知財判例データベース 「SPA」と特定商品の普通名称が結合した商標が、その商品と関連したサービス業に対しても識別力がないと見ることができるか
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 原告株式会社ソーダ vs 被告株式会社イーランドリテイル
- 事件番号
- 2017ホ3157
- 言い渡し日
- 2017年11月23日
- 事件の経過
- 確定
概要
「」商標が「
」商標と類似しているため無効かどうかが問題になった事件において、特許審判院は、上記商標の下部に位置するshoespaとSHOES SPAの部分は「靴小売業」と関連しては識別力がないため要部になり得ない一方、靴ではない商品に対するサービス業(衣類小売業等)に対しては識別力がないと言えないので要部になり得ると見たが、特許法院は、靴はもちろん、多様なファッション商品を全て取り扱うSPA (Speciality retailer of Private label Apparel brand)ブランドの実際の取引実情を考慮して、「靴小売業」だけでなく他の商品と関連したサービス業に対してもshoespaとSHOES SPAの部分の識別力がないため要部になり得ないと見て、両標章は互いに類似しないと判断して審決を取り消した。
事実関係
商品類区分第18類及び第25類に属する多様なファッション商品と第35類に属するファッション商品と関連したサービス業を指定商品・サービス業として登録された「」商標(以下「被告商標」)に関して権利者である被告は、ファッション商品と関連したサービス業を指定サービス業とする原告の「
」商標(以下「原告商標」)に対して、被告商標との類似性を根拠として旧商標法(2016年2月29日法律第14003号で改正される前のもの、以下「旧商標法」)第7条第1項第7号及び第8条第1項による無効審判を請求した。特許審判院は、被告商標の
部分と原告商標の
部分は靴商品又はサービス業との関係では識別力がないか不十分なので、原告商標の指定サービス業中「靴小売業、靴卸売業、靴販売代行業」と関連しては要部になり得ないため互いに標章が類似しないが、残りの指定サービス業である「衣類販売代行業、衣類小売業」などに対しては識別力がないか不十分であると断定するのは難しいので、両商標が類似すると判断して一部無効審決を下したところ、これに対し、原告が特許法院に審決取消訴訟を提起した事案である。
判決内容
「shoespa」と「SHOES SPA」の識別力の有無
生産単価及び流通費用などを減縮するために中間流通段階などをなくして企画、生産、流通及び販売などを1つの会社で全て担当し、生産物をその会社の独自ブランドで販売する方式又はその統合体を称してファストファッションとも呼ばれるSPA (Speciality retailer of Private label Apparel brand)に対する2012年と2013年の認知度は、それぞれ42.4%、54.6%であった点、2012年のSPA全体の市場規模は2兆5,000億ウォンに達する程に成長した点、SPAブランドの売場では衣類だけでなく、靴、靴下、ベルト、スカーフ、マフラーなどファッション製品全体を取り扱っていた点などを考慮すると、SPAはファッション製品の需要者に最新トレンドを速やかに反映させる生産及び流通形態を有する全てのファッション製品に使用される用語と認識され、その前に「shoe」や「SHOES」があってもこれを靴類のみを販売するSPAと受け入れるよりは靴を中心にファッション製品全体を取り扱うSPAという意味として受け入れられると言える。従って、「shoespa」と「SHOES SPA」は靴小売業だけでなく衣類小売業などと関連しても自他サービス業や商品の識別力を認め難かったり公益上から見て特定人に独占させることが適切ではないので、これらを要部とみなして原告商標と被告商標の類否を対比できない。
原告商標と被告商標の類否
「shoespa」と「SHOES SPA」が原告商標の指定サービス業全体に対して識別力がないか微弱であるため類否の判断時に要部と言えないという前提で、原告商標と被告商標を比較すると、外観は明確に区別され、呼称・観念の面でも原告商標はリンゴやアップル又はリンゴシュースパ、アップルシュースパという呼称・観念となるのに対し、被告商標はシューペンやシューペンシューズスパなどの呼称・観念となるため、互いに非類似である。
被告のその他の主張について
被告はSPAの前に製品名や業種名を結合した商標が登録されており、米国や中国でもTHE SHOE SPA、shoespaだけで構成された標章が登録されていて、原告の売場でshoespaという形だけで使用してもいる点を考慮すると、「shoespa」と「SHOES SPA」の識別力を認めなければならないという趣旨で主張しているが、ある商標の識別力の認定可否は指定商品との関係において個別に判断すべきで、法制や言語習慣が異なる外国の登録例は韓国商標の識別力認定可否の判断に大きな影響を及ぼさないので、被告の主張は受け入れられない。
小結論
上記で詳察した通り「shoespa」と「SHOES SPA」の部分は、両商標の識別力がある要部と言えないため、原告商標は被告商標との関係から全体的に類似しないので、旧商標法第7条第1項第7号及び第8条第1項に該当しない。
専門家からのアドバイス
登録主義を取っている現行商標法下で商標の類否は原則的に一般的・抽象的基準によって判断するが、法院の判決には商標の類似の判断時に当該商品・サービス業に関する具体的取引実情まで考慮して出所の混同を判断したものが存在する。
本件は「特定商品の名称」と「当該業界で一般的に用いられて識別力がない標章」が結合した場合、特定商品以外の他の商品と関連したサービスに対してまで識別力がなく要部となり得ないかが争点になった事件である。一般的・抽象的基準による判断の原則に従えば、「shoespa」と「SHOES SPA」の部分は「靴」ではない他の商品と関連したサービスに対しては識別力があるため要部に該当し、従って、互いに非類似であると判断する余地もあるであろうが、特許法院は、SPAブランドは特定商品のみを販売するものでなくファッションと関連した多様な商品を全て販売していることが具体的な取引実情であるという点を考慮して、本件において「shoespa」と「SHOES SPA」の部分を靴ではない他の商品と関連したサービス業に対してまで識別力が認められず要部になり得ないと判断したのである。商標の類似判断だけでなくその前提として要部に該当するかどうかに対する判断をする場合にも、当該商品・サービス業の具体的取引実情を考慮した判決であるという点で意味があり、この争点と関連した今後の判決の推移を見極める必要がある。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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