知財判例データベース インターネットリンクの提供が著作財産権侵害行為のほう助行為に該当するかどうか
基本情報
- 区分
- 著作権
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- ○○○(被告人) vs. 検事
- 事件番号
- 2012ド13748
- 言い渡し日
- 2015年03月12日
- 事件の経過
- 上告棄却
概要
453
リンクをする行為自体は、インターネットでリンクしようとするウェブページなどの位置情報や経路を示したものに過ぎず、インターネット利用者がリンクを通じて著作権者の権利を侵害するウェブページに直接接続されるとしても、その侵害行為の実行自体を容易にするとはいえないので、著作財産権侵害行為のほう助行為に該当すると見ることができない。
事実関係
本件○○ウェブサイトを管理・運営する被告人は、本件○○サイトの一部会員がそのサイトの掲示板に、著作権者から利用許諾を得ていない日本のマンガなどデジタルコンテンツを掲示し、インターネット利用者がこれを閲覧又はダウンロード(download)できるようにする、外国ブログ(blog)に接続されるリンクを掲載していたにもかかわらず、被告人はこれを削除せずに放置した。
判決内容
いわゆるインターネットリンクは、インターネットでリンクしようとするウェブページやウェブサイトなどのサーバに保存されている個々の著作物などのウェブの位置情報や経路を示したものに過ぎず、たとえインターネット利用者がリンク部分をクリックすることによってリンクされたウェブページや個々の著作物に直接接続されるとしても、上記のようなリンクをする行為自体は著作権法が規定する複製及び伝送に該当しない(大法院2009年11月26日言渡2008ダ77405判決、大法院2010年3月11日言渡2009ダ80637判決等)。一方、刑法上ほう助行為は、正犯の実行を容易にする直接・間接の全ての行為を指すものであるが、リンクをする行為自体は、上記のようにインターネットでリンクしようとするウェブページなどの位置情報や経路を示したものに過ぎず、インターネット利用者がリンク部分をクリックすることによって、著作権者から利用許諾を得ていない著作物を掲示したりインターネット利用者にそのような著作物を送信するなどの方法により、著作権者の複製権や公衆送信権を侵害するウェブページなどに直接接続されるとしても、その侵害行為の実行自体を容易にするとはいえないので、このようなリンク行為だけでは、上記のような著作財産権侵害行為のほう助行為に該当すると見ることができない。
原審が適法に採択した証拠によると、被告人は原審判示本件○○サイトを管理、運営する者であるが、本件○○サイトの一部会員がそのサイトの掲示板に著作権者から利用許諾を得ていない日本のマンガなどデジタルコンテンツを掲示し、インターネット利用者がこれを閲覧又はダウンロード(download)できるようにする原審判示の外国ブログ(blog)に接続されるリンクを掲載したにもかかわらず、被告人がこれを削除せずに放置したことが分かる。
このような事情を前述した法理に照らして詳察すると、本件○○サイトの一部会員が上記のようにリンクをする行為は、著作権法が規定する複製及び伝送に該当せず、これにより著作権者の複製権や公衆送信権を侵害したということができず、たとえ外国ブログにおいて本件○○デジタルコンテンツに関する複製権や公衆送信権などの著作財産権を侵害しており、インターネット利用者が上記リンク部分をクリックすることによってそのような外国ブログに直接接続されるとしても、そのようなリンク行為だけでは、著作財産権侵害のほう助行為に該当すると見ることもできない。
従って、被告人が本件○○サイトを管理、運営し、著作権法違反罪又はそのほう助罪で処罰できない上記のようなリンク行為の空間を提供したとか、そのようなリンクを削除せずに放置したとしても、著作権法違反のほう助罪が成立するとはいえない。また、原審が適法に採択した証拠によっても、被告人がそれ以外に、外国ブログを運営したり外国ブログに本件○○デジタルコンテンツを掲示するなどの行為をした者と何らかの関連を結ぶなどの方法により、外国ブログの著作財産権侵害行為をほう助したと見ることはできない。
よって上記の趣旨により、被告人の著作権法違反ほう助の点に対して無罪を言渡た原審判断は正当である。
専門家からのアドバイス
上記判決では、日本のマンガなどデジタルコンテンツを著作権者の許諾なしに掲示又はダウンロードできるようにする外国ブログ(blog)の運営者のみが、複製や公衆送信の行為を通じて著作権侵害の直接責任を負う行為者となるという前提で、インターネット利用者が提供されたリンクをクリックすることによって不法に掲示された著作物にアクセスするようになっても、リンク行為自体は著作者の複製権や公衆送信権を直接的にも間接的にも侵害したものではないと見たものと思われる。そのため、インターネット利用者がリンク部分をクリックして不法に提供された著作物にアクセスしても、この行為によっては侵害行為の実行自体は起こっていないものであり、その結果このような行為を可能にしたリンク提供行為も著作権侵害行為のほう助行為に該当しないと判断したものである。上記のように判断した以上、リンクが掲載された被告人の管理対象サイトの運営行為にもいかなる法的責任も追及できないと結論付けたことは自然な帰結になるであろう。
上記判決は、インターネットリンクの提供行為という著作物に関する利用における適法性に対して精密な法的評価をしたという点で意味がある。一方、リンク行為は非常に特殊な形態の著作物の利用行為なので、上記判決で下された結論を他の著作物関連利用行為にまで不当に拡大して解釈してはならないという点には一応留意しなければならないであろう。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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