知財判例データベース 確認対象標章「Reviness」と登録商標「REVANESSE」は標章が類似し、使用商品も指定商品と類似すると判断した事例

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
原告(審判請求人) A社 vs 被告 B社
事件番号
2018ホ1264
言い渡し日
2018年09月21日
事件の経過
破棄自判(却下)権利対権利の不適法、2019年4月3日確定

概要

特許審判院は、被告の確認対象標章「 Reviness」に対して、本件登録商標「 REVANESSE 」と標章が類似しないので、使用商品及び指定商品の同一・類似を詳察する必要なしに本件登録商標の権利範囲に属さないと判断した。

しかし、特許法院は、確認対象標章が「 레비네스 」(レビネス)、本件登録商標が「 레바네세 」(レバネセ)とそれぞれ呼称される場合に、全体的に類似の聴感を与える余地が大きく、外観も全体的に類似するという直観的認識が可能なので、確認対象標章と本件登録商標はその標章が全体的に類似するというべきであり、また、指定商品と使用商品は、一般取引の通念に照らしてみると、同一・類似の標章が使用される場合に、一般需要者や取引者をして、その出所について誤認・混同を引き起こさせるおそれがあるといえるので、互いに類似の商品に該当すると判断し、被告の確認対象標章は本件登録商標の権利範囲に属すると判断した。

事実関係

被告が主に生産・販売する製品は、医療用(皮膚科用)フィラー形態の架橋ヒアルロン酸を成分とするシワ改善剤、保湿剤、皮膚弾力剤であり、確認対象標章の使用商品である「ヒアルロン酸を成分とするシワ改善剤、保湿剤、皮膚弾力剤」を真皮に注入することができるように注射器内に入れた形状である。

ヒアルロン酸組成物は、老人性疾患である退行性関節炎の治療剤やシワをのばす成形用フィラー及び化粧品などの美容分野、食品などの幅広い範囲で用いられており、原告も現在、本件登録商標を使用してヒアルロン酸を主成分とした成形用フィラーを生産し、食品医薬品安全処(以下「食薬処」とする)の許可を受けて販売している。

原告(審判請求人)が本件登録商標を出願した当時は、未だNICE分類に「医療用フィラー機器」又は「皮膚科用フィラー」が収録されておらず、 食薬処の許可を受けた多数の成形用フィラーに関する商標は、本件登録商標と同様に指定商品を「商品類区分第3類」に分類されて登録されていた。

判決内容

関連法理

商品の類否は、対比される商品に同一又は類似の商標を使用する場合、同一企業によって製造又は販売される商品として誤認されるおそれがあるか否かを基準として判断するものの、商品自体の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等、取引の実情を総合的に考慮して一般取引の通念にしたがって判断しなければならない。

商標の類否は、同種の商品に使用される2つの商標をその外観、呼称、観念などを客観的、全体的、離隔的に観察して一般需要者や取引者が商標に対して感じる直観的認識を基準として、そのいずれか1つにおいてでも取引上商品の出所について誤認・混同をもたらすおそれがあるか否かによって判断しなければならず、外観・呼称・観念のうちのいずれか1つが類似しているとしても、他の点も考慮すると、全体としては明確に出所の混同を避けることができる場合には類似商品であるといえないが、これとは反対に、互いに異なる部分があっても、その呼称や外観などが類似して一般需要者が誤認・混同しやすい場合には類似商品であるというべきである。また、今日、放送等の広告宣伝媒体や電話等の広範囲な普及によって、商標を音声媒体等で広告したり電話で商品を注文したりすることが頻繁にある点を考慮すると、文字商標の類否の判断においては、その呼称の類否が最も重要な要素であるといえる。

