知財判例データベース 立体商標に識別力がある文字などが付加された場合、全体的な識別力が認められるか否か
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 原告A vs.被告(特許庁長)
- 事件番号
- 2014ホ6889
- 言い渡し日
- 2015年01月09日
- 事件の経過
- 確定
概要
448
商標法は立体的形状のみからなる標章に記号・文字・図形が結合した標章を認めており、立体的形状に他の識別力ある構成が結合している商標について登録を受けることができないとは規定しておらず、立体的形状に文字などが結合した商標において立体的形状でのみ識別力を判断するようにする規定もなく、このような商標の登録を許容することが公益に反するとか立体商標制度の趣旨に反すると見ることはできず、立体商標と文字などの結合商標の識別力はその全体により識別力の有無を判断すべきである。
事実関係
原告は、2010年11月15日に本件出願商標「」を第3類の芳香剤、化粧品などを指定して出願し、特許庁長はこれを2012年1月2日付で出願公告した。一方、件外会社は「本件出願商標は商標法第6条第1項第3号及び第7条第1項第11号に該当して商標登録を受けることができない」という趣旨の異議申立をし、特許庁は2013年3月8日付で異議申立に理由があると決定した。これに対し、原告は特許審判院に拒絶決定不服審判請求をしたものの、特許審判院は2014年7月16日に「本件出願商標は芳香剤の一般的形状に過ぎないので商標法第6条第1項第3号に該当する」という理由で原告の審判請求を棄却する審決をした。原告はこれを不服として特許法院に審決取消訴訟を請求した。
判決内容
- 商標法第2条1項第1号イ目は、「記号・文字・図形、立体的形状又はこれらを結合し、又はこれらに色彩を結合したもの」を標章と規定して、立体的形状のみからなる標章に記号・文字・図形が結合した標章を認めている。
- 商標法第6条第1項第3号は、形状を普通に用いる標章のみからなる商標は商標登録を受けることができないとしており、また、同法第7条第1項第13号は、商品などの機能を確保するのに不可欠な立体的形状のみからなる商標は登録を受けることができないと規定していて、立体的形状に他の識別力ある構成が結合している商標について登録を受けることができないとは規定していない。
- また、商標法には立体的形状に文字などが結合した商標において立体的形状でのみ識別力を判断するようにする規定はない。
- 登録商標の保護範囲は出願書に記載した商標によって定められるので、立体的形状に文字などが結合した商標は、その全体によって保護範囲が定められるのであって、立体的形状のみで定められるものではない。
- 本件出願商標の出願書には商標の種類が「立体商標」とされているが、これは単に書式がそのようになっているだけで、出願人が自ら立体的形状のみに限定して出願したものでもない。
- 立体的形状が識別力のある文字などと結合した場合、需要者は文字から商品間の出所を区別するはずである。
- 従って、上記のような立体的形状に文字・記号などが結合した商標の登録を許容することが公益に反するとか立体商標制度の趣旨に反すると見ることはできず、立体商標と文字などの結合商標の識別力はその全体により識別力の有無を判断すべきである(これと関連して、特許庁の審査基準第8条は、審査の便宜上定めた内部の審査基準に過ぎない)。
- これにより、本件出願商標の識別力を詳察すると、本件出願商標は、円筒状を基本形状とし、下段の「
」のようにレリーフ形成された容器、中段の白色プラスチック蓋及び上段のベルト形状が枠に突出して形成されたプラスチック蓋で構成された立体的形状に上面部と側面部に記号「
」部分、側面部に赤色パターンにレッド、ネイビー、グリーンのベルトの図形が結合された標章である。
- 本件出願商標のうち、3段で構成された円筒状と上段のベルト形状が枠に突出して形成されたプラスチック蓋は、指定商品である芳香剤容器の一般的な形状といえるので、識別力が不十分である。しかし、本件出願商標の中下段に「
」のようなレリーフ形成された部分、記号「
」部分と赤色パターンにレッド、ネイビー、グリーンのベルト図形部分は、その指定商品との関係で性質などを示す記述的意味を有している標章として識別力が認められ、上記号及び図形が本件出願商標全体に占める割合を考慮すると、需要者がこれを容易に認識することができ、従って、本件出願商標は上記立体的形状と記号、図形が結合した全体として識別力が認められる。
専門家からのアドバイス
特許庁は、立体商標も音、匂い、色彩などのような非典型商標として取り扱い、必ず使用による識別力を取得した後に登録を認めると審査基準で規定しており、それ自体でのみ識別力を判断すべきであるという見解を固守している。しかし、特許法院は、昨年9月に識別力のある文字が付加された「」商標(商品:人工股関節用ボール)についても、本件と同一の趣旨で、「識別力のある文字、記号などが付加された場合、商標の全体的な観点から識別力を判断すべきである」という見解を堅持しており(特許法院2014ホ2344)、同判決は最近、大法院で2014フ2306事件として審理され、2015年2月26日付で上告が棄却された。これを受け、特許庁の立体商標に関する商標審査基準も上記大法院判決によって修正されるものとみられ、特許庁の審査段階でも識別力のある文字や記号などが付加された立体商標の登録は容易になるものと予想される。ただし、登録されても立体的形状に対する独自の権利範囲が必ず付与されるとは限らない点には留意する必要があろう。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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