知財判例データベース 「ダサソ」は登録サービスマーク「ダイソー」や「DAISO」と類似しそのサービスマーク権を侵害するか否か

基本情報

区分
商標
判断主体
ソウル高等法院
当事者
原告 VS. 被告
事件番号
2013ナ2026249
言い渡し日
2014年06月19日
事件の経過
大法院上告中

概要

429

他人の登録サービスマークと類似のサービスマークをその指定役務と同一または類似の役務に使用する行為は、サービスマーク権を侵害したものとみなす(商標法第2条第3項、第66条第1項第1号)。一方、サービスマークの類否は、両サービスマークの外観、称呼、観念などをさまざまな側面から総合的に観察し、取引上一般需要者が取引者やサービスマークに対して感じる直観的な認識を基準として、その役務の出所に対する誤認、混同のおそれがあるかによって判別されなければならない。

事実関係

原告は、2001年から「다이소」(ダイソーのハングル)という商号で生活用品雑貨などを扱う小売店のフランチャイズビジネスを展開しており、サービスマーク「」、「」(以下「原告標章」)のサービスマーク権者である。2013年基準で韓国内だけでも900カ所あまりの「ダイソー」加盟店を保有、年間売上高は約8,600億ウォン(約860億円)に上る。一方、被告は、「」、「」(ダサソのハングル)、「」(以下「被告標章」)標章を用いて生活雑貨小売店を運営している。原告は、被告らを相手取ってソウル西部地方法院(原審)にサービスマーク権侵害差止及び損害賠償を請求したところ、1)両標章は、字体の差及び文字の陰影処理の有無によって外観が非類似であり、2)呼称面で、原告標章は「ダイソ」、被告標章は「ダサソ」として、最初の音節と最後の音節が同一ではあるが、3音節しかない短い音節数の単語で中間の音節の発音が明確に異なり、呼称も非類似であり、3)原告標章は、韓国語の「다있소」(「みんなある」という意味のハングル)を連想させ、又は原告標章の由来を知る者には日本語の感じを与える一方、被告標章は「다사세요」(「みんな買ってください」という意味のハングル)という意味の慶尚道の方言と認識されるので、観念の面でも非類似であると判断するとして、原告の請求を全て棄却したため、原告はソウル高等法院に控訴した。

判決内容

  1. 外観、呼称、観念による両標章の対比
    1. まず、被告標章は図案部分を除いて「DASASO」や「다사소」のみに分離観察が可能で、その外観面において原告標章と被告標章は前と後の部分が共通する(アルファベット2文字ずつ、ハングル1文字ずつ)かたちで配列されているので、このような文字の全体的な構成と輪郭を離隔的、直観的に観察すると、外観が類似して見え、文字体や陰影などのささいな差は離隔的、直観的観察時に目に付く部分ではない。
    2. 呼称面で、両標章はいずれもハングル標章を基準に発音されると見られ、いずれも3音節で構成されているが、そのうち短い単語の発音で大きな比重を占める最初の音節と最後の音節の呼称が完全に同じであり、強く発音されない中間の音節にのみわずかな差がある。
    3. 観念面で、原告標章は日本語の「大創」に由来する単語で、特に韓国語の観念はないが、被告標章は「みんな買ってください」という意味の方言と観念される余地があり、同じ観点から原告標章も「すべてのものがみんなある」という趣旨で観念される余地があるところ、この場合、ありとあらゆる生活雑貨を販売するという趣旨が同じで観念も類似すると見られる。
  2. サービスマーク権侵害の成立

    このように原告と被告の標章は外観、呼称などが類似するうえ、被告らの営業は原告標章の指定役務と同一または極めて類似する点、また、原告の売上高、加盟店数などから見て、原告標章は韓国内で既に広く認識されていると判断される点、原告と被告らが取り扱う物品・顧客層が互いに重なり、被告らの売り場の雰囲気や製品の陳列方式も原告の売り場と非常に類似するので、被告らには原告標章が獲得した周知性に便乗しようという意図があると推断でき、これによって需要者は被告の役務が原告と出所が同じであるか少なくとも関連性があると誤認混同するおそれが非常にある。

    上記のような事情に照らしてみると、被告らは原告のサービスマーク権を侵害していると見るのが妥当であり、その侵害行為によって得たものと認められる利益、計1億3,000万ウォン(約1300万円)余りを原告に損害賠償すべきである。

専門家からのアドバイス

3音節の文字で構成された、音節数が比較的短い標章の類似性について、これまで法院は、呼称が異なる部分が強く発音されるか否かに重点をおいて判断してきており、両標章が「사(サ)」と「이(イ)」という中間の音節が明確に異なり、また、外観のデザインが異なる上に、観念も「ぜんぶ買ってください」と、「ぜんぶあります」若しくは日本語由来の原告標章として明確な違いがある点を挙げて両標章の誤認・混同可能性を否定した一審判決に多少うなずける面もなくはなかった。‎

これに対して、二審の高等法院では、称呼・外観・観念ともそれぞれ類似するとして正反対の判断をしたわけであるが、二審でこれらと併せて重点的に見た部分は、需要者の出所混同に関する部分であるといえる。即ち、原告標章の周知性や被告らの営業方式・商品配列方式などにより需要者が出所を混同しやすいという点を汲み、被告の模倣の意図と商標権者の保護により重点をおいたのである。

とかく、一審法院では機械的、表面的、教科書的な判断がなされがちであり、上級審にあがるに従って標章の単純な類否以外の「様々な側面」から総合的に事実関係が加味されるようになることが多いものではあるが、一審と二審で完全に相反する判示がなされた点からもわかるように本事案の結果がどのようになるか、今後の大法院の判断が注目される。

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