知財判例データベース 商標の構成部分すべてが識別力がない場合、つまり要部がない場合は商標全体を基準に類否を判断するか

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
原告 有限会社伽耶山泉水 vs 被告 特許庁長
事件番号
2017ホ7418
言い渡し日
2018年02月02日
事件の経過
確定

概要

ミネラルウォーターなどを指定商品とする出願商標「伽耶山 千年水のハングル」と、先登録商標「千年のハングル」との類否が問題になった事案において、特許法院は出願商標の「천년(千年)」部分は識別力が弱く要部に該当しないとして、両商標は全体的に対比して非類似であると判断した。

事実関係

原告は、出願商標「伽耶山 千年水のハングル」(以下「本件商標」)が先登録商標「千年のハングル」と類似するとの理由で特許庁から拒絶決定を受けたため、特許審判院に不服を申立てたが、特許審判院でも両商標は類似であると判断し同審判請求を棄却した。このため原告は特許法院に審決取消しを求める訴えを提起した。

判決内容

関連法理

商標の類似判断時、結合商標はその構成部分全体の外観、呼称、観念を基準として商標の類否を判断するのが原則である。しかし商標の構成部分のなかに、他の構成部分にかかわらずその部分だけで一般需要者に目立って認識される独自の識別力が存在する部分、つまり要部があるときは、適切な全体観察の結論を誘導するためにはその要部をもって商標の類否を対比・判断する必要がある。一方で、もし商標の構成部分すべてが識別力がない場合にはそのうちの一部だけが要部になるとはいえないため、商標全体を基準に類否を判断しなければならない。

本件商標の「千年」が要部にあたるかどうか

「千年」は「長い歳月」などを意味する単語として、(1)本件商標の指定商品であるミネラルウォーターと関連して「千年」が含まれた商標が多数登録されているだけでなく、(2)実際に本件商標の出願時にも「千年間」、「白楊 千年水」など「千年」が含まれたミネラルウォーター製品が多数販売されていた点、および(3)楽曲の題名などにも引用されているだけでなく、すでにミネラルウォーター以外の多様な商品にも使用されている取引実情などを考慮するとき、「千年」は本件商標の要部とは言い難い。

本件商標と先登録商標の類否

以上のとおり、「千年」部分は原告商標の要部とは言い難いため、本件商標と先登録商標を全体的に対比してみれば、両商標は図形の有無、字数などの外観が相違し、「伽耶山 千年水」と「千年」で音節数が異なるため呼称が相違し、観念の面でも本件商標は「伽耶山の古い泉から湧き出る水」を意味するのに対し、先登録商標は「長い歳月」の意味で相違するところ、両商標は非類似である。

結論

原告商標は先登録商標との関係において全体的に類似しないため旧商標法第7条第1項第7号(注1)に該当しない。

専門家からのアドバイス

特許審判院では、本件商標の中央部分に大きく目立つように表記された「千年」により先登録商標と類似すると判断したが、特許法院では識別力が微弱な「千年」は要部になり得ないため全体観察すべきであると説示し、両商標は非類似であると判断して原審決を取り消した。本件商標と先登録商標は両方共「千年」部分が目につくことから、一見すると類似していると考えがちだが、特許法院では「千年」を含む商標が指定商品であるミネラルウォーターと関連して多数登録および公告となっているか、「千年」を含む商標が多数使用されているか、「千年」が本質的な識別力がある部分であるか、および公益上特定人に独占させることが適当かどうか等の様々な要素を総合的に考慮し、「千年」は識別力がある部分、つまり要部ではないと判断したわけである。商標の類否判断においては要部の存否により結果が正反対にもなり得るという好例として意味があろう。  

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