知財判例データベース 大法院が、GLIATAMINとGLIATILINはTAMINとTILINの差によって、互いに類似しないと判断した事例

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
原告 ITALFARMACO S.P.A. vs 被告 大熊バイオ株式会社
事件番号
2017フ2208
言い渡し日
2018年07月24日
事件の経過
確定

概要

大法院は、本件登録商標「GLIATAMIN」が原告の先登録商標1「上部は英語でGLIATILIN、下部はハングルで글리아티린」及び先登録商標2「英語でGLIATILINのみ」(以下、先登録商標)と類似するかを判断するにおいて、これらの商標を構成する「GLIA」と「TAMIN」、「TILIN」はそれぞれが要部になり得ないのでその全体を基準に類否を判断しなければならず、「GLIA」が共通はするが「TAMIN」と「TILIN」の外観と呼称の違いにより混同を避けることができるといえるので、互いに同一又は類似するといえないと判断した。

事実関係

ITALFARMACO S.P.A.は大熊バイオ株式会社の本件登録商標に対し登録無効審判を請求したところ、特許審判院は、本件登録商標と先登録商標はそれぞれその外観、呼称及び観念が互いに異なるため全体的に出所の混同を避けられる非類似の標章なので、旧商標法第7条第1項第7号(先登録類似)及び第18号(信義則)による無効事由が存在しないと判断した。

しかし、特許法院は特許審判院の審決を取り消した。即ち、本件登録商標と先登録商標において「GLIA」部分は指定商品の効能、用途などを直感させると言い難いため、その識別力がない又は微弱であるとは言い難く、両標章は分かち書きなしにつながって1つの単語のような外観を示している点等に照らしてみれば、両標章の類似性は全体的に観察するのが妥当であるとしつつ、本件登録商標と先登録商標は呼称が類似し、全体的に見て標章が互いに類似すると判断した。また、被告が本件登録商標の出願日当時、業務上の取引関係などを通じて原告の先登録商標に関する使用事実を知っていたことを自認している以上、旧商標法第7条第1項第18号にも該当すると判断した。

一方、両標章の前部分の「GLIA」は「神経膠(neuroglia)」又は「神経膠細胞」を意味するもので、百科事典及び科学用語辞典などに「中枢神経系の組織を支持する細胞として脳及び脊髄の内部で神経細胞に必要な物質を供給し、神経細胞の活動に適した化学的環境を造成する機能をする細胞を称する用語」と説明されており、後ろの部分の「TAMIN」及び「TILIN」は造語として、医薬品の命名時に他の用語に付いて接辞のように使用されている。また、医学及び薬学の教材である「神経解剖生理学」、「人体解剖学」、「人体生理学」、「神経学」などに「GLIA(神経膠又は神経膠細胞)」に関する説明が記載されている。さらに、医学及び薬学関連の新聞などには「GLIA(グリア)」の研究を通じて認知症、パーキンソン病、癲癇、不眠症、うつ病、自閉症などの脳疾患を治療できるという内容の記事が多数掲載されている。

判決内容

関連法理

2つ以上の文字又は図形の組合わせからなる結合商標のある部分が社会通念上、自他商品の識別力を認め難かったり、公益上、特定人に独占させるのが適切ではないと認められる場合には、独立して商品の出所表示機能を行う要部に該当するといえず、もし商標の構成部分の全部が識別力がない又は微弱な場合には、その中の一部のみが要部になるとはいえないので、商標全体を基準に類否を判断しなければならない。

医薬品に関する取引の実情

医薬品は一般医薬品と専門医薬品に区分され、本件登録商標の指定商品には専門医薬品と一般医薬品が含まれている。専門医薬品については、医師が患者の症状に応じて医薬品を処方すれば薬剤師が処方に応じた調剤をするので事実上一般消費者が医薬品の選択に介入する余地がなく、また、専門医薬品は広告が原則的に禁止されているため医師、薬剤師などの専門家ではない一般消費者がこれに関する情報を知ることは難しい。一般医薬品については、一般消費者が薬局で直接必要な医薬品を購入するが、この場合にも、ほとんどの患者が症状を説明すれば薬剤師がそれに合った医薬品を選ぶのが取引の実情であり、薬剤師は購入者が必要な医薬品を選択できるように服薬指導をする義務があるので、多くの場合、薬剤師の介入の下に購入がなされる。

判断

「GLIA(グリア)」の意味及び使用実態、医薬品に関する取引の実情を考慮すると、本件登録商標と先登録商標において「GLIA(グリア)」部分はその指定商品である医薬品との関係で脳神経疾患関連治療剤として需要者に認識され、識別力がない又は微弱なだけでなく、公益上、特定人に独占させることが適切ではないので要部になり得ない。また、上記商標の後ろの部分に位置する「TAMIN」及び「TILIN」は造語ではあるが、医薬品命名時に他の用語に付いて接辞のように用いられているので、独立して要部になり得ない。従って、上記商標の全体を基準に類否を判断しなければならない。

たとえ本件登録商標と先登録商標において「GLIA」部分が共通はしても、需要者は後ろの2音節である「TAMIN」と「TILIN(ティリン)」の外観及び呼称の違いによる混同を避けることができるといえる。従って、本件登録商標と先登録商標の標章は、互いに同一又は類似するといえない。

専門家からのアドバイス

大法院は、専門医薬品はもちろん、一般医薬品の場合にも、薬剤師の介入の下に購入がなされる医薬品の取引実情と、辞書などを引かなければ分からない「GLIA」の意味と使用実態までを考慮して、「GLIA」をその指定商品である医薬品との関係で識別力がない又は微弱なだけでなく、公益上、特定人に独占させることが適切ではないという等の理由で要部になり得ないと判断した。大法院のこのような要部に対する判断方法は、今後医薬品を指定商品とする商標登録の出願段階、OA段階、審判などで類否、標章の要部に該当するかなどが争点になる事例に参考及び活用されるものといえ、標章や指定商品の類否判断に需要者側の専門性・特殊性が大きく影響した典型的ケースとして記憶しておきたい。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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