知財判例データベース 専用実施権者が登録されていない制限事項に違反し特許発明を実施したとしても特許権侵害は成立しないとした事例

基本情報

区分
特許
判断主体
大法院
当事者
○○○(被告人)v. 検事(上告人)
事件番号
2011ド4645
言い渡し日
2013年01月24日
事件の経過
確定

概要

377

専用実施権の設定契約により、専用実施権の範囲について特別な制限を設けたとしても、登録を行わなければその効力は発生しないため、専用実施権者が登録されていない制限に違反し特許発明を実施したとしても特許権侵害は成立しない。

事実関係

被告人は、訴外会社から名称を「空気浄化剤」とする特許権について専用実施権の設定を受け、また、訴外会社の承諾なしにこの特許を任意に使用しないという趣旨の取決めを行ったが、こうした専用実施権の行使に関する制限事項を特許庁に登録していなかった。被告人は、専用実施権の設定を受けた後、上記の契約に違反して訴外会社の承諾を得ずにこの特許を任意で実施したため、検事は、被告人を特許権侵害による特許法違反罪として起訴したが、原審では被告人に無罪を言渡たため、検事は、大法院に上告した。

判決内容

法院は、特許法第101条第1項第2号において「専用実施権の設定・移転(相続その他一般承継による場合を除く)・変更・消滅(混同による場合を除く)、または処分の制限」に関する事項について、登録を行わなければ効力が発生しないと規定しているため、専用実施権の設定契約において専用実施権の範囲について特別な制限を設けたとしても、登録を行わなければ効力は発生しないものであり、専用実施権者が登録されていない制限事項に違反して特許発明を実施したとしても、専用実施権違反を実施権者に負わせることはできず、特許権の侵害が成立するものではないと判断し、被告人に無罪を言渡た原審を維持し、検事の上告を棄却した。

専門家からのアドバイス

特許権に対する通常実施権の場合は、当事者間の合意だけでも効力が発生するため、その登録は、第三者に対する対抗要件に過ぎないが、特許権の専用実施権は、設定・移転・変更・消滅、または処分の制限などにおいて登録が効力発生の要件として規定されている。そのため、その登録をしていない場合には、当事者間の一般的な民法法上の効力は認められるとしても、特許法による保護を受けることができないということを大法院で再確認したもので法的解釈において異論の余地はないものであろう。‎

例えば、権利者が外国会社である場合、専用実施権者・専用使用権者である韓国会社に委任状や同意書などの書類一式を渡し、専用実施権・専用使用権の設定登録手続を一任することがあるが、登録特許権をより効果的に保護するためには登録が必要な事項がどのようなものであるか事前に綿密に検討し、くれぐれも設定登録された内容に抜け落ちやミスがないか権利者自身が現地代理人などの専門家を通じて十分に確認すべきである。‎

なお、日本の特許法では、平成23年法律第63号により、通常実施権の第三者に対する対抗要件として登録の必要ななくなったが、韓国特許法では、上述のとおり登録しないと第三者に対抗できないため、注意を要する。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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