知財判例データベース 取引書類、名刺等にのみ表示され、指定商品に表示されていない商標が商標法第73条第1項第3号所定の商標の「使用」に該当するかどうか

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院
当事者
原告 韓国の個人 vs. 被告 テレックスコーポレーション
事件番号
2014ホ2849
言い渡し日
2014年09月25日
事件の経過
確定

概要

441

取引書類と名刺、ウェブサイトに商標を表示し、指定商品に直接使用していない場合、韓国商標法で[1]規定する商標の使用に該当するかに関連して、本件登録商標が本件指定商品(クレーン)と関連して表示されているか分からないため、商品の出処を表示するために使用されたとは見られないので、商標法第73条第1項第3号によりその登録は取消されなければならない。

事実関係

被告は2012年12月12日に原告を相手取って本件登録商標「」が取消審判請求日前の3年以内に国内で使用されていないことを理由とし、商標法第73条第1項第3号所定の不使用取消審判を請求した。特許審判院は被告の請求を認容する審決をし、これを不服とした原告は本件審決取消訴訟を特許法院に提起するに至った。

判決内容

原告は取消審判請求日前の3年以内に韓国内での指定商品であるクレーンの見積書、取引明細書、輸入申告済証等の「取引書類」と「名刺」、原告が代表理事である訴外会社の「ウェブサイト」(http://www.terex.kr)に本件登録商標を表示した事実が認められる。ところが、下記理由により、上記証拠によって本件登録商標が審判請求日前の3年以内に国内で正当に使用されたとは見難い。

  1. 見積書等の取引書類には「」という本件登録商標が含まれた標章が表示されているだけで、取引書類の品目欄には「リンデリーチスタッカ形式C4531TL/5」、輸入申告済証の「品名」欄と「取引品名」欄にはLINDE REACH STACHERと記載されている。
  2. 訴外会社の他のウェブサイト(http://www.linde.co.kr)には「訴外会社がリンデの韓国代理店として1996年より1トンから52トンに至る多様な物流装備を供給管理している」と記載されており、上記ウェブサイトの装備提案書部分には「装備名リーチスタッカ、形式C4531TL/5、製作社Linde」と記載されているが、同ウェブサイトにはの標章以外に本件登録商標は表示されていない。
  3. 訴外会社が販売したクレーンはLindeの標章が表示された状態で販売されたと見られるが、クレーンのような数億ウォンに至る高価商品は、上記Lindeの標章が出所表示や品質機能を表示するのに絶対的な機能をすると見られる。
  4. 訴外会社のウェブサイト(http://www.terex.kr)には、本件登録商標の表示とともに「テレックス、クレーン専門家」、「Terex, a solution to lifting equipment」と小さく表示されているだけで、本件登録商標がクレーンと関連して表示されているか分からない。
  5. 訴外会社の名刺の左側にという表示があるが、本件登録商標がクレーンと関連して表示されているか分からない。
  6. その他、原告は、本件登録商標がクレーンに直接表示された証拠を提出していない。

従って、本件登録商標がクレーンの出所を表示するために使用されたと見るだけの資料がないので、本件登録商標は、商標法第73条第1項第3号によってその登録が取り消されるべきである。

専門家からのアドバイス

商標法第2条第1号第7号で規定する商標使用行為は、各目のいずれかに該当すれば足りると規定されているので、文言だけ見れば本件登録商標は同項ハ目の「商品に関する広告、定価表、取引書類等に商標を表示して展示または頒布する行為」、即ち広告行為に該当すると見る余地もあるといえる。さらに、商標権者は図案化された登録商標をウェブサイトや名刺等にそのまま表示しているという点を見ればなおさらそうである。しかし、法院は、商標使用に関する商標法の条項を文言そのまま適用するのではなく、商標の本来の機能に立ち返り、果してその商標が「出所表示や品質保証表示」の機能を発揮しているかを考慮し、商標法第2条第1号第7号各目を総合的に判断した。即ち、どんなに取引書類やウェブサイト、名刺等に登録商標と同一の標章が表示されていても、同法イ目所定の「商品または包装に商標を表示する行為」が全くなされていない場合、それにより登録商標がいかなる商品に表示されているものか需要者が分かり得ない状態に置かれているならば、その標章は「商標」といえないだけでなく、上記のような広告行為(ハ目)は、登録商標に関する真正な広告行為ということができないと判断したのである。同判決は今後韓国での商標使用や不使用取消審判請求時には大いに参考としたい判決である。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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