知財判例データベース 著作権法は複製権、配布権、公演権等の個別の権利の集合であり、それぞれの権利を基準に個別に判断すべきである

基本情報

区分
著作権
判断主体
大法院‎
当事者
被告人(上告人)○○○外1人 vs. 検事
事件番号
2015ド3352‎
言い渡し日
2015年07月09日
事件の経過
確定‎

概要

466

著作権法は、技術的保護措置をアクセス統制措置(法律第2条第28号イ目)と利用統制措置(法律第2条第28号ロ目)に大別しているが、問題となる保護措置がどちらに該当するかを決定するにおいては、著作権は単一の権利ではなく、複製権・配布権・公演権等の種々の権利の集合体であって、これら権利はそれぞれ別個の権利であるという点を考慮し、それぞれの権利を基準に個別に判断すべきである。‎

事実関係

カラオケ機製作企業である控訴外株式会社(以下「控訴外会社」)は、社団法人 韓国音楽著作権協会(以下「音楽著作権協会」)から音楽著作物の複製・配布に関する利用許諾を受け、毎月カラオケに新曲を供給していた。この控訴外会社は、同社が固有番号を付与して製作したデータロムチップを歌伴奏機に装着したり、スマートフォンを利用してスマートトークンを購入することにより(この場合は、「KY WiFiモジュール」というUSBを歌伴奏機に挿入する必要がある)、新曲ファイルが再生されるようにする2種類の方式の認証手段(以下「本件保護措置」)を設置していた。‎

被告人1は新曲認証と関連したデータを操作し、上記のような認証手段を購入/装着しなくても新曲ファイルを再生できるようにする装置(前月のデータチップをそのまま利用できるようにする装置及びスマートトークンなしでも再生できるようにする装置)を製造・販売・保管し、この過程で本件保護措置を変更したり迂回し、また、被告人‎2は被告人1から前月のデータチップをそのまま利用できるようにする装置を購入し、‎カラオケ機に新曲ファイルを設置するカラオケディーラーに販売した。

原審(仁川地方法院2015年2月5日言渡2014ノ3538判決)は、被告人らを著作権法第104条の2(技術的保護措置の無力化の禁止)違反で処罰し、これに対し被告人らは、本件技術的保護措置は著作権の行使と無関係にアクセスのみを統制するものであるため、法的保護の対象にならないという理由で上告した。‎

判決内容

著作権法第2条第28号は、「技術的保護措置」をイ目の「著作権、その他のこの法律‎により保護される権利の行使に関連してこの法律により保護される著作物等に対するアクセスを効果的に防止し、又は抑制するためにその権利者又は権利者の同意を受けた者が適用する技術的措置」と、ロ目の「著作権、その他のこの法律により保護される権利に対する侵害の行為を効果的に防止し、又は抑制するためにその権利者又は権利者の同意を受けた者が適用する技術的措置」に分けて定義している。‎

そのうちイ目の保護措置は、著作権等を構成する複製・配布・公演等の個別の権利に対する侵害行為そのものを直接的に防止したり抑制するものではないが、著作物が収録された媒体に対するアクセスまたはその媒体の再生・作動等を通じた著作物の内容に対するアクセス等を防止したり抑制することによって著作権等を保護する措置を意味し、ロ目の保護措置は、著作権等を構成する個別の権利に対する侵害行為そのものを直接的に防止したり抑制する保護措置を意味する。‎

ここで、問題になる保護措置が二つのうちどちらに該当するかを決定するにおいては、著作権は一つの単一の権利ではなく、複製権、配布権、公演権等の種々の権利の集合体であって、これら権利はそれぞれ別個の権利なので、それぞれの権利を基準に個別に判断すべきである。‎

本件保護措置は、複製権・配布権等と関連しては、複製・配布行為そのものを直接的に防止したり抑制する措置ではないが、新曲ファイルの再生を通じた音楽著作物の内容に対するアクセスを防止したり抑制することによって複製・配布等の権利を保護する、著作権法第2条第28号イ目の保護措置に該当するだけでなく、公演権と関連しては、新曲ファイルを再生という方法で公衆に公開する公演行為そのものを直接的に防止したり抑制する、著作権法第2条第28号ロ目の保護措置に該当する。‎

一方、記録によると、カラオケディーラーは別途の対価なしに控訴外会社から新曲ファイルを入手し、これを複製・配布できたと見られるが、これは控訴外会社が本件保護措置に対する対価を受けることにより、あえて著作物の複製・配布を統制したり、それに対する別途の対価を受ける必要がないという事情によったもので、このような事情を理由に、本件保護措置が複製権・配布権等の行使と無関係であるということはできない。また、記録によると、カラオケ営業主は、音楽著作権協会から新曲の販売数量に関係なく定額制で公演行為に対する許諾を受けたものと見られるが、これも本件保護措置を通じた認証を当然の前提としているものなので、本件保護措置の代わりにこれを無力化する装置を用いる場合にまで著作権者の真正な許諾があると見ることはできない。‎

結局、本件保護措置が著作権等の行使と無関係にアクセスのみを統制すると見ることはできないので、同様の趣旨の原審判断は正当で、これに上告理由として主張する技術的保護措置に関する法理を誤解して判決に影響を及ぼした違法等があるとはいえない。‎

専門家からのアドバイス

技術的保護措置中のアクセス統制(access control)措置は、著作権者の排他的権利が及ぶ利用行為を直接的な統制の対象としないので、これを広範囲に認めれば、ともすると著作権者に著作権法で認めていないアクセス権を実質的に付与する効果が発生し得る。従って、韓国著作権法は、韓・EU自由貿易協定(KOR-EU FTA)を反映させて、アクセス統制措置を法的保護対象に含めるように改正(2011年7月1日施行)することにより、アクセス統制措置を「著作権、その他のこの法律により保護され‎る権利の行使に関連してこの法律により保護される著作物等に対するアクセスを効果的に防止し、又は抑制するためにその権利者又は権利者の同意を受けた者が適用する技術的措置」と限定的に定義している。‎

本件で被告らは、自身のアクセス統制措置の無力化行為が著作権法で保護される権利の行使と関連がないという理由を挙げ、法的に保護されるアクセス統制措置に対する無力化ではないと主張した。しかし、大法院は、本件保護措置は複製権及び配布権と関連しては、新曲ファイルのアクセスを防止・抑制することによって複製・配布等の禁止された利用行為を結果的に統制するようにしたものなので、法的に保護されるアクセス統制措置であり、さらに公演権と関連しては、本件技術措置が許諾を受けていない公演行為を直接防止するようにしたものなので、利用統制(rights‎‎ control)措置に該当すると判示した。利用行為及び著作財産権の中の持分権別に技術措置の性格をそれぞれ別々に把握した点について十分に評価したい。‎

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195