知財判例データベース 図形と文字からなる出願商標の要部を図形部分と判断して、著名な先出願商標と類似すると判断した事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 原告 A社 vs 被告 特許庁長、被告補助参加人B社
- 事件番号
- 2018ホ5273
- 言い渡し日
- 2018年11月16日
- 事件の経過
- 確定
概要
特許法院は、本件出願商標「 」について、そのうちの文字部分である「WINEGOLD」は指定商品である化粧品の色相や原材料等を示す性質表示に該当すると見られるだけなので識別力が微弱であり、図形部分の「
」が一般需要者に強い印象を与える要部に該当するとしながら、先出願商標「
」と類似するので、商標登録を受けることができないと判断した。
事実関係
本件出願商標に対して、特許庁の審査官は、先出願商標と類似し、旧商標法第8条第1項(注1)により商標登録を受けることができないとして拒絶決定した。特許審判院も、本件拒絶決定は妥当であると判断して原告の審判請求を棄却する審決を下した。
判決内容
関連法理
商標において、要部は他の構成部分と関係なくその部分だけで一般需要者に著しく認識される独自の識別力のため、他の商標との類否を判断する際に対比の対象になるものなので、要部が存在する場合には、その部分が分離観察されるかを判断する必要なしに要部のみで対比することによって商標の類否を判断できるというべきである。また、商標の構成部分が要部であるか否かは、その部分が周知・著名であるか、一般需要者に強い印象を与える部分であるか、全体商標のうちで高い比重を占める部分であるか等の要素を判断するものの、これらに他の構成部分と比較した相対的な識別力の水準やそれとの結合状態と程度、指定商品との関係、取引実情等までを総合的に考慮して判断すべきである。
判断
要部観察
本件出願商標の文字部分は、ワインを意味する「WINE」と金を意味する「GOLD」が合わさった単語であり、ワイン又は金を原材料とする化粧品が多数販売されていて、原告も自身の化粧品の説明に「粒子微細化を通じたWINEカラーゴールド含有先端素材」であると記載している。このような点を総合すると、「WINEGOLD」部分は指定商品である化粧品の色相や原材料等を示す性質表示に該当すると見られるだけなので、識別力が微弱である。
本件出願商標の図形部分は、単純な図案や形態からなっておらず、本件出願商標全体面積の約80%に至る大きな比重を占めており、一般需要者に強い印象を与える部分に該当する。
原告は、本件出願商標の図形部分は金を超微細ナノ化した後、均質化すると、ワイン色相の溶液になることに着眼して、文字部分の頭文字である「W」を無限大を表す図形の「∞」を連想させるようにデザインしたものであるので、文字部分と図形部分間に絶対的な牽連関係があって別個に認知するのが難しく、本件出願商標は文字部分によって認知され呼称される可能性が非常に高いと主張する。しかし、取引社会の一般需要者や取引者が本件出願商標の図形部分のみを見て「W」や「∞」を連想したり、このような意味を直感的に認識できるとは認め難く、他にこれを認めるだけの資料もない。一方、原告は自身が販売する化粧品製品の容器に本件出願商標のうち、文字部分を除いた図形部分のみを表示し、文字部分を切り離した図形部分のみ使用した点については納得できるような理由を提示できずにいる。
このような事情を総合してみれば、本件出願商標のうち、独立して商品の出所表示機能をする部分、即ち、要部は文字部分ではなく、図形部分と判断するのが妥当である。
類否の判断
本件出願商標の図形部分と先出願商標の外観を対比すると、両標章はいずれもアルファベット大文字「G」2つを左右対称に重ねた形状になされている。両標章はいずれもアルファベット「G」を「」のように形象化し、これにより各「G」形状が重なった形状「
、
」も類似する。このように、本件出願商標の図形部分と先出願商標は構成のモチーフが同一なだけでなく、アルファベット「G」を形象化した方式及びこれを重ねて表現した方式まで類似し、両標章は全体的に見ると支配的な印象が類似する。一方、本件出願商標のうち図形部分の右側は濃度が互いに異なる多数の点が曲線状をなしており、中央部上段で「G」の端部が互いを貫通せず、中央部下段に直線が水平に繋がっているので、先出願商標と差があるともいえる。しかし、図形中央部の差及び曲線太さの差は両標章を並べて綿密に詳察しなければ区分できない程度のものであって、一般需要者や取引者の印象には容易に残り難いものなので、離隔的観察ではほぼ把握できない微細な差異に過ぎない。
観念及び呼称において、本件出願商標のうち、図形部分及び先出願商標はいずれも図形商標として特別な観念・呼称が導き出されないので観念・呼称を対比できないか、いずれも「GG図形」、「ジー・ジー図形」程度に観念・呼称され、その観念及び呼称が類似する。
原告は、本件出願商標は全体として観察されるべきであり、仮に文字部分と図形部分に分離観察されるとしても、その文字部分によって「ワインゴールド」と呼称され、「WINEGOLD」の観念を有するため、先出願商標と非類似であると主張するが、本件出願商標のうち独立して商品の出所表示機能をする部分は図形部分である「」部分と判断すべきなので、これと前提を異にする原告の主張は受け入れられない。
原告は先出願商標が周知著名で、需要者が本件出願商標と先出願商標を誤認・混同するおそれがないと主張する。しかし、原告と参加人のいずれも使用商品に図形部分のみを表示したり、図形部分を大きく表示し、その下に文字部分をともに表示している事実が認められる。また、両標章が表示された商品の容器、包装のデザインを比較してみると、非常に類似していることが分かる。このような具体的な取引実情に一般需要者や取引者が離隔的に図形部分の商標を観察するとき、図形全体のモチーフや支配的印象を記憶するのが一般的な点を付け加えて考慮すると、先出願商標が周知・著名な商標であるという点だけでは、本件出願商標と先出願商標が同一・類似の指定商品に用いられる場合、需要者がその出所について誤認・混同するおそれがないとは言い難い。
結論
本件出願商標と先出願商標はともに使用される場合、一般需要者や取引者に商品の出所について誤認・混同を引き起こすおそれがあるというべきなので、その標章が互いに類似すると判断するのが妥当である。
専門家からのアドバイス
商標の類否判断時には、事案によって、全体観察、要部観察及び/又は分離観察が用いられるところ、大法院判例の一貫した見解は、商標に要部が存在する場合、その部分が分離観察されるかを判断する必要なしに要部のみ対比することによって商標の類否を判断することができるというものである。また、大法院は著名商標の場合、商標自体としては類似商品であるといえない商標でも、両商標の構成や観念等を比較して、その商標から他人の著名商標若しくは商品等が容易に連想されるか、又は他人の商標若しくは商品等と密接な関連性があると認められて商品の出所に誤認・混同を引き起こす場合には登録され得ないとしている。本判決は要部観察と著名商標の類否判断に関する大法院の既存の判断基準に従ったものであると言える。したがって、当事者の主張の当否に対して裁判部が詳細かつ具体的に判断しているという点において、上記法理に関する法院の見解を確認するのに良い判例と言えよう。
注記
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第8条(先願)
(1)同一又は類似の商品に使用する同一又は類似の商標について異なった日に2以上の商標登録出願があるときは、先に出願した者のみがその商標について商標登録を受けることができる。
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