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知財判例データベース 他人が運営するゴルフ場の様相を再現した3D映像を製作しスクリーンゴルフ運営会社に提供した行為は成果物盗用不正競争行為に該当するとされた事例

基本情報

区分
不正競争
判断主体
大法院
当事者
原告 A社ら vs 被告 B社(継承参加人C社)
事件番号
2016ダ276467
言い渡し日
2020年03月26日
事件の経過
上告棄却/原審確定

概要

大法院は、ゴルフ場の総合的な「イメージ」はゴルフコースの設計とは別個のものとしてゴルフ場を造成・運営する原告の相当な投資または労力により作られた成果に該当すると判断し、原告らと競争関係にある被告ら(被告B社のスクリーンゴルフ[1] 事業部門は人的分割方式で新設されたC社が継承し、C社は訴訟に継承参加。以下被告と継承参加人を「被告ら」という)が、原告の許諾を得ずに本件ゴルフ場の様相をほぼそのまま再現したスクリーンゴルフシミュレーションシステム用3Dゴルフコース映像を製作、使用した行為は、原告の成果等を公正な商取引慣行または競争秩序に反する方法により被告らの営業のために無断で使用したものであるので、不正競争防止法第2条第1号(ル)目施行以後において原告の経済的利益を侵害する不正競争行為に該当すると判断した(なお、不正競争防止法第2条第1号(ル)目施行以前については民法上の不法行為に該当すると判断された)。

事実関係

原告は、本件第1から3までのゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という)を所有・運営している。

被告らは、スクリーンゴルフシミュレーターに使われるソフトウェアおよびハードウェアを開発して販売するだけでなく、国内外の様々なゴルフ場を撮影し、その写真などに基づいて実際のゴルフ場の様相をほぼそのまま再現したスクリーンゴルフシミュレーションシステム用3Dゴルフコース映像を製作しスクリーンゴルフ場運営会社に提供する事業を行ってきた。

被告らが製作したゴルフコース映像は、利用者が特定のゴルフ場を選択すると、そのゴルフ場でプレーしているかのように感じられる環境を提供するものである。その中には本件ゴルフ場も含まれているが、被告らは本件ゴルフ場を撮影した後、その写真などに基づいて3Dコンピュータグラフィックなどを利用し本件ゴルフ場のゴルフコースをほぼそのまま再現した立体的イメージのゴルフコース映像を製作した後、2009年頃から2015年2月23日までスクリーンゴルフ場運営会社に提供した。

原審は、本件ゴルフ場のゴルフコースは著作権法により保護される著作物に該当するものの、その著作者である設計者から原告が著作権を譲り受けたという主張・証明がないという理由で著作権に基づく損害賠償請求を棄却し、民法上の不法行為、成果物盗用不正競争行為の違反責任を認めた。原審判決に対し、原告・被告双方とも上告した。

判決内容

1.関連法理
2013年7月30日法律第11963号の法改正により導入された不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(以下「不正競争防止法」という)第2条第1号(ル)目[2]は、2013年7月30日法律第11963号による改正前の旧不正競争防止法の適用範囲には含まれていなかった新しい類型の不正競争行為に関する規定を新設したものである。これは新たに登場する経済的価値を有する無形の成果を保護し、立法者が不正競争行為のあらゆる行為を規定することができない点を補完して法院が新しい類型の不正競争行為をより明確に判断できるようにすることにより、変化する取引観念を適時に反映して不正競争行為を規律するための補充的一般条項である。

不正競争防止法第2条第1号(ル)目は、その保護対象である「成果等」の類型に制限を設けていないため、有形物だけでなく無形物もこれに含まれ、従来の知的財産権法では保護が難しかった新しい形態の結果も含まれることを可とする。「成果等」を判断するときは、このような結果物が有するに至った名声や経済的価値、結果に化体された顧客吸引力、該当事業分野において結果物が占める割合と競争力などを総合的に考慮しなければならない。このような「成果等」が「相当な投資または労力により作成された」ものであるかは、権利者が投じた投資や労力の内容と程度をその「成果等」が属する産業分野の慣行や実態に照らして具体的・個別的に判断するものであるが、「成果等」を無断で使用することにより侵害された経済的利益が、誰もが自由に利用することのできるいわゆる公共領域(public domain)に属しないものと評価することができなければならない。また(ル)目が定める「公正な商取引慣行または競争秩序に反する方法により自身の営業のために無断で使用」するケースに該当するためには、権利者と侵害者が競争関係にあり、または近い将来に競争関係に置かれる可能性があるか、権利者が主張する成果等が含まれた産業分野の商取引慣行や競争秩序の内容とその内容が公正であるか、上記のような「成果等」が侵害者の商品やサービスによって市場で代替されることができるか、需要者や取引者に「成果等」がどの程度知られているか、需要者や取引者の混同可能性があるかなどを総合的に考慮しなければならない。

