知財判例データベース 複数回の公開行為中、最初の公開行為についてのみ公知例外主張をした場合の後続公開行為の先行技術適否
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 原告:個人 vs 被告:特許権者
- 事件番号
- 2014ホ5053登録無効(特)
- 言い渡し日
- 2015年02月16日
- 事件の経過
- 大法院上告後に審理不続行棄却
概要
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公開行為が複数回あり、最初又は一部の公開行為についてしか公知例外主張をしなかったとしても、その残りの公開された発明についても新規性喪失の例外規定が適用されると解釈することが相当である。
事実関係
被告は特許第1355092号の特許権者であって、2013年5月13日にYouTubeに本件動画を掲示し(1次公開行為)、被告の従業員は2013年9月15日の勤務時間中に被告の指示に従って本件動画を掲示し(2次公開行為)、さらに被告は2013年9月17日にYouTubeにアップした本件動画を被告のウェブサイトにリンクさせた(3次公開行為)。被告は2013年10月25日に本件特許発明を出願しながら、1、2次公開行為については新規性喪失の例外趣旨を記載して証明書類を提出した。これに対し、原告は2次公開行為が発明者及び出願人によるものではないので、新規性喪失の例外規定の適用を受けることはできず、3次公開行為については新規性喪失の例外主張をしなかったので、特許発明の進歩性判断のための先行技術とすることができると主張した。
判決内容
特許法第30条第1項第1号の公知例外規定の適用対象となる公開行為は、特許を受けることができる権利を有する者の意思による直接的または第三者を通じた公開行為をいう。また、特許出願当時、同一の発明が何回か公開されている場合、出願人がそのうち最も早く公開された発明についてしか期間内に公知例外主張をしなかったとしても、そこにはその初回以降に公開された同一の発明についても公知例外主張をしようとする意思が当然含まれていると解釈することが自然で、特許発明の公開においては、その性質上、ある時点における限定的行為ではなく、ある程度継続する状態を予定しているものであり、最初の時点で公開された発明についてしか公知例外主張をしないとしても、これと同一の発明であって、それ以後、継続的に公開される発明についてまでその効力を及ぼす必要があるので、何回か公開された発明のうち最初に公開された発明について出願人が公知例外主張をすれば、その残りの公開された発明についても新規性喪失の例外規定が適用されると解釈することが相当である。
本件について詳察すると、2次公開行為は被告が従業員を通じて公開したものであって、公知例外規定の効力が及ぶ適法な公開行為というべきである。また、被告が本件特許発明を出願しながら本件動画に対する1、2次公開行為について公知例外主張をしたので、これによってその後になされた3次公開行為により公開された比較対象発明3についても新規性喪失の例外規定が適用されるというべきで、本件動画に含まれた比較対象発明3は、本件特許発明の進歩性を否定するための先行技術とすることはできない。
専門家からのアドバイス
韓国の現行の審査指針書では、公開行為が複数回あり、最初の公開行為についてしか公知例外主張をしなかった場合、最初の公開行為が後続公開行為を当然予定しており、上記複数回の公開が互いに密接不可分の関係にあるとき(例えば、学会での論文発表と論文集配布などのような場合)にのみ後続公開行為を先行技術としないと規定しているが、本判決は現行の審査指針書よりは緩和された見解を示している。
このような特許法院の見解は、出願段階での補正可能な期間及び登録設定料納付まで新規性喪失の例外主張と証明をすることができるように特許法が改正されたこととのバランスを取ったものとも解釈できる。即ち、改正特許法によると、出願段階では拒絶理由等で自己発明の公開が問題になった場合、その段階で新規性喪失の例外主張と証明をすることにより、新規性喪失が治癒される一方、登録以後は治癒方法がないという問題があった。本判決では、特許発明の公開においては、その性質上、ある時点の限定的行為ではなく、ある程度継続する状態を予定しているものと判示し、最初の分について新規性喪失の例外主張をした場合には、それ以降の公開については主張をしなくても最初の分の主張の適用を受けるものとし、特許権者に有利に判断したという点で有用に活用できると思われる。ただし、基本的には、登録以後の段階でも無効審判などで新規性喪失が問題となったときに治癒できるように、手続上の対策を準備しておくことがより望ましい。
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