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知財判例データベース 販売場所制限約定がある商品を通常使用権者から仕入れ、約定外の場所で販売した場合において、商標権の消尽を理由に商標権侵害が否定された事例

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
検事 vs 被告人(上告人) 個人A
事件番号
2018ド14446
言い渡し日
2020年01月30日
事件の経過
ソウル南部地方法院2017ノ496 2018年8月24日(原告勝訴) 確定日確認不可

概要

被告人は、本件商標権者(以下「B」という)とのあいだでインターネットショッピングモールでの販売を一部制限する条件で本件商標権使用契約(以下「通常使用権契約」という)を結んだ通常使用権者(以下「C」という)から時計を仕入れ、インターネットショッピングモールで販売したところ、商標法違反の嫌疑で起訴され、原審では商標権消尽理論が適用される余地がないとして被告人の行為を有罪と判断した。しかし大法院は「契約の具体的な内容、商標の主な機能である商標の商品出所表示および品質保証機能の毀損の有無、商標権者が商品販売により補償を受けながらも追加的な流通を禁止する利益、および商品を購入した需要者の保護の必要性などを総合して商標権の消尽の有無および商標権侵害の成否を判断しなければならない」と判示した後、本件の場合は商標権消尽によって商標権侵害が認められないと判断し、併せて被告人に商標権侵害の故意が認められるという判断も誤りであるとして有罪と判断した原審を破棄差戻しした。

事実関係

BはCと本件登録商標の指定商品である腕時計などの商品を開発・販売する権限を2015年6月30日まで付与する内容の通常使用権契約を締結した。通常使用権契約には「CはBと合意した高級専門店とデパート、免税店等において製品を販売しなければならず、ディスカウントショップおよびインターネットショッピングモールで販売する場合には必ずBの事前同意を得なければならず、伝統市場では商品を販売することができない。」という販売場所制限約定が記載されている。

通常使用権契約の終了を控えてBはCと協議書を作成し、Cが2015年12月31日まで在庫を処理することができるようにし、代わりに当該期間のあいだは商標使用料を支払う取り決めをし、従来の販売場所の他にBが指定したアウレット店舗、インターネットショッピングモールのうちBの直営モールおよびデパートが運営するショッピングモール6か所での販売も許可するものの、その他の場所で販売をしたときは契約を無効とし損害賠償を支払う内容が追加された。

被告人はインターネットショッピングモールの運営者としてCから仕入れた時計をオンラインで販売してきた。

判決内容

(1)関連法理

商標権者またはその同意を得た者が韓国国内において登録商標が表示された商品を譲渡した場合には、当該商品に対する商標権はその目的を達成したものとして消尽し、それにより商標権の効力は当該商品を使用、譲渡または貸渡しした行為などには及ばない。

通常使用権の範囲は通常使用権契約により付与されるものであるため、これを超える通常使用権者の商標使用行為は商標権者の同意を受けていないものと認めることができる。しかし、通常使用権者が契約上の付随的な条件に違反して商品を譲渡した場合においてまで、一律的に商標権者の同意を受けていない譲渡行為として権利消尽の原則が排除されるとは認めることができず、契約の具体的な内容、商標の主な機能である商標の商品出所表示および品質保証機能の毀損の有無、商標権者が商品販売により補償を受けながらも追加的な流通を禁止する利益、および商品を購入した需要者の保護の必要性などを総合して商標権の消尽の有無および商標権侵害の成否を判断しなければならない。

(2)具体的判断
  1. 商標権消尽に関する判断

    被告人が販売した時計は商標権者であるBの許諾を受けてCが適法に商標を付して生産したいわゆる真正商品であって、販売場所制限約定に違反して被告人のインターネットショッピングモールで商品を流通させたことだけでは、商標の出所表示機能や品質保証機能が侵害されたとは言い難い。

    また、通常使用権契約上、Cに時計商品に関する製造・販売権限が付与されており、販売を全面禁止した伝統市場とは異なりディスカウントショップおよびインターネットショッピングモールでの販売はBの同意の下で可能であり、流通が元々禁止されていたものでもなく、実際に在庫品処理のための協議書ではBの直営モール、デパートのショッピングモールなどの一部インターネットショッピングモールでの販売も許されていた。

