知財判例データベース 「ダサソ/DASASO」の使用は「ダイソー/DAISO」のサービスマーク権を侵害するか

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
原告(株式会社ダイソーアソン産業)VS.被告(株式会社ダサソ、外2人)
事件番号
2014ダ216522
言い渡し日
2015年10月15日
事件の経過
確定

概要

474

類似商品の使用行為に該当するかに対する判断は2つの商標が当該商品に関する取引実情に基づいてその外観、呼称、観念などによって取引者や一般需要者に与える印象、記憶、連想などを全体的に総合するとき、2つの商標に時と場所を異にして接する取引者や一般需要者が商品の出所について誤認・混同するおそれがあるか否かの観点からなされなければならない。「ダサソ/DASASO」と「ダイソー/DAISO」は中間音節の差にもかかわらず、一般需要者に原告の登録サービスマークを連想させることができ、原告と被告が営むサービス業が生活用品などの販売店と一致し、取り扱う商品の品目と陳列及び販売方式まで似ていて両者を混同する可能性がさらに高くなるという点までを全て考慮すると、被告らがそのサービスマークを使用する行為は原告の登録サービスマーク権に対する侵害行為に該当する。

事実関係

原告は、2001年頃から「다이소」という商号で生活用品、生活雑貨等小売店加盟事業を行っており、2013年基準で韓国内に900ヵ所余りの加盟店を保有、同年の年間売上高は約8,580億ウォンに至る。「」、「」というサービスマークを文具販売代行業、台所用品販売代行業などを指定役務として出願し登録を受けたサービスマーク権者である。一方、被告は、2012年1月2日から小規模に生活用品、生活雑貨などの小売店を運営していたなか、同年3月8日 に「」標章をサービスマークとして出願し、文具、玩具生活用品、生活雑貨などの卸・小売り業を行う会社を設立して生活用品、生活雑貨等小売店加盟事業を営みながら「」、「」、「」などの標章を使用した。

原告は被告のこのような行為に対してサービスマーク権侵害及び不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律の違反を根拠としてソウル西部地方法院に訴えを提起したところ、一審法院では原告の登録サービスマークは「다있다」(みんなある)という意味、あるいは日本語商標という観念を有しているのに対し、被告の使用標章は「다사세요」(みんな買ってください)の慶尚道の方言として容易に認識することができるので観念の面で明確に区分され、両商標が互いに類似しないことを理由として原告の請求を棄却した。これに対し、二審法院では一審判決を覆し、前後部分が共通していて(アルファベット2文字ずつ、ハングル1文字ずつ)外観が類似し、短い音節数の単語で比重が大きい最初の音節及び最後の音節が同一なので称呼も類似し、原告の登録サービスマークは日本語の「大創」に由来した単語で特別な韓国語の観念がないので観念を対比できない、としながら両商標が全体的に類似すると判断した。また、これに加え、原・被告の主顧客層が重なり、売り場の雰囲気や製品の陳列方式も類似する点などを考慮して原告の控訴を認容し、約1億3千万ウォン(約1,300万円)の損害賠償も認めた。本件はこのような二審法院の判決に対して被告が提起した上告訴訟事件である。

判決内容

  1. サービスマーク権侵害の法理
    他人の登録商標と同一または類似の商標をその指定商品と同一または類似の商品に用いる行為はその商標権に対する侵害行為となる。ここで、類似商品の使用行為に該当するかに対する判断は2つの商標が当該商品に関する取引実情に基づいてその外観、呼称、観念などによって取引者や一般需要者に与える印象、記憶、連想などを全体的に総合するとき、2つの商標に時と場所を異にして接する取引者や一般需要者が商品の出所について誤認・混同するおそれがあるか否かの観点からなされなければならない(大法院2007年2月26日言渡2006マ805決定、大法院2013年3月14日言渡2010ド15512判決など参照)。また、このような法理は商標法第2条第3項によりサービスマークの場合にも、同様に適用される。
  2. 一審及び二審法院での判断
    上記のような法理に従って一審法院と二審法院で両商標の外観、称呼、観念の面で類否を判断した内容を見ると、次の通りである。
    一審 二審
    外観 図形の結合の有無、文字体の差及び文字の陰影処理の有無により非類似 前後部分が共通(アルファベット2文字ずつ、ハングル1文字ずつ)、文字体や陰影などのささいな差は離隔的、直観的観察時に目に付く部分ではないので類似
    称呼 3音節のみからなる短い音節数の単語で中間音節の発音が明確に異なり非類似 短い音節数の単語で比重が大きい最初と最後の音節の呼称が同じなので類似
    観念 原告標章は韓国語の「다있소」(「みんなある」を意味するハングル)を連想させる一方、被告標章は「다 사세요」(「みんな買ってください」を意味するハングル)の方言として認識するので非類似 原告標章は日本語「大創」に由来した単語で特別な韓国語の観念がないので観念対比が困難。たとえ一審判断のように観念されるとしても種々の生活用品などを販売するという趣旨が同じで観念類似
  3. 大法院の判断
    大法院は二審判決を支持しながら、被告のサービスマークのうち「」は「」「」部分のみで呼称、観念されることができ、原告の「」「」と被告らの「」「」を対比すると、ハングル標章の場合、第1音節と第3音節の文字が同一の3文字で構成されており、アルファベット標章の場合、前後部分の各2文字ずつ4つの文字が共通しており、原告の登録サービスマークは国内に広く認識されているサービスマークに該当するという点を総合して考慮すると、被告らが使用するサービスマークは中間音節の差にもかかわらず、一般需要者に原告の登録サービスマークを連想させることができ、原告と被告が営むサービス業が生活用品などの販売店と一致し、取り扱う商品の品目と陳列及び販売方式まで似ていて両者を混同する可能性がさらに高くなるという点までを全て考慮すると、被告らがそのサービスマークを使用する行為は原告の登録サービスマーク権に対する侵害行為に該当すると判断した。

専門家からのアドバイス

被告が使用したサービスマーク「다사소(ダサソ)」は、韓国語を母国語とする需要者には「みんな買ってください」という意味を有する慶尚道の方言として容易に認識されることから、全く異なる概念を創出しており、一審判決の結論もある程度肯定できる側面もあるが、二審[1]及び大法院では、原告の周知、著名な登録サービスマークに対する被告の模倣行為への制裁及び商標権者の権利に対する積極的な保護により重点をおいて両商標が類似すると判断したもので、単なる標章の類否以外に、取り扱う商品の品目や店舗での陳列や販売方式の類否までが加味されたのである。このように、審級によって判決の結論が変わるケースがしばしば見られるが、商標自体の類似性はもちろん、実際の使用態様も商標類否判断の結果に影響を与える場合もあるので、単に両商標の類否のみが争点になるような事件であっても事案全体を考慮しなければならないという点でその結果を予測することは容易ではないことを忘れてはならない。

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