知財判例データベース 著作権法上私的利用のための複製又は著作物の公正な利用に該当するための要件

基本情報

区分
著作権
判断主体
清州地方法院
当事者
(被告人)vs. 検事
事件番号
2014号ジョン232
言い渡し日
2015年02月12日
事件の経過
経過不詳

概要

451

被告人は被害者の美術作品と実質的類似性が維持された2次的著作物を製作し、私塾で展示したり自身のインターネットカフェ、ブログに掲示したところ、これは著作権法上著作財産権の侵害責任が免除される「私的利用」又は「著作物の公正な利用」に該当しない。

事実関係

被告人は2011年1月頃から3カ月間、被害者からカリグラフィー[1]を習った後、自身のカリグラフィー工房を運営し、2011年11月14日10時頃から2012年9月24日14:00頃まで上記カリグラフィー工房で自身が運営するインターネットカフェとブログサイトにアップロードする目的で、被害者が創作した著作物「プンノリミジャユロウル テ クムル クムニダ(筆使いが自由な時、夢を見ます)」の2次的著作物を作成したのをはじめとして、被害者の著作物7点に対する2次的著作物を作成する方法により、被害者の著作財産権を侵害した。

判決内容

被告人は、たとえ被告人の作品が被害者の著作物に対する2次的著作物に該当するとしても、自身の作品を個人的に使用しただけで、営利を目的として使用していないので、これは著作権法第30条で定める「私的利用のための複製」に該当するだけでなく、著作権法第35条の3で定める「著作物の公正な利用」に該当すると主張した。しかし、被告人は被害者の著作物に基づいて一部修正が加えられているものの、これと実質的類似性が維持された作品を作った後、あたかも被告人固有の作品であるかのように、又は少なくとも他人が被告人固有の作品と誤認するのに十分なように出所を表示しないまま、これを被告人が運営するカリグラフィー工房に展示したり自身のインターネットカフェ、ブログなどに掲示して自身からカリグラフィーの講義を受ける人に提示したところ、(1)これをもって被告人が被害者の著作物を個人的に使用したり家庭及びこれに準ずる限定された範囲内で使用したものと見ることはできない点、(2)著作権法第35条の3によって著作物を使用する者は、著作権法第37条第1項によってその出所を明示すべきであるにもかかわらず、被告人はその出所を明示せず、著作物の利用方法に照らして被告人の上記のような行為によって被害者の正当な利益が侵害されなかったとも言えない点などを総合してみれば、被告人の上記のような行為が著作権法第30条で定める「私的利用のための複製」又は著作権法第35条の3で定める「著作物の公正な利用」に該当すると見ることができないので、被告人の主張は受け入れられない。被告人を罰金80万ウォンに処する。

専門家からのアドバイス

カリグラフィーは創作性が認められる、1つの美術著作物として著作権の保護を受けるものであるが、被告人は自身の作品が被害者の作品との関係で2次的著作物に該当するとしても、これは個人的に使用したものに過ぎず、営利を目的として使用したものではないため、刑事責任を負うことができないとして反論し争った。しかし、法院は、被告人は自分の運営するカリグラフィー工房にこの作品を展示したりインターネット空間に掲示し、本人自らカリグラフィーの講義を受ける者に提示しているという理由をあげ、個人的な利用に過ぎず営利目的がないという被告人の主張を認めず、「私的利用」又は「著作物の公正な利用」に該当しないので著作権侵害が成立すると判断して刑事責任を賦課した。

本件は、一見単純な著作物盗用ケースとして平凡な事件のように見えるが、2011年12月2日に新設された規定である「著作物の公正な利用」(著作権法第35条の3)の該当如何を判断した点に注目しておきたい。上記規定は英米法系の公正利用法理(「fair use」あるいは「fair dealing」)を取り入れたもので、その制度的必要性にもかかわらず、具体的にどの範囲まで免責されるとするかに関する論議が継続して行われてきた。この判決では、著作権法第35条の3によって著作物を使用する者は、著作権法第37条第1項によってその出所を明示すべきであるにもかかわらず、被告人がその出所を明示しなかったという点に注目し、公正利用として著作権侵害責任が免責されるためには、(1)出所の明示が伴わなければならないという点と、(2)被害者の正当な利益の侵害有無の2つが重要な判断要素になることを明確に整理した点にその意味を見いだすことができる。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195