知財判例データベース 本来は特殊形状の商品(うんち形状パン)であっても、それが広く知られている状況下では、その商品の形状そのものを用いた立体商標は商標登録を受けることができない
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 原告vs.被告(特許庁長)、被告補助参加人
- 事件番号
- 2013ホ9263判決
- 言い渡し日
- 2014年05月29日
- 事件の経過
- 請求棄却
概要
422
「うんち」の形状と模様をモチーフにした本件出願商標は、その指定商品のうち「パン」などに使用される場合、一般需要者に「うんち形状のパン」または「うんちパン」として直感されるものなので、商標法第6条第1項第3号により登録を受けることができないと判断した事例
事実関係
本件商標は、出願日が2011年9月30日、出願番号が40-2011-0053603の立体商標である。
商標の指定商品は「商品類区分第30類の菓子、パン、アイスクリーム、餅(細部品目は省略)」などである。特許庁の審査官は、2012年11月 19日、本件出願商標が指定商品のうちパン類について使用される場合には、(1)その商品の形状または包装の形状を普通に用いられる方法により表示した標章のみからなる商標として商標法第6条第1項第3号の商標の不登録事由に該当し、(2)需要者が何人かの業務に係る商品を表示するものであるかを識別することができない商標として商標法第6条第1項第7号の商標の不登録事由に該当し、(3)パン類と関連がない指定商品に使用する場合には、標章の形状によりパン類と誤認させるおそれがある商標として商標法第7条第1項第11号の商標の不登録事由に該当するという理由で、その登録を拒絶した。
これに対し、原告は、特許審判院に上記拒絶決定の取消を請求し、特許審判院は、本件出願商標はその指定商品のうちパン類等に使用される場合、その形状を普通に用いる方法で表示した標章のみからなる商標として商標法第6条第1項第3号に該当することを理由に原告の審判請求を棄却する本件審決をした。原告はこれを不服として本件訴えを提起した。
判決内容
立体商標の場合、その形状や模様が取引社会において当該指定商品の一般的な形態を示すものと認識されるときには商標法第6条第1項第3号に該当し、これは立体商標の標章が当該指定商品の一般的な形態に一部変形を加えたり追加の装飾をしたとしても、全体的な形状や模様の特徴を通じて取引社会において通常採用できる範囲を逸脱しないものと認識されるときには同様と見るべきである。
本事案の場合、「うんち形状のパン」は、被告補助参加人などが2008年11月頃から製造・販売してきており、その斬新さと独自性によりメディア報道やインターネットを通じて広く知られ、流行に敏感な需要者の好奇心と体験欲求などにより「うんち形状のパン」に関する認識が急速に拡散した結果、本件出願商標の拒絶決定日である2012年11月 19日当時は一般需要者に「うんち形状のパン」がよく知られていたと見るのが妥当である。従って、「うんち形状のパン」を原告のみの立体商標として登録することはできない。
専門家からのアドバイス
本件は立体商標の登録についての事案である。韓国は、非伝統的商標として立体商標を1997年8月の商標法改正を通じて認め、1998年3月から商標登録が可能になった。WIPO(世界知的所有権機関)の商標法常設委員会は、2006年に位置商標などの非伝統的商標に関する論議をはじめて以降、2008年12月には位置だけでなく、立体、色彩、ホログラム、動作、音、においなどの非典型商標の特定方法について合意した。しかし、このような立体商標制度の導入に関連した論議がなされたにもかかわらず、立体商標の登録適格や類否判断などについての判断基準が設けられず、これに関する出願は活発に行われなかった。
本件判決は、うんち形状という、立体形状を商標として出願した事案であり、立体商標の商標登録と関連した事件として注目に値するが、判断手法自体は従来型の商標に対するものと相違はない。本件で問題となった商標法第6条第1項第3号によると、指定商品の品質・効能・用途・形状などを普通に用いる方法で表示した標章のみからなる商標は、その商標登録を拒絶するように規定されているが、その規定の趣旨は、上記商標法第6条第1項第3号に列挙された内容を表示する標章は商品の特性を記述する目的で表示されている記述的標章として、自他商品を識別する機能を喪失している場合が多いだけでなく、仮に商品識別機能があるとしても、商品取引上、誰にでも必要な表示なので、ある特定人にのみ独占的に使用させることは公益上妥当でないためである(大法院2004年6月 25日言渡2002フ710判決等)。
日本企業としては、本件について、立体形状を商標とする場合、特許法院は一般に認めていないと見るよりは、既に被告補助参加人が特定地域でうんち形状のパンを販売しており、このような事実がメディアなどを通じて広く知られている状況において、原告が商標登録されていないことを奇貨として商標登録を試みたとみられる事案の特性上、本件出願商標は、特定人に独占させるべきではなく、商標法第6条第1項第3号により登録を受けることができないという趣旨として見るのが正しいといえよう。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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