知財判例データベース ピンク色の単一色のみからなる商標が特定の指定商品について識別力を有するか否か
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 原告A vs.被告(特許庁長)
- 事件番号
- 2014ホ5206
- 言い渡し日
- 2014年11月21日
- 事件の経過
- 確定(大法院審理不続行棄却)
概要
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ピンク色の単色である標章は、生活の中でよく見られる単純なピンク色として認識され、その意味以上に認識されたり、特に注意を引くほどとは見られず、このようなピンク色は、特定人に独占排他的に使用させることは不当であり、よって簡単でありふれた標章のみからなる商標なので、商標法第6条第1項第6号に該当し、需要者が何人の業務に係る商品を表示するものであるかを識別できない標章として同条同項第7号にも該当する。さらに、提出された証拠は、需要者間に特定人の商品を表示するものと認識されていたと認めるに足りず、出願商標が商標法第6条第2項による使用による識別力を取得したと見ることもできない。
事実関係
原告は、出願商標「」について商品類区分第10類のImplants for osteosynthesis, orthoses, endoprostheses and organ substitutionsなど(人工関節等の人工材料からなるインプラント)を指定し、2012年1月18日に韓国を指定してマドリッド国際出願をした。これに対し、特許庁の審査官は2013年4月3日付で、出願商標はピンク色の単一色のみで構成された簡単でありふれた標章として商標法第6条第1項第6号に該当し、全体的に特別顕著性が不十分なので商標法第6条第1項第7号にも該当し、使用による識別力(同法第6条第2項)も取得できていないとして拒絶決定をした。
原告は、同拒絶決定に対して特許審判院に不服を申し立てたものの、特許審判院は2014年5月23日付で出願商標について特許庁と同じ理由で棄却審決をした。これを受け、原告は、特許法院に不服を申し立てながら、出願商標は取引界であまり見られない独特のピンク色(米国ペントン社で製作した色票集コードPANTONE 677 C)が結合しているところ、これは指定商品の股関節ボールなどで一般的に用いられる白色や灰色などとも区分され、自他商品識別力があるだけでなく、使用による識別力も取得していると主張した。
判決内容
- 商標法第6条第1項第6号及び第7号に該当するか否か
出願商標は、ピンク色の単一の色彩で構成された標章であり、生活の中でよく見られる色彩として単にピンク色として認識されるはずで、その意味以上に認識されたり、特に注意を引くほどとは見られない。また、ピンク色はよく使用される色彩なので、誰でも使用する必要があり、これを特定人に独占排他的に使用させることは不当であるといえる。従って、本件出願商標は簡単でありふれた標章のみからなる商標なので、商標法第6条第1項第6号に該当し、需要者が何人の業務に係る商品を表示するものであるかを識別できない標章として商標法第6条第1項第7号にも該当する。 - 商標法第6条第2項に該当するか否か
認定事実を列挙すれば、(1)原告会社に関するインターネット掲示物に、全ての人工関節メーカーで用いるセラミック関節面はドイツのセラムテック(原告会社)で独占供給しているという記事、3世代セラミックも4世代セラミックも同社で特許を保有しており、それぞれBiolox Forte、Biolox Deltaという商品名でOEM方式により輸出されているという記事が掲載されている。(2)Googleのイメージ検索で、biolox delta及びceramic hip joint ballを入力すると、丸い溝が形成された半球状からなる立体的形状に明暗が加味されたピンク色の人工股関節用ボール製品が多数検索される。(3)原告会社は、セラミック関連物品についてヨーロッパ共同体(2011年)、ドイツ認証協会(2013年)からそれぞれ認証を受けるなど、多数の品質認証を獲得した。(4)原告会社は、関節移植のための高強度セラミック付属品において卓越した成果が認められ、バイエルン革新賞を受賞した(2006年)。(5)原告商品についての関連業界の評価資料に「BIOLOX deltaはBIOLOXの製品群の中で最新素材であり、混合酸化セラミックとして従来より破裂に強く、優れた耐腐食性を備えていて、無限の生体適合性を有している。市場投入以来、世界で160万個のBIOLOX deltaのボールヘッドと70万個の挿入物(2012年7月末基準)が人工関節手術に使用された」という内容が掲載されている。(6)原告会社はドイツ整形外科及び整形外科手術協会と共同で1996年からバイオセラミックス分野、人工関節置換・摩耗などと関連して優れた研究や開発をした者にHeinz-Mittelmeier研究賞を授与してきた。(7)原告会社はSpectromed GmbH、INTRAPLANT GesmbH、FALCON Medicalなど多数の取引先に物品を供給している。
原告が提出した上記認定事実は、自社の紹介やBIOLOX delta製品の優秀性に関する内容が大部分で、出願商標の使用期間、使用回数及び使用の継続性、その商標が付された商品の生産販売量及び市場占有率、広告宣伝の方法、回数、内容、期間及びその金額などを客観的に確認することができる内容が不十分である。このような事情だけでは出願商標がその拒絶決定日または審決当時、需要者間に特定人の商品を表示するものと認識されていたと認めるに足りず、他にこれを認める証拠がない。従って、出願商標が商標法第6条第2項による使用による識別力を取得したと見ることもできない。
専門家からのアドバイス
色彩のみからなる商標は、2007年7月1日に施行された改正商標法で導入されて以来、まだ単一の色彩のみからなる商標の登録は認められたケースがない。商標審査基準では、商品に使用された色は出所表示というよりもデザイン的要素として需要者に認識されるはずなので、色彩のみでなされた商標については、その色彩を特定の商品やサービスに継続して用いることによって需要者がその色彩を特定の商品やサービスの出所表示として認識するようになった場合、即ち、商標法第6条第2項で規定する使用による識別力を獲得した場合に登録を受けることができると規定していて、一貫してセカンダリーミーニングの取得を厳しく要求している。
立体商標[1]と同様に厳密に商標法の規定のみに照らしてみると、商標法には色彩商標であるとして必ずセカンダリーミーニングを取得しなければならないと規定しているわけではない。本件でも、原告は出願商標の色彩があまり見られないピンク色であることを強調して、それ自体で識別力があることを主張したが、法院は出願商標について、ありふれた色彩であり、その使用が公共に開放されるべきであるという理由を挙げて、識別力を拒絶した。単一色の色彩は視覚でのみ認識され、比較的単純なため、まだ法院はその他の非典型的商標よりも厳格な「ものさし」でその識別力を判断しているものと見られる。またこのような法院の見解に照らしてみると、韓国内における相当量の使用証拠を通じてセカンダリーミーニングの取得を主張しなければならず、それが認められてはじめてその色彩商標登録が可能になる。本件判決文でも示しているように「自社の紹介や製品の優秀性に関する内容」ではなく、「出願商標の使用期間、使用回数及び使用の継続性、その商標が付された商品の生産販売量及び市場占有率、広告宣伝の方法、回数、内容、期間及びその金額などを客観的に確認することができる内容」がくれぐれも重要であることを商標実務者は認識すべきである。
注記
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本件と同じ出願人が提起した特許法院2014年9月19日宣告2014ホ2344(ジェトロ判例データベースに収録済み)及び大法院2015年2月26日宣告2014フ2306では、セカンダリーミーニングを取得していないありふれた立体商標でも、この立体に表記されたBIOLOX deltaという文字には識別力があり、これを含めて全体として立体商標の識別力を判断すべきという判決が下されているので参考とされたい。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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