知財判例データベース 半製品を生産して韓国外に輸出する行為は特許権間接侵害行為に該当するかどうか
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 原告、上告人:特許権者 vs. 被告、被上告人:ノキアTMC
- 事件番号
- 2014ダ42110損害賠償
- 言い渡し日
- 2015年07月23日
- 事件の経過
- 一部確定(N95完成品に対する損害賠償請求部分の破棄差戻し、残りの上告棄却)
概要
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特許法第127条第1号の「その物の生産にのみ使用する物」でいう「生産」とは、国内での生産を意味すると見ることが妥当である。従って、このような生産が国外で行われた場合には、その前段階の行為が国内でなされても間接侵害が成立し得ない。
事実関係
原告は名称を「双方向マルチスライド携帯端末」という特許の特許権者であって、被告が生産して輸出したN95完成品、N95半製品、N96半製品それぞれに対して、本件特許発明の第1、2項の発明の侵害を理由に損害賠償を請求した。原審(高等法院)ではN95、N96の各半製品は、本件第1、2項の発明の構成要素の一部を備えていないため、これを生産する行為は各特許権に対する直接侵害とならず、これらはいずれも国外において完成品として生産されたので間接侵害製品にも該当しないと判断すると共に、本件特許発明は、比較対象発明によってその進歩性が否定され、特許が無効となることが明白なので、これに基づいた原告の本件請求は権利濫用に該当するため許容されないと判断した。これに対し、原告は大法院にこの判決の取消を求める上告を提起した。
判決内容
特許法第127条第1号は、いわゆる間接侵害について「特許が物の発明の場合、その物の生産にのみ使用する物を生産・譲渡・貸渡し若しくは輸入したりその物の譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為を業としてする場合には、特許権または専用実施権を侵害したものとみなす」と規定している。これは発明の全ての構成要素を有する物を実施したものでなく、その前段階にある行為を行ったとしても、発明の全ての構成要素を有する物を実施するようになる蓋然性が大きい場合には、将来の特許権侵害に関する権利救済の実効性を高めるために一定の要件下でこれを特許権の侵害とみなそうという趣旨である。このような条項の文言とその趣旨に照らしてみれば、ここでいう「生産」とは、発明の構成要素一部が欠如した物を使用して発明の全ての構成要素を有する物を新たに作り出す全ての行為を意味する概念として、工業的生産に限らずに加工・組立などの行為も含むものである(大法院2009年9月10日言渡2007フ3356判決など参照)。
間接侵害制度はあくまでも特許権が不当に拡張されない範囲でその実効性を確保しようとするものであって、特許権の属地主義の原則上、物の発明に関する特許権者がその物に対して有する独占的な生産・使用・譲渡・貸渡し若しくは輸入などの特許実施に関する権利は、特許権が登録された国の領域内でのみその効力が及ぶ点を考慮すると、特許法第127条第1号の「その物の生産にのみ使用する物」でいう「生産」とは、国内での生産を意味すると見ることが妥当である。従って、このような生産が国外で行われた場合には、その前段階の行為が国内でなされても間接侵害が成立し得ない。(以下、本件特許の進歩性欠部分については省略)
専門家からのアドバイス
本判決は、間接侵害と関連して「物の生産にのみ使用する物」において「生産」は国内での生産を意味すると明示している点に注目しておきたい。特許権の属地主義原則上、当然であるが、韓国内で生産される完成品にのみ使用される半製品に対しては特許権に対する間接侵害が成立することになる。逆に言えば、韓国内で大方のモジュール(半製品)を製造し、最終組立てのために海外へ輸出してしまう企業に対しては権利侵害を問えないこととなり、半製品製造者にとっては、権利の回避手段ともなり得るのである。もちろん海外で最終組立てされた当該完成品が韓国内に輸入され販売されることになれば、輸入者や流通販売業者を相手取って輸入差止や販売中止などの措置をとることが可能である。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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