知財判例データベース 両商標の外観が類似しないとしても要部が類似する場合には互いに類似の商標と見られるか、及び「購買注文管理処理業」と「購買代行サービス業」が互いに類似するか

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
原告 個人 vs 被告 エスピーシー株式会社
事件番号
2017ホ3997
言い渡し日
2017年10月27日
事件の経過
上告審係属中

概要

「購買注文管理処理業」などを指定サービスとする「SPCのサービスマーク」に対して、「購買代行サービス業」などを指定サービスとする先登録の「SPC KOREA LINE」サービスマークの権利者が請求した登録無効審判において、特許審判院は、指定サービス業は非類似であるとして審判請求全体を棄却したところ、審決取消訴訟では、特許法院は「購買注文管理処理業」と「購買代行サービス業」は互いに類似すると認め、その認定範囲内で先登録サービスマーク権者の請求を認容した。

事実関係

接着剤を専門的に輸出入する製造発売元であるスポック(SPCCOK)の代表であり、商品類区分第35類に属する「購買代行サービス業、マーケティングサービス業」などを指定サービス業として原告サービスマーク「SPC KOREA LINE」を2002年8月8日に出願し、2014年4月23日に登録を受けた原告は、商品類区分第35類に属する「購買注文管理処理業」などを指定サービス業として2013年1月16日に出願、2014年1月29日に登録された被告サービスマーク「SPCのサービスマーク」に対し、2015年8月21日に旧商標法第7条第1項第7号(注1)に基づいて登録無効審判を請求した。特許審判院は、両標章は互いに類似するが、その指定サービス業が互いに類似しないとして棄却する審決をし、これに対し、原告が不服を申し立てて2017年6月8日に審決取消訴訟を求めた。

区分 被告サービスマーク 原告サービスマーク
表彰 SPCのサービスマーク SPC KOREA LINE
指定商品 「購買注文管理処理業」、商品及びサービス業ライセンシングの商業的管理業、専門的な事業相談業、コンピュータデータベース管理及び加工編集業、コンピュータ資料検索業、通信加入斡旋業、インターネットを通じた商業情報提供業、価格比較サービス業、事業経営諮問業、商業経営支援業、在庫管理業、就業情報提供業、消費者のための商業情報提供及び相談業(消費者相談店)、果物卸売業、菓子類小売業、餅類小売業、大型ディスカウントストア業、コンビニエンスストア業、出版物定期購読斡旋業、鉱泉水/ミネラルウォーター小売業 「購買代行サービス業」、輸出入業務代行業、計測装備販売代行業、潤滑配管装備販売代行業、海洋装備販売代行業、磁力運送装備販売代行業、マーケティングサービス業

判決内容

標章の類似如何

関連法理

一般需要者にその商標に関する印象を植え付けたり記憶・連想をさせることによってその部分だけで独立して商品の出所表示機能を行う部分、即ち、要部がある場合、適切な全体観察の結論を誘導するためには要部をもって商標の類否を対比・判断することが必要である。従って、商標において要部が存在する場合には、その部分が分離観察されるかを判断する必要なしに、要部だけで対比することによって商標の類似如何を判断できる。また、商標の構成部分が要部であるかはその部分が周知・著名であったり一般需要者に強い印象を与える部分であるか、全体商標で高い割合を占める部分であるか等の要素を判断するものの、ここに他の構成部分と比較した相対的な識別力水準やそれとの結合状態と程度、指定商品との関係、取引実情などまで総合的に考慮して判断しなければならない(大法院2017.2.9.言渡2015フ1690判決など参照)。

具体的判断

被告サービスマークの標章はSPCのサービスマークとして、SPCのサービスマークの上の半月状の図形部分と下の英文文字SPC部分が結合している。一方、原告サービスマークの標章はSPC KOREA LINEとして、英文「SPC」、「KOREA」及び「LINE」が互いに離れた状態で並んで併記されている。両標章を全体として対比してみると、同一でないことは明白である。

被告サービスマークの標章を構成する図形SPCのサービスマークの上の半月状部分は、特別な呼称や観念がないのに対し、下の英文文字は「エスピーシー」と称され得るので、一般需要者の注意力を基準として見ると、「SPC」部分がその独自的な識別力のため際立って認識される要部であると見ることができ、原告サービスマークの標章において「SPC」部分は特別な観念を有さないのに対し、「KOREA」は韓国を意味し、「LINE」は「線、系、統、路線、航路、運輸会社、海運会社」等の辞書的意味を有する用語なので、一般需要者の注意力及び略して読もうとする言語実情をまとめてみれば、上記標章は「SPC」とのみ称されて認識され得るといえる。

