知財判例データベース サービスマーク権者が提供する無償サービスでの使用は商標法が定めたサービスマークの使用に該当しない
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- ○○○(原告)v. ワールドカルチャーオープンアイエヌシー(被告)
- 事件番号
- 2012ホ2197
- 言い渡し日
- 2012年08月23日
- 事件の経過
- 上告
概要
360
商標法上、サービスマークの登録を受けて使用できるサービス業とは、他人の利益のためにサービスを提供しその代価を受けて自身の収入にすることを業とするものでなければならず、サービスマーク権者が無償でサービスを提供し、そこにのサービスマークを使用している場合には、商標法が定めたサービスマークの使用には該当しない。
事実関係
被告は、指定サービス業を会議準備及び進行業、文化的及び教育的目的の展示会組織業、教育地図業などとする本件サービスマーク[1]の登録サービスマーク権者であり、その定款に非営利機構という点が明示されている。原告は、被告を相手に本件サービスマークがその指定サービス業のいずれかについてサービスマーク権者、専用使用権者及び通商使用権者のいずれの者によっても審判請求日前3年以内に正当に使われていなかったという理由で商標法第73条第1項第3号[2]により商標登録取消審判を請求したが、特許審判院は、被告が本件サービスマークをその指定サービス業のうち「会議準備及び進行業、文化的及び教育的目的の展示会組織業、教育指導業」に対して審判請求日前3年以内に国内で使用した事実が認められるとして原告の上記の審判請求を棄却する内容の本件審決を下し、原告は、これに不服として特許法院に審決取消訴訟を提起した。
判決内容
法院は、商標法第2条第1項第2号の「サービスマーク」について、サービス業を営む者が自己のサービス業を他人のサービス業と識別されるようにするために使用する標章をいうと規定しているだけで、このようなサービスマークの登録を受けて使用できる「サービス業」の定義に関しては商標法に何の規定も設けていないため、商標法の関連規定を体系的に検討して上記の「サービス業」の意味を確定すべきであるとした。そして、商標法第2条第1項第5号には、営利を目的としない業務を営む者がその業務を表象するために使用する標章として業務標章が規定されているところ、サービスマークが営利を目的としない業務も表象できるのであれば、商標法第2条第1項第2号に規定されたサービスマークと別途に業務標章を規定する必要はそもそもなく、そうすると、商標法上、サービスマークの登録を受けて使用できるサービス業とは、他人の利益のためにサービスを提供し、その代価を受けて自身の収入とすることを業とすることをいうものと解さなければならないと説示した。そして、本件の場合、被告や被告が通商使用権者と主張している文化団体などが被告主張のとおり本件サービスマークをその指定サービス業に使用したとしても、これらは、無償で提供されたサービスにおいて本件サービスマークを使用したものであるから、このような使用は、商標法が定めたサービスマークの使用には該当しないと判示し原審決を取り消した。
専門家からのアドバイス
本件判決で法院は、商標法は営利を目的としない業務を表象する「業務標章」を別途に規定しているという点を主な根拠として、サービスマークは「営利を目的とするサービス業」だけを表象すると判断しており、リーズナブルな判断であろう。しかし、法院は、本判決と同様にサービスマークの不使用が問題になった事案(特許法院2009ホ7277事件)において、登録サービスマーク[3](指定サービス業は美術館経営業など)の権利者が美術館を訪問した一般大衆に対し、当該サービスマークが表記されたハガキを有償あるいは無償で配布した事実をもって使用した実績を認めた例もあり、また、有償か無償かの考慮なくサービスマークとしての使用を認めた例もある。
更に、近年では多種多様なビジネスモデルが生まれ、新しい商品やサービス業が誕生していることも考え合わせると、「無償の商品やサービス」が直ちに商標やサービスマークの使用に該当しないと短絡的に解釈できない部分もあり、本件に対する上級法院の判断を鋭意注視する必要がある。
いずれにしても、韓国の商標法においては、営利を目的としない業務を表象するための標章として「業務標章」が別途設けられていることから、出願人においては、登録を受けようとする標章を使用する業務を今一度確認し、「サービスマーク」とすべきか、「業務標章」とすべきかを検討しなければならない。
注記
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商標法第73条(商標登録の取消しの審判)(1)登録商標が次の各号の一に該当する場合には、その商標登録の取消しの審判を請求することができる。
3. 商標権者・専用使用権者又は通商使用権者のいずれもが正当な理由ないのに登録商標をその指定商品に対して取消しの審判の請求日前に継続して3年以上国内において使用していない場合
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(Nam-June Paik Museum+そのハングル音訳)
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