標法第7条第1項第12号は、国内または外国の需要者間に特定人の商品を表示するものであると顕著に認識されている商標と同一または類似の商標であって、不当な利益を得ようとし、またはその特定人に損害を負わせようとするなど、不正の目的を持って使用する商標は商標登録を受けることができないと規定している。上記規定は国内または外国の需要者間に特定人の商標であると顕著に認識されているいわゆる周知商標が国内で登録されていないことを奇貨として、第三者がこれを模倣した商標を登録して使用することにより周知商標権者の国内での営業を妨害する等の方法で周知商標権者に損害を加え、またはこのような模倣商標を利用して不当な利益を得る目的で使用する商標はその登録を認めないという趣旨である。上記規定に該当するためには、特定人の商標が周知商標に該当しなければならず、商標出願人が特定人の周知商標と同一または類似の商標を不正の目的を持って使用しなければならない。特定人の商標が周知商標に該当するか否かは、その商標の使用期間、方法、態様および利用範囲等と、取引実情または社会通念上客観的に広く知られているか等が基準となり、不正の目的の有無は、特定人の商標の周知・著名または創作性の程度、特定人の商標と出願人の商標の同一・類似性の程度、出願人と特定人との間の商標をめぐる交渉の有無とその内容、その他に両当事者の関係、出願人が登録商標を利用した事業を具体的に準備したか否か、商品の同一・類似性ないし経済的牽連関係の有無、取引実情などを総合的に考慮しなければならない。また上記規定に該当するか否かは登録商標の出願当時を基準として判断する。

2.大法院の判断

イ.原審判決の理由と記録により把握できる事情

  1. 先使用商標1、先使用商標2、先使用商標3(以下「先使用商標」という)は、カナダの自転車メーカーであるD社(原告は2012年2月17日にD社を買収することになるが、以下便宜上、D社と原告を区分せず「原告」という)が製造した自転車に付された商標であって、先使用商標が付された製品は1996年からアメリカとカナダをはじめとする世界の様々な国の自転車売り場またはインターネットショッピングモールで高価で販売されている。先使用商標1はアメリカ、カナダ、ヨーロッパ連合などの複数の国家で商標登録されている。
  2. 原告は、トライアスロン(Triathlon)用自転車の販売で成長しはじめたが、2003年からはプロサイクルチームの後援を開始した。原告の後援を受けたプロサイクルチームは、先使用商標が付された自転車に乗ってツール・ド・フランス(le Tour de France)などの主要な自転車大会で良い成績をおさめ、これに伴い先使用商標の認知度も高まることになった。原告は1996年から2005年まで『トライアスリート』『プロサイクリング』等をはじめとする多くの新聞、雑誌、インターネット媒体などに持続的に先使用商標を付した自転車とその自転車に乗った選手らの活躍に関する記事と広告を掲載した。先使用商標は2003年から2006年まで『サイクリングニュースドットコム』等の自転車関連媒体が調査した需要者アンケート調査において、幾度もロード自転車およびトライアスロン自転車分野の最上位圏自転車ブランドに選ばれたことがある。
  3. 原告の先使用商標が付された製品販売による売上額は1996年以降、短期間で急激に増加し、2004年には年間売上額が1100万ドルを突破した。
  4. Eは2002年頃から原告が製造・販売する先使用商標が付された自転車製品を国内に輸入して販売を開始し、2004年2月6日「ベロスポーツアシア」という商号で事業者登録をして以来、直営または代理店開設等の方法により原告から自転車等の製品を輸入して販売してきた。
  5. Eは、2005年3月16日、原告の許諾なしに「原告の許諾なしに標章であるcervelo 」標章について指定商品を自転車等として商標登録出願をし、原告がその出願事実を知るや、2005年11月28日に原告との間で「原告はCervelo商標をE名義で登録する権利を許与しない。EはCervelo商標に関してEの名義で出願したものの、原告に代わって上記商標を出願し、原告の受託を受けて管理するものであるため、原告が要求する場合、上記商標に対する権利を原告または原告が指名する者に譲渡する」という内容が含まれた商標権受託合意を結んだ。Eが出願した上記商標は2006年1月4日に商標登録決定が出されたが、2006年3月6日に登録料未納により商標権が消滅した。
  6. Fは2006年3月14日に本件登録商標を出願し、2007年1月18日に商標登録を完了した(本件登録商標は2018年3月28日にFから被告B社に譲渡された)。
  7. 原告は2012年3月29日、Fを相手取り、旧商標法第7条第1項第12号等を理由として本件登録商標に対する無効審判を請求したが、先使用商標の認知度に照らしてFに不正の目的が認められない等の理由により上記審判請求は棄却された。その後、原告は2015年3月17日、Fを相手取り本件登録商標に対する不使用取消審判を請求したが、通常使用権者であるEが本件登録商標を使用した事実があるという理由で上記審判請求は棄却され、その過程で原告はEとFが実の兄弟であるという事実を知った。

