知財判例データベース 顕著な地理的名称は、識別力のない記述的標章と結合したとき新たな観念等を形成しなければ登録が認められない

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
ザ・コカ・コーラカンパニー(原告、上告人)v. 特許庁長(被告、被上告人)
事件番号
2011フ958
言い渡し日
2012年12月13日
事件の経過
確定

概要

372

顕著な地理的名称などが識別力のない記述的標章などと結合されている場合、その結合により本来の顕著な地理的名称や記述的意味などを離れて新たな観念を生じさせたり新たな識別力を形成するものでなければ、依然として商標不登録事由である顕著な地理的名称のみからなる標章に該当する。

事実関係

原告はコーヒー豆などを指定商品として本件出願商標[1]を商標登録出願したが、特許庁は本件標章が顕著な地理的名称(商標法第6条第1項第4号)かつ性質表示標章(商標法第6条第1項第3号)に該当し、その他に需要者が何人かの業務に係る商品を表示する商標であるか識別することもできない(商標法第6条第1項第7号)という理由で本件商標の商標登録を拒絶した[2]。これに対し原告は特許審判院に拒絶決定取消審判を請求したが、特許審判院も本件商標は需要者が誰の業務に係る商品を表示する商標であるか識別できないという理由で原告の審判請求を棄却した。原告はこれを不服として特許法院に審決取消訴訟を提起したが、特許法院も特許審判院と同一の趣旨で原告の請求を棄却し、原告はこれを不服として上告を提起した。

判決内容

法院は、商標法が顕著な地理的名称・その略語又は地図のみからなる商標を登録を受けることができないと規定した趣旨は、このような商標はその顕著性と周知性のため商標の識別力を認めることができず、ある特定個人にだけ独占使用権を与えないにするところにあるもので、これに照らしてみれば、商標法第6条第1項第4号の規定は顕著な地理的名称、その略語又は地図のみからなる標章にだけ適用されるのではなく、顕著な地理的名称などが識別力のない記述的標章などと結合されている場合、その結合により本来の顕著な地理的名称や記述的意味などを離れて新たな観念を生じさせたり新たな識別力を形成するのでなければ依然として上記の条項が適用されるという法理を示した。そして、法院は、当該法理に基づき、本件商標はコーヒー豆を図案化した図形が陰影で多数描かれた黒色の地色の長方形の内部にコーヒーカップを図案化した図形と文字GEORGIAを黄色で上下2段で配置して構成した標章であるところ、その中の文字部分であるGEORGIAはアジア北西部にある国家グルジアの名称又はアメリカ南東部の州の名称として一般需要者に広く知られているため、顕著な地理的名称に該当し、コーヒー豆の図形はコーヒー豆の形状と形をそのまま表示したものに過ぎず、コーヒーカップの図形は多少図案化されているものの、コーヒーカップの形状の基本的な形態を維持していて一般需要者がこれを本件商標の指定商品のうち、コーヒーの豆とその飲用の用途で使用されるコーヒーカップの形状と直感することができるため、これら図形の部分はコーヒーと関連してみれば識別力がなく、さらに、上記の文字部分と図形部分の結合により本件商標が本来の顕著な地理的名称や記述的意味を離れて新たな観念を生じさせたり新たな識別力を形成するものでもないため、本件商標は全体的に一般需要者の間に主に顕著な地理的名称であるGEORGIAと認識され、商標不登録事由の一つである顕著な地理的名称のみからなる標章に該当すると説示し、原告の上告を棄却した。

専門家からのアドバイス

本件大法院判決は、顕著な地理的名称に識別力のない標章が結合された場合、その結合により新たな識別力が形成されない限り、依然として顕著な地理的名称に関する商標法第6条第1項第4号が適用されるという既存の法理を再度確認したものである。商標登録出願人としては、顕著な地理的名称に慣用標章や記述的標章などを結合したとしても依然として顕著な地理的名称に該当するという理由で商標登録が拒絶され得るという点に留意しなければならない。

また、本件では、原告・上告人側から、当該商標が外国で登録されているとの抗弁がなされたが、大法院は、出願商標の登録可否は韓国商標法によりその指定商品と関連して独立的に判断するものであり、法制や言語習慣が異なる外国の登録例に縛られないという見解をとっているため、たとえ外国でこれと類似の商標が登録されたという事情があってもその結論は変わらないものと見られる。ただし、該当商標が出願前既に識別力を取得した場合や、特定商品に対する地理的表示としてその地理的表示を使用した商品を指定商品として地理的表示団体標章登録を受ける場合には、その登録が許容され得るものと思われる。

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