従って、両標章いずれも「SPC」と略称されて認識され得、両標章が同一・類似のサービス業に使用される場合、サービスの出所について誤認・混同を引き起こすおそれが大きいといえるので、被告サービスマークと原告サービスマークは標章の面で類似するといえる。

指定サービス業の類似如何

関連法理

指定サービス業の類否は、提供されるサービスの性質や内容、提供手段、提供場所、サービス業の提供者及び需要者の範囲など、取引の実情などを考慮して一般取引の通念によって判断しなければならない。

「購買注文管理処理業」と「購買代行サービス業」の類否

類似群コードが相違する点、それぞれの定義によると「購買代行サービス業」では「商品の購買」が提供されるサービスにおいて必須の要素となる一方、「購買注文管理処理業」では「購買注文の管理及び処理」のみが提供されるだけで、「商品の購買」が必須の要素であると断定するのは難しいので、この点で両サービスの内容において差があると見る余地はある。

しかし、他人の利益のために「購買注文の管理及び処理」のみを行う例を実際の取引現場で見出すことは容易ではなく、昨今の高度化された経営の現場で購買に関する業務を外部企業に委託する場合が少なくない点などに照らしてみると、購買注文管理処理業と購買代行サービス業は物流の流れがサービスを提供する各当事者間であるかどうかでのみ差があるだけで、商品及び供給先の選定、交渉を通じた購買条件の決定、納品管理など一般に企業の購買部署で行われる一連の業務が共通に行われるので、そのサービスの性質や内容の面で実質的な差はないといえる。

以上の事情をまとめてみれば、本件サービスマークの指定サービス業中「購買注文管理処理業」及び原告サービスマークの指定サービス業中「購買代行サービス業」について、同一・類似の標章が使用される場合に一般需要者や取引者にそのサービスの出所に関する誤認・混同を与える蓋然性が大きいといえるで、両指定サービス業は互いに類似すると見るのが妥当である。

その他サービス業の類否

被告サービスマークの指定サービス業である「商品及びサービス業ライセンシングの商業的管理業、専門的な事業相談業、コンピュータデータベース管理及び加工編集業、コンピュータ資料検索業、通信加入斡旋業、インターネットを通じた商業情報提供業、価格比較サービス業、事業経営諮問業、商業経営支援業、在庫管理業、就業情報提供業、消費者のための商業情報提供及び相談業(消費者相談店)」と、原告サービスマークの指定サービス業である「マーケティングサービス業」は類似群コードが相違し、昨今の高度に専門化した取引実情と経営環境などに照らして、いずれも各分野別に細分化・専門化し、各分野別に独自のサービス主体により該当サービスが提供されることが一般的な点などを総合してみれば、被告サービスマークの上記指定サービス業が「マーケティングサービス業」と類似するといえない。

一方、被告サービスマークの指定サービス業中「果物卸売業、菓子類小売業、餅類小売業、大型ディスカウントストア業、コンビニエンスストア業、出版物定期購読斡旋業、鉱泉水/ミネラルウォーター小売業」は、原告サービスマークの指定サービス業のいずれとも同一・類似すると見る証拠がない。

結論

以上のような諸般の事情をまとめれば、被告サービスマークは原告サービスマークと標章の面で類似し、その指定サービス業中「購買注文管理処理業」は原告サービスマークの「購買代行サービス業」と類似するので、「購買注文管理処理業」に関する被告サービスマークの登録部分は旧商標法第7条第1項第7号に該当し、無効とされなければならない。従って、これとは異なって判断した本件審決中、上記「購買注文管理処理業」に関する部分は違法である。

専門家からのアドバイス

この判例は「자생초(自生草のハングル)」と「자생韓方病院」の類似如何が争点であった事案において、両商標はいずれも「자생(自生のハングル)」が要部に該当するので、「자생」が分離観察されるかを判断する必要なく、要部である「자생」を基準に両商標を対比して互いに類似すると判断し、商標の構成部分のうち要部を判断する基準を提示した大法院判決(大法院2017.2.9.言渡2015フ1690判決;ジェトロ判例データベースに収録済み)とその軌を一にする判決であるという点で意義があり、類似群コードが相違する「購買注文管理処理業」と「購買代行サービス業」の類否について、両サービスの定義、サービスの内容、サービスの提供方法などを総合的に検討して、需要者に両サービスの出所に関する誤認・混同をもたらす恐れがあるかを具体的に判断し、実質的に類似すると認めたという点でも意義があるところ、原告及び被告双方の上告によって係属中の上告審で大法院がいかなる判決を下すか見守る必要がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195