知財判例データベース 物品に表示される以外にそれ自体で使用されてきた視覚的キャラクターは、図案そのものに一般美術著作物として創作性を備えているかどうか
基本情報
- 区分
- 著作権
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 検事 VS. 被告人/上告人A
- 事件番号
- 2015ド11550号
- 言い渡し日
- 2015年12月10日
- 事件の経過
- 確定
概要
481
ウサギを擬人化した本件キャラクターが著作権法によって保護される著作物の要件として創作性を備えるかどうかは、図案それ自体に一般的な美術の著作物として創作性を備えているかどうかによって判断すれば足りる。ベルヌ条約の締約国間では条約上、内国民待遇の原則が適用され、相互主義を規定した著作権法第3条第3項がこのようなベルヌ条約上の内国民待遇の原則を排除する条項とは解釈されないため、日本がベルヌ条約の締約国として、同じ締約国である韓国国民の著作物に対して内国民待遇をする以上、日本国を本国とする本件キャラクターは韓国著作権法により美術著作物として保護される。
事実関係
日本人が著作者である本件キャラクターは、全体的には無表情だがほのぼのとして愛らしい感じのするウサギを擬人化したものであって、別名「Le Sucre(ル・シュクル)」という。本件キャラクターは2004年頃にいわゆるオリジナル・キャラクターの一種として開発された図案であり、物品に表示される以外にも、2008年頃に日本で発売された絵本に掲載されるなど、本件キャラクター自体の形態でも使用されてきた。
一方、被告人は、2010年11月頃から本件キャラクターを模倣したぬいぐるみを輸入、販売していたことから公訴が提起された。本件原審判決では、著作権侵害などを理由として被告人に有罪が言い渡された(大邱地方法院2015年7月10日言渡2014ノ816判決)。
判決内容
著作権法によって保護される著作物は、その要件として創作性が要求されるが、ここでいう創作性とは、完全な意味での独創性をいうのではなく、ある作品が他人のものをただ模倣したのではなく、作者自身の独自の思想又は感情の表現を含んでいることを意味するだけであり、このような要件を満たすためには、著作物にその著作者自身の精神的努力の所産としての特性が付与されており、他の著作者の既存の作品と区別できる程度であれば足りる(大法院2003年10月23日言渡2002ド446判決等)。
原審判示の本件キャラクターは、ウサギを擬人化して表現したものであって、丸顔に小さな丸い目、大きな丸い鼻、一文字に近い口の形をしており、耳は長い楕円形で皮膚のようなものが見え、腕と脚は長く伸びていて若干曲がっていて、手や足の先は丸くなっており、全体的には無表情だがほのぼのとして愛らしい感じを与えるように図案化されたものであることが分かる。一方、本件キャラクターは、2004年頃にいわゆるオリジナルキャラクターの一種として開発された図案であり、物品に表示される以外にも、2008年頃に日本で発売された絵本に掲載されるなど、本件キャラクター自体の形態でも使用されてきたことが分かるので、本件キャラクターが著作権法によって保護される著作物の要件として創作性を備えているか否かは、図案それ自体で一般的な美術の著作物として創作性を備えているか否かによって判断すれば足りるといえる(大法院2014年12月11日言渡2012ダ76829判決参照)。
本件キャラクターは、よく見られる実際のウサギの様子とは区別される独特の形状であって、創作者主体の精神的努力の所産としての特性が付与されており、他の著作者の既存の作品と区別できる程度であると見られるので、著作権法によって保護される著作物の要件としての創作性を備えているといえる。したがって、原審判示のとおり、被告人が本件キャラクターの単純な立体的形状として、その複製物又は2次的著作物に該当するウサギのぬいぐるみを無断で輸入し韓国内で販売する行為は、本件キャラクターに対する著作財産権の侵害にあたる。
また、被告人は、(1)本件キャラクターやウサギのぬいぐるみは応用美術であって、その本国である日本国で著作物として保護されないので、本国で応用美術がデザインやモデルとしてのみ保護される場合、原則的に他の締約国でも著作物としては保護されないという趣旨を規定したベルヌ条約第2条第7項、(2)又は韓国が加入若しくは締結した条約や著作権法の規定により保護される外国人の著作物であっても、その外国で韓国人の著作物を保護しない場合には、それに合わせて条約及び著作権法による保護を制限することができるという、いわゆる相互主義を規定した著作権法第3条第3項により韓国でも著作物として保護されないと主張している。
しかしながら、本件キャラクターを一般的な美術の著作物と見ることができることは先に述べたとおりであるが、ベルヌ条約の締約国の間では条約上内国民待遇の原則が適用され、相互主義を規定した著作権法第3条第3項が、このようなベルヌ条約上の内国民待遇の原則を排除する条項と解釈されてはならないため、日本国がベルヌ条約の締約国として同じ締約国の韓国人の著作物に対して内国民待遇をしている以上、日本国を本国とする本件キャラクターは韓国著作権法により美術の著作物として保護される。
専門家からのアドバイス
この判決を通じて、応用美術のように著作権の保護が国際的に完全に統一されていない領域が問題になり得る渉外的事件の場合、侵害者が提起し得る主張及びこれに対する法院の判断をうかがい知ることができる。
韓国の現行著作権法上、応用美術が著作権法によって保護を受けるためには、一般的な著作物の保護要件である創作性以外にも「その利用された物品と区分されて独自性があること」という応用美術に固有の追加の保護要件を備えていなければならない。本件侵害者は、本件著作物が応用美術に該当するとしながら、このような保護要件を備えているか、また、外国との関係において当該著作物の本国が応用美術を著作権として十分に保護しているかについて疑問を提起したのである。
しかし、本件において、韓国大法院は、「あるキャラクターがキャラクター自体の形態でも使用されてきたとすれば、応用美術としての成立性を論じる以前に、図案それ自体で一般的な美術の著作物としての成立要件を満たすか否かを詳察すれば足りる」と判断し、応用美術に対する追加の要件に関する論争を門前払いとした。こうして、大法院が本件キャラクターを一般的な美術の著作物とみなしたことから、「本国で応用美術がデザインやモデルとしてのみ保護される場合、原則的に他の締約国でも著作物としては保護されない」という趣旨のベルヌ条約第2条第7項や「著作物の本国である外国で韓国人の著作物を保護しない場合は、それに合わせて韓国でも著作権保護を制限することができる」という著作権法第3条第3項の相互主義は、これ以上考慮する必要がなくなったわけである。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195