知財判例データベース 不使用取消審判は請求日や登録取消を求める指定商品を異にして同じ登録商標に対し複数回請求することができる
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 株式会社LG生活健康(原告、上告人)v. コウェイ株式会社(被告、被上告人)
- 事件番号
- 2012フ3220
- 言い渡し日
- 2013年02月15日
- 事件の経過
- 確定
概要
379
商標法第73条第1項第3号 に基づき、登録商標を3年以上不使用したことを理由とした商標登録取消審判を請求する場合、先に請求した商標登録取消審判が継続中であるとしても、審判請求人としては、登録取消要件の一部をなす商標不使用期間の逆算起算点となる審判請求日や、登録取消を求める指定商品の範囲を異にして改めて商標登録取消審判を請求できる利益があり、両審判請求に共通して一部指定商品が含まれていたとしても、新しい審判請求が不適法とはいえない。
事実関係
被告は、特許審判院に対し、香水などの33個の商品に対し、不使用を理由とし、商標登録取消審判を請求した。その後、当該審判事件が確定する前に、指定商品が重複する商標登録取消審判を特許審判院に改めて請求したものが本件事件である。そして、原告は、この事件の取消審判請求が商標法第73条第4項[1]の立法趣旨に反するため、不適法であると主張したが、特許法院は、原告の主張を退けたため、原告は、それを不服として大法院に上告を提起した。
判決内容
法院は、商標法において、登録商標の指定商品が2以上ある場合には、一部指定商品について商標登録取消審判を請求可能と規定し、また、被請求人が当該審判請求に関する指定商品のうち1以上に対し、その審判請求日前3年以内に国内において正当に使用したことを証明しない限り、当該取消審判請求と関係する指定商品について商標登録の取消を免じられないと規定しているため、同時に数個の指定商品に対して審判請求を行った場合には、その審判請求の対象である指定商品を不可分一体に扱い、全体を一つの請求としてみなし、指定商品のうち一つの使用が証明されれば、その審判請求は、全体として認容されないだけであって、使用が証明された指定商品の審判請求のみ棄却し、残りの請求を認容するものではないうえ、使用が証明された指定商品にのみ審判請求の一部取消が許容されることもないため、先に請求した商標登録取消審判が継続中であるとしても、審判請求人としては、登録取消要件の一部をなす商標不使用期間の逆算起算点になる審判請求日や登録取消を求める指定商品の範囲を異にして改めて商標登録取消審判を請求する利益があると判示した。そして、この場合、それぞれの審判に共通して含まれた一部指定商品については、商標権者に重複してその使用事実の証明責任を負担させることになるとしても、指定商品のうち一つの使用を証明しさえすれば、その審判請求の対象である指定商品全体の商標登録取消を免じられる以上、その程度の証明責任を負うだけであり、後に請求された取消審判が商標法第73条第4項の立法趣旨に反するものとして不適法であるとはいえないとした。これにより、本件取消審判請求について、先の別件取消審判請求と審判請求日が異なり、登録取消を求める指定商品の範囲も同一ではない以上、不適法だとみなし難いと判示し、原告の上告を棄却した。
専門家からのアドバイス
これまで、指定商品が多数ある登録商標に対して3年以上の不使用を理由とする取消審判を請求した場合、その指定商品のうち一つでも使用事実が認められればその取消審判全体が棄却されなければならず、取消審判を請求した以降は指定商品の一部だけについての取下げも許容されないというのが大法院判例の見解である。よって、取消審判請求人としては、確実に取り消せる指定商品だけに絞り込み審判請求を行うなど、慎重を期する必要があった。
しかし、本判決で明示されたように、取消の対象となる指定商品全体が同一でなければそのうち一部が重複していても同じ登録商標に対して取消審判を複数回請求することができるということであれば、審判請求人側としては、取消対象の指定商品の選択に自由度が増したことになる。逆に商標権者としては、一部の指定商品に対し使用事実を立証して取消を防いだとしても、指定商品を一部異ならせた新たな取消審判が提起される可能性もあるということになる。
いずれにしても、本判決は、実務に大きな影響を与えるものであり、注意を要する。
注記
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商標法第73条(商標登録の取消審判)第1項第3号に該当することを事由として取消審判が請求された場合には、被請求人が当該登録商標を取消審判請求に関係する指定商品のうち1以上に対し、その審判請求日前3年以内に国内に正当に使用したことを証明しない限り、商標権者は、取消審判請求と関係する指定商品に関する商標登録の取消を免れない。ただし、被請求人が使用しないことについて正当な理由を証明したときには、この限りではない。
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