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知財判例データベース 無権利者から特許権の移転を受けた譲受人は、特許法第38条第1項にいう「第三者」には該当しないとされた事例

基本情報

区分
特許
判断主体
大法院
当事者
原告・上告人(無権利者から特許権の移転を受けた現特許権者) vs 被告(審判請求人)、被告補助参加人(真正な権利者)
事件番号
2020フ10087登録無効(特)
言い渡し日
2020年05月14日
事件の経過
上告棄却、確定

概要

特許出願前に特許を受ける権利を契約により移転した譲渡人は、もはやその権利の帰属主体ではないので、そのような譲渡人がした特許出願に対して設定登録がされた特許は、特許無効事由に該当する無権利者の特許である。一方、特許出願前にされた特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をすることにより第三者に対抗することができる(特許法第38条第1項)。ただし「第三者」は、特許を受ける権利について承継人の地位と両立できない法律上の地位を取得した者に限られる。よって特許法第38条第1項でいう「第三者」には、無権利者の特許として特許無効事由がある特許権の移転を受けた譲受人(すなわち原告)は該当しない。

事実関係

被告は、2012.11.13に被告補助参加人に「分離搭載型発電機セット」を製作して供給する旨の契約をし(以下「本件第1契約」)、訴外Wは、2012.12.5に被告に上記発電機セットのうち「電源分配装置の構成品」を開発して供給する旨の契約をした(以下「本件第2契約」)。本件第1契約と本件第2契約によると、契約を通じて発生した全ての知的財産権(登録され得る権利を含む)は、被告を経て被告補助参加人に帰属するようになっている。

本件第2契約の履行過程で発生した、本件特許発明に関する特許を受ける権利は、発明の完成と同時に発明をした者(Wの社員)に原始的に帰属し、使用者であるWを経て本件第1契約と本件第2契約によって最終的に被告補助参加人に承継された。ところが、Wは、2015.5.28.に本件特許発明を出願して2016.12.16に特許登録を受け、2017.8.30.に原告にその特許権を移転した。

このため被告は、原告を相手取って本件特許発明が無権利者による出願に該当して無効であると主張して特許無効審判を請求し、特許審判院は被告の審判請求を認容する審決をした。

原告は、これを不服として審決の取消しを求める訴えを提起しながら、仮にWが被告に特許を受ける権利を移転することを約定していたとしても、これは当事者間での対内的効力のみがあるだけで、Wから特許権の移転を受けた第三者である原告に対しては特許法第38条第1項によりその約定で対抗することができないので、本件特許発明は無権利者による出願であるとはいえないと主張した。これに対し特許法院は、原告の主張を排斥して原告の請求を棄却した。原告はこれを不服として上告を提起した。

上告審の争点は、本件特許発明の特許が無権利者の出願で登録された特許として無効とされるか否かと、原告が特許法第38条第1項の「第三者」に該当するか否かであった。

判決内容

発明をした者又はその承継人は、特許法で定めるところにより、特許を受ける権利を有する(特許法第33条第1項本文)。もしこのような正当な権利者でない者(以下「無権利者」という)がした特許出願に対して特許権の設定登録がされれば、特許無効事由に該当する(特許法第133条第1項第2号)。特許出願前に特許を受ける権利を契約によって移転した譲渡人は、もはやその権利の帰属主体ではないので、そのような譲渡人がした特許出願に対して設定登録がされた特許権は特許無効事由に該当する無権利者の特許である。

特許出願前にされた特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をすることにより第三者に対抗することができる(特許法第38条第1項)。ここで第三者は、特許を受ける権利について承継人の地位と両立できない法律上の地位を取得した者に限る。無権利者の特許として特許無効事由がある特許権の移転を受けた譲受人は、特許法第38条第1項でいう第三者に該当しない。

原審は「本件特許発明に係る特許を受ける権利は、発明の完成と同時に本件第1契約と本件第2契約によって最終的に被告補助参加人に承継された。Wは、特許を受ける権利を有する承継人の地位を喪失した無権利者でありながら、本件特許発明を出願して特許登録を受けたので、その特許が無効とされるべきである。Wから無権利者の特許として特許無効事由がある本件特許権の移転を受けた原告は、特許法第38条第1項でいう第三者ではないので、その規定を類推適用することができない。」と判断した。

かかる原審判決の理由を上記で示した法理と記録に照らして詳察すると、原審の判断において、特許法第33条第1項および第38条第1項の解釈についての法理を誤解したといえる誤りはない。

専門家からのアドバイス

本大法院判決では、(1)本件特許が無権利者の出願により登録されたものとして無効とされるか否かの判断の他に、(2)本件特許の特許を受ける権利の承継に関連し特許法第38条(特許を受ける権利の承継)第1項で規定する「第三者」の範囲が争点になったのだが、今回の大法院判決は、従前にはなかった(2)の争点に対する判断があった点で意味があるといえる。

具体的には、特許法第38条第1項は「特許出願前になされた特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をすることにより第三者に対抗することができる」と規定している。この規定に関連する原告の主張は、本件特許発明(原告特許)が無権利者による出願であるとはいえない根拠として、本件特許発明は、Wが出願をしたものであって、承継人が出願をしたものではないため、特許法第38条第1項により第三者である原告に対抗することはできないと主張したのであった。しかし、大法院は、特許法第38条第1項でいう「第三者」は、特許を受ける権利について承継人の地位と両立できない法律上の地位を取得した者に限るので、無権利者の特許として特許無効事由がある特許権の移転を受けた譲受人(本件の原告)は特許法第38条第1項でいう第三者に該当しないと判断したものである。

今回の大法院の判示を見ると、現特許権者である原告がWから本件特許権の移転を受けた当時、Wが被告と結んでいた供給契約(本件第2契約、知財譲渡契約を含む)の存在や、被告が被告補助参加人と結んでいた供給契約(本件第1契約、知財譲渡契約を含む)の存在を原告が知っていたか否かを特許法第38条第1項の要件とはしていない。こうした本判決での判示内容に鑑みると、特許権の移転を受ける場面では、特許権の権利関係に瑕疵がないかについて徹底した検討とともに、瑕疵発生時の責任関係を明確にしておくことが必要であるといえよう。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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