    本件において、被告人のインターネットショッピングモールが、販売が許可された他のインターネットショッピングモールと根本的な違いがあるとはみられず、インターネットショッピングモールで販売されるということだけで直ちにBの商標の名声やこれまでBが構築してきた商標権に対するイメージが毀損されるとも言い難い。

    Bは商標権使用契約によりCから商標権使用料を受け取ることとなり、Cは被告人から代価を受けて商品を供給したものであるため、商品が販売されることにより商標権者への金銭的補償が成立していたと言うことができる。本件で商標権者が追加的な流通を禁止する利益が高いとは認め難い反面、取引を通じて商品を購入した需要者の保護の必要性は認められる。

    結局、Cが被告人に商品を供給することにより当該商品に対する商標権はその目的を達成したものとして消耗し、それにより商標権の効力は当該商品を使用・譲渡または貸渡しした行為などには及ばない。

    それにもかかわらず原審は、Cが商標権者との販売場所制限約定に違反して時計を被告人に販売した行為は商標権侵害に該当し、被告人に商標権消尽理論が適用される余地がないと判断した。このような原審の判断には商標権の消尽に関する法理を誤解して判決に影響を及ぼした誤りがある。

  2. 被告人の故意に関する判断
    被告人に商標権侵害罪の罪責を問うためには、BとCとの間の契約条件に違反して商品が供給されたことを被告人が認識していた必要があるが、記録によって知ることができる次のような事情に照らしてみれば、検事が提出した証拠だけでは被告人がこれを認識していたことが合理的な疑いを持つ余地がないほど証明されたと認めることはできない。

    被告人は一貫して商標権侵害事実を否認して販売場所制限約定を知らなかった旨の主張をしてきており、CまたはBが事前に被告人に販売場所制限約定を伝えたという証拠がない。 Bの告訴状には被告人に警告文を発送した旨が記載されているが、被告人はこれを受け取っていないとして争っているだけでなく、上記の警告文には販売場所制限約定に違反したという内容も表れていない。

    むしろ被告人が提出した証拠によれば、Cは「腕時計真正商品確認書」および「腕時計生産確認書」を被告人用に作成したが、ここには「被告人に納品した製品はCが正式ライセンスを受けて製造した真正商品として正式流通が可能で、偽造商品および商標違反商品である場合には損害賠償をする」という内容が記載されている。

    被告人の時計販売業の経歴、商標権に対する経験と知識などに照らし、被告人には少なくとも本件商標権侵害行為に対する未必の故意が認められるという原審の判断は、必要な審理を尽くさないまま論理と経験の法則に違反して自由心証主義の限界を超え、または商標法違反罪の故意に関する法理を誤解して判決に影響を及ぼした誤りがある。

専門家からのアドバイス

本判決の争点の中の一つは、本件商標権に係る使用権契約において定めた販売場所制限約定に違反して商品が取引に供された場合における商標権消尽の当否であった。これについて大法院は、通常使用権者が契約上の付随的な条件に違反して商品を譲渡した場合においてまで、一律的に商標権者の同意を得ていない譲渡行為として権利消尽の原則が排除されるとは認めることができないとした上で、(1)契約の具体的な内容、(2)商標の主な機能である商標の商品出所表示および品質保証機能の毀損の有無、(3)商標権者が商品販売により補償を受けながらも追加的な流通を禁止する利益、および商品を購入した需要者の保護の必要性などを総合して商標権の消尽の有無および商標権侵害の成否を判断しなければならないという法理を提示した。

今回の大法院判決は、使用権契約の違反時における商標権消尽の判断について具体的な法理が提示されている点、および、その法理が具体的な事実関係にどのように適用されるかを明らかにしている点に、大きな意味があるものと言える。一方、商標権者の立場では、使用権契約に販売場所などの制限を設けようとする場合、今回の大法院判決で判示された制限事項または限界事項を留意して契約内容を吟味する必要があるといえる。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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