具体的な検討

イ. 審判請求利益の存否及び商品の類否について

被告は、確認対象標章の使用商品である「ヒアルロン酸を成分とするシワ改善剤、保湿剤、皮膚弾力剤」のうち「医療用(皮膚科用)フィラー(filler)」形態でない部分は被告の実使用商品ではないので、原告として同部分に対して権利範囲確認審判を求める利益がないと主張する。しかし、実使用商品の「医療用(皮膚科用)フィラー」という事後的な製品形態をさらに考慮するとしても、被告がそのような製品形態をとる以前に使用商品自体を取引していたという事情には変わりがないといえ、このような点から見るとき、原告としては、被告に対して使用商品全体をめぐって権利範囲確認を求める審判請求の利益が存在する。
また、被告は、確認対象標章の使用商品は「医療用(皮膚科用)フィラー」として 食薬処の許可を受けなければならず、主な需要者は形成外科専門医であるという点で、本件登録商標の指定商品である化粧用ゲルとは差があり、類似するとはいえない旨を主張する。しかし、使用商品の成分である「ヒアルロン酸(HA)」は高分子化合物として化粧品や栄養剤・治療剤等として用いられているものであり、使用商品の用途は「シワ改善剤、保湿剤、皮膚弾力剤」等である。これと対比すると、指定商品である「美容管理過程に使用される化粧用ゲル(cosmetic gel for use in cosmetic treatment procedures)」は、その用途と販売部門及び需要者の範囲等で近似又は重複するので、指定商品が「注射器に含まれた(in prefilled syringes)」形態のものに限定されているとしても、上記のような判断に妨げとならない。従って、本件登録商標の指定商品と確認対象標章の使用商品は、一般取引の通念に照らしてみると、同一・類似の標章が使用される場合、一般需要者や取引者をして、その出所について誤認・混同を引き起こさせるおそれがあるといえるので、互いに類似の商品に該当する。

ロ. 標章の類否について

被告は、確認対象標章の使用商品に対する主な需要者は専門教育を受けた専門医であって注意の程度が高いので、本件登録商標と確認対象標章は類似するといえないと主張する。しかし、確認対象標章の使用商品は「医療用(皮膚科用)フィラー」形態までをも含む全ての形態の「ヒアルロン酸を成分とするシワ改善剤、保湿剤、皮膚弾力剤」なので、その需要者の範囲が被告の主張のように専門医に限定されるとはいえない。
商標の類否判断において、外国文字からなる商標の呼称は、韓国の取引者や需要者の大部分がその外国文字を見て特に困難なく自然にする発音によって定められることが原則であるが、これに基づいてみると、本件登録商標は「 레바네세(レバネセ) 又は「 레바네제(レバネジェ) 」と呼称され、確認対象標章は「 레비네스 (レビネス)」又は「 리바이네스(リバイネス)」と呼称され得るといえる。一方、被告が提示した証拠によると、本件登録商標と同一の文字構成の標章を使用する製品を輸入・販売している企業のホームページで製品を紹介しながら「Revanesse」を「レバネジェ」と呼称している事実を認めることができるが、そのような1つの実施態様のみをもって韓国の取引者や需要者の大部分が本件登録商標を被告主張の「 레바네제 (レバネジェ)」とのみ呼称されると断定することは難しい。そうであれば、本件登録商標が「레바네세(レバネセ)」、確認対象標章が「레비네스(レビネス) 」とそれぞれ呼称される場合に、両商標は4音節の子音がすべて同一であり、2番目の音節及び最後の音節に母音の差のみ存在するだけであり、全体的に類似の聴感を与える余地が大きい。さらに、本件登録商標と確認対象標章の外観を詳察すると、大文字と小文字、字体などに差があるが、4番目のアルファベット「A」と「I」、登録商標の最後のアルファベット「E」を除いて残りの文字はすべて共通する。このようなアルファベットの構成の差は離隔してみると明確に区別され難いものであり、全体的に類似するという直観的認識が可能である。以上のとおり、本件登録商標と確認対象標章は最も重要な要素である呼称が互いに類似するだけでなく、外観まで類似して同一・類似の商品にともに使用される場合、一般需要者や取引者をして、その出所について誤認・混同を引き起こさせるおそれがあるといえ、確認対象標章と本件登録商標は、その標章が全体的に類似すると判断すべきである。

ハ. 結論

確認対象標章は、本件登録商標と標章が類似し、その使用商品も本件登録商標の指定商品と類似するので、確認対象標章は、本件登録商標の権利範囲に属する。

専門家からのアドバイス

本件は権利範囲確認審判における商標の類否判断の事例として紹介した。審判院の段階では標章の非類似を理由に商品の類否判断は必要なしとされたものだが、特許法院では標章および商品ともに類似と判断されたものである。

本件では、確認対象標章の使用商品の中で「医療用フィラー」以外の商品について審判請求の利益があるか否かについても争われた。特許法院が判決の中で、被告が使用商品の事後的な製品である「医療用フィラー」という製品形態をとる以前に使用商品自体を取引していたという事情に変わりがないので、原告が被告の使用商品全体をめぐって権利範囲確認を求める審判請求の利益が存在するとした判断については、本件特有の事情があったといえるものの、類似の事例が発生した場合の参考になると思われる。

本件は指定商品と使用商品の類否及び確認対象標章と本件登録商標の標章の類否についての具体的事例にもとづき法的判断がされた事件として意味があるといえよう。特許審判院と特許法院の判断が分かれたという点からも、今後、上告審で大法院がどのような判断をするかについても注目したい。

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