ロ.こうした事情を上述の法理に照らして詳察する。

先使用商標を使った製品の販売期間、広告およびマスコミ報道内訳、売上額等を総合的に考慮してみると、先使用商標は、本件登録商標の出願日である2006年3月14日当時、自転車等と関連してアメリカとカナダの需要者間に特定人の商標であると顕著に認識されていた商標と認めることができる。 また、先使用商標の周知性、本件登録商標と先使用商標の類似性、原告とEの契約締結内訳とその内容、EとFの関係、本件登録商標の出願経緯等に照らしてみると、Fは先使用商標の使用者である原告に損害を負わせようとするなど不正の目的を持って使用するために本件登録商標を出願したものであるといえる。

結局、先使用商標の認知度およびFとEの関係等に関連し本件で新たに提出された証拠は、本件登録商標が旧商標法第7条第1項第12号に該当しないとする先行確定審決の結論を覆すほどの有力な証拠に該当するため、本件審判請求は一事不再理の原則に抵触するといえない。

3.結論

原審の判断には旧商標法第7条第1項第12号および一事不再理の原則に関する法理を誤解した誤りがある。

専門家からのアドバイス

本件は原告が2017年に本件登録商標の無効審判を請求したことに始まるが、本件登録商標については、2007年に登録されて以来、無効審判と取消審判、その審決取消訴訟と上告審など、計10回にわたって審判および訴訟が行われてきていた。

そうした度重なる審判事件の中で、本件は、既に確定した先行確定審決に対し本件審判請求が一事不再理の原則に抵触するか否かが争点となった。本件において大法院は、先使用商標の認知度や不正の目的の有無(上述のとおりFとEの関係等を示す事実が新たに示された)に関連して本件で新たに提出された証拠は先行確定審決の結論を覆すほどの有力な証拠に該当すると認め、一事不再理の原則を適用した原審判決を破棄差戻しとした。

今回の大法院判決は、過去に審決があったという理由だけで一事不再理の原則を適用する判断に制限を設けたものであって、本件登録商標について不正の目的で出願したことが確認されながらもその商標登録の状態を維持することが、一事不再理の原則により正当化されてはならないということを積極的に判断した点で今回の判決は大きな意味を持つといえよう。また、本件に関する全体的な紛争の経緯に鑑みると、韓国での事業展開に先立ち商標権を確保しておくことが非常に重要であり、それにより不必要な紛争を未然に回避できることを示した典型的な事例であるともいえよう。

なお、本件に関連し、原告は2015年3月に「原告が2015年3月に登録したcervelo商標 」について商標登録出願した後、同年12月から現在まで出願審査処理が保留されていたが、本件判決を受けて、この出願商標に対する審査が近い将来再開されると見られ、これにより正当な商標使用者であると判断された原告に商標権が付与されるものと予想される。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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