2.具体的判断
イ.被告らの上告理由に関する判断
(1)原審は、次のような理由で被告らの行為に対し民法上の不法行為または不正競争防止法第2条第1号(ル)目の不正競争行為に該当すると判断した。
①本件ゴルフ場のゴルフコース自体は設計者の著作物に該当するものの、ゴルフコースを実際にゴルフ場の敷地に造成することによって外部に表現される地形、景観、造形要素、設置物などが結びついた本件ゴルフ場の総合的な「イメージ」は、ゴルフコースの設計とは別個のものとして、ゴルフ場を造成・運営する原告の相当な投資または労力により作成された成果に該当する。
②原告らと競争関係にある被告らが原告の許諾を得ずに本件ゴルフ場の様相をほぼそのまま再現したスクリーンゴルフシミュレーションシステム用3Dゴルフコース映像を製作・使用した行為は、上記の原告の成果等を公正な商取引慣行または競争秩序に反する方法により被告らの営業のために無断で使用することで上記の原告の経済的利益を侵害する行為であるため、2014年1月30日以前は民法上の不法行為を構成し、2014年1月31日以降は不正競争防止法第2条第1号(ル)目の不正競争行為に該当する。
(2)上記の原審判断に、被告らの上告理由での主張のような(ル)目の保護対象、経済的利益侵害の有無、公正な商取引慣行と競争秩序などに関する法理の誤解や、必要な審理を尽くさず自由心証主義の限界を逸脱したなどの誤りはない。

ロ.原告の上告理由に関する判断
(1)原審は、著作権に基づいた損害賠償請求を棄却し、その理由として本件ゴルフ場のゴルフコースは著作権法により保護される著作物に該当するものの、著作者である設計者から原告が著作権を譲り受けたという主張・証明がないことなどを挙げた。さらに、ゴルフ場の名称は(ル)目の成果に該当しないと判断した。
(2)原審判断のうち、ゴルフ場の名称を含むゴルフコースの総合的なイメージを成果とみなすことができることからゴルフ場の名称は成果に該当しないとした判断は適切ではないが、原告の成果等を認め適正な損害額を算定した原審の結論は正当で、判決結果に影響を及ぼした誤りはない。著作権に基づいた損害賠償請求などの原告の上告理由の主張に関しては、原審が法理を誤解し、または必要な審理を尽くさずに自由心証主義の限界を逸脱したなどの誤りはない。

3.結論
原告らと被告らの上告は理由がないため、これをいずれも棄却する。

専門家からのアドバイス

本件では、不正競争防止法の一般条項である第2条第1号(ル)目が主な争点となった。一般条項が導入される前は不正競争行為の類型のみが限定的に列挙されていたのであるが、それだけでは技術の発展や社会環境の変化に応じて、新しく生じてくる多様な類型の不正競争行為を規制することが難しいという限界があり、これを克服すべく一般条項が導入されたのである。しかし、その保護要件は抽象的かつ包括的で、下級審判決の判断において具体的かつ一貫した判断基準を見出しがたいという意見も提起されていた。

大法院は今回の判決を通じ、不正競争防止法の一般条項を適用して新たな類型の侵害行為から権利者を保護するのに際し、その適用要件の判断に考慮すべき事項として具体的な基準を提示した。これにより大法院は、不正競争防止法第2条第1号(ル)目の保護対象である「成果等」には無形物も含まれ、「成果等」が相当な投資または労力により作られたものに該当するか否かは具体的かつ個別的に判断するとしながら、そうした成果等を無断で使用することで侵害された経済的利益が誰もが自由に利用できる公共領域(public domain)に属しないものと評価できなければならないとした。その上で大法院は、(ル)目が定める公正な商取引慣行または競争秩序に反する方法により自らの営業のために無断で使用したケースに該当するといえるためには、①権利者と侵害者が競争関係にあり、または近い将来競争関係に置かれる可能性があるか、②権利者が主張する「成果等」が含まれる産業分野の商取引慣行や競争秩序の内容に合わせてその内容が公正であるか、③上記のような「成果等」が侵害者の商品やサービスによって市場で代替されることが可能か、④需要者や取引者に「成果等」がどの程度知られているか、または需要者や取引者による混同可能性があるかなどを総合的に考慮しなければならないとした。

こうした今回の判決は不正競争防止法第2条第1号(ル)目について大法院の立場を明らかにし、かかる一般条項の具体的な適用要件を明確に示したという点で注目に値しよう。

なお、本件では被告の行為に対して著作権に基づく損害賠償請求もなされ、結果として棄却されている。ただし、これに関しては原告が著作権を譲り受けたという主張・証明がなかったという点が判示されており、これに対する検討は